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医療経営情報(2017年12月8日号)

2018/1/15

◆入院基本料、全体的に再編・統合へ
看護配置よりも診療実績を重視する設計に

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、12月6日に開かれた中央社会保険医療協議会総会で、入院基本料を全体的に再編・統合する方針を明らかにした。診療実績を重視した設計にする。「7対1」「10対1」などと看護職員配置で切り分けられていた評価体系が、大幅に変更されることとなりそうだ。

 すでに厚労省は、11月24日の総会で「7対1」「10対1」を統合する方針を明らかにしている。7対1から10対1への移行を後押しして医療費を抑制するのが狙いだが、今から見れば前触れにすぎなかった。現在の体系を根本から解体し、患者に提供した医療分の報酬を支払うシンプルな形にすることを目指しているといえる。

 「3つの機能を軸とした新たな入院料に」と表現していることからも、その考えが透けて見える。3つの機能とは「長期療養」「長期療養~急性期医療」「急性期医療」を指している。「長期療養~急性期医療」は回復期医療を指しており、要するに7対1は10対1に、13対1は15対1に移行させることが目的だ。看護職員配置や平均在院日数などの施設基準を「基本部分」とし、「診療実績に応じた段階的な評価」を上乗せすることで評価の適正化を目指すとしているが、ゆくゆくはアウトカムなど変動的な要素で評価が左右されることになるのではないか。結果的に医療の質が問われることになるわけで、合理的な案ではある。

 とはいえ、7対1の届出を行っている医療機関にとっては経営的に大きな痛手となる可能性が高い。厚労省の試算では200床の病院で年間1億2,000万円の減収を推計している。経営への影響を最小限に抑えるため弾力的に移行したいとしているが、多少額を抑えられたとしても減収は免れないだろう。

 なお、今後医療機関の経営を左右しかねない「診療実績に応じた段階的な評価」の指標について、来年度の診療報酬改定においては、混乱を避けるため現在の医療区分や重症度、医療・看護必要度を適用する。改定でこれらの指標の見直しが生じた場合はそれが反映される。そのうえで、より適切な指標や評価手法の開発を行っていくという。現在の施設基準での届出があることを踏まえ、少なくとも来年度は現行のままとし、現在の施設基準で届出をしている医療機関は、新たな評価体系を選択できる経過措置も設ける方針だ。

◆DPC制度の見直し案 医療機関群は3郡を維持し名称変更へ
機能評価係数IIは6項目、重症度係数は廃止、激変緩和措置は続行

―厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会 診療報酬基本問題小委員会
 12月6日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会診療報酬基本問題小委員会が開かれ、DPC制度の見直し案が了承された。医療機関群は3郡を維持しつつ名称変更となり、機能評価係数IIは6項目に減少させる。激変緩和措置は2020年度にいったん廃止されるが、診療報酬改定のある年度に激変緩和係数を設定することとなった。

DPC制度とは、療資源が投入された傷病名や診療行為によって分けられる診断群分類(DPC、Diagnosis Procedure Combination)に基づいた入院1日当たりの包括払い制度で、2003年度から導入された。円滑に包括払いへの移行を進めるために調整係数が設定されてきたが、医療機関の機能を評価する係数に組み替えることが決まり、診療報酬改定ごとに「基礎係数」や「機能評価係数II」への置き換えを段階的に実施してきた。来年度の診療報酬改定で一連の置き換えが完了するため、今後スムーズにDPC制度を運用することを目指して見直しを検討してきていた。

 一連の検討の中で医療機関が関心を寄せていたのが、「医療機関群」のあり方だ。大学病院と一般病院では役割や機能が異なるため、同じ係数を適用すると適切な評価ができないことから「医療機関群」が設けられ、群によって係数が異なる設定になっている。今まで「I群」「II群」「III群」の3群制となっており、「I群」「II群」は要件を満たせばどちらも選べるようになっていた。同様に「III群」も選べるようにするべきとの意見があがっていたが、診療報酬改定の内容が確定する前に医療機関が選択することによる事務作業の煩雑さから、今回は見送られた。ただし、医療機関群の名称は「I群」「II群」「III群」を「大学病院本院群」「DPC特定病院群」「DPC標準病院群」に変更する。数字は序列を連想させるおそれがあるのと、特性を反映させるのが目的だ。III群を「DPC標準病院群」としたのは、最下層ではなく標準的な病院であることを強調したい狙いがある。

 来年度の診療報酬改定で調整係数からの置き換えが完了する機能評価係数IIは、今後DPC制度の根幹を成す係数となるため、どのような見直しになるかが注目を集めていた。まず焦点となっていたのが、評価項目の見直しだ。現在、8つの係数(保険診療係数、効率性係数、救急医療係数、カバー率係数、地域医療係数、複雑性係数、後発医薬品係数、重症度係数)で評価を行っているが、後発医薬品係数と重症度係数の2つを外し、残り6つの係数を軸とすることとなった。この6つは機能評価係数IIが導入された当初に設けられたものでもある。

 後発医薬品係数が外されたのは、多くの医療機関で係数が上限値となっているからだ。もともと、ジェネリック使用促進のために追加された係数でもあり、今後は機能評価係数Iで評価することとなった。重症度係数が外されたのは、実際の診療内容と評価が一致していないのが理由。他の評価で対応していることもあり、廃止されることとなった。なお、過去何度も検討が繰り返されてきた機能係数IIの評価重み付けについては、今回も見送られる。制度の複雑化を避けるのと、クリームスキミング(収益が期待できる診療のみ行うこと、いいとこ取り)の懸念があるのが理由だ。

◆経済財政諮問会議、民間議員が調剤技術料の大胆な削減を求める
厚労相は医科の報酬引き下げに否定的なニュアンスの発言

――経済財政諮問会議
12月1日、首相官邸で開かれた経済財政諮問会議で、来年度予算編成の基本方針や経済・財政一体改革について議論が展開された。社会保障については、民間議員が薬価制度の抜本改革を求めたほか、来年度の診療報酬改定で調剤技術料を大胆な削減するべきと提言した。加藤勝信厚労相も薬価制度改革の重要性に言及したが、医科のマイナス改定には否定的なニュアンスの発言をしている。

 この日出席した民間議員は伊藤元重氏(学習院大学国際社会科学部教授)、榊原定征氏(東レ相談役・日本経済団体連合会会長)、高橋進氏(日本総合研究所理事長)、新浪剛史氏(サントリーホールディングス代表取締役社長)の4名。薬価制度改革については、現在最大16年間となっている長期収載品を後発医薬品と同水準に引き下げるまでの期間の短縮や、費用対効果評価制度の本格導入などを求めた。診療報酬については、調剤技術料を槍玉に挙げ、ほとんどの薬局で院内処方よりも高く設定されていると指摘。その総額が1.8兆円にのぼることから、「門前薬局」「門内薬局」を中心に抜本的な見直しを図るべきとした。

 これらの提言を受けた加藤厚労相は、まず医療機関および介護事業者の経営状況が低下傾向であることに触れた。一般病院の損益率が全体でマイナス4.2%であることや、国公立病院を除く一般病院の収入が0.4%増えている一方で支出が0.8%増えていること、その中でも給与費が2.1%増となっているデータを提示。全産業の賃金の伸びに比べ、医療分野の賃金の伸びが鈍いことを指摘した。そのうえで、質が高く効率的な医療サービスの提供体制を整備するためには、経営実態を踏まえて診療報酬改定を行う必要があるとしている。直接的な表現ではないものの、マイナス改定に後ろ向きなニュアンスを匂わせており、薬価はともかく医科の引き下げには消極的な姿勢を示したとも受け取れる。

 そのほか、この日の会議では遠隔診療にも言及。初診や200床以上の病院で実施する場合に該当する診療報酬がないことを民間議員が指摘した。それを受けて加藤厚労相は、「適切かつ有効に活用して質の高い医療を実現していくということにしっかり取り組みたい」と返答。11月1日の中央社会保険医療協議会総会では、再診料を見直して具体的な評価内容を決める方針が明らかとなっており、近々具体的な議論が行われることになりそうだ。

◆地域歯科診療支援病院初診料の施設基準を緩和
周術期口腔ケアの評価を手厚く 骨髄移植も加算の対象に

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、12月6日の中央社会保険医療協議会総会で病院併設歯科の評価を見直す方針を明らかにした。周術期口腔ケアのニーズが増えていることを踏まえ、医科歯科連携を推進するのが目的。今まで「周術期口腔機能管理後手術加算」の対象となっていなかった骨髄移植についても、加算の対象とする。

 周術期とは、周手術期ともいわれ手術前後の期間を指す。特に胃・大腸がんの手術や化学療法において、口臭があるなど口腔衛生状態が悪くなるほか、口腔乾燥などの不快症状に関する訴えがあることが多く、医科から歯科に周術期の口腔機能管理が依頼されるケースが増えている。この際の診療報酬上の評価としては「歯科医療機関連携加算(100点)」や「周術期口腔機能管理後手術加算(200点)」がある。

 とりわけ「周術期口腔機能管理後手術加算」の算定回数は年々増加。厚労省の社会医療診療行為別統計(毎年6月審査分)によれば、2014年が2,696回だったのに対して2016年には5,559回となっている。しかし、「周術期口腔機能管理料」の対象になっているにも関わらず、骨髄移植は「周術期口腔機能管理後手術加算」の対象となっていないため、今回見直されることとなった。

 また、周術期の口腔ケアは病院併設歯科で行われることが多い。そのため、歯科を併設する病院が増えているが、常勤歯科医師数が1名にとどまっている医療機関が約4割を占めている。常勤歯科医師が2名以上配置されていないと「地域歯科診療支援病院初診料」の算定ができないため、病院での口腔機能管理を推進する観点から施設基準を緩和しようというわけだ。もちろん、周術期口腔機能管理の実績が考慮される形となる。歯科の併設を検討中の病院にとっては朗報と言えよう。

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