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医療経営情報(2017年10月12日号)

2017/10/20

◆ 小児特定集中治療室管理料、対象年齢の上限引き上げへ 妊婦の外来管理に関しての診療報酬上の評価を見直す方針
――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
10月11日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、小児・周産期医療について議論を展開。小児特定集中治療室管理料の対象年齢上限を引き上げるほか、妊婦の外来管理に関しての診療報酬上の評価を見直す方針が明らかになった。

現在、出生数および出生率は減少傾向にある。しかし、長期にわたって療養しなければならない小児慢性特定疾病(がん、慢性腎疾患、慢性呼吸器疾患など)の対象人数は10年前からほぼ横ばいとなっており、今後もその傾向は続くと予想される。小児慢性特定疾病は継続的に診療する必要があるため、2016年度診療報酬改定で小児入院医療管理料の対象年齢は15歳未満から20歳未満まで引き上げられた。

一方、小児特定集中治療室管理料の対象年齢は15歳未満のままであるため、症状の急変が起こったときに診療報酬上の評価が受けられない問題があった。前回改定後である2016年度の社会医療診療行為別統計・調査で、15~19歳の患者の小児入院医療管理料の算定が3770回あったことから、小児特定集中治療室管理料の年齢を引き上げる必要性が認められた格好だ。小児入院医療管理料と同じく、20歳未満まで引き上げられる可能性が高い。

妊婦の外来管理に関しては、これまで特段の評価がされていなかった。心疾患や糖尿病、精神疾患などが対象となるハイリスク妊娠管理加算やハイリスク妊産婦共同管理料が設けられているものの、いずれも入院中の患者が対象であり、外来診療は対象外となっている。

しかし、たとえ正常妊娠であっても妊娠中にさまざまな疾患が発生することは十分に考えられる。重篤な合併症はもちろんのこと、尿路感染症といった発症しやすい疾患もあるため、妊婦の外来診療を診療報酬上で評価しようというわけだ。

また、この日は妊婦の精神疾患についても議論が展開された。東京23区では、2005年から2014年までの10年間に起こった妊産婦異常死89例のうち、63例が自殺であり、その約半数が精神疾患を持っていたデータがある。妊婦全体のうち、約2.5%が精神疾患を持つというデータもあり、前回の診療報酬改定ではハイリスク妊娠管理加算、ハイリスク分娩管理加算、ハイリスク妊産婦共同管理料の対象に精神疾患の患者を追加した。

とはいえ、精神疾患には妊娠中だけでなく産後にまでわたる長期的な支援が必要となる。母子ともにケアしなければならないため、産科だけでなく精神科、自治体の連携も欠かせない。そこで、そうした連携体制の推進の評価を新設する方針が明らかにされた。今後、具体的にどのような点数設計がなされるかが焦点となってきそうだ。

 

◆ 医療安全対策加算の要件に専従医師の配置が加わる可能性 届出医療機関の増加が背景に 診療側は「医師不足招く」と反発
――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
10月11日の中央社会保険医療協議会総会では、医療安全対策についても議論が展開された。厚生労働省は医療安全対策加算に医師の配置を要件とすることを提案。医療機関としては人件費の高騰につながりかねない要件であり、医師不足を招く可能性もあるだけに、診療側の委員からは反発意見も出ている。

医療事故をめぐっては、1999年1月に横浜市立大学附属病院で患者取り違え事故(肺手術と心臓手術の患者を取り違え)、同2月に都立広尾病院で消毒薬誤注入による死亡事故が相次いで発生して社会問題化したことをきっかけに、厚労省に医療安全推進室が設置された。その後、2003年に特定機能病院および臨床研修病院には医療安全専任管理者・部門の設置が義務付けられ、2006年度の診療報酬改定で医療安全対策加算が新設。医療安全管理部門に専従の医療安全管理者を配置している医療機関に対して、診療報酬上の評価が与えられるようになった。

現在、医療安全対策加算は医療安全対策加算1(85点)と医療安全対策加算2(35点)の2つの区分に分けられ、いずれも医療安全管理者は薬剤師か看護師が要件(特定機能病院は昨年6月に専従医師の配置が要件に追加された)。入院期間中1回限り、入院初日の算定ではあるものの、入院患者のすべてが対象となっていることもあって届出医療機関数は増加傾向にあり、昨年度は3,607の医療機関が届けでいる。また、50点の差があるだけに、点数の高い加算1のほうが算定回数も多くなっており、医療費の膨張を抑制したい厚労省側が目をつけたと思われる。

厚労省は、医療安全管理部門に専従の医師を配置している病院のほうが、薬剤師や看護師を専従としている病院よりも医療事故再発防止に関して2.9倍有効な立案をしているというデータも提示。これは、全国の医療安全管理部門の医療安全管理者(医師以外)に実施したアンケート調査(厚生労働科学研究所が昨年度実施)をもとにしたもの。届出医療機関数を抑制することを念頭に置いた調査とも受け取れる。

こうした厚労省の提案に対し、診療側は反発。新たに医師を採用する必要があることで医師不足を招くほか、人件費が高騰して経営を圧迫するとの主張があった。医療資源を効率的に活用する観点からも合理的な意見であり、厚労省の詰めの甘さが目立った形となった。今回の会合を受け、厚労省がどのような提案をしてくるか注目される。

 

◆ 費用対効果評価制度、日・米・欧の関係団体から猛反発        「補足的な手法として限定的に位置づけるべき」などの意見が
――厚生労働省 中央社会保険医療協議会
費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会
10月11日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会費用対効果評価専門部会・薬価専門部会・保険医療材料専門部会の合同部会が開かれ、費用対効果評価制度について日・米・欧の関係団体から意見聴取を実施。各団体からは否定的な意見が相次いで寄せられ、製薬業界の危機感が浮き彫りとなる結果となった。

意見聴取を行ったのは、「日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会」「米国研究製薬工業協会」「欧州製薬団体連合会」「日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会」の各団体。

「日本製薬団体連合会・日本製薬工業協会」は、まず費用対効果評価制度について「試行対象企業に大きな負担がかかっている」とした。その理由として、現在実施されている試行的導入において、再分析や総合的評価の方法、薬価の調整方法などが明らかになっていない中で分析結果の提出や照会事項への回答、費用対効果評価専門組織などの説明に対応していることを挙げ、現行の皆保険制度や薬価基準制度との整合性を踏まえるべきと主張。イノベーションの阻害や患者のアクセス制限、新薬開発から実際に使用されるまでのドラッグ・ラグを助長しないことを前提とすることを求めたうえで、費用対効果評価制度は「あくまで補足的な手法として限定的に位置づけられるべき」としている。

また、現在費用対効果評価専門部会で議論の焦点となっている総合的評価(アプレイザル)におけるICER(増分費用効果比)については、支払い意思額の調査を基準として設定している国がないことを指摘。絶対的な数値ではないことを留意すべきとして、費用対効果評価制度によって加算前の価格が下回る調整になることは「断じて容認できない」と強く牽制した。

「米国研究製薬工業協会」は、費用対効果評価制度を導入した国では患者が不利益を被っていると断言。たとえ保険償還の可否判断に費用対効果評価制度を用いなくても、薬価の予見性が大きく損なわれることで、イノベーションの阻害や必要な医薬品へのアクセス遅延が生じる恐れがあると主張。費用対効果評価制度の本格導入に強く反対するとした。

ICERは費用や効果の推計における前提条件によって結果が大きく変動すること、支払い意思額調査は質問方法や選定された回答者によって異なった結果になることが想定されることを挙げ、意思決定の根拠としての妥当性に疑問があるとしている。

「欧州製薬団体連合会」は、まず現行の薬価基準制度で薬剤費支出が十分管理されているとし、仮に費用対効果評価制度を本格導入するならば補足的な位置づけにするべきとした。また、諸外国でも費用対効果評価制度を確固たる制度として運用してきた国は存在しないとして、本格導入の見直しを求めた。ICERについては絶対的な値ではないとし、諸外国においてはICER以外に倫理的、社会的影響なども考慮して評価を行っていると指摘。よって「倫理的・社会的考慮要素を重視し、価格調整係数によって十分に反映されるべき」と主張した。

「日本医療機器産業連合会、日本医療機器テクノロジー協会、米国医療機器・IVD工業会、欧州ビジネス協会」は、費用対効果評価制度の重要性を業界として十分理解しているとしたうえで、不確実性の高い評価制度であることを指摘。医療機器では、費用対効果評価に十分な臨床データがないことが多いため適していないとした。そのうえで、医療機器の有用性を評価する指標として経済性評価を新たな補正加算要件として導入し、各企業が自発的に取り組める仕組みにすべきだと提案。既存の外国価格再算定制度とも棲み分けられるとの考えを示した。

費用対効果評価制度は、高額医療を保険収載するにあたって適正な価格設定を行うための仕組み。来年度からの本格導入を目指して試行的導入が進められているが、評価の肝となる「総合的評価(アプレイザル)」についての検討が進まず、議論を積み重ねてきた。今回、改めて関係団体から一様に反対意見が出されたことで、今後厚労省側がどのような対応をとっていくかが注目されるが、来年度から本格導入するには時間が残されていない。薬価制度改革は次期改定の重要なポイントとなるだけに、厚労省が今後どのような対応をしていくか注視していく必要がある。

 

◆ 日本ベンチャー医療協会、「遠隔診療再診料」の新設を提案     外来診療料や特定疾患療養管理料の要件見直しも 規制改革推進会議WGで
――規制改革推進会議 医療・介護ワーキンググループ
10月10日、規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループの会合が開かれ、一般社団法人日本医療ベンチャー協会(医療ベンチャー協会)が遠隔診療について現状の課題を報告。「遠隔診療再診料」を新たに設けるほか、外来診療料や特定疾患療養管理料についても要件見直しを提言した。

医療ベンチャー協会は、まず遠隔診療の現状について整理。あくまでも対面診療の補完でありつつ、必ず再診でなければならないことなどに触れたのち、「200床以上の病院」では該当する診療報酬がないため実施できないことに言及。現状、遠隔診療による再診料を算定できるのは「A 001 再診料」だが、200床以上の病院で再診をした場合に算定される「A 002 外来診療料」でも算定可能にするべきとした。

また、遠隔診療でも対面診療でも、医療機関にとっては診察に要する時間が変わらないと指摘したうえで、遠隔診療の診療報酬が低いことを指摘。収益が下がることが導入の障壁となって活用が進んでいないとした。これは、遠隔診療で算定できる保険点数が基本的には「再診料(72点)+処方せん料(68点)」の計140点にとどまることを指している。たとえば糖尿病などの生活習慣病に対する診療は、遠隔診療の積極的な活用が期待されているが、現状の診療報酬体系では、「B 000 特定疾患療養管理料」の算定ができないというわけだ。

「B 000 特定疾患療養管理料」は、診療所の場合225点、100床未満の病院の場合147点、100床以上200床未満の病院の場合は87点となっており、とりわけ診療所にとっては算定できるメリットは大きい。遠隔診療を導入することでその点数が算定できないのであれば、わざわざ導入する必要はないと判断する医療機関は多いだろう。

6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」でも、来年度の診療報酬改定で遠隔診療を評価すると明記されており、何らかの形で評価が新設されることは決定的な状況となっている。今後、中央社会保険医療協議会では具体的な点数設計について議論が進められることが予測されるため、今回の医療ベンチャー協会の提言がどのような影響を与えるか興味深いところだといえよう。

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