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介護経営情報(2017年7月7日号)

2017/7/12

◆訪問介護が次期介護報酬改定の重要な論点に?
「生活援助」だけでなく「身体介護」を含め報酬体系を見直す方針

――厚生労働省
7月5日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、訪問介護のあり方について議論を展開。人員基準を緩和して介護報酬を引き下げる案が提示された。とりわけ、「生活援助」のみの利用が多い状況が問題視されており、「身体介護」を含めた訪問介護の報酬体系が見直される可能性が強まった。

訪問介護は、介護報酬上において「身体介護」「生活援助」「通院等乗降介助」の3類型に区分されている。このうち、「身体介護」の1人1カ月あたりの平均利用時間は484.8分、「生活援助」の平均利用時間は463.7%と、一見均一に利用されているようだが、要介護度が低い利用者のほうが「生活援助」の利用時間が長い傾向にある(要介護1~3の「生活援助」利用時間はそれぞれ445.9分、512.0分、538.0分であるのに対し、要介護4は415.4分、要介護5は320.6分)。

また、この日の会合では、6月27日に財務省が発表した「平成29年度予算執行調査」の結果を提示。昨年9月の「生活援助」のみの利用状況について、月31回以上の利用者が6,626人もいたほか、月100回以上利用しているケースもあったことを引いている。1日に算定可能な報酬の上限を設定するべきとする財務省の提言を支持する格好となっており、訪問介護の報酬体系を見直したい意向を明らかにしたと言える。少なくとも、「必要以上のサービス提供を招きやすい」と指摘された、1日に複数回の報酬が算定可能な現行の報酬体系にメスが入る可能性が高い。

「生活援助」については、自治体の事業に移行して介護保険の適用外とすることも検討されていたが、昨年10月の介護給付費分科会で見送りの方針を固めている。その代わりに、人員基準を緩和して介護報酬を引き下げる方向へ切り替えており、6月2日に発表された「骨太の方針2017」でも人員基準の緩和が明記された。今回、それに加えて「身体介護」を含めた報酬体系の見直しが検討の俎上にのぼったことで、訪問介護が次期介護報酬改定の重要な論点となることが明らかになったと言えよう。

その背景にあるのは、事業所数および利用者数ともに増加している状況だ。2012年には29,414だった事業所数は右肩上がりに増えており、昨年4月の事業所数は33,262を記録。利用者数は昨年4月時点で982,200人と、まもなく100万人に届こうとしている。そのうち60%以上が要介護2以下であり、自立支援を促して社会保障費を抑制したい政府からすれば、これ以上利用者数を増やしたくないというのが本音だろう。ただ、体力的な理由で身体介護は難しいけれども生活援助ならできるという介護人材も存在することから、人材配置のバランスを考慮しなければならないのも事実。身体介護に介護報酬が偏る設計になれば、生活援助を中心にサービスを提供している事業者が離脱する可能性もあり、慎重なさじ加減が求められるのではないだろうか。

[訪問介護の人員基準]
訪問介護は、2015年度の介護報酬改定で、常勤のサービス提供責任者が3人以上配置されている場合などの要件を満たした場合、利用者50人に対して1人以上のサービス提供責任者を配置できるようになった。
なお、サービス提供責任者は、以下のいずれかの資格を持っていなければならない。
(1)介護福祉士
(2)実務者研修修了者
(3)旧・介護職員基礎研修課程修了者
(4)旧・ホームヘルパー1級課程修了者
(5)3年以上介護等の業務に従事した介護職員初任者研修過程修了者(旧・ホームヘルパー2級課程修了者を含む)

※(5)の旧・ホームヘルパー2級課程修了者を含む介護職員初任者研修過程修了者をサービス提供責任者とした場合は、減算となる。

◆新設される「共生型サービス」の基準・報酬の検討開始
介護保険の基準に満たない障害福祉事業所の取り扱いが焦点

――厚生労働省
7月5日の社会保障審議会介護給付費分科会では、来年度から新設される「共生型サービス」についても議論が展開された。主な論点となったのは、その基準と報酬体系。とりわけ、介護保険サービスの基準に満たない指定障害福祉事業所について、どのように取り扱うかが今後の検討課題として挙げられた。

「共生型サービス」とは、介護サービスと障害福祉サービスを一体的に提供する取り組み。今年2月、厚生労働省の「『我が事・丸ごと』地域共生社会実現本部」が取りまとめた「『地域共生社会』の実現に向けて(当面の改革工程)」の中で、創設することが発表された。創設の背景にあるのは、障害者が65歳になったときに障害福祉サービスが介護保険に切り替わってしまう現状だ。そのため、使い慣れていた障害福祉施設が介護保険サービスの基準を満たしていない場合、その施設を利用できなくなってしまうケースがあり、2015年12月に開かれた社会保障審議会障害者部会で見直すべきとの意見が出されていた。

しかし、現行の制度では、障害福祉事業所にとって「共生型サービス」への参入は厳しい。なぜならば、障害福祉事業所としての指定を受けているだけでは、介護サービスを提供できないからである(介護事業所の場合、市区町村が認めれば障害福祉サービスの提供が可能)。たとえば人員配置も、介護事業所では5:1だが、障害福祉サービスは3:1(利用者の平均障害支援区分5以上の場合)。機能訓練室の面積も、介護事業所は利用者1人あたり3平方メートルが必要だが、障害福祉サービスは規定がない。さらに、食堂も障害福祉サービスでは設備要件に入っていないなど、不足要件が数多くある。この日の会合では、障害者が65歳以上になっても継続して同じ事業所でサービスが受けられるようにする方針が改めて確認されたが、これらの課題をいかにクリアするかが今後の焦点となってくるだろう。

なお、この日の会合では、障害福祉事業所が介護事業所としての指定を受ける場合の基準と介護報酬についての検討は介護給付費分科会が行い、逆に介護事業所が障害福祉事業所として指定を受ける場合の基準と障害報酬については、障害者部会で検討を行うことも確認された。つまり、「共生型サービス」のあり方がどうなるのかは、介護給付費分科会だけでなく、障害者部会での議論も併せて注視していく必要があると言えそうだ。

◆「大人用紙おむつ」の国際規格が改定 国際標準化機構
補助パットの利便性が認められる 日本式介護の輸出を後押し

――経済産業省
経済産業省は7月6日、日本が提案した「大人用紙おむつ」の評価方法が、国際標準化機構(ISO)に国際規格として認められたと発表した。今まで規格として認められていなかった「挿入式」の補助パッドが新たに規定されるなど、日本の紙おむつが国際的に評価される下地ができたため、日本式介護の輸出の後押しにつながりそうだ。

日本で介護用製品として使用されている「大人用紙おむつ」は、テープ止めタイプやパンツタイプ、ツーピースタイプなど多彩。それのみを取り替えられる「挿入式」の補助パットも併用し、夜間でもこまめに交換するほか、利用者の生活状況や身体状況を考えてセレクトできるようになっている。

しかし、欧米では夜間のおむつ交換を原則的に行わないという考え方が主流。日本で主流となってきている補助パットは評価規定になく、今までは「複数回の排尿を吸収・保持できる性能評価」のみを規定。そのため、日本の大人用紙おむつをグローバルに展開させることが困難だった。

そんな状況を打破しようと動いたのが、ユニ・チャーム(株)と(一社)日本衛生材料工業連合会。日本工業標準調査会(JISC)の審議を経て、トップスタンダード制度(新市場創造型標準化制度の前進)を活用し、経済産業省の戦略的国際標準化加速事業として2013年8月から国際標準化機構に提案を行ってきた。約4年の月日を経て、ようやくその提案が認められた格好だ。

大人用紙おむつは、介護用品の中でもっとも重要なポジションのひとつを占めるだけに、多彩な日本製品の適した国際規格へと改定されたことによる効果は絶大なものがある。急速に高齢化が進んでいるアジア諸国をはじめ、その輸出が加速度的に進むことが予想される。折しも、今年2月には日本式介護の海外展開を目的とした官民連携の「国際・アジア健康構想協議会」が発足。「日本式介護技術・サービス等の国際標準策定」などに取り組んでいく方針を固めており、今回の大人用紙おむつの国際規格改定がその追い風となることは間違いない。介護用品のグローバル展開は、日本の介護サービスが国際進出するうえで格好の受け皿となることも期待できるだけに、今後の紙おむつメーカーの動きにも目が離せない。

◆認知症カフェ、2021年3月までに全市町村での設置を目指す
新オレンジプランの数値目標を更新 運営手法が今後の課題
――厚生労働省

7月5日、厚生労働省の「認知症高齢者等にやさしい地域づくりに係る関係省庁連絡会議」が開催され、認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)の数値目標を更新。認知症サポーター養成や認知症サポート医養成など、前倒しで達成されている項目については目標を引き上げるとともに、数値目標を定めていなかった認知症カフェは「全市町村」での設置を目指すとした。

新オレンジプランは、2015年1月に関係12府省が共同で策定したもの。2025年度までを戦略の対象期間とし、今年度末までの達成を数値目標として設定していた。

当初、数値目標を設定していた11項目のうち、「認知症サポーター養成」「認知症サポート医養成研修」「認知症介護実践者研修」など5項目は今年3月時点ですでに目標に到達。残り6項目のうち3項目は9割程度達成していることから、今回新たに2020年度までの数値目標を設定した。「認知症サポーター養成」は800万人から1,200万人へと1.5倍増に、「認知症サポート医養成研修」は5,000人から10,000人へと2倍増させる。

また、今回新たに歯科医師、薬剤師、看護職員の「認知症対応力向上研修」のほか、2013年度から国の財政支援を実施している「認知症カフェ等の設置」を数値目標の項目に追加。認知症カフェに関しては、全市町村の設置を目標としている。

認知症カフェは、新オレンジプランによれば「認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有し、お互いを理解し合う場」。2014年度の実績調査によれば、41都道府県280市町村で655カ所運営されている。総務省によれば、昨年10月時点で市町村数は合計1,718となっており、概算で1,000カ所以上の設置が必要になる。

認知症カフェは特にプログラムが設定されていないため、設置は比較的容易ではある。介護人材を抱える介護事業者であればなおさらだが、ネックとなるのは運営費だ。利用者負担額は数百円レベルであるため、それのみで収益につなげるのは難しい。今回、厚労省が全市町村での設置を目標に掲げたことで、助成金を設ける自治体は飛躍的に増えることが予測されるが、助成金にのみ頼っていては、継続的かつ発展的な運営をすることはできないだろう。グループホームとの連携といった包括的な運営や、あるいはカフェとしての付加価値を高めるとなど、創造的なアプローチが求められるのではないだろうか。裏返せば、まだ飛び抜けたビジネスモデルが出現していないだけに、新たな事業を模索する事業者にとってはチャンスがある業態とも言えよう。

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