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医療経営情報(2017年11月9日)

2017/11/28

◆「生活習慣病管理料」重症化予防で診療支援を促す仕組みへ見直し
療養計画書に「血圧値目標」と「特定健診受診勧奨」を追加方針

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会

11月1日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会総会が開かれ、生活習慣病の重症化予防を推進するため、「生活習慣病管理料」の見直しを検討することが明らかになった。具体的には、効果的かつ効率的な指導管理ができる仕組みにするため、療養計画書の内容を改訂。「血圧値の目標」や「特定健診・特定保健指導の受診勧奨」といった項目を記載欄に追加する方針だ。

 生活習慣病患者は、外来患者の3割強を占めており、その中でも高血圧性疾患がもっとも多い。状態に応じて薬物療法が選択されるが、降圧薬を使用しても血圧値をコントロールできている患者は約3~4割に過ぎないと言われている。また、3剤以上の降圧薬を内服している患者の13%が、血圧コントロールできていないとのデータもあり、薬物療法のみが効果的とは言えないのが現状だ。薬剤料が嵩んでいることが社会保障費の膨張を後押ししていることもあり、6月に閣議決定された「骨太の方針2017(経済財政運営と改革の基本方針2017)」でも、生活習慣病治療薬の重複投薬や多剤投与を問題視している。レセプトの分析結果によれば、降圧薬のうち、特定の薬剤を集中的に選択している医療機関があることが判明しているのも、今回槍玉に挙げられた理由のひとつだろう。

 そうした状況を踏まえ、投薬量を減らすとともに、重症化予防の取り組みを推進することで医療費を抑制したいのが政府および厚労省の考え。そこで目をつけたのが、生活習慣病管理料を算定するのに必要な療養計画書だ。療養計画書には、血糖値の目標を記載する欄があるものの、血圧値や特定健診・特定保健指導の受診勧奨の実施有無を記載する欄がない。高血圧のガイドラインは、血圧値によってリスクを分類しているため、療養計画書もそれに則った様式にしようというわけだ。

 特定健診・特定保健指導については、2008年に導入されてからいわゆる糖尿病予備群の人数が減少しており、一定の効果が認められている。しかし、特定健診の実施率は72.8%(「平成27年度 特定健診・特定保健指導の実施状況に関する調査分析」健康保険組合連合会調べ)だが、特定保健指導の実施率はわずか15.2%に過ぎない。つまり、糖尿病の疑いがある人に対する診療支援が行われていないということであり、重症化予防の取り組みが進んでいないことを意味する。療養計画書に特定保健指導の受診勧奨項目を加えることで“診療支援率”を上げ、結果として生活習慣病関連の医療費を抑制しようというわけだ。診療報酬の点数には関わらないものの、患者への受診勧奨を怠ると算定自体ができなくなるため、現場の医師にとっては一手間増える結果となりそうだ。

◆遠隔診療、事前の治療計画作成と患者同意の取得を要件とする方針
報酬上の評価は「再診料」を整理したうえで検討される見込み

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会

11月1日の中央社会保険医療協議会総会では、遠隔診療の取り扱いについても議論が展開された。基本的な考え方として「対面診療の補完」であるということが確認され、「一定の受診期間を設ける」「事前の治療計画作成および患者の同意取得」を要件とする方針が明らかとなった。具体的な報酬上の評価については、現状の「再診料」を整理・見直ししたうえで検討が進められることになる。

遠隔診療は、原則的に禁止とされ、離島やへき地の患者といったやむを得ない場合にのみ適用されてきた。2015年に事実上解禁されたものの、診療報酬上での評価が低いため、今ひとつ普及が進まなかった状況がある。しかし、医療費は40兆円を超過しており、社会保障費全体の伸びを抑制するのが重要課題となっているため、政府は外来診療の頻度を落とす効果が期待できる遠隔診療に活路を見出そうとしている。インターネットが社会のインフラとして定着しつつある現状も、それを後押ししており、6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、来年度の診療報酬改定で評価することを明記。評価の設計や要件をどのように定めるかが注目されていた。

今回の議論で注目したいのは、「再診料」を見直す方針が明らかになったことだ。現在、再診料は72点であり、処方せん料の68点を加えたとしても、遠隔診療の診療報酬は140点のみとなってしまう。遠隔診療は、生活習慣病の治療で積極的に活用されることが期待されているが、現状では特定疾患療養管理料の算定ができない。このことは、10月10日の規制改革推進会議医療・介護ワーキンググループでも指摘されているが、あくまで「再診料」を評価のベースとして考慮する姿勢を示したことで、急激な遠隔診療への移行を避けようという厚労省の姿勢が透けて見える。

一方で、睡眠時無呼吸症候群(SAS)での持続陽圧呼吸療法(CPAP療法)が、遠隔モニタリングと併用することで一定の治療効果を挙げたことを例示。現在、心臓ペースメーカー指導管理料にのみ認められている遠隔モニタリング加算の要件範囲を拡大し、CPAP療法を評価する意向を示した。これは「効果が期待できない治療」「定期的な対面診療をしないこと」は評価しない姿勢の表れともとれる。ただ、7月の厚労省通知では禁煙外来を遠隔のみでも認めており、今後細かい部分の議論を進めていくうえで方針のブレが出てくる可能性もありそうだ。

◆美容目的で使用されている「ヒルドイド」の処方制限を検討
保険適用から外す可能性も がん患者団体からは反対意見が

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会
11月1日の中央社会保険医療協議会総会では、保湿剤「ヒルドイド」についても議論を展開。厚労省は、美容目的で使用されることが多い現状を受けて、処方制限が検討すべきとの提案を行った。保険適用から外すべきとの意見も出ているが、がん患者団体からは必要な薬剤であるとして反対意見も出ている。

「ヒルドイド」は、マルホ株式会社の医療用医薬品。アトピー性皮膚炎などの皮膚乾燥症などに用いられるヘパリン類似物質であり、25gチューブ4本分程度が処方されることがほとんどだが、一度に10本以上処方されていることが増えており、中には50本以上処方されるケースもある。

これは、2014年頃から、「ヒルドイド」に美容効果があるとの情報がインターネットや雑誌などを中心に広まっているのが原因とされる。「シワを予防できる」「アンチエイジング効果がある」といった内容で、健康保険が適用されるため安価に入手できることから、処方を求める人が増えているようだ。しかし、そこに確たるエビデンスはなく、大量に使用すれば副作用のリスクもあるため、10月17日には日本皮膚科学会が適正処方に努めるよう、会員である医師に対して注意喚起を発した。製造販売元であるマルホ株式会社も、そうした誤情報を確認するたびに発行元および配信元に対して「ヒルドイドをあたかも化粧品等と同等のものであるかのように紹介することは控えていただくよう要請」してきたという。

 そうした状況を受けて、厚労省は今回の総会で「ヒルドイド」の処方制限を検討するべきと提案。一部の委員からは、他の外用薬や抗ヒスタミン薬と同時処方しない場合は保険適用から外すべきとの意見も出された。しかし、全身型アトピー性皮膚炎や魚鱗癬などで多量の保湿剤が必要な患者も存在し、日本皮膚科学会から注意喚起がなされたことから、いったんは様子見をするべきとの意見も出ており、結論は先送りされた。

 また、卵巣がん患者の団体からは、抗がん剤や放射線治療に伴う皮膚の乾燥や炎症、かゆみ、そして手のひらや足の裏に水ぶくれができるなどの「手足症候群」といった副作用の治療に使われているとして、単独処方の制限に反対。11月6日には厚労省に要望書を提出する予定としている。これらの反対意見を踏まえ、厚労省がどのような判断を下し、対処法を提案してくるのか注目される。

◆「特定集中治療室管理料」にアウトカム評価の導入を検討
生理学的指標に基づく重症度スコア「APACHEII」が候補に

――厚生労働省 入院医療等の調査・評価分科会
11月2日、厚生労働省の「入院医療等の調査・評価分科会」が開かれ、特定集中治療室の重症度および医療・看護必要度について議論を展開。厚労省は、「特定集中治療室管理料」アウトカム評価の導入を視野に入れ、生理学的指標に基づく項目の測定を検討するべきとした。具体的には、重症度スコアのひとつである「APACHEII」を候補に挙げている。

「APACHEII」は、医療機関のICU(集中治療室)で標準化死亡比のベンチマークとして活用されている指標。1981年にアメリカ・ヴァージニア大学医学部で開発された「APACHE」を1985年に改良されたもので、ICU入室24時間の呼吸や循環、血液検査値、意識レベルの評価指標であるGCS(グラスゴー・コーマ・スケール)など12の指標に年齢や慢性疾患のスコアを加えて、原因疾患の重み付けを行うことで予測死亡率を算定する。厚労省側は、統一した指標を導入することで、医療機関ごとの客観的な比較を可能にするのが狙いだ。

ただし、そもそも集中治療室での緊迫した診療において、重症度スコアを算出する余裕があるかどうかは疑問。実際、「APACHE」が開発されたアメリカでさえ、ICU患者の10~15%程度でしか使用されていないという調査結果もある。重症度スコアの点数に応じて治療内容を変更するケースも限られていると考えられており、これまでも、診療報酬改定の議論でたびたびアウトカム指標の導入が検討されながら見送られてきた。

 そうした経緯を承知のうえで、厚労省側が改めてアウトカム評価の導入を提案してきたのは、7日以内であれば1日13,650点、8日以上14日以内であれば1日12,126点という特定集中治療室管理料の単価の高さに起因していることは明らか。いったん重症度スコアの導入が要件となれば、次はどの程度のアウトカムが評価されるかが要件となってくるため、診療側から強い反発があることは容易に想像できるが、果たしてどこまで強い意思を持って導入を推し進めていくのか今後も注視していく必要があるだろう。

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