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医療経営情報(2018年5月24日号)

2018/6/6

◆2040年度の社会保障費、今年度の約6割増となる約190兆円に
医療費は約68.5兆円 介護費は約25.8兆円 厚労省推計

―経済財政諮問会議
厚生労働省は、5月21日に開かれた経済財政諮問会議で2040年度の社会保障給付費が約190兆円になるとの推計を発表した。今年度の約6割増となる数字で、医療費は約68.5兆円、介護費は約25.8兆円と推計した。

これまで、社会保障給付費の推計は2025年度を対象としていた。2025年度は、いわゆる「団塊の世代」が全員75歳以上となるタイミングだったが、今回はその子ども世代にあたる「団塊ジュニア」が全員65歳以上となる2040年度までの推計を初めて打ち出した。2040年度には65歳以上人口が約4,000万人とピークに達する見通しで、全人口の3分の1を占めるとされる。

会議に出席した大沼みずほ厚生労働大臣政務官は、「これまで進めてきた持続可能性の確保に加え、健康寿命の延伸や医療・介護サービスの生産性向上を含めた総合的な改革を進めていく必要がある」と述べ、麻生太郎財務大臣は「給付と負担の見直しは避けられない」との見方を示した。それらを受けて、民間議員である榊原定征経団連会長は、「今回の試算は現在の低負担・中福祉の社会保障制度を中負担・中福祉に変えていく必要があることを示唆している」とし、来年10月の消費税率10%への引き上げを必ず実施するべきだとした。

ただし、今回の推計は過去の実績を当てはめるなど、最大値を導き出す計算式になっているとの指摘もあり、シビアな見通しとは言い切れない。社会保障給付費対GDP比は1.1倍であることを踏まえれば、膨張し続けて制度の持続可能性が保てないレベルとは言い難く、医療費・介護費の自己負担額引き上げや消費税率引き上げのエクスキューズのための試算とも受け取れよう。とはいえ、高齢者人口が増加して生産年齢人口が減少することを踏まえれば、負担額が増すことは確実。その意味では、麻生大臣の「見直しは避けられない」とのコメントが正鵠を射ているとも言えそうだ。

◆医療福祉分野の就業者数、2040年度には1,065万人必要 厚労省推計
健康寿命の延伸、医療介護の生産性向上で134万人分の効率化を期待

―経済財政諮問会議
厚生労働省は、5月21日に開かれた経済財政諮問会議で医療福祉分野のマンパワーシミュレーションを公開。2040年度に必要な医療福祉分野の就業者数は1,065万人と推計するとともに、健康寿命の延伸や医療・介護の生産性を向上させることで134万人分の効率化が見込めるとした。「負担および給付の見直し」だけではない新たな社会保障制度のあり方を打ち出した格好だ。

厚労省のシミュレーションは「医療・介護需要が一定程度低下した場合」と「医療・介護等における生産性が向上した場合」の2パターンを想定したもの。前者は、「医療の受療率が2.5歳分程度低下」「介護の認定率が1歳分程度低下」した場合で、いわゆる「団塊ジュニア」世代が65歳以上となる2040年度までに就業者数を81万人減らすことができると試算。後者はICT活用などによって「医療・介護の生産性が各5%程度向上」した場合に、同分野の就業者数を53万人減らすことができるとしている。

また、今後生産年齢人口が急減していくにあたって、「我が国経済社会の活力の維持向上」のためには、高齢者の就労や社会参加が重要なカギを握るとし、そのためにも健康寿命の延伸が重要な政策課題であるとした。

必要な医療福祉分野の人材が1,000万人以上と大きいとはいえ、130万人以上の省力化というのはかなりインパクトがある数字だ。しかし、健康寿命の延伸や生産性向上のシミュレーションで用いられた値は、まさに“期待値”であり、現実の数値とズレが生じる可能性も当然あるだろう。

また、130万人以上を減らせたとしても、依然として935万人以上の医療福祉人材が必要である点も見落とせない。就業者数全体で5,654万人を見込んでいるため、全体の16.5%、つまり6人に1人は医療福祉分野で就業することを前提とした計算だからだ。ちなみに、今年度の医療福祉分野の就業者数は823万人で、全体の12.5%。今後人口が減少していくにもかかわらず、医療福祉の就業者数割合を増やしていかなければならないのが現実なのである。少なくとも、介護分野で常に問われ続けている待遇改善問題を解決しなければ、就業者数を増やすことは困難なのは確実であり、今後どのような方策を打っていくのか注目されるところだ。

◆「在宅自己注射指導管理料」、生物学的製剤の運用見直しへ
論後発品とは別扱いとして個別審査を実施 今後は定期的な再評価を

――中央社会保険医療協議会 総会
 厚生労働省は、5月23日に開かれた中央社会保険医療協議会(中医協)総会で、「在宅自己注射指導管理料」の対象薬剤として最近追加された生物学的製剤について、運用の見直しを行うとし、了承された。後発品と取扱いを別にして、中医協で個別審査を実施する。また、今後は対象薬剤について定期的に再評価をしていく方針を明らかにしている。

 「在宅自己注射指導管理料」は、糖尿病患者へのインスリン製剤処方や、アナフィラキシー既往歴がある、もしくは発現する危険性の高い患者に対するアドレナリン製剤処方の際の指導管理に対して算定できる(650点~1,230点)。いずれも、緊急時に在宅で自己注射を行わなければならない症状であり、適切な指導管理が必要だからだ。

 しかし、最近新たに追加された関節リウマチなどの治療薬である生物学的製剤は、インスリン製剤などとは「治療目的や投与頻度、治療機関等が異なる」ことから、厚労省はより慎重な検討が必要だとした。つまり、緊急性が低いゆえに「在宅自己注射指導管理料」の算定対象とするべきでないとの判断を下したといえる。

 また、後発品の場合は先発品と有効性や安全性が同一であるため、先発品が「在宅自己注射指導管理料」となっていれば自動的に対象薬剤となるが、バイオ後続品は後発品と別の扱いとなる。バイオ後続品は分子構造が複雑であるため、市販後調査などでより慎重な取り扱いがなされていることを理由に挙げた。今後は、個別品目ごとに先行バイオ医薬品との比較を踏まえて中医協総会で審議を行う方針だ。なお、腹膜灌流や血液透析といった在宅療養において用いられる注射薬の場合も、今回提示された運用基準に準じることとなっている。

◆9県で地域医療構想調整会議での在宅医療体制の議論が未実施
「目標設定」の進捗状況にもばらつき 「原則記載」未設定も8府県

――在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ
 5月23日、厚生労働省は「在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ」の第4回会合で、第7次医療計画における在宅医療の策定状況について報告。9県が未だ地域医療構想調整会議で在宅医療体制に関する議論を実施していないことが明らかとなった。在宅医療の4機能に関する「目標設定」の進捗状況にもばらつきが見られ、「原則記載」と決められている項目についても8府県が未設定だった。厚労省は、目標設定を行っていない府県に対して策定を促す方針を明らかにしている。

 域医療構想調整会議で在宅医療体制に関する議論を実施していないのは、宮城、山梨、愛知、広島、宮崎、千葉、新潟、徳島、沖縄の9県。千葉は今後検討予定で、新潟と徳島、沖縄は今後議論を行う予定としているが、残り5県はその予定も明らかにしていない。

 目標設定をするべきとしている在宅医療の4機能(看取り、急変時の対応、日常の療養支援、退院支援)のうち、全都道府県で目標設定がなされているのは「日常の療養支援」のみ。ただし、その中の目標項目として「訪問診療を実施している診療所・病院数」は原則的に記載することが求められているが、8府県で未設定となっている(山形、石川、福井、長野、京都、和歌山、佐賀、宮崎)。

 今年4月からスタートした第7次医療計画では、着実に在宅医療の提供体制を整備するため、実効的な数値目標と施策の設定が見直された。中でも「訪問診療を実施している診療所、病院数に関する具体的な数値目標と、その達成に向けた施策」は、将来の訪問診療需要に対応するため「「必ず記載いただくこと(原則)」とされている。そのため、今回の会合で未設定の8府県に対して策定を促す方針が決められた次第だ。

 なお、「可能な限り記載いただくこと」とされている項目として「退院支援」「急変時の対応」「看取り」、そして「訪問看護」「訪問歯科診療」「訪問薬剤管理指導」の数値目標および達成に向けた施策が挙げられている。今後、もし進捗していない自治体があれば、随時策定を促すことになるだろう。

 また、この日の会合では、在宅医療・介護サービス双方のデータを把握できる国保データベースを自治体が利活用できるよう支援を充実させることや、自治体が把握している医療機関ごとの在宅医療の機能に関するデータを整理する方針も示され、了承されている。

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