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介護経営情報(2018年9月7日号)

2018/9/18

◆ 2016年度の介護給付費は約9.2兆円  要介護・要支援認定者数は632万人 いずれも過去最高

――厚生労働省
 厚生労働省は、8月24日に2016年度の「介護保険事業状況報告」を発表。介護給付費は9兆2,290円で、2015年度に比べて1.4%増えたことがわかった。要介護・要支援認定者数は632万人で、2015年度よりも1.9%増。いずれも過去最高を更新している。

 2000年度に介護保険制度がスタートしてから、介護給付費、要介護・要支援認定者数はともに伸び続けている。2000年度の介護給付費は3兆2,427億円。16年間で約2.8倍に膨らんだ計算だ。要介護・要支援認定者数は2000年度が256万人だったため、約2.5倍増。1人あたりの給付費は26万8,000円と、2015年度に比べて1,000円減。2000年度の14万5,000円に比べれば1.8倍増だが、ここ5年はほぼ横ばいの状態となっている。

 高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費を含まない介護給付費の1カ月平均額は7,226億円。内訳を見ると、居宅サービスが3,710億円と2015年度に比べて約200億円減少。地域密着型サービスは1,137億円と295億円増。施設サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)は2,380億円で、6億円増にとどまった。小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護といった地域密着型サービスが伸びていることがわかる。

 要介護・要支援認定者数の内訳を見ていくと、もっとも手厚い介護を必要とする要介護5の人数は約60万人と、ここ5年はほぼ横ばい。要介護4は約76万人で、2015年度よりも約2万人増、ここ5年で約7万人増となっている。要介護3は83万人でここ5年間は毎年約2万人ずつ増え続けている。要介護2は約110万人、要介護1は約126万人と多く、こちらも増加傾向にある。要支援1、2はそれぞれ約89万人、約87万人となっており、軽度とされる要支援1から要介護2までの人数が、全体の65%以上を占めている。

 高齢者人口が増え続けている状況にある現在、介護給付費および要介護・要支援認定者数が増えるのは自然の流れだ。しかし、軽度の要介護・要支援認定者数が大半を占めていることから、自立支援に力を注ぐことで増加スピードを抑制することは可能だろう。少なくとも政府および厚労省がそのように考えていることは、介護報酬で自立支援促進への評価が手厚くなったことが証明している。今回発表された統計が、その傾向に拍車をかけることは間違いないため、それを踏まえた経営戦略を立てることが介護事業者に求められるといえるのではないか。

◆ 全国知事会、介護人材確保対策の抜本強化に向け提言 消費税増税に伴う処遇改善は「確実な実施」を求める

――全国知事会
 全国知事会は8月20日、厚生労働省に対して「介護人材確保対策の抜本強化に向けた提言」を提出。同会で高齢者認知症対策・介護人材確保プロジェクトチームリーダーを務める大澤正明群馬県知事が、同省の田畑裕明大臣政務官と面会して直接要請を行った。

 この提言は、7月下旬に開催された全国知事会議で決定したもの。提出された提言書は「多様な人材確保と人材育成」「介護従事者の処遇改善」「労働環境の整備と業務負担軽減」「地域医療介護総合確保基金の財源確保と効果的な活用」の4項目で構成されている。

 「多様な人材確保と人材育成」では、まず介護の仕事に関する正しい理解とイメージアップを図ることを提言。小・中・高等学校の教育の場においても意識啓発を図るよう、文部科学省との連携強化を求めている。昨年3月から、新中学校学習指導要領の技術・家庭科において「介護」に関する内容の充実が図られたが、高齢者と接する機会を設けたり福祉施設見学などの体験授業を組み入れたりするなど、若年層からの啓発推進を促した形だ。また、介護福祉士養成施設経由で介護福祉士資格を取得する場合、科目免除をするなどのインセンティブを検討するべきだとしている。

 「介護従事者の処遇改善」では、処遇改善に確実につながることが担保される「恒久的な制度」の構築を提言。必要な財源は国が確保するべきだとした。また、昨年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で、来年消費税増税を実施した際には介護福祉士に対する8万円の賃上げを実施することが盛り込まれたが、「確実に実施すること」と念押し。介護人材の処遇改善に国が注力している姿勢を強く打ち出すことを要望した。

「労働環境の整備と業務負担軽減」では、労働局と福祉人材センターが連携し、事業者に対して「人材確保等支援助成金」「両立支援等助成金」の周知を促すことを要望。これらを広く効果的に活用することで、育児・介護の両立支援や、休業・休暇制度の充実を促すとともに、事業者の理解を深めることも求めている。また、ICTの導入を促進するための助成制度創設も提言した。

◆ 全国老施協、介護人材確保のため「多面的な政策」への投資を要望 特養の処遇改善加算見直しや、アクティブシニア採用の助成など

――公益社団法人 全国老人福祉施設協議会
 公益社団法人全国老人福祉施設協議会(全国老施協)は8月17日、「平成31年度予算概算要求・税制改正について(要望)」と題した要望書を、厚生労働省ほか関係各所に提出。介護人材確保のため「多面的な政策」へ投資するよう行政側に要請した。

 全国老施協が、いかに介護業界の人材不足に危機感を募らせているかは、要望書のサブタイトルに「介護分野における人材確保に向けた突破口を開く~政府による「目に見える“介護への注力”」~」と記していることからも伝わってくる。冒頭で「高い社会的意義を有する職業でありながら、その人材不足は著しい」とし、「地方においては、介護福祉士を志す者は数万人に一人」と現状の厳しさを訴えている。

 要望書が処遇改善に重きを置いた内容となっているのは、そうした認識からだろう。たとえば、特別養護老人ホーム(特養)については、職員採用率が介護業界の全体平均21.1%よりもかなり低い13.4%となっていることから、処遇改善加算の係数見直しを要望。採用が困難なサービス種別については、係数を上昇させることで、「就労促進に係るインセンティブをさらに付与するべき」としている。

 また、今後新たな介護人材層として期待される高齢者(アクティブシニア)の採用促進にも言及。高齢者雇用で支給される「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」の給付額を増額し、要件も緩和するよう要請。また、ユニバーサル就労支援を応用して、シニア世代と事業所のマッチングやフォローを助成するよう求めた。

 また、介護福祉士資格を取得するのに養成校などで学ぶ必要があることも考慮し、学費・奨学金などを本人に返還する仕組みを導入することも要望している。具体的には、3年間介護従事者として就労した者を対象とする形で、就労年数に応じた段階的な補助にすることも提案している。

 そのほか、教育体制の充実や、スキル向上のための支援についても触れており、アクティブシニアの流入を期待した「全世代型介護人材」の参入促進を要望。初任者研修の受講料全額補助や、今年度から新たに創設された生活援助従事者研修の推進費用の助成、介護の魅力を広報・啓発するための費用の助成なども求めた。これらの要望に対し、厚労省がどのように応えていくのか、今後の予算編成の動きに注目したい。

◆ 厚労省、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を公募 終末期ケアの啓蒙に 選定委員は新浪剛史氏や小山薫堂氏など

――厚生労働省
 厚生労働省は8月13日、ACP(アドバンス・ケア・プランニング)の愛称を募集すると発表した。終末期ケアにおけるACPの重要性を啓蒙していくのが目的。「医療や介護の現場だけでなく、国民一人一人の生活の中に浸透するように」、馴染みやすい愛称をつけたいという。

 公募した愛称は、愛称選定委員会で選ばれる。選定委員となっているのは、元NHKアナウンサーで国立成育医療研究センターもみじの家ハウスマネージャーの内田勝康氏、タレントの小藪千豊氏、放送作家で京都造形芸術大学副学長も務める小山薫堂氏、サントリーホールディングス社長の新浪剛史氏など8名。委員会は10月頃に開催し、選定された候補について商標登録などを確認したのち、11月以降に決定・公表する予定だ。

 ACPとは、人生の最終段階でどのような医療やケアを受けたいのか、事前に本人が家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合うプロセスのこと。望む医療やケアを受けるためには欠かせないが、日本では死について事前に家族が話し合うことをタブー視している面もあるため、定着していない。そのため医療・介護従事者の間でもあまり知られておらず、2月に厚労省が公表した「人生の最終段階における医療に関する意識調査結果」によれば、「よく知っている」と回答した介護職員はわずか7.6%。用語自体を知らない介護職員も51.7%と半数以上いた。

 こうした現状を踏まえ、厚労省は3月に発表した「終末期医療ガイドライン」の改訂版で、ACPの重要性を強調。まずは医療・介護従事者への周知を促した。さらに一般の認知度や理解度を高めるため、愛称をつけようと考えた次第だ。応募締切は9月14日。メール、郵送、ファクシミリでの応募が可能(宛先は厚労省のホームページに記載)。

◆厚生労働省 ACP愛称募集に関するページ
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_00775.html

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