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医療経営情報(2019年1月24日号)

2019/1/31

◆2019年度厚労省予算案、32兆351億円と過去最大         消費税増税による診療報酬改定は本体0.41%引き上げ

――厚生労働省
政府は12月21日、2019年度予算案を閣議決定。全体で101兆4,564億円と、初の100兆円超えとなった。厚生労働省の予算案は一般会計が32兆351億円と前年比2.9%増となり、過去最大を更新(※)。社会保障費の自然増は、概算要求時の約6,000億円から約4,800億円まで圧縮されている。2019年10月の消費税増税に伴って実施される診療報酬の改定率は、本体が0.41%増、薬価は0.51%減、材料価格は0.03%増となっている。

重点事項として挙げられたのは「全世代型社会保障の基盤強化」。人口減少社会を迎える中で、「人生100年時代を見据えた一億総活躍社会の実現」をめざす。具体的には「働き方改革・人づくり革命・生産性革命」、「質が高く効率的な保健・医療・介護の提供」、「全ての人が安心して暮らせる社会に向けた福祉等の推進」の3つの柱を立てている。

医療分野では、「医療従事者の働き方改革の推進」に15億円を計上。2018年度当初予算額が6.9億円だったため、倍額以上を注ぎ込んでいる。また、「医療分野における生産性向上の推進」には、2018年度当初予算額の約8倍となる15億円を計上。全国的な保健医療情報ネットワークの稼働に向けた課題の検討および実証、中心的なICUで複数のICUの患者モニタリングを行う「Tele-ICU体制」の整備促進、電子処方箋の調査などに用いられる。

そのほか目を引くのは、「データヘルス改革の推進」。2018年度予算額が172億円だったのに対し、550億円増額した722億円を計上する。そのうち300億円を費やすのは、新たに開設される「医療ICT化促進基金」だ。マイナンバーカードなどによる医療保険のオンライン資格確認の導入に向けた支援や、電子カルテの標準化に向けて医療機関での初期導入経費を補助する。前述した保健医療情報ネットワークも整備しなければならないことが、この金額に表れた格好だ。また、「災害医療体制、健康危機管理体制の推進」。2018年度当初予算学の22倍以上となる94億円を計上。DMAT体制の強化や災害拠点病院の耐震化、給水設備の強化、非常用自家電源設備の整備を進めていく。

※毎月勤労統計の不正問題が起こったことで、1月18日に雇用保険などの追加給付に必要な経費を計上。約7億円増の32兆358億円となった。

◆「妊婦加算」の凍結が決定 1月からの算定は不可に
「極めて異例」「特別な事情に基づき実施」と中医協

――厚生労働省 中央社会保険医療協議会 総会
12月19日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会で、「妊婦加算」の凍結が決定した。2019年1月1日から算定ができなくなる。この判断は、同日に出された根本匠厚労相からの諮問によるもの。総会で了承された答申書には「凍結との諮問が行われたことは極めて異例」としたうえで「特別な事情に基づき実施」と記されており、中医協として本意でない結果であることをにじませている。
 
「妊婦加算」は、今年4月の診療報酬改定で新設された。妊娠中の女性が医療機関を受診した場合、初診料・再診料が上乗せされる仕組みで、初診の場合は75点、再診の場合は38点。自己負担割合が3割の場合、初診で約230円、再診で約110円増えた。騒動となったのは、この「妊婦だけが自己負担額が増える」制度設計が理由だ。

とはいえ、診療報酬改定時にはほとんど話題にのぼらなかった。しかし、秋ごろから受診料が増えたことに不満を漏らす声がSNSで頻発。「少子化対策に逆行している」といった批判へと高まることでニュースでも大きく取り上げられるようになった。事態を重く見た自由民主党は、厚生労働部会で「今後廃止すべき」と総意をとりまとめていた。

これを受けて、当初は「年内に見直し」と発言していた根本厚労相は、12月14日の閣議後会見で「いったん凍結」と明言。「与党からも見直しに関するご意見をいただいた」と明らかにしており、自民党からの圧力があったことを認めている。自民党が素早い動きを見せた背景にあるのが、2019年夏の参議院議員選挙であることは明らかだ。安倍晋三首相が悲願としている憲法改正の実現に向けて、少なくとも議席維持をしなければならず、失点をできるだけ防ぐための策といえる。

一方で、「妊婦加算」は上質な医療を保つうえで重要なパーツとなるべきものだったことも忘れてはならない。妊婦だけ自己負担額が増える点のみがクローズアップされているが、そもそも妊婦への診療は他よりきめ細かい配慮が求められる。検査や薬剤の処方時には、胎児への影響を考慮する必要があるからこそ、女性が医療機関を受診する際の問診票には、妊娠しているかどうか確認する項目が設けられているのだ。むしろ問題は、眼科のコンタクトレンズ処方などで妊婦加算を適用している実態だったはず。制度設計の見直しを進めるとともに、サービスには対価が求められる基本原則を啓蒙していくことこそ、政府および関係省庁のなすべきことだったのではないか。そのためには識者やメディアを巻き込む必要もあったはずで、むしろ、医療行政のあり方および進め方を見つめ直す好機だったようにも思われてならない。

◆厚労省と自治体、関連団体で「医療広告協議会」を設置へ     医療広告ガイドラインの解釈・運用を統一するのが狙い

――厚生労働省
医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会
 厚生労働省は11月28日、「平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)」の結果を公表。「医療・福祉サービス業」の大卒初任給(男女計)は前年比1.7%減の20万1,500円となった。男性は前年比1.0%増の20万5,000円。女性は前年比2.8%減の20万200円。なお、「学歴別にみた初任給」では、男女ともすべての学歴で前年を上回っている。

 「医療・福祉サービス業」の初任給を学歴別に見ていくと、階層別に格差が存在していることがわかる。ひとつずつ挙げていこう。高校卒は男女計で0.1%増の15万9,200円、男性は3.8%減の16万100円、女性は1.1%増の15万8,900円。高専・短大卒の男女計は0.4%増の18万3,700円、男性は0.3%増の19万100円、女性は0.4%増の18万2,500円。大学院修士課程修了の男女計は1.5%減の20万1,300円、男性は5.0%増の20万8,900円、女性は7.3%減の19万7,900円。

 これらを分析すると、高校卒男性は2017年よりも下がったものの、女性の初任給との差は縮まっており、格差が解消されたと見えなくもない。しかし、全産業平均の高校卒初任給は男女計で16万5,100円、男性16万6,600円、女性16万2,300円といずれも医療・サービス業よりも上回っている。大卒者も、高卒者と同様に男女格差の解消へ向かっているとも受け取れるが、全産業平均は男女計で20万6,700円、男性21万100円、女性20万2,600円であり、やはり医療・福祉サービス業よりも上回っている。少なくとも賃金面に関しては、高卒者並びに大卒者にとって魅力ある産業とは言い難い状況となっている。

 深刻なのは大学院修士課程修了者に対する賃金だ。全産業平均の男女計は23万8,700円であり、実に3万7,400円もの差がある。医療・福祉サービス業の男性修了者は前年比5.0%増となっているが、全産業平均は23万9,900円であり、3万1,000円もの格差がある。女性は、全産業平均が23万4,200円であるため、その差は3万6,300円だ。このような状況では、医師・看護師といった医療職をめざして学ぶ学生以外を働き手として確保するのが難しくなるのではないかと危惧される。「医療・福祉サービス業」という広い括りとなっているため、医療機関のみならず介護施設や福祉施設なども含んでおり、この調査結果が医療界の現状を示しているとは一概にいえないのは事実。とりわけ、介護業界の賃金は全産業平均よりも低いため、その賃金額が「医療・福祉サービス業」としての初任給を下げている可能性は高い。しかし、どの産業でも持続可能性を求めるならば、裾野を広げて他産業との連携も視野に入れていく必要がある。しかも、今後は地域包括ケアシステムの構築がさらに進み、介護分野との連携は経営的にも欠かせない視点となってくるだろう。そうした意味も含め、いわゆる医療職以外の人材を広く集めるためにも、全体の賃金の底上げを検討するべき時期が来ているのではないか。

◆医師の連続勤務は28時間、勤務間インターバルは9時間   厚労省提案 連続勤務はアメリカの例を参照

――厚生労働省 医師の働き方改革に関する検討会
 厚生労働省は12月17日の「医師の働き方改革に関する検討会」で、医師の連続勤務時間を28時間、勤務間インターバルを9時間設ける方針を示した。連続勤務時間は、米国卒後医学教育認定協議会(ACGME)の例を参考にしたもので28時間のうち4時間は引き継ぎにあてるとしている。

勤務間インターバルについては、「最低限必要なもの」として、当直および当直明けの日を除く24時間の中で、通常の日勤後、次の勤務までに確保する時間として設計。当直明けの日については、28時間連続勤務の場合「9時間×2日分」として18時間のインターバルにすべきだとした。

なお、28時間連続勤務も、9時間のインターバルも、「勤務日」に1日6時間程度の「最低限必要な睡眠」を確保できることを前提としている。ただ、医療現場の実情としては、とりわけいわゆる準夜帯の24時頃までは時間外対応が生じやすく、朝は7時から遅くとも8時には業務スタートしているケースがほとんどだ。この場合、ギリギリ6時間の睡眠は確保できるとしても、それ以外の時間はごく少ない。

厚労省もそのあたりの実態は把握しており、勤務間インターバルの導入には「かなりの改革が必要」と認めている。具体的には、病棟業務での術後管理をたとえば特定行為研修修了看護師など他職種に任せるタスク・シフティングや、他科の医師とタスク・シェアリングすることを「強力に進める必要がある」とした。

 これらの提案に対し、同検討会の構成員からは反対意見も多数飛び出した。確かに、まず人手を確保できるのかという問題があるほか、術後の状態変化に対する問い合わせが発生する可能性が高いのが実情であり、机上の空論と決めつけたくなる提案ではある。人材確保の問題を突き詰めると、そもそも経営そのものがうまくいかなくなるリスクもあり、一筋縄ではいかないだろう。一方で、医師の健康を守る観点で考えれば、最低限の睡眠時間をコンスタントに得られるようにしなければならない。今後の調整が困難なことも予想されるため、厚労省は難しい舵取りを余儀なくされそうだ。

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