ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2018年3月30日号)
◆訪問介護の生活援助中心型サービス、利用回数の基準案を公表
1カ月27~43回、もっとも多いのは要介護3
――厚生労働省老健局
厚生労働省老健局は、3月19日に訪問介護の生活援助中心型サービスにおける利用回数の基準案を公表した。要介護度別に異なる回数となっており、もっとも多いのは要介護3の43回、もっとも少ないのは要介護1の27回。いずれも1カ月あたりの回数で、これを上回る場合はケアマネジャーが市区町村に内容を届けなければならない。4月17日までパブリックコメントを受け付けたのち、4月中に法令を改正し、今年10月1日から施行する。
現在の介護報酬体系は、1日に複数回の算定が可能。そのため、必要以上のサービス提供を行うことで報酬上乗せを狙うこともできる。「生活援助中心型」の利用状況を見ると、月31回以上の利用者が2万5,000人以上いることが明らかになっており、ケアプランとかけ離れた利用となっていることが指摘されてきた。
そこで、介護報酬改定がなされる来年度から、一定以上の訪問回数の場合は市区町村へケアプランを提出することが義務付けられた。その指標は、要介護度別に「全国平均利用回数+2標準偏差(2SD)」としており、その最大値となる月の回数を適用したのが今回の利用回数基準案となっている。改めて1カ月あたりの回数を要介護度別に示すと、要介護1は27回、要介護2は34回、要介護3は43回、要介護4は38回、要介護5は31回。
現状、生活援助中心型サービスの利用者は訪問介護の大半を占めている。2016年度の受給者数を見ると、「身体介護中心型」のみの受給者が約51万1,000人、「生活援助中心型」のみの受給者は約50万3,000人、「身体介護中心型」「生活援助中心型」の併用が約29万5,000人。「生活援助中心型」なしでは訪問介護事業が成り立たないことは明らかであり、事実上の回数制限がなされたことで、事業者への影響は多大なるものがあると予測される。近い将来、介護保険サービスから「生活援助中心型」を切り離す可能性もあり、訪問介護事業は大きな曲がり角を迎えたといえるだろう。
◆厚労省、2018年度介護報酬改定の「Q&A」を通知
Vol.1として142項目、同省ウェブサイトにもアップ
――厚生労働省老健局
厚生労働省老健局は、3月23日に「平成30年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」を各都道府県あてに通知。全82ページ、142項目となっており、厚労省のウェブサイトにもアップされている(「平成30年度介護報酬改定について」ページ内)。
このQ&Aは、介護報酬改定に伴う新たな運営基準や加算要件に関する解釈を示しており、いわゆるFAQとして活用できる「よくある質問集」になっている。たとえば加算の方法ならば、サービス提供状況に応じて表組みで算出方法を提示している箇所もあるほか、介護報酬改定による見直しに伴い、これまでにあったQ&Aを削除することも示されている。今回の改定でどのような変更が生じているのかを確認するには最適であり、介護サービス事業者の報酬請求事務に携わるならばひととおりチェックしておく必要があるだろう。
今回の通知は第1弾であり、同省は今後Vol.2、Vol.3と続けて出していく意向。とりわけ新たに設けられたルールなどは、実際に運用してから解釈に疑義が生じるものも出てくるため、随時確認する必要がある。なお、前回の介護報酬改定が行われた2015年度は、Q&Aの通知が、すでに年度替わりとなった4月1日までずれ込んだ。今回はそれよりも1週間早い通知となったが、年度替わりまで1週間しかないため余裕がないことは変わらず、介護サービス事業者のみならず都道府県、市区町村の介護保険担当にも多大な負担をかけていることは間違いない。介護報酬改定の議論が昨年末までずれ込んだため、遅れが出るのは致し方ない面もあるが、裏を返せば疑義解釈が必要なほどわかりにくい内容となっているのも確かだ。各方面に負担をかければ結果的にコスト増につながるわけで、もろもろの解決のためには、わかりやすい報酬体系の確立が求められているといえるのではないだろうか。
◆社会福祉士の養成カリキュラム見直しの方向性が固まる
実習・演習の充実がカギ 時間の増加が焦点になるか
――厚生労働省 社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会
厚生労働省は、3月19日に開かれた社会保障審議会福祉部会福祉人材確保専門委員会で、社会福祉士の養成カリキュラム見直しの方向性を明らかにした。重要視しているのは実習と演習で、時間の増加や実施施設・場所の選定がカギとなりそうだ。
社会福祉士は、1988年に創設された資格で、これまで30年間で約21万人が資格を取得している。現在の養成カリキュラムは2007年に見直され、2009年に施行。約10年間見直しが行われていない状況だ。しかし、この10年で福祉ニーズは大きく変わっており、高齢者支援や障害児・障害者支援、子ども・子育て支援、生活困窮者支援以外にも、ソーシャルワークの専門家として教育や司法などさまざまな分野で活躍が求められている。加えて、地域包括ケアシステムの構築を急いでいる事情もあり、住民の相談窓口として、果たすべき役割は今後さらに大きくなっていくことは間違いない。
そのために必要なのは「実践能力」であり、実習時間を増やすことが解決につながることは明白。2月15日に開かれた同委員会で、厚労省は現行の実習教育時間である180時間を大幅に増加させる考えを示したが、コストはもちろん、養成施設や学生に対する負担が増えることは確実であり、どのような落とし所を見出すのか厚労省の舵取りに注目が集まる。
また、実習施設の範囲をどこまで拡大するのかも焦点になってくるだろう。厚労省はNPO法人なども視野に入れ、幅広い実習施設を用意する意向を示しているが、たとえばICTを活用した「バーチャル実習」は取り入れやすいため、試験的な導入を行う可能性もあるのではないか。
3月15日には今年度の社会福祉士国家試験の結果が発表され、10年ぶりに合格率が30%以上となった。社会福祉士のニーズが増していることを反映した結果ともいえるが、現場で必要なのはやはり実践能力。質量ともに充実した実習や演習を新カリキュラムに盛り込めるかどうか、今後の同委員会の議論を引き続き注視していく必要があるだろう。
◆75歳以上の人口が初めて「高齢者」の半数以上に
総務省の人口推計 総人口は前年同月比23万人減
――総務省統計局
総務省統計局は、3月20日に今年3月1日現在の「人口推計」を発表。概算値ながら、75歳以上の後期高齢者の人口が、初めて65歳以上のいわゆる「高齢者」の半数以上を占めたことがわかった。総人口は1億2,625万人で、前年同月比23万人減と人口減少が進みながら超高齢社会への道を突き進んでいる現状が明らかとなっている。
65歳以上の人口は3,534万人で、人口全体の約28%。75歳以上の人口は1,770万人、85歳以上の人口は559万人となっている。男女比で見ると、65歳以上は男性1,535万人、女性1,999万人。75歳以上は男性693万人、女性1,077万人。85歳以上は男性173万人、女性387万人といずれも女性の割合が高い。
高齢者割合が高まるにつれ、介護ニーズも拡大の一途をたどっている。厚生労働省の「介護保険事業状況報告」(平成26年度)によれば、65~74歳で要介護認定を受けた人は全体の3.0%であるのに対し、75歳以上で要介護認定を受けた人は23.5%。当然、いわゆる「老老介護」が増えているほか、認知症患者が2025年に700万人を突破するとの推計もあり、幅広いフィールドでの介護の受け皿整備が急務となっている。
そうなると問題となってくるのが、介護給付費の捻出方法だ。2041年に介護保険給付費は30兆円超に、社会保障給付費全体では190兆円超にのぼると推計する民間研究機関もある。2016年度の社会保障給付費は約116兆円、介護給付費は9.6兆円であることを踏まえれば、国民全体にかなりの負担がかかってくることは確実であり、制度を維持できるか不安視せざるを得ない状況だ。必然的に、介護保険サービスから切り離される介護サービスも出てくることは明らかであり、介護サービス事業者にとっては、介護報酬のみに頼らない経営を今から検討していく必要があるのではないか。