新着情報

ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年11月2日号)

介護経営情報(2017年11月2日号)

2017/11/17

◆訪問介護、新たな入門研修を創設して人材の裾野を広げる
修了者は生活援助を中心に担当 身体介護と報酬にメリハリを

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
 11月1日、厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会が開かれ、厚労省は現在の介護職員初任者研修よりも研修時間の短い入門研修を新設し、その修了者を生活援助中心型サービスの担当者とする意向を明らかにした。身体介護とは介護報酬にメリハリをつける方針。

 現在も深刻な人手不足が続く介護業界だが、団塊の世代が全員75歳以上となる2025年には約38万人の人手不足になると推計されている。そのため、人材確保の裾野を広げることが急務とされており、新たな入門研修を創設する案は早くから出されていた。介護職員初任者研修は130時間以上の研修を修了する必要があるが、半分以下の研修時間で必要最低限の知識とスキルを身につけさせようというものだ。

 しかし、そもそも介護職員初任者研修も訪問介護の入門資格的な位置付けにある。それよりもさらに短い研修時間の入門資格を設けるのは、生活援助中心型サービスのニーズが高まっていることに起因している。しかも、生活援助中心型サービスは、比較的軽度な「要介護1」「要介護2」の利用率が高いため、新たな入門資格の修了者でも対応可能と判断。研修のカリキュラムも生活援助中心型サービスに必要な知識が得られるものとするほか、認知症高齢者に関する知識の習得を重点に置く。

 なお、新たな入門資格の修了者は、現在の配置基準である常勤職員2.5人の中に含める。介護報酬についても、介護福祉士が担当する場合と差をつけることはないとしている。その一方で、「自立支援・重度化防止に資する訪問介護を推進・評価する」観点から、身体介護と生活援助の介護報酬にはメリハリをつけ、身体介護をより高く評価する方針を明らかにしている。全体的に介護報酬を引き下げたい政府の思惑が反映されれば、事実上生活援助の報酬引き下げにつながる可能性が高い。新たな入門資格は仕事をリタイヤしたもののまだまだ元気な中高年を主要ターゲットとしているが、そうした状況を踏まえると給与面がどうなるかも気になるところ。ただ、新たな入門資格は介護職員初任者研修へのステップアップがしやすいよう設計される予定であり、キャリアプランの雛形を用意して事業所内の介護の質の底上げを図っていくことも可能となるのではないか。

◆訪問介護、囲い込み防止に「サ責」の役割を強化して要件を厳格化
初任者研修修了者及び旧2級は再来年度までに任用要件から廃止

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
11月1日の社会保障審議会介護給付費分科会では、訪問介護におけるサービス提供責任者(サ責)の役割を強化し、要件も厳格化する方針も明らかになった。また、介護職員初任者研修課程の修了者および旧ヘルパー2級の課程修了者はサービス提供責任者の任用要件から廃止される見通しだ。

サービス提供責任者の任用要件はすでに厳格化されており、介護職員初任者研修および旧ヘルパー2級の修了者を配置した場合は、減算の対象となっている。前回の2015年度改定では減算の割合が1割から3割まで引き上げられていた。これは、介護の質を向上させることが狙いで、サービス提供責任者を務めるのを介護福祉士にしようとする段階的な措置だった。今回、任用要件から初任者研修およびヘルパー2級を外したことで、減算措置そのものも廃止となる。ただし、現時点で従事している人もいることを考慮し、1年間の経過措置を設ける予定。つまり、2019年度からは完全に現在の任用要件が廃止され、それに伴って減算措置も廃止されることとなる。

 また、サービス付き高齢者向け住宅などで自身の事業所のサービス利用を促す、いわゆる「囲い込み」を防ぐため、サービス提供責任者の役割を強化。ケアマネジャーに対して「不当な働きかけを行ってはならない」旨を明確化する意向も示された。同時に、利用者の口腔管理や服薬管理の状態にかかわる「気付き」をケアマネジャーと情報共有することや、ケアプラン上の標準時間と実際のサービス提供時間が乖離している場合にはケアマネジャーに連絡することも義務化する方針。

 サービス提供責任者は、利用者の数40人に対して1人以上であることが要件となっている(常勤のサービス提供責任者が3人以上いて、主にその業務に従事する者が1人以上いる場合は利用者50人に対して1人以上)。これまで介護職員初任者研修および旧ヘルパー2級の修了者しかいなかった訪問介護事業所は、減算措置を受ければ介護業務を行うことができたが、2019年度以降は新たに介護福祉士の有資格者を確保し、サービス提供責任者として配置する必要がある。新たな入門研修の導入で、人材の裾野が広がることは期待できるものの、従来よりも質の高い人材を一定数確保しなければならないため、これまで以上に採用戦略を吟味する必要がありそうだ。

◆小多機、外部ケアマネジャーの活用は認めない方針
代表者交代時の研修は次回日程の受講でも可能に

――厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
11月1日の社会保障審議会介護給付費分科会では、小規模多機能型居宅介護(小多機)についても議論を展開。厚労省は、外部ケアマネジャーの活用を認めない方針を明らかにした。

これは、昨年12月に閣議決定された「平成28年の地方からの提案等に関する対応方針」を受けてのもの。小多機の事業所に所属しないケアマネジャーが作成したケアプランを算定するかどうか、来年度の介護報酬改定までに結論づけるとしていた。

なぜこうした課題が俎上に載せられたのだろうか。それは、訪問介護など他の介護サービスを利用していた要介護者が小多機に切り替えるケースに対応するためだ。他のサービスに切り替えることで、ケアマネジャーも変わらなければならないため、たとえ小多機の利用が望ましくても、サービスの切り替えを嫌がる利用者も当然出てくる。それまでのケアマネジャーと強固な信頼関係を築いていた場合はなおさらである。小多機の普及を妨げる要因ともなりかねないため、状況に応じて外部ケアマネジャーを活用するべきとの声があがっていたというわけだ。

 しかし、厚労省は他の施設・居住系サービスと同様に、小多機以外に利用するサービスが限定されていることなどを挙げ、あくまでそのサービスを担う事業所のケアマネジャーがケアプランを作成するべきと強調。サービスを切り替える場合はケアマネジャーも代わるという原理原則論を突きつけた形になった。

 小多機をめぐっては、訪問サービスを登録者以外にも提供できるようにするべきとの声もあがっていたが、通常の訪問介護と変わらなくなるとの理由で、これも退けた。併せて「訪問」のみを提供することも、訪問介護と同じだとして小多機としてのサービス提供としては認めない方針も明らかにしている。

 また、小多機事業者の代表者が受けなければならない認知症対応型サービス事業開設者研修については、交代時に限って、次回研修日程までに修了すれば良いこととした。認知症対応型サービス事業開設者研修は開催頻度が高くないこともあり、急な代表者変更に対応できず、スムーズな事業承継を妨げる可能性があったことに対する措置。この変更については、認知症対応型共同生活介護、看護小規模多機能型居宅介護についても同様に反映される。ただし、新規に事業を開始する場合は、従来通り研修の修了が代表者の要件となるため注意したい。

◆24時間訪問サービスに「生活機能向上連携加算」を導入
オペレーターの日中兼務を容認するなど基準緩和も

――厚生労働省老 社会保障審議会介護給付費分科会
11月1日の社会保障審議会介護給付費分科会では、24時間対応の定期巡回・随時対応型訪問介護看護(24時間訪問サービス)についても議論を展開。厚労省は、自立支援・重度化防止を促すため「生活機能向上連携加算」の導入を提案したほか、オペレーターの日中兼務を容認するなど基準を緩和する方針を明らかにした。

「生活機能向上連携加算」は訪問介護で採用されており、24時間訪問サービスでもほぼ同様の要件が設けられる見通し。自立支援・重度化防止を促す政府・厚労省の基本方針が反映された形だが、当該事業所がない市町村が6割以上もあるのが現状だけに、普及へ向けてテコ入れを図りたい意図も見える。少なくとも訪問介護と同様のサービスを提供できる環境を整えることで、新規参入者の呼び水とするとともに、既存事業者のモチベーションを高める効果も期待できる。

 そうした厚労省の姿勢は、オペレーターの日中兼務を容認したことにも表れている。現在、オペレーターと訪問介護員の兼務が認められているのは18時から翌8時までのみ。しかし、厚労省調べによれば(定期巡回・随時対応サービスを含む訪問サービスの提供状況に関する調査研究事業)、コール件数に時間帯の偏りはあまり見られず、1事業者あたり0.18回から0.37回の範囲内におさまっているため、兼務に問題がないと判断された。これは、24時間訪問サービスが普及していないことの表れでもあるが、人材の有効活用という視点でも現実的な対応だと言えよう。

 また、訪問介護のサービス提供責任者の任用要件から、介護職員初任者研修課程の修了者および旧ヘルパー2級の課程修了者が廃止される方向が固まったことで、オペレーターの資格要件も見直される可能性が出てきた。というのは、オペレーターの資格要件は看護師、介護福祉士、医師、保健師、准看護師、社会福祉士、介護支援専門員のいずれかだが、看護師または訪問看護を行う看護職員と連携が確保できているという前提で、「訪問介護のサービス提供責任者に3年以上従事した経験を有する者」も認められているからだ。初任者研修修了者が任用要件から外れるということは、介護福祉士が訪問介護のサービス提供責任者になる可能性が高いため、「3年以上」の経験を問う必要がなくなる。そのため、「1年以上」に変更とする方針も示されている。

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お電話
  • 【フリーダイヤル】0120-136-436
  • Tel.06-6222-0030
執務時間
  • 月曜日~金曜日
    午前9:00~午後5:30

お問い合わせメールフォーム

些細なことでも気兼ねなくお問い合わせください。「はい、日本クレアス税理士法人です」と電話を取ります。その後に「ホームページを見て」と言っていただけるとスムーズに対応できます。