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介護経営情報(2019年1月11日号)

2019/1/31

◆2019年度予算案が閣議決定 厚労省分は32兆351億円と過去最大 介護人材の確保・処遇改善は前年度比263億円増の352億円を計上

――厚生労働省
12月21日、2019年度予算案が閣議決定された。全体で101兆4,564億円と、初の100兆円超えとなり、厚生労働省分は32兆351億円と過去最大を更新している(※)。概算要求時、社会保障費の自然増は約6,000億円としていたが、現役並みの所得がある高齢者の介護保険料や薬価を引き下げたことで約4,800億円まで圧縮された。

2018年度と比べて大幅に予算が増額されたのは「介護離職ゼロの実現」で2018年度当初予算額が512億円だったのに対し819億円を計上。地域医療介護総合確保基金による介護施設の整備は、467億円と44億円増にとどまったが、「介護人材の確保・処遇改善」は2018年度当初予算額が89億円だったのに対し、263億円増の352億円を計上している。具体的には処遇改善や外国人材受け入れのための環境整備のほか、「介護職機能分化や他職種チームケアの推進」「介護入門者のステップアップや現任職員のキャリアアップ支援」などが挙げられた。

そのほか、「介護・障害・保育分野における生産性向上の推進」には前年度比7億円増の44億円を計上。介護ロボットの開発・活用やICT活用の支援、モデルとなる介護事業所の取り組みの横展開やその成果をガイドラインに反映するなどの取り組みに用いられる。

また、2019年10月に実施予定の消費税率引き上げに伴って介護報酬が改定されるが、改定率は0.39%引き上げとなった。12月17日に行われた根本匠厚生労働相と麻生太郎財務相との大臣折衝によって決定されたもので、国費約50億円に相当する。障害福祉サービスは0.44%引き上げで、診療報酬は本体が0.41%引き上げ、材料価格は0.03%引き上げ、薬価は0.51%引き下げとなった。

※毎月勤労統計の不正問題が起こったことで、1月18日に雇用保険などの追加給付に必要な経費を計上。約7億円増の32兆358億円となった。

◆後期高齢者医療保険料の軽減特例が10月に廃止 低所得高齢者介護保険料の軽減措置を強化して負担増を回避

12月17日に2019年度予算案の大臣折衝が行われ、後期高齢者医療制度の軽減特例が2019年10月に廃止されることとなった。同時に、低所得高齢者の介護保険料に対する軽減措置を強化することも決定。国民健康保険料の負担が増した分を介護保険料の軽減で相殺させた形だ。

75歳以上の後期高齢者が加入する国民健康保険は、均等割(定額の保険料)と所得割(所得に応じてかかる保険料)で構成されている。所得の低さによって2割・5割・7割と三段階の減額が適用される仕組みで、もっとも収入が低い場合も「7割軽減」が適用されるルールだ。しかし現在、年金収入80万円以下の後期高齢者は「9割軽減」、年金収入80万円以上168万円以下だと「8.5割軽減」の特例を受けている。

これは、「後期高齢者が優遇されている」と単純にまとめられる話ではない。社会保障制度が支え合いの仕組みである以上、一方を引き下げれば他方を上げないと帳尻が合わないのが道理。最大2割分引き下げた分は公費でまかなっている状態であるため、まずは本来のあり方に戻し、そのうえで後期高齢者の負担を増やさないよう「相殺」のスキームを構築したというわけだ。軽減特例が国庫補助金によるものであることや、介護保険と医療保険の保険者が異なることを考慮すれば、国庫負担を減らすための苦肉の策といえよう。

なお、現在「9割軽減」が適用されている低所得高齢者に対しては、2019年10月の消費税増税に伴い、年金生活者支援給付金(公費1,860億円程度を充当)が支給される。「8.5割軽減」の適用者は年金生活者支援給付金の対象外のため、激変緩和措置を導入。2019年10月から1年間、負担増となった分の金額を特例的に補填する。

◆介護職員の新たな処遇改善加算、大枠が決定     現行加算I~IIIを取得している事業所が対象

―厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会
 厚生労働省は、12月19日の社会保障審議会介護給付費分科会で、2019年10月に実施予定となっている消費税増税に伴う介護報酬改定の審議報告案を提示し、了承された。これによって、介護職員の新たな処遇改善加算の内容が決定した。

 新たな処遇改善加算を算定できるのは、現行加算の「I」「II」「III」を取得している事業所が対象。すでにキャリアパスや研修体制が構築され、職場環境の改善が期待できることが理由だ。また、現行の職場環境要件に関する「複数の取組」を行い、その内容を「ホームページへの掲載等」を通じて「見える化」させていることも要件に付け加えている。つまり、事業所のウェブサイトにどのような職場環境改善の取り組みをしているかを後悔しなければならないということだ。

 加算率は、サービス種類ごとの「勤続10年以上の介護福祉士の数」に応じて二段階に設定する。二段階に設定する理由としては、同じサービス種類の中でも「経験・技能のある介護職員の数が多い」「職場環境が良い」事業所の評価を充実させたいからだ。該当する事業所をどのように把握するかが問題だが、審議報告案では「その方法について、今後検討することが必要」とするにとどまっており、具体的な基準を設定することは先送りされた。

 むしろ、今回の新たな処遇改善加算は、どの職員に配分するかを事業所に委ねる色合いが強い。「勤続10年」をどのように捉えるかも事業所の裁量で設定できるとしているなど、柔軟な取扱いを可能にしている。その中でも貫かれているのは「経験・技能のある」ベテラン人材を厚遇するという考え方だ。平均処遇改善額が「その他の介護職員の2倍以上」とするよう定めたほか、その他の職員の給与は処遇改善後も440万円以内にしなければならない。ベテランを厚遇することで介護職のキャリアアップの道筋をわかりやすく示し、長期間にわたって働きたいと考えている人材の流入を促すことが目的だが、介護福祉士などの有資格者以外の職員にとってはモチベーションが下がりかねない施策ともいえる。そのため、職員のモチベーションを向上させる事業所独自の取り組みを検討する必要もありそうだ。

◆福祉医療機構、2017年度の社会福祉法人の経営状況をレポート     介護・老人福祉が主体の法人は30%以上が赤字 離職率は約15%

―独立行政法人福祉医療機構
 福祉医療機構は、12月19日に「平成29年度社会福祉法人の経営状況について」と題したレポートを公表。同機構では毎年度、貸付先の経営状況を調査しており、今回は6,930法人を対象に分析を実施した。レポートによれば、介護保険事業および老人福祉事業を主体とする法人の赤字割合はいずれも30%を超えた。離職率は介護保険事業主体法人が15.7%、老人福祉事業主体法人が15.8%で、全体の離職率14.1%よりも高い数値をマークしている。

 収益性を示す「サービス活動収益対サービス活動増減差額比率」は、全体で3.4%。前年度よりも0.6ポイント低下しており、福祉医療機構はその原因を「福祉業界における人材不足を背景とした従事者1人当たり人件費の増加(対前年度10万1,000円増)」によって人件費率が上昇したことによると分析。赤字法人の人件費率は黒字法人よりも4.4ポイント高いとの調査結果も盛り込まれた。介護業界をはじめ、福祉業界全体で深刻な人手不足が続いているため、同機構は「人件費をコントロールすることは困難」として、赤字改善には「まずサービス活動収益を増加させることに力点を置く必要がある」と提言している。

 これらを踏まえると、2018年の介護報酬改定は0.54%引き上げとなったものの、人件費率の高さもあり、赤字法人の経営改善には今後も困難が待ち受けると推測される。各種加算の取得は収益向上の「即効薬」となることが期待できるが、人材確保ができなければ絵に描いた餅だ。同機構は「人材不足と収益減という負のスパイラルに陥っている法人もなかには見受けられる」と警告を発したうえで、その状況を脱するには「職場環境を向上させながら、まずは人材確保に注力すべき」と結論づけている。

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