ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2018年3月2日号)
◆来年度創設される生活援助の新資格、研修は合計59時間
「アクティブ・シニア」や子育て終了後の女性がターゲット
――厚生労働省
厚生労働省は、来年度創設される生活援助の新資格について、研修のカリキュラムを明らかにした。研修の合計時間は合計59時間で、130時間の研修を受ける介護初任者研修の半分以下となる。2月19日からパブリックコメントの募集を開始しており、3月20日に締め切って同31日までに正式決定し、年度が変わる4月1日より適用する予定。
「生活援助従事者研修」(現時点で仮名称)と名付けられている新資格は、生活援助中心型の訪問介護を担う人材確保が目的。主なターゲットは「アクティブ・シニア」と呼ばれるリタイヤ後の中高年や子育て終了後の女性など。研修時間数を引き下げて“敷居”を低くし、人材の裾野を広げることで人手不足解消を目指す。1月18日に開催された全国厚生労働関係部局長会議では、都道府県に設置されている財政支援制度である地域医療介護総合確保基金(国が3分の2、都道府県が3分の1を負担)を、中高年齢層の新規参入促進のため優先配分する方針も明らかにされており、受講費用の補助がなされることも確定的だ。
カリキュラムの内容は全9科目。とりわけ24時間と全体の4割近い時間が多く割かれているのが「こころとからだのしくみと生活支援技術」だ。人体の構造や機能に関する知識の習得と、生活援助の提供方法の理解が目的で、移動・移乗に関連した実習も2時間実施。厚労省が実践的な知識と技術を最重視していることが窺える。次いで多いのが「老化と認知症の理解」で9時間。認知症患者は2025年に700万人を突破すると推計されているだけに、生活援助のシーンでもその対応が重要となることを踏まえている。
そのほかは「職務の理解」(2時間)、「介護における尊厳の保持・自立支援」(6時間)、「介護の基本」(4時間)、「介護・福祉サービスの理解と医療の連携」(3時間)、「介護におけるコミュニケーション技術」(6時間)、「障害の理解」(3時間)、「振り返り」(2時間)。これらを修了したのち、30分程度の筆記試験で修了評価を定め、資格を付与する流れとなっている。
◆政府、外国人材の受け入れ拡大を検討
「介護分野での外国人労働力は待ったなし」と菅官房長官
――経済財政諮問会議
2月20日に首相官邸で開催された経済財政諮問会議で、政府は外国人材の受け入れ拡大を検討する方針を明らかにした。安倍晋三首相は「専門的・技術的な外国人受け入れのあり方について早急に検討を進める」としており、制度改正も視野に入れて今年夏までに方向性を示す。
このタイミングで外国人材受け入れ拡大の検討を始めたのは、有効求人倍率の急速な増加が背景にある。2009年には0.40倍だったのが右肩上がりに増え続け、昨年12月には1.59倍と43年ぶりとなる高水準に達した。その煽りを受け、直近5年間で外国人労働者は60万人増と雇用者増加数の2割を占めるようになっている。しかし、その半分以上が就労目的の在留資格を持っておらず、留学生のアルバイトといった資格外活動や技能実習生が多い。
一方で、現在、人口減少社会に突入しているため、今後も人手不足が解消する見通しは立っていない。ICTやロボットを活用して生産性を向上させようとしているが、その対応が間に合っておらず、外国人材受け入れ拡大に乗り出さざるを得なくなったというわけだ。介護分野をめぐっては、菅義偉官房長官が「都市部では特別養護老人ホームが完成しても部屋の2割が空いている。介護サービスをする人手が不足しているからである」と指摘したうえで、「介護分野の外国人労働力は待ったなしの課題」と明言。茂木利光内閣府特命担当大臣も「介護は極めて重要な分野」と述べており、さらに外国人労働力を迎え入れるための施策を打つ可能性は高い。
これらの議論を受け、安倍首相は「移民政策をとる考えはない」「在留期間の上限を設定し、家族の帯同は基本的に認めないことが前提条件」としたうえで、関係大臣に早急な検討を指示。まずは受け入れを拡大できるよう法整備が行われることになりそうだ。
◆ACP、介護職員の認知度が著しく低いことが明らかに
「よく知っている」との回答はわずか7.6% 厚労省調査
――厚生労働省 人生の最終段階における医療の普及・啓発の在り方に関する検討会
厚生労働省は、2月23日に「平成29年度 人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」を公表。人生の最終段階で意思に沿った医療・療養を受けるために、家族や医療介護関係者としっかり話し合う「アドバンス・ケア・プラニング」(ACP)について、「よく知っている」と回答した介護職員はわずか7.6%にとどまった。「聞いたことはあるがよく知らない」でも40.0%で、「知らない」は51.7%という結果になった。
膨張し続ける社会保障費を抑制するため、政府は在宅医療を推進している。「最後は住み慣れた自宅で過ごしたい」という希望が多いこともあり、在宅でのターミナルケア(終末期の医療・看護)の必要性はより一層増してきている。そのため、終末期にどのようなケアを受けたいかを要介護者と介護者がすり合わせておくのは非常に重要だ。認知症患者が急増の一途をたどり、2025年には700万人を突破すると推計されていることも(同年の75歳以上人口は2,179万人)、その必要性の高さを表している。そうした状況を踏まえれば、ACPを実施することが重要な意味を持つことは明白だ。実際、同調査で賛否を問う設問では、回答した一般国民の64.9%が賛意を示している(ちなみに介護職員は80.1%、医師は75.8%、看護師は76.5%が賛成)。
また、自分で終末期の医療や看護について判断できなくなった場合に備えて作成しておく「事前指示書」については、一般国民の69.7%が賛意を示しているものの、実際に作成している人はわずか8.1%。介護職員はさらに少なく、2.7%しか作成していない。なお、「事前指示書に従って治療方針を決定することを法律で定めることへの賛否」という設問があることから、厚労省が事前指示書に法的な権限をもたせたい意向を持っていることが窺えるが、これには多くの一般国民が反対。「定めてほしい」が22.4%に対し、「定めなくてもよい」が35.1%と上回っている。これは、取りも直さず自分の意思、もしくは信頼できる人に意思決定してほしいとの思いの表れだろう。そう考えると、ケアマネジャーをはじめ介護職員の要介護状態の人や認知症患者に対する役割は非常に重いと言える。介助や生活全般の手助けなど、要介護者のQOLを高めることのみが介護の仕事と考えがちだが、ターミナルケアを含め、人生の最終段階で心身ともに支えとなることが、今後の介護職員にますます求められていくのではないか。
◆高齢社会対策大綱、5年ぶり見直し 各種数値目標も盛り込む
介護職員数は231万人、認知症サポーターは1200万人が目標
――???
政府は2月16日に「高齢社会対策大綱」(大綱)を閣議決定した。見直しが行われるのは5年ぶりで、2015年度に183.1万人だった介護職員数を2020年代初頭までに231万人に、2016年度末に880万人だった認知症サポーターは2020年度末までに1200万人にすることを数値目標に盛り込んでいる。
今回見直された大綱の特徴のひとつが、「高齢者」の定義を変更したことだ。これまでは65歳以上を高齢者と定義していたが、一律に定義することはもはや現実的ではないとしている。その理由として、体力的年齢が若くなっていることや、仕事および地域活動などで社会との関わりを持つことへの意欲の高さが見られることを挙げ、70歳以降でも「個々人の意欲・能力に応じた力を発揮できる時代が到来」しているとしている。「高齢者を支える」という発想そのものは残しつつも、意欲ある人たちの能力を発揮できる社会環境の整備が必要だとし、「エイジレス社会」を目指すとした。
そのうえで、地域包括ケアシステムの「深化・推進」を図り、介護職員の処遇改善を行って介護サービスの質向上を目指すスタンスを改めて明確化。利用者が適切に介護サービスを選択できるように、事業者の情報公開を進める一方で、介護職員の負担軽減のため介護現場のICT推進を図るとしている。また、「高齢者の尊厳の保持」のため、特別養護老人ホームの個室ユニット化推進を打ち出すとともに、介護従事者による高齢者虐待を防止する取り組みも進めていく。「介護離職ゼロ」についても明記。介護と仕事の両立を支援できる雇用・就業環境を整備して、2012年には10.1万人いた介護離職者を2020年代初頭までにゼロとする目標も掲げている。
認知症患者の急速な増加を受け、昨年7月に改定された「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」を踏まえた普及啓発や、認知症初期集中支援チームの設置、認知症疾患医療センターの整備といった施策も進める。また、2015年に24.4億円だった介護ロボット市場の拡大にも力を注ぎ、2020年に約500億円市場に育てたいとしている。