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介護経営情報(2018年6月8日号)

2018/6/14

◆消費税率引上げによる5兆円の税収、4分の1を介護人材確保などに
処遇改善策は引上げと同時に実施 外国人技能実習生の要件も緩和へ

――経済財政諮問会議
 政府は、6月5日の経済財政諮問会議で「経済財政運営と改革の基本方針2018」(骨太の方針2018)の原案を示した。改めて来年10月に消費税率を10%に引き上げることを明記し、それによって得られた税収の約4分の1を「教育負担の軽減・子育て層支援・介護人材の確保等」に充当するとした。また、介護人材の処遇改善は、消費税率を引き上げる来年10月1日に合わせて実施する方針も明らかにしている。

 来年10月に消費税率が8%から10%に引き上げられるのは既定方針だが、介護人材確保策へ投じられる国費は従来よりも上乗せとなりそうだ。消費税を2%引き上げることにより、5兆円強の税収増が期待されるが、社会保障の充実には5分の1程度、つまり1兆円程度を用いるのがこれまでの方針だった。しかし、介護人材は従前の予測よりも大幅に足りない可能性が高まってきている。厚生労働省が5月21日に発表した推計によれば、2025年度までに必要な介護人材は245万人。2016年度は約190万人だったため、9年間で55万人増加させなければならず、年間に均すと6万人程度を確保し続けなければならない。

 一方で、介護の有効求人倍率は非常に高い状態が続いている。昨年12月の厚労省のデータによれば4.22倍となっており、全産業の有効求人倍率1.52倍の3倍近い数値を叩き出している。都道府県別に見ると、東京の7.18倍、愛知の6.53倍、静岡の5.64倍がワースト3。もっとも低い高知県でも2.01倍と全産業平均よりも高く、生半可な人材確保策では追いつかないことは明らかだ。

 そこで政府は、処遇改善を行うとともに、新たな“人材市場”を開拓していく方針を明記。具体的には、外国人材の活用だ。技能実習生については、「入国1年後の日本語要件を満たさなかった場合にも引き続き在留を可能とする仕組み」を検討。EPA介護福祉士候補者については、「一定の日本語能力を有する」と条件をつけつつ、日本語研修を要しない受入人数枠を設ける方針まで示している。外国人材以外には、中高年向けの入門的研修の導入も決定しており、なりふり構わず対策を講じていく決意が表れているといえよう。ただし、“介護の質”を確保しなければ介護サービス事業所の経営が成り立たないのも事実。今後介護事業者は、外国人や中高年の受け入れ体制を整備しつつ、質の高いサービスを維持するための取り組みを進めるという困難なミッションをクリアしなければならないだろう。

◆介護予防や自立支援を後押しする保険外サービスを促進
ケアプランに位置づけやすくするインセンティブも検討

――未来投資会議
 政府は6月4日に開かれた未来投資会議で、保険外の介護サービス活用を促進する方針を改めて示した。ケアマネジャーがケアプランに保険外サービスを積極的に位置づけやすくするインセンティブも検討する。

 保険外サービスの促進は、2016年に閣議決定された「日本再興戦略2016」で掲げられており、地域で自治体と民間事業者の連携を図ることが明記されていた。多様化するニーズに対応するサービスを創出することで、健康管理や介護予防、自立支援を後押しするのが目的だ。介護費の抑制につながることもあり、改めて今年度の成長戦略として示した格好となる。

 促進のための具体策としては、インセンティブ付与のほか、地方自治体やケアマネジャーに、好事例やノウハウの横展開を行うとしている。また、保険外サービスの品質評価の仕組みの検討も今年度中に着手し、業種ごとに、また、業界を横断した認証制度やガイドライン策定を促す。認証制度を整備している業界は公表し、地方自治体や介護・医療関係者、保険会社や健康経営に取り組む企業などを通じて、利用者への情報周知も行っていく。

 また、高齢者のニーズに即したサービスを創出するため、地域ケア会議や生活支援コーディネーターを支える協議体、地域版次世代ヘルスケア産業協議会の連携や民間企業の参加も促す。地域横断的な課題を把握し、関係省庁との対話を行う場として「地域版次世代ヘルスケア産業協議会アライアンス」も今年度中に設立する。さらに、介護予防や認知症予防を含め、ヘルスケア分野における社会課題を解決し、行政の効率化を推進するため、成果連動型民間委託契約方式の活用や普及も促していく方針が明記されている。

 そのほか、科学的介護データベースの運用を2020年度に本格開始することや、ロボット・センサー、AI技術の開発導入を推進していく方針も明記された。それによって自立支援効果が裏付けられた介護サービスやロボット、センサーなどは、次期以降の介護報酬改定で厚く評価されることとなる。

◆2017年の人口減少は39万人以上 厚労省「人口動態統計」
死因の4位に「老衰」が浮上 終末期ケアがますます重要に

――厚生労働省 政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室
 厚生労働省の政策統括官付参事官付人口動態・保健社会統計室は、6月1日に「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を発表。出生数と死亡数の差を表す「自然増減数」はマイナス39万4,373人となり、人口減少スピードが上がっていることが改めて明らかとなった。死因を見ると、2016年に第5位だった「老衰」が4位に浮上。年々死亡数が増え続けており、近い将来三大死因のひとつとなる可能性が高まっている。

出生数は94万6,060人で、2016年に比べ3万918人減少。人口1,000人に対する出生率は7.6で、2016年の7.8よりやはり低下。母の年齢を見ると45歳以上では前年より増加と高齢出産の傾向が強まっているが、44歳以下の各階級で前年より減少している。

死亡数は134万433人で、2016年の130万7,748人よりも3万2,685人増加。死因の第1位は「がん」で全死亡者に占める割合は27.8%。死亡者の3.6人に1人の死因となっている。第2位は心疾患(15.2%)、第3位は脳血管疾患(8.2%)。脳血管疾患は2016年の死因第4位だったが、2016年の第3位だった肺炎の死亡数が11万9,300人から9万6,807人と大幅に減少したことを受け、繰り上がった格好となっている。

第4位となった老衰の死亡数は、2016年の9万2,806人から10万1,787人へ増加。全死亡者に占める割合は7.6%と、第3位の脳血管疾患(8.2%)に迫っている。脳血管疾患の死亡数は1970年がピークで、近年は減少傾向が続いているのに対し、老衰は2001年以降右肩上がりに増え続けており、近々順位が逆転する可能性が高い。

 老衰の死亡数が増えるということは、自宅や介護施設での看取りが増えるということを意味している。3月に終末期医療に関するガイドライン(人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン)が大幅改訂され、今年度の介護報酬改定で居宅介護支援におけるターミナルケアマネジメント加算が新設(月400単位)されるなど、制度面で看取りニーズへの対応が進められているが、今後よりその傾向が強まることは間違いないだろう。介護事業者にも、看取りに対応できる体制の整備や人材の育成を進めていくことがより求められていくのではないだろうか。

◆ケアマネジメントの利用者負担は「500円や1,000円」の定額に
全国老施協提言 人材派遣業者の手数料に一定の制限を求める

――公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
 特別養護老人ホームなど、全国1万以上の老人福祉施設が会員となっている公益社団法人全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は、6月1日に「2019年~21年における介護分野等の経済財政運営と改革の基本方針に関する提案」を発表。政府が毎年発表する経済財政に関する基本方針である「骨太の方針」に対して提言を行った。

 財務省の財政制度等審議会が提唱したケアマネジメントの自己負担化については、「コスト意識の醸成を図ることにより、モニタリング等のケアマネジャーのサービス利用を行っていることへの意識を持っていただく必要があると考える」と一定の理解を示しつつ、ケアマネジメントに対するフリーアクセスの観点は不可欠と主張。過度の負担増によって介護サービス全般の利用を控えさせる状況を誘発するのは避けるべきとして、定額負担制にすることを提言。具体的には「500円や1,000円」という金額を提示した。

併せて、ケアプラン作成はケアマネジャーの業務であることを念押しし、セルフケアプランを作成する仲介業者の関与を抑止することを提言。また、定額負担が発生するのは「給付管理を実際に行った時点」とすることや、週1回といった単体のサービス利用の場合は、無償のセルフケアプランでも可能とする規制を設けることを求めている。

 また、深刻化する人手不足問題については、処遇改善の対象を介護職員以外の職員に拡大するほか、人材派遣業者の手数料にも言及。現在、介護人材の紹介手数料は年収の25~30%といった料金設定がなされているが、「半年後に辞めてしまった場合には返金もされず、次の施設等を転々とする事例も散見される」として、一定程度の制限を設けるなどの見直しを求めた。この問題は、病院の看護師派遣でも同様の実態が指摘されていることから、対応が急務だとしている。

 そのほか、介護保険制度の財源を確保するため、保険料負担年齢の引き下げにも触れている。現在、介護保険被保険者が40歳以上となっているのは、その両親が保険給付を受給し始めることを想定しているからであるが、全国老施協は「地域包括ケアシステムは元来、ノーマライゼーションをも包含する理念」であるとし、年齢の限定を設ける根拠に乏しいとしている(ノーマライゼーションは平等に生活する社会を実現させる考え方)。

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