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医療経営情報(2017年10月26日号)

2017/11/13

◆財政審、診療報酬のマイナス改定を提案
「少なくとも2%半ば以上の引き下げが必要」

―財務省 財政制度等審議会財政制度分科会
10月25日、財務省の財政制度等審議会(財政審)財政制度分科会が開かれ、来年度の診療報酬改定についてマイナス改定を提案。「少なくとも2%半ば以上の引き下げが必要」として、医療費の伸びを抑えたい意向を示した。調剤報酬や介護報酬も引き下げが必要としており、医療、製薬、介護の各関係団体からの強い反発が生まれることは避けられない状況となっている。

 財政審が診療報酬のマイナス改定を提案するのは、年々増え続けている国民医療費が背景にある。過去10年で年平均2.5%のペースで増加を続けているが、財政審は高齢化による増加は半分程度の1.2%程度と計算。制度の持続性を確保するためにはいわゆる「自然増」の要因である高齢化の範囲内で医療費の伸びを抑制する必要があるとして、診療報酬改定1回当たりで2.5%以上の引き下げが必要と主張。さらに、診療報酬本体の水準は賃金や物価の水準と比べて高いとして、「国民負担の抑制」のためにもマイナス改定が必要だとしている。具体的には、7:1入院基本料の見直しや療養病床の標準報酬の適正化などを挙げており、これらをめぐる改定の議論に影響を与えそうだ。

 調剤報酬については、かかりつけ機能を果たしていない薬局の報酬水準引き下げを求めたほか、投与日数や剤数の増加によって階段式に点数が増加する仕組みの見直しを提案。後発医薬品を推進するため、「後発医薬品調剤体制加算」の基準を厳格化することも盛り込まれた。介護報酬については、今年度実施した介護人材の処遇改善が保険料負担に直結するとして、来年度はマイナス改定に踏み切るべきだとしている。

 また、昨年度から紹介状なしで大病院を受診した場合の定額負担が導入されているが、この対象医療機関を「かかりつけ医以外」に拡大するべきだともしている。「かかりつけ医の普及や国民皆保険制度の維持」が目的で、「個人が日常生活で通常負担できる少額の定額負担」としており具体額は示されていないが、フランスの7割負担制度を例として挙げており、少額とはいえ数千円程度を想定しているものと思われる。

 財務省は、これらの財政審の提案をもとに、厚労省などと調整を行っていく方針。マイナス改定を求めるのは“恒例行事”となっているとはいえ、厚労省側もある程度受け入れざるを得ない。今後の中央社会保険医療協議会で、厚労省がどのような案を提示してくるか注目される。

◆回復期リハ病棟のアウトカム評価、実績指数の基準値引き上げか
平均在院日数の短縮や在宅復帰率向上などの成果を受けて

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
10月25日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、前回の診療報酬改定で導入された回復期リハビリテーション病棟(回復期リハ病棟)のアウトカム評価について議論を展開。導入によって成果が得られたことを受け、厚労省はよりアウトカム評価を推進していく意向を明らかにした。実績指数の基準値引き上げなどを案として提示している。

 アウトカムとは「成果」のこと。リハビリテーションを実施することで、臨床上の成果がどの程度得られたかを数値化し、基準以上の成果を挙げている回復期リハ病棟を評価するというのが、前回の2016年度診療報酬改定で導入されたアウトカム評価だ。基準を下回った場合は、リハビリテーションの点数が入院料に包括化されてしまうというディスインセンティブも設けられている。対象となるのは、以下の条件を満たした回復期リハ病棟。

●6か月間に回復期リハビリ病棟から退棟した患者数が10名以上
●6か月間に回復期リハビリ病棟で提供したリハビリが1日平均6単位以上
(疾患別リハビリの提供単位数/回復期リハビリを要する状態の患者の入院日数)

 上記の条件を満たしたうえで、直近6か月間のFIM得点(運動項目)をベースにしたADL(日常生活動作)改善度合いを計算。これを「実績指数」として、2回連続して「27未満」だった場合は疾患別リハビリテーション料の算定制限も設けられている。

 厚労省は、このアウトカム評価導入後の状況を調査。その結果、導入前の2015年と比較して「平均在院日数」「在宅復帰率」「日常生活機能評価」のいずれもが改善していることが明らかとなった。つまり、アウトカム評価の対象となる回復期リハ病棟の多くが“新制度の恩恵に浴した”とも言えるわけで、より基準を厳しくして医療費の抑制を図りたい厚労省の思惑が透けて見える。当然のことながら、診療側の委員は反発をしており、すんなりと了承されそうにない状況だ。

 なお厚労省は、退院後の早期リハビリテーションを充実させるため、退院してまもない患者については、疾患別リハビリテーション料の標準的算定日数の上限対象から除外する方針も明らかにしている。回復期リハ病棟のリハビリ専門職専従の取扱いを見直し、退院後リハビリが提供しやすい環境を整えるのが狙いで、専従職員が病棟外業務に携わることができるため、特段の反対意見も出ておらず、こちらは厚労省案どおり改定内容に盛り込まれることとなりそうだ。

◆給食部門の収支が著しく悪化 委託・直営に関わらず赤字
入院時食事療養費の引き上げを検討へ

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
10月18日に開催された「入院医療等の調査・評価分科会」では、「入院時の食事療養に係る給付に関する調査結果」も報告された。調査結果によれば、病院の給食部門の収支は著しく悪化。外部委託、直営に関わらず赤字となっており、来年度の診療報酬改定で入院時食事療養費の引き上げが検討される可能性が高まった。

 「入院時の食事療養に係る給付に関する調査」は、「『病院の給食部門における収支の状況』に関する調査」と「『平成28年度改定に伴う経腸栄養用製品の使用及び食材費等の状況』に関する調査」の2種類。前者は、全国の約800の病院を対象に、後者はそのうちDPC対象病院約50とDPC対象病院以外の約50を合わせた計100施設を対象として行われた。有効回答率は前者が28.1%、後者が36.0%となっている。

 「『病院の給食部門における収支の状況』に関する調査」の結果を見ていくと、まず給食部門の費用については「全面委託」が2,454円(患者1人1日当たり、以下同じ)、「一部委託」が2,530円、「完全直営」が2,475円。それぞれに算定される入院時食事療養費を勘案すると、「全面委託」が661円、「一部委託」が757円、「完全直営」が706円の赤字となっている。これらは、2004年の調査結果と比べると約420円~820円も悪化しており、特に「全面委託」は2004年では168円の黒字だったのに比べ、829円もマイナスになった計算となる。

 こうした事態を生んだ背景にあるのが、入院時食事療養費の見直しだ。2006年度の診療報酬改定で1日単位から1食単位に変わり、常勤管理栄養士の配置や適時・適温での食事提供を要件としていた「特別管理加算」が吸収された。糖尿病や腎臓病患者に対して提供される特別食を評価する「特別食加算」も1食単位となり、加算も引き下げられている。

これらの改定の影響は如実に表れており、2006年度の改定以降、入院時食事療養費の合計額は約2割減少。特別食加算の合計額は約5割も減少している。一方で、提供回数はいずれも2倍以上増えており、人件費の増加や食材費の高騰に伴って収支が厳しくなっている。提供すればするほど赤字が増える構造となっていることを厚労省側も問題視し、今回の問題提起につながったというわけだ。来年度の次期診療報酬改定で入院時食事療養費の引き上げが検討される可能性は高いが、果たしてどの程度の引き上げとなるのか、要件の見直しがどの程度行われるのかが今後の焦点となってくるだろう。

◆透析に対する診療報酬引き下げを提言 経済財政諮問会議
「4時間以上5時間未満」の報酬見直しが軸になるか

――経済財政諮問会議
10月26日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、民間の有識者議員は社会保障費の伸びを5,000億円以下に抑えるよう提言。薬価制度の抜本改革実行や調剤報酬・介護報酬の引き下げに加え、来年度の診療報酬改定については透析医療の診療報酬適正化などを求めた。

 透析医療が槍玉にあげられたのは、一部の医療機関が過剰な治療で収益を得ているとの指摘が相次いでいるからだ。また、予防の取り組みを行うことで透析医療の患者数抑制が見込めるが、「糖尿病透析予防指導管理料」「糖尿病合併症管理料」「慢性維持透析患者外来医学管理科」の算定対象となっている患者に対して「医療機関からの情報提供を行った」との回答がそれぞれ1%未満であることも明らかとなっており、糖尿病患者の重症化予防を促進することも重要な課題となっている。
 
 民間の有識者議員は、診療報酬上で最大時間となる「4時間以上5時間未満」をとりわけ問題視しているようだ。この日の会議で提示した資料の中には、「4時間以上5時間未満」のレセプト出現比を地域別に示したグラフがあり、最大で4.5倍の地域差があるとしている。また、「糖尿病透析予防指導管理料」のレセプト出現比と人工透析のレセプト出現比の分布図も提示しており、「人工腎臓」の「4時間以上5時間未満(2,175点)」を引き下げるとともに、「糖尿病透析予防指導管理料(350点)」の引き上げを行って予防への取り組みを促そうとする意図が見える。

 ただし、透析医療は4時間未満だと死亡率が増加し、4.5時間以上だと死亡率が減少するというデータもあり、レセプト出現比だけで取り扱いを決めるのは早計とも言える。透析医療には設備はもちろん人的なコストもかかるため、診療側から強い反発が起こるだろう。厚労省側が今回の提言を受け、どのような改定案を提示してくるか注目したいところだ。

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