ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2018年5月10日号)
◆厚労省、オンライン服薬指導は条件付きの実施としたい意向
「医療資源の乏しい地域」に限定 改めて「原則対面」との見解示す
―規制改革推進会議 医療・介護ワーキング・グループ
厚生労働省は、5月15日に開催された規制改革推進会議医療・介護ワーキング・グループの会合で、オンライン服薬指導は条件付きの実施としたい意向を明らかにした。対象は「必要性に迫られた医療資源の乏しい地域に居住する患者」に限定したうえで、制度の見直しに着手する。そのうえで、改めて服薬指導は「対面が原則」との見解も示した。
これは、規制改革推進会議が4月20日に発表した提言に対する回答といえるものだ。規制改革推進会議は、「一気通貫の在宅医療」の実現を今期の最重要課題と位置づけており、提言では「オンライン服薬指導」および「処方せんの完全電子化」を早期実現するための制度見直しを迫った。
今年度の診療報酬改定では、「オンライン診療料」「オンライン医学管理料」などが新設されるなど、オンライン診療が初めて保険適用された。しかし、服薬指導は依然として対面で行う必要がある。また、調剤も事実上処方せんの原本がなければできないため、「一気通貫の在宅医療」は制度上成立しない状況となっており、規制改革推進会議の提言を厚労省がどのように受け止めるかが注目されていた。
また、規制改革推進会議は、制度見直しに際して「厚生労働省が、実証実験が必要不可欠であるという場合には、実証を要する具体的な懸念点と、実証を通じて評価する基準等を明らかにするべき」と提言に盛り込んでいた。これについては、「事業開始に向け複数の地方公共団体と調整中」と回答したうえで、実証の実施基準は2016年国家戦略特区法の施行規則および施行通知で規定済みであるとした。さらに、実証が始まっていない現段階で「画一的な評価基準を作成することは過剰な基準を設定することになりかねない」とし、不適当だと断じている。
服薬指導が対面を原則としているのは、医薬品の副作用などの情報提供や多剤併用の防止、残薬管理をするためというのが理由。厚労省は、地域包括ケアシステムの中で「かかりつけ薬剤師・薬局が医療・介護の一翼を担う」ため服薬指導の強化が必要であり、薬剤師は積極的に患者の居宅を訪問して副作用や服薬状況を把握することが重要だという見解も示しており、オンライン服薬指導の全面解禁への道のりは未だ険しいと言わざるを得ないだろう。
◆医療用医薬品の広告活動、不適切事例が5カ月でのべ67件
MRによる口頭説明にもメス 事実誤認表現が多数
―厚生労働省 医薬・生活衛生局
厚生労働省は、5月11日に「平成29年度 医療用医薬品の広告活動監視モニター事業」の報告書を公表した。それによれば、昨年度の5カ月間で「違反が疑われる」広告活動はのべ67件だった。ただちに取り締まりを実施しなければならないほど悪質性の高いものや、重大な健康被害は確認できていないものの、製薬企業が誇大な効果などを謳って営業活動している実態が浮き彫りとなった格好だ。
調査は、全国からモニター医療機関を選定するところからスタート。依頼された医療機関は、製薬会社のMR(医薬情報担当者)やMLS(メディカル・サイエンス・リエゾン。高度な学術知識を持ち医療機関に情報提供する役割)から受けた広告・宣伝活動の中から、問題のありそうな事例を報告する仕組み。報告された案件については行政指導を行うほか、業界団体へ自主規制も促す。
メーカー名は伏せられたが、報告書では便秘関連治療薬や抗がん剤、抗菌薬、局所麻酔薬、抗リウマチ薬、潰瘍性大腸炎治療薬などが事例として紹介されている。特徴的なのは、MR(医薬情報担当者)などが残した資料だけでなく、「口頭説明」も遡上に載せられている点だ。医療機関に情報が提供された方法としてもっとも多かったのは「企業の製品説明会」で34.6%だったが、「製薬企業担当者(口頭説明)」は次いで多い30.8%となっている。記録に残らない口頭説明の場合、口を滑らせて少々大げさにアピールするケースがあることは容易に想像できるが、今回の調査はそこにもメスを入れているわけで、相当厳しく取り組んでいることがわかる。
たとえば、局所麻酔薬は「エビデンスのない説明を行った事例」として紹介されており、「他剤と比べて痛みが少ないと評判」「肌のかぶれも他の製剤よりも少ないと言われている」といった具体的な文言を示している。そのうえで「明確なデータを示すことなく伝聞調で他社製品を誹謗し、優位性を主張」と断じた。また、全体の半数以上は「事実誤認の恐れがある」表現を用いたり、データを加工したりしていることが明らかになっている。
このように厳しい調査が行われたのは、このモニター調査がいわゆる「ディオバン事件」に端を発しているからにほかならない。「ディオバン事件」とは、製薬大手のノバルティスが高血圧治療薬のディオバンに関する研究論文データの改ざんに関与した事件のこと。不正発覚までディオバンは国内で年間1,000億円以上を売り上げており、国民と患者に年間200億円以上の損害を生じさせたという試算もなされている。この事件をきっかけに広告を監視する制度が新設され、今回の調査に適用された次第だ。今回の調査結果を受け、厚労省は夏までに医薬品販売促進に関するガイドライン策定を予定。今後、医療機関向けの製薬企業の広告活動はより厳しく規制される方向に進むことは間違いない。
◆臨地域医療構想調整会議、都道府県単位で設置へ
議論活性化のため、研修会の開催や「アドバイザー」の育成も
――地域医療構想に関するワーキンググループ
厚生労働省は、5月16日に開かれた「地域医療構想に関するワーキンググループ」で、地域医療構想調整会議を都道府県単位で設置したい意向を示した。各会議での議論を活性化させるため、「都道府県主催研修会」の開催を支援するほか、地元に密着した「地域医療構想アドバイザー」を育成する考えも明らかにしている。
地域医療構想調整会議は、団塊の世代が全員後期高齢者になる2025年を見据え、増していく医療ニーズに対応するため病院・病床の機能分化や連携推進に向けた議論を進めている。しかし、厚労省が年4回の開催を要請しているのに対し、実際は平均して3回程度しか開催できておらず、県によっては議論が手付かずな分野を残しているところもある。そこで、現在は主に2次医療圏をベースに設置されているのを、各都道府県単位にしようというわけだ。それによって、各都道府県の方針との齟齬もなくなり、議論の展開もスムーズとなる。
都道府県主催の研修会を開催するのは、好事例の横展開が狙い。厚労省が全体を俯瞰する役割を担い、講師派遣も含めて支援を行っていく。そして、各都道府県の議論を深めるための施策が「地域医療構想アドバイザー」の育成だ。これまで、地域医療構想調整会議には病院や関係団体からの参加は多かったものの、学識経験者である大学関係者の参加者は全体のわずか9%に過ぎなかった。医療政策や病院経営に関する知見を持ち、各種統計や病床機能報告などに基づいたアセスメントができる人材を据えて会議で助言をしてもらうことで、議論の活性化を促していく。
なお、アドバイザーの「育成」と銘打っているのは、現時点で適切な人材が不足していることを物語っている。とりわけ、地域医療構想や病床機能報告について理解している大学関係者は少ないとされているため、厚労省は研修やデータ提供といった支援を行うことで、各地域に優秀なアドバイザーを選定する仕組みを根付かせたい考えだ(地域医療構想アドバイザーの活動経費は、地域医療介護総合確保基金を活用する予定)。