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医療経営情報(2017年10月19日号)

2017/10/27

◆短期滞在手術等基本料、新たに手術・検査が追加される方向
「子宮内膜ポリープ切除術」「副腎静脈サンプリング」などが候補

―厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
10月18日、厚生労働省の「入院医療等の調査・評価分科会」が開かれ、「短期滞在手術等基本料3」について議論を展開。新たに複数の手術・検査が追加される可能性が高まった。候補としては「副腎静脈サンプリング」「子宮鏡下子宮内膜焼灼術」「子宮鏡下有茎粘膜下筋腫切出術」「子宮内膜ポリープ切除術」が挙がっている。

 「短期滞在手術等基本料」は、日帰り手術や4泊5日までの入院による手術を行うにあたって必要な術前・術後の管理、検査、画像診断などを包括的に評価した診療報酬として2000年度から導入された。その後、短期間で退院可能な検査・手術が増えていることを受け、2014年度の診療改定で21種類の手術・検査を短期滞在手術等基本料3の対象としたうえで、包括範囲が全診療報酬点数となった。

そして、2016年度の診療報酬改定ではさらに「経皮的シャント拡張術・血栓除去術」「体外衝撃波腎・尿管結石破砕術」「ガンマナイフによる定位放射線治療」が追加。さらに対象となる手術・検査を増やすことで、効率的な医療を後押ししようというのが狙いだ。

今回候補に挙げられた4つの手術・検査の選定基準は、概ね前回改定時と変わらない。特に「在院日数の短さ」「算定点数のばらつきの少なさ」は重視しているポイントだということが改めて浮き彫りとなった。1点だけ変更となったのが症例数。前回改定時は「一定の症例数が存在」だったのが、「該当症例数100件以上」に変更となった。より具体的な実績をベースに選定しようという意図が見て取れる。

なお厚労省は、DPCの点数設定方法D区分が、入院期間を1日で固定しているため短期滞在手術等基本料3の設定と酷似していることも問題視。しっかりとした要件を定めて整理することが必要だとした。短期滞在手術等基本料3の設定がさらに見直される可能性もあり、今後の議論のゆくえを注視していきたい。

◆向精神薬、処方制限をさらに強化 薬剤数、処方期間とも
適切な薬物療法の推進に資する評価を検討する意向

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
10月18日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、向精神薬の処方制限をさらに強化する方針が固まった。薬剤数、処方期間ともに見直されることとなる。さらに厚労省は、薬剤師や薬局などと連携した適切な薬物療法を推進に資する評価の検討を提案している。

 向精神薬は、承認用量内であっても長期的に服用すると依存が生じるリスクがあるとされている。とりわけ、睡眠薬の中でもっとも多く使われているベンゾジアゼピンがそうだ。厚労省によれば、国内での副作用報告を分析した結果、同じ日数(15日間)服用しても、「承認用量以上より範囲内で」服用したほうが、薬物依存症例が多かったという衝撃的なデータもある。実際、海外ではベンゾジアゼピンの投与期間を制限しているケースもある。が、日本では多くの薬剤が上限30日となっており、レセプトデータと照合すると80%以上が22日以上の処方。薬物依存を助長する状況となっているともいえる。

 もちろん、これまで何の対策も打ってこなかったわけではない。3種類以上の向精神薬を処方されている患者に依存のリスクが高まることが明らかになったため、2012年度以降、同一薬効の薬剤を3種類以上処方される場合には、処方せん料が68点から30点に、処方量が42点から20点に、薬剤料は100分の80に減算された。精神科では「精神科継続外来支援・指導料」が算定できない取扱いとなっている。

 しかし、厚労省が提出したデータによれば、2016年6月審査分の外来および調剤レセプトのうち、「催眠鎮静薬・抗不安薬」または「精神神経用剤」のいずれか3剤以上の処方が29%を占めた。多剤処方・多剤投与が変わらずに実施されていることが明らかになった。さらに、外来レセプトで向精神薬1剤を処方された患者のうち、精神療法が算定される患者はなんと10%未満。つまり、精神療法以外で向精神薬が大量に処方・投与されているというわけである。健康の観点でも、膨張する社会保障費の抑制という観点でも見逃せない事実であり、今回俎上に載せられた次第だ。この日の総会でも、厚労省の提案に対して反対意見はほとんどなく、不適切な多剤処方や多剤投与を行っている精神科や薬局に対して厳しい結論が出ることは間違いないといえよう。

◆給食部門の収支が著しく悪化 委託・直営に関わらず赤字
入院時食事療養費の引き上げを検討へ

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
10月18日に開催された「入院医療等の調査・評価分科会」では、「入院時の食事療養に係る給付に関する調査結果」も報告された。調査結果によれば、病院の給食部門の収支は著しく悪化。外部委託、直営に関わらず赤字となっており、来年度の診療報酬改定で入院時食事療養費の引き上げが検討される可能性が高まった。

 「入院時の食事療養に係る給付に関する調査」は、「『病院の給食部門における収支の状況』に関する調査」と「『平成28年度改定に伴う経腸栄養用製品の使用及び食材費等の状況』に関する調査」の2種類。前者は、全国の約800の病院を対象に、後者はそのうちDPC対象病院約50とDPC対象病院以外の約50を合わせた計100施設を対象として行われた。有効回答率は前者が28.1%、後者が36.0%となっている。

 「『病院の給食部門における収支の状況』に関する調査」の結果を見ていくと、まず給食部門の費用については「全面委託」が2,454円(患者1人1日当たり、以下同じ)、「一部委託」が2,530円、「完全直営」が2,475円。それぞれに算定される入院時食事療養費を勘案すると、「全面委託」が661円、「一部委託」が757円、「完全直営」が706円の赤字となっている。これらは、2004年の調査結果と比べると約420円~820円も悪化しており、特に「全面委託」は2004年では168円の黒字だったのに比べ、829円もマイナスになった計算となる。

 こうした事態を生んだ背景にあるのが、入院時食事療養費の見直しだ。2006年度の診療報酬改定で1日単位から1食単位に変わり、常勤管理栄養士の配置や適時・適温での食事提供を要件としていた「特別管理加算」が吸収された。糖尿病や腎臓病患者に対して提供される特別食を評価する「特別食加算」も1食単位となり、加算も引き下げられている。

これらの改定の影響は如実に表れており、2006年度の改定以降、入院時食事療養費の合計額は約2割減少。特別食加算の合計額は約5割も減少している。一方で、提供回数はいずれも2倍以上増えており、人件費の増加や食材費の高騰に伴って収支が厳しくなっている。提供すればするほど赤字が増える構造となっていることを厚労省側も問題視し、今回の問題提起につながったというわけだ。来年度の次期診療報酬改定で入院時食事療養費の引き上げが検討される可能性は高いが、果たしてどの程度の引き上げとなるのか、要件の見直しがどの程度行われるのかが今後の焦点となってくるだろう。

◆措置入院患者、退院後支援の評価を検討
精神保健指定医の評価見直しも俎上に

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
10月18日の中央社会保険医療協議会総会では、精神医療についても議論が展開された。厚労省は、措置入院患者への退院後支援を評価することを提案。また、精神保健指定医の評価を見直す方針も明らかにしている。

 措置入院とは、精神保健福祉法で定められている入院形態。「入院させなければ、精神障害のために自傷他害のおそれのある精神障害者」を対象に、都道府県知事の権限と責任において、精神科病院へ強制的に入院させることができる。年度によってばらつきはあるものの、1996年には3,567人だったのが2015年には7,106人と、約20年で2倍近く増えており、緩やかな増加傾向にあるといえる。

 その一方で、在院日数は減少しており、在院患者数も減少傾向にある。措置入院の対象となっているのは統合失調症の患者が多いため、本来は退院後の手厚いケアが必要だが、これまでは制度的な対応を実施していなかった。

 そこで、現在措置入院制度の見直しが行われており、自治体が退院後支援計画案を作成・決定するほか、措置入院先の病院に「退院後生活環境相談員」の選任を求めることが検討されている。しかし、現在の診療報酬では精神科措置入院診療加算(入院初日・2,500点)や医療保護入院等診療料(患者1人につき1回・300点)といった評価はあるものの、退院後の継続的な支援に関する要件が規定されていないため、措置入院制度の見直しに合わせて評価を見直そうというわけだ。

精神保健指定医に関しては、求められている業務内容が入院患者にかかわるものが中心となっている。そのため、関連する診療報酬のうち「通院精神療法」などについて、2012年度の診療報酬改定で、「精神科救急医療体制の確保に協力している」精神保健指定医のみに要件を厳格化。その効果があって「通院精神療法」の算定件数が減少したことから、再度評価の見直しを検討したいとした。その場合、措置入院の手続きや患者の観察など、入院業務に重きが置かれていることが指定医の要件となる可能性が高い。

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