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医療経営情報(2018年4月19日号)

2018/5/1

◆医学部の定員、削減する方針固まる 2022年度以降に
2028年度までに医師需給が均衡するとの推計を受けて

―厚生労働省 医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会
厚生労働省は、4月13日に開かれた「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会」で、医学部の定員を削減する方針を明らかにした。この日公表した医師需給推計を受けてのもの。2020年度および2021年度の定員は現状維持とする。

公表された医師需給推計では、2028年度に医師の需給が均衡するとの見通しが示された。2028年度は、2020年度の医学部入学者が臨床研修を修了するタイミング。つまり、現状の医学部定員数で事足りることを意味している。

ただし、この推計は「週60時間」に労働時間の上限を定めた場合。今回の推計では、「週55時間」「週80時間」の場合の推計も出しており、前者の場合は2033年度に需給が均衡するとしている。現状、医師全体の週当たり平均勤務時間は51時間42分となっているが、20代~50代の男性医師および20代の女性医師は平均を上回っていることから、厚労省は「週55時間」を上限と定めるのは現実的でないと判断し、「週60時間」が妥当としている模様だ。ちなみに、「週80時間」の場合に需給が均衡するのは今年度。もっとも週当たりきんむじかんの長い20代男性医師でも平均64時間3分であるため、ここに上限を定めることは現実に即していない。

医師の供給数に直結する医学部定員は、1960年度には2,840人だったのがこの50年で急増。1997年には定員数の抑制が閣議決定され、2007年までは7,625人となっていた。しかし、地方の医師不足や医師偏在化が問題となったため、2007年に「緊急医師確保対策」が制定され、各都道府県で5人ずつ定員を増やした。さらに2009年以降は、毎年臨時の定員増が図られ、新規の医学系大学が開設されたこともあり、2017年度には9,420人まで増えている(2018年度は1人減の9,419人)。

今回の方針決定により、少なくとも2021年度までは定員が維持されることとなったため、都道府県と文部科学省が各大学と定員数を調整することになる。ただし、医師不足地域では地域枠が設定されるため、定員増となる大学が少なからず出てくるものとみられる。必然的に、大都市圏の大学はその影響を受けて定員減を要請されるところも出てくるであろうことから、2022年度以降の情勢も見据えたうえで、水面下のせめぎ合いが繰り広げられることとなりそうだ。

◆「小児がん拠点病院」の指定要件見直しへ
連携病院の指定やAYA世代患者の相談支援体制整備など

―厚生労働省 小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会
厚生労働省は、4月18日に開かれた「小児・AYA世代のがん医療・支援のあり方に関する検討会」で「小児がん拠点病院」の指定要件見直し案を提示し、了承された。新設する「小児がん連携病院(仮称)」の指定や、AYA世代のがん患者への相談支援体制の整備などが求められるようになる。

「小児がん拠点病院」は、地域の中心として小児がんの治療や社会的な支援を担う医療機関。2013年に全国15カ所で指定されている、翌2014年には、2カ所の中央機関を整備し、診療の集約化を進めるとともに、小児がん拠点病院を中心とした小児がん診療ネットワークの構築を進めてきた。しかし、小児がんやAYA世代(思春期から若年層。同検討会では16~39歳と定義)のがんは、種類が多岐にわたるほか、成長発達の過程で発症することから、成人のがんとは異なる対策が求められている。そのため、個々のがんに対応できる支援体制や診療体制の整備の必要性が指摘されてきた。

また、小児がん拠点病院での小児がん患者のカバー率は約4割程度とされている。そのため、どこでも適切な治療がうけられるがん種や、必ずしも高度な専門性を必要としない病態に対しては、長期フォローアップの必要性もあることから、小児がん拠点病院以外に診療の受け皿を設けるべきであることは明らかだ。逆に、医療の効率化の面から考えても、高度な専門性を要する病態は小児がん拠点病院に集約させるべきであり、「小児がん連携病院」を指定する案が持ち上がっている。地域のがん診療連携拠点病院との連携も考慮し、「小児がん連携病院」は小児がん拠点病院が指定することとしている。

AYA世代に関しては、小児と成人の間にあることから、どこの医療機関で対応するべきなのか一定の基準がないのが現状。小児がん拠点病院のみでは診療が困難であるケースもあるため、がん診療連携拠点病院との連携が必要となる。また、情報提供や相談支援窓口へのアクセスが困難との指摘があるため、小児がん拠点病院の指定要件に相談支援体制の整備を盛り込む方針だ。

この日検討会で了承された見直し案をもとに、6月には小児がん拠点病院の整備指針を取りまとめる。厚労省は、来年3月末までには新たに小児がん拠点病院を指定し直す予定のため、2019年度明け早々にも連携病院が決定する見込みだ。

◆厚労省「医療費に応じて給付率を調整」に否定的な考えを示す
ただし75歳以上の自己負担割合は2割への引き上げを検討

――厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会
 厚生労働省は、4月19日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、「医療費の動向に応じて給付率を調整する」ことには否定的な考えを示した。財務省財政制度等審議会の提言に反発した形だ。ただし、75歳以上の自己負担割合に関しては、現状の1割から2割への引き上げを検討するべきとの考えをほのめかしている。

 財政制度等審議会が提言しているのは、一定の算式を設け、医療費の伸びに応じて定期的に患者負担を引き上げる考え方だ。一見、合理的に見える考えだが、厚労省は「患者の受診行動や家計など、医療および生活の実態が考慮されない」恐れがあるため、患者負担が過大になりかねないと指摘。また、インフルエンザの流行や新薬の導入といった一時的な要因や、景気などの要因によって頻繁に変動することは「将来の医療に対する国民の安心を損ねる」としている。そもそも、公的医療保険制度の趣旨は「国民が安心して必要な医療を受けられることを保障する」ことにあるとして、慎重に検討するべきとした。そのうえで、医療費の伸びは社会経済情勢を踏まえながら「診療報酬」「保険料」「公費」「患者負担」について総合的かつ不断の見直しをすることで対応することが適切なことだと釘を刺している。

 75歳以上の自己負担割合については、これまで見直しが行われていなかったことから、社会保障改革の一環として手をつけざるを得ない部分となりつつある。保険者側の委員は、75歳以上は医療費に比べて自己負担割合が低いと主張。これまで70~74歳の前期高齢者の自己負担割合は段階的に1割から2割へと引き上げられており、同様の措置を取りたい意向だ。年齢ではなく負担能力に応じた負担割合にするべきとの意見もあがっているが、引き上げやむなしの方向で検討が進められる可能性が高く、どこに着地点を求めるかが焦点となってくるだろう。

 また、財政制度等審議会では「地域別の診療報酬設定」との提言もなされているが、この件に関しては都道府県代表の委員から慎重論が相次いで出されたほか、地域別に設定することの効果にも疑問の声があがっており、今後、具体的に実施する方向で議論が進められる可能性は低そうだ。

◆医療・介護ビッグデータを連結・分析するため有識者会議を設置
データの利用目的や対象範囲、セキュリティ確保などの課題を抽出

――厚生労働省 社会保障審議会医療保険部会
 厚生労働省は、4月19日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、健康・医療・介護のビッグデータを連結・分析する「保険医療データプラットフォーム」の法的・技術的な論点について整理するため、有識者会議を設置する方針を明らかにした。

 有識者会議は、NDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)および介護DBの双方に精通したメンバーで構成する。現時点で決まっているのは、医療保険部会の部会長を務める遠藤久夫氏(国立社会保障・人口問題研究所所長)や棟重卓三氏(健康保険組合連合会理事)、山本 隆一氏(一般財団法人医療情報システム開発センター理事長)など8名で、日本医師会にも参画を要請しているという。5月には第1回会合を開き、7月には中間とりまとめを実施して医療保険部会に報告。秋頃には報告書を取りまとめる方針だ。

NDBおよび介護DBをめぐっては、2016年の経済諮問会議で安倍晋三首相から「医療や介護のレセプトデータを全国的に連結し、社会保障給付費を効率化していく」と指示が出され、昨年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で今年度から詳細なシステム設計に着手し、2020年度から本格稼働していく方針が示されている。医療機関や保険者である自治体、研究者や民間が幅広く活用できるようにするとともに、国民の健康管理および自立支援を促す「科学的な介護」の実現を目指しているため、新たに設置される有識者会議の果たすべき役割は大きい。

 現段階で検討事項としてあがっているのは、「個人情報保護法制等との関係」「データの収集・利用目的、対象範囲」「第三者提供」「費用負担」「実施体制」「技術面の課題(セキュリティの確保等を含む)」の6点。とりわけ、対象範囲をどこまでに設定するのか、費用負担をどのように考えるのかが焦点となりそうだ。

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