ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2017年12月8日)
◆居宅介護支援、「ターミナルケアマネジメント加算」を新設
末期がん患者のケアを評価 医療との連携強化が目的
――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
12月1日に開かれた社会保障審議会介護給付費分科会で、厚生労働省は居宅介護支援における末期がん患者のケアを手厚く評価するため、頻回モニタリングを実施した場合のインセンティブとして「ターミナルケアマネジメント加算」(仮称)を新設する方針を明らかにした。特定事業所加算(I~III)のいずれかを算定している事業所が対象。
特定事業所加算は、十分に人員配置をして支援困難なケースへの積極的な対応を実施している居宅支援事業所を評価するもの。医療との連携に取り組んでいる事業所をさらに評価することで、地域包括ケアシステムのベースを構築していくのが狙いだ。
「ターミナルケアマネジメント加算の対象利用者は、在宅で死亡した末期がん患者。在宅訪問後、24時間以内に在宅以外で死亡した場合も含める予定で、算定要件として厚労省が挙げたのは以下の3点。
(1)24時間連絡がとれる体制を確保し、かつ、必要に応じて、指定居宅介護支援を行うことができる体制を整備
(2)利用者又はその家族の同意を得た上で、死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上在宅を訪問し、主治の医師等の助言を得つつ、利用者の状態やサービス変更の必要性等の把握、利用者への支援を行うこと
(3) 訪問により把握した利用者の心身の状況等の情報を記録し、主治の医師等及びケアプランに位置付けた居宅サービス事業者へ提供
なお、この要件は訪問看護のターミナルケア加算とほぼ同じ。ターミナルケア加算は対象利用者の死亡月につき2,000単位が加算されるため、同様の単位数となるかどうかが注目される。
また厚労省は、2019年度から「ターミナルケアマネジメント加算」や「退院・退所加算」を一定回数以上算定した事業所を評価する意向も示した。2019年度からとしたのは、新設の加算の算定実績を確認する必要があるからとしている。ちなみに、「退院・退所加算」を請求している事業所は、昨年5月審査分で全体の21.5%にすぎない。今後はより一層在宅医療が推進されるため、在宅での末期がん患者のケアのニーズが増えることは明らかであり、居宅介護支援事業者は医療との連携に力を注ぐ必要があるだろう。
◆訪問介護の「集合住宅減算」、有料老人ホーム以外の建物も対象に
1カ月当たり50人以上の利用者がいる場合に適用
――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
厚生労働省は、12月6日の社会保障審議会介護給付費分科会で、訪問介護のいわゆる「集合住宅減算」(同一建物減算)の対象拡大案を提示した。有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)以外のアパートやマンションといった一般集合住宅も対象となる。適用されるのは1カ月当たり50人以上の利用者がいる場合で、10%の減算幅は変わらない。定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービス提供の600単位減算も、同様の要件変更を行うとしている。
訪問介護では、事業所と同一敷地内もしくは隣接する敷地内にある有料老人ホームやサ高住にサービスを提供する場合、10%減算となる。訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護でも同様の減算が適用されている。同一敷地内や隣接敷地内でなくとも、月20人以上の利用者がいる有料老人ホームやサ高住にサービス提供する場合はやはり10%減算となっている。
これは、有料老人ホームやサ高住の運営事業者が訪問介護事業も展開し、利益を得るため利用者の「囲い込み」をしている例が多いからだ。とりわけ、今年2月に大阪府が公表した報告書の存在は大きな影響を与えている。同府のサ高住や住宅型老人ホームで、個々のひと月の支給限度額に占める実際の介護費の割合がサ高住で平均86.0%、住宅型老人ホームで同90.7%となっており、要介護3以上の1人あたりの介護費はいずれも特養の入所者より高くなっていたのである。これを受けて、財務省が4月の審議会で適正化に向けた対応を厚労省に要求。厚労省は同月の介護給付費分科会で対策強化を検討する方針を示した。さらに、8月末にはサ高住事業者に警告を発する事務連絡を発出している。
そうした経緯もあり、当初厚労省は減算対象となる施設や利用者人数をより厳しくする方針だった。11月1日の分科会では、同一敷地内や隣接敷地内でない場合も、有料老人ホームなどで月10人以上、一般住宅で月20人以上とし、立地と利用者数の双方に該当する場合は10%以上減算とする案を提示している。しかし、急激な要件の厳格化によって経営悪化を懸念した関連団体などが猛反発。厚労省側が折れて譲歩した格好だ。当初案は客観的に見てもかなり厳しいものだったため、「囲い込み」を認めないという厚労省の姿勢を示すものだったと受け取れなくもない。今後サ高住の需要はさらに伸びていくと予想されており、訪問介護事業も展開するサ高住事業者はより増えていくと思われるため、次次期改定でさらに減算対象が拡大されることも想定しておくべきだろう。
◆外国人技能実習生に資格取得で在留資格を付与
政府方針 深刻な人手不足を受けての窮余策か
――経済財政諮問会議
12月1日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、来年度予算編成の基本方針や経済・財政一体改革について議論が展開された。介護分野については、加藤勝信厚労相が人手不足解消のために外国人介護人材の受け入れ環境を整備する方針を示した。介護福祉士の資格取得を支援するとともに、取得者には在留資格を付与する考えを明らかにしている。
介護職員の数自体は年々増えている。2000年の介護保険制度創設時は約55万人だったが、2015年度には約183万人となった。しかし、超高齢社会の到来により介護サービスの利用者も増加しているため、人手不足は深刻化。日本の第一次ベビーブーマーである団塊の世代が全員75歳以上となる2025年度には、約38万人が不足すると推計されている。
そのための対策として処遇改善を行っているほか、介護ロボットやICTの活用による効率化を図り、アクティブシニアと呼ばれる定年を迎えた中高年を介護業界に参入させるため新たな入門資格を創設することも決まっているが、38万人もの不足を補えるかは疑問だ。そこで、外国人人材の受け入れを促進するため昨年11月に外国人技能実習生の受け入れを決定。最長5年間日本で働くことができるようになった。
しかし、外国人が技能実習制度を活用して国家資格である介護福祉士の資格を取得しても、いわゆる実務経験ルート経由では在留資格を得ることができない。5年間で培った経験やスキルをより長く日本で活かしてもらうことで人手不足の解消につなげるため、法務省と連携し、資格取得者には在留資格を付与しようというわけだ。
すでに厚労省は、外国人技能実習生が就労してから6カ月を経過すれば介護報酬の配置基準に算定できるよう、9月の社会保障審議会介護給付費分科会で提案済み。来日後まもないタイミングから労働力として活用するための下地を整えてきている。そもそも技能実習制度は労働力確保のための制度ではないため強引な施策といえるが、なりふり構わず人材確保策を講じなければ介護保険制度が破綻しかねないという危機感を政府が抱いていることの表れではないか。
◆次期改定の審議報告案が取りまとめられる
医療との連携や自立支援を手厚く評価
――厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会
厚生労働省は、12月6日の社会保障審議会介護給付費分科会で、来年度の介護報酬改定に関する審議報告案を取りまとめ、報告した。全体的に医療との連携や自立支援への評価を手厚くした内容となっている。
主だったところを取り上げていくと、まず医療との連携については、ターミナルケアの実施数が多い訪問看護事業所や看護職員の配置が多いグループホーム、たん吸引などを実施する特定施設に対する評価を新設。特養では、配置医師が早朝・夜間またや深夜に入所者の診療を実施した場合評価する。特養内の看取りを進めるための評価も充実させる。
ケアマネ事業所については、主任ケアマネジャーを管理者要件とする(一定の経過措置期間を設ける)。また、「複数の事業所の紹介を求めることができる」と利用者に説明することを義務化。違反した場合は報酬が減額される。入退院時連携に関する評価も充実させ、医療との連携に積極的に取り組んだ事業所を対象とする加算を創設する。
グループホームは、看護職員の手厚い配置を評価。認知症高齢者への専門的なケアを評価する加算や、若年性認知症の受け入れを評価する加算は、ショートステイや小多機、看多機、特定施設などにも導入される。
創設される介護医療院は「療養機能強化型」と「転換老健」に相当する2つの類型が設けられるほか、併設の場合の人員基準緩和、転換した場合の加算など各種の転換支援・促進策を用意する。障害福祉の指定を受けた事業所は、訪問介護、通所介護、ショートステイの指定を受ける場合の基準の特例を設ける。また、療養通所介護事業所の定員数も引き上げる。
自立支援・重度化防止を促す見直しについては、リハビリテーションに医師が関与した場合の評価やアウトカム評価を拡充。訪問介護、通所介護、特養などにおいて、通所リハ事業所などのリハビリ専門職と連携した介護を実施した場合の評価も手厚くする。通所介護では、ADL維持や改善度合いが一定の水準を超えた場合の評価を行う。特養では褥瘡の発生予防や排泄に関する評価も新設される。また、身体的拘束の適正化を進めるため指針を整備し、対策検討委員会の定期的な開催が義務付けられるようになる。違反の場合は基本報酬が減額される。
そのほか、生活援助中心型の訪問介護で過剰な訪問回数にならないよう「全国平均利用回数+2標準偏差」を基準とし、それ以上となる場合には、ケアマネジャーは市町村にケアプランを届け出ることとする(10月から施行)。市町村は地域ケア会議を開催してケアプランを検証し、必要に応じてケアマネジャーにサービス内容の是正を促す。
訪問介護では集合住宅減算を有料老人ホームやサ高住以外の建物にも適用。訪問看護ステーションからのリハビリ専門職訪問については、看護職員との連携が確保できる仕組みを導入するとともに基本サービス費を見直す。通所介護は、基本報酬のサービス提供時間区分を2時間から1時間に見直し、収支差率の高い大規模な事業所は基本報酬を引き下げる。通所リハの3時間以上の基本報酬も見直される。
福祉用具貸与については、価格の上限設定を来年10月に実施。福祉用具専門相談員に対して、商品の特徴や貸与価格、その商品の全国平均貸与価格を説明することや複数の商品を提示することも義務付ける。
人材確保や生産性向上策については、まず生活援助の担い手を拡大するため、訪問介護の新研修を創設。人材確保の裾野を拡大する。特養では夜勤などの業務効率化を図るため、見守り機器を導入した場合に評価。定期巡回鋳型サービスのオペレーターの専任要件も緩和される。リハビリテーション会議にはテレビ電話での参加も認められるなど、ICTの活用を評価する施策が目立つ。