FAXレポート

ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2018年5月3日号)

医療経営情報(2018年5月3日号)

2018/5/18

◆「身元保証人がいなくても入院受け入れを」厚労省要請
入院拒否は医師法違反との認識示す 新たな未収金対策が必要か

―厚生労働省医政局
厚生労働省医政局は、4月27日に「身元保証人等がいないことのみを理由に医療機関において入院を拒否することについて」と題した通知を発出。身元保証人の有無にかかわらず入院を受け入れるよう、各都道府県から医療機関に指導することを要請した。

通知では、医師法第19条第1項「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」を提示。この「正当な事由」は医師が不在、または病気などで診療が不可能な場合に限られると定義した。そのうえで、入院が必要な状態である場合、受け入れなければ医師法に抵触すると明記。事実上、入院時に身元保証人の提示を求めることができなくなった。

現在、多くの医療機関で入院時に身元保証人の提示を求めているのが実情だ。昨年、第二東京弁護士会が実施した調査によれば、東京都内の141の医療機関のうち、92.9%にあたる131の医療機関が身元保証人(保証人、連帯保証人、身元引受人などの名称を含む)を求めている。その理由としてもっとも多かったのが「支払いの保証・担保」。主に未収金の防止策となっていることがわかる(理由として次に多かったのは「遺体引取(死後事務)」、次いで「医療同意」となっている)。

とりわけ、未収金の問題は医療機関にとって深刻だ。データは古いが、四病院団体協議会が2005年に実施した調査によれば、同協議会に加盟する約5,500病院の総計で年間約370億円の未収金が発生している。また、厚生労働省が2007年に実施したアンケート調査では、2007年12月の1カ月で、未収金が10億円以上にのぼる。これはアンケートに回答した706病院の合計額のため、1施設あたりの未収金は約150万円。診療報酬が変わっているため、現在との単純比較はできないが、大きな損失額となっていることは間違いない。身元保証人がいない場合に入院を拒否する医療機関が増えてきたのは、こうした背景があってのことだ。

独居高齢者が増えてきたこともあり、身元保証人になってくれる家族や親族がいないケースは決して少なくない。身元保証サービスを行っている団体は現在全国に約100程度あるとみられているが、2016年には公益財団法人「日本ライフ協会」が預託金の一部を不正流用して破綻するなどの問題も起きている。厚労省が今回発出した通知の内容は、患者にとっては福音となるだろうが、医療機関にとっては新たに難題を突きつけられたといえよう。

◆オンライン診療、積極的に診療報酬で評価を 規制改革WG
初診も対象とするほか「6カ月以上の対面診療」の見直しも求める

―規制改革推進会議 医療・介護ワーキング・グループ
規制改革推進会議の医療・介護ワーキング・グループは、5月8日に「オンライン医療の推進に向けて~技術革新を国民が最大限に享受するために~」と題した意見書を取りまとめ、公表した。オンライン診療を積極的に診療報酬で評価することを求めており、具体的には、初診も対象とすることや「初診から6カ月以上の毎月対面診療」の要件を見直すことなどを盛り込んでいる。

同ワーキング・グループは、「一気通貫のオンライン医療」を実現するための課題点や阻害点について議論を進めてきた。「一気通貫のオンライン医療」とは、4G・5Gで高速・大量な情報通信が可能になった通信システムや人工知能(AI)技術を活用することで、患者が在宅のままオンラインで受診から服薬指導、薬の授受まで可能になる状況のこと。服薬指導や薬の授受は現在、オンラインで行うことができないため、4月20日の規制改革推進会議で制度の見直しについての提言を発表したばかりだ。

一方、オンライン診療については、4月の診療報酬改定で関係科目が新設され、表面上は大々的に解禁されたように見える。しかし、保険収載の対象範囲はかなり限定されているのが実情。とりわけネックとなっているのが「初診から6月の間は毎月同一の医師により対面診療を行っている場合に限る」という要件だ。平たくいえば、オンライン診療を受けるには半年間毎月医療機関に通う必要があるため、通院が困難な状況にあったり、近隣に医療機関がなかったりする患者にとっては利便性向上につながっていない。同ワーキング・グループが、初診から診療報酬の対象とするほか、要件の見直しを求めている理由はここにある。

また、通信システムやAI技術は日進月歩の勢いで進化を遂げていることから、同ワーキング・グループは「対面診療でできなかったことを可能にした」と評価できる場合は診療報酬上の扱いを見直すべきだとした。併せて、技術進歩の速さを鑑みたうえで、2年に1度の改定機会を待たず、エビデンスが示され次第実行するべきだとしている。これらの提言を受け、厚生労働省がどのような反応を示すのか。今後開催される関連の審議会や検討会の行方を見守りたい。

◆臨床実習で医学生が実施できる医行為、27年ぶりに見直し
参加型の推進を後押し 「CBT合格者のみ」など条件も設定

――厚生労働省
 厚生労働省は、臨床実習で医学生が実施できる医行為について見直す方針を固めた。見直しは27年ぶりとなる。国際的にスタンダードとなりつつある診療参加型臨床実習の推進を後押しするもので、安全性を確保するため「共用試験(CBT)の合格者に限る」といった医行為実施の条件も設定する。5月8日から5月22日までパブリックコメントを募集しており、内容が確定次第関係機関への周知を行う。
 
 現在の臨床実習は、1991年に当時の厚生省が策定した報告書「前川リポート」に基づいて行われている。しかし、当時から四半世紀以上が経過し、医療技術の進化に伴って医学生が修得しなければならない医行為は多様化。また、厚労省の調査によれば「自信を持って行える」と医学生が回答した医行為は、もっとも多い「皮膚洗浄」でも35.9%、次いで「バイタルサインチェック」の25.6%、「心電図検査」の24.9%となっており、医師として必要な技能が修得できているとは到底いえない状況となっている。

 そこで、今回の見直しでは医行為を「必須項目」(45項目)と「推奨項目」(26項目)に整理。臨床実習を終えた医学生が何をできるようになるかを明確化した。「必須項目」として挙げられているのは、診療録作成やバイタルサインチェック、直腸診察、前立腺触診、皮膚消毒、尿道カテーテル挿入・抜去、皮膚縫合など。妊婦の診察や分娩介助、ギブス巻き、創傷処置、熱唱処置、血液型判定、気管挿管などは「推奨項目」となっている。

 安全性を確保するための条件としては、共用試験(CBT)合格者以外に「指導医のきめ細やかな指導・監視」「患者の同意」などが盛り込まれた。なお、CBTについては、統一試験であることをより明確化するため、国が合格基準を設定するべきだと言及。今後、公的な試験として位置づけていきたい意向を示していることにも注目したい。

◆歯科医院の倒産、ほぼ倍増 2017年度
「販売不振」が主原因 小規模医院が全体の9割

――東京商工リサーチ
 信用調査大手の東京商工リサーチは、5月9日に「2017年度『歯科医院』の倒産状況」を発表。昨年度の倒産件数は20件で、2016年度の11件と比べてほぼ2倍増となった。倒産件数が20件に到達したのは1994年度以来、23年ぶり。調査結果には反映されていないが、今年4月もすでに2件が倒産しており、今後増加をたどる可能性が高いとしている。

 倒産の原因としてもっとも多かったのは「販売不振」で、全体の6割を占めている。次いで多かったのは、徐々に経営状況が悪化する「既往のシワ寄せ」となっている。従業員数はほとんどが5人未満で、10人以上20人未満が1件、20人以上50人未満が1件。これらのデータから見えてくるのは、小規模医院が激化する競争に敗れ、患者数の減少や診療高の落ち込みによって経営難に陥っていく構図だ。

歯科医院は、リースなどを利用することで、比較的自己資金が少なくても開業することが可能だ。厚生労働省が今年3月に発表した「医療施設動態調査(平成30年1月末概数)」によれば、歯科医院の施設数は6万8,791カ所。10年前の2008年1月末に比べると約1000カ所も増えており、単純計算で1年に約100の医院が新たに生まれていることとなる。そのわりには倒産件数が少ないという見方も可能だが、人口減少社会を迎えている現在、患者の絶対数が減っていくのは確定的なため、「パイの奪い合い」がより激化していくことは間違いない。

東京商工リサーチは、「歯科医院間の患者争奪戦は激しく、保険診療だけの経営維持は難しくなっている」として、インプラントやホワイトニング、美容歯科といった独自戦略による集客競争が繰り広げられていると分析。さらに、歯科衛生士や事務スタッフといった人手を確保するうえでコストが上昇していることも大きな課題だとしている。詰め物や金属といった歯材コストも上がっているため、歯科医院の経営は今後よりタイトになっていくのではないだろうか。

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お問い合わせ・ご相談はこちら

お電話
  • 【フリーダイヤル】0120-136-436
  • Tel.06-6222-0030
執務時間
  • 月曜日~金曜日
    午前9:00~午後5:30

お問い合わせメールフォーム

些細なことでも気兼ねなくお問い合わせください。「はい、日本クレアス税理士法人です」と電話を取ります。その後に「ホームページを見て」と言っていただけるとスムーズに対応できます。