ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2019年1月18日号)
◆ 認知症対策、政府が関係閣僚会議を発足 「認知症官民協議会」を新設し、新オレンジプランを6月までに改定
――認知症施策推進関係閣僚会議
政府は認知症施策推進関係閣僚会議を発足し、12月25日に第1回会議を開催した。現在進められている「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」をベースに、「5月ないし6月」までに大綱を取りまとめる。具体的な施策は、厚生労働省と経済産業省が春までに「認知症官民協議会」を設置。民間企業および業界団体・研究機関と連携しつつ検討を進めていく。
基本的な方針としては、認知症の人に優しい地域づくりを通じたこれまでの「共生」に加えて「予防」を新たな柱に据え、この2つを「車の両輪」として認知症施策を推進していくという。会議に出席した根本匠厚労相は、「関係省庁との連携のもと、厚生労働省が中心的な役割を果たす」と決意を述べた。
関係省庁の大臣からは、平井卓也内閣府特命担当相(クールジャパン戦略、知的財産戦略、科学技術政策、宇宙政策)および宮腰光寛内閣府特命担当相(沖縄及び北方対策、消費者及び食品安全、少子化対策、海洋政策)、世耕弘成経済産業相が発言した。
平井内閣府特命担当相は、科学技術分野として日本医療研究開発機構(AMED)で認知症克服に向けた研究開発を支援していることに触れ、「病態解明」、「診断や治療効果の指標となるバイオマーカーおよび治療候補の探索」、「発症前の予防に資する研究」など各ステージでの研究を進め、成果は産業化して諸外国への「輸出」も視野に入れているとした。宮腰内閣府特命担当相は、認知症高齢者の消費者トラブルを防ぐため、消費者庁で地域全体での見守り体制の強化・充実を図っていくと述べている。そして世耕経済産業相は、2019年度から認知機能低下の進行抑制や認知症との共生を目指した実証事業を実施するとし、その成果を「認知機能改善に資する運動サービス」や「認知症になっても暮らしやすい住宅デザイン」といった新たなサービス・製品の創出を促していくとした。
厚生労働省によれば、日本の認知症患者数は2012年時点で462万人。65歳以上の約7人に1人が該当すると推計されている。認知症の前段階とされる軽度認知障害と推計される約400万人と合わせると、約4人に1人が認知症あるいはその予備軍とされる。超高齢社会(※)に突入している今、その割合はさらに増加していくことが予想されており、2015年1月に新オレンジプランが策定された。
※超高齢社会とは、65歳以上の人口の割合が全人口の21%を占めている状態を指す。日本は2010年から超高齢社会に突入している。
◆ 豊島区の混合介護、2019年度実施モデル事業を再検討 デイサービスでの「お薬相談」など規制緩和を求める方針
――東京都豊島区
選択的介護モデル事業に関する有識者会議
東京都豊島区は、12月26日に開催した「選択的介護モデル事業に関する有識者会議」で、9月に提示した2019年度に実施するモデル事業を見直した再検討案を提示。デイサービスでの「お薬相談」やデイサービスを利用しない日の外出を支援するサービスなどで、現行の規制を緩和しなければ実施できない内容となっている。豊島区は規制緩和を求めて国家戦略特別区域会議へ提案することも視野に入れているとした。
豊島区は、国家戦略特別区域制度を活用し、従来は禁止されていた介護保険サービスと介護保険外サービスを同時提供する混合介護(豊島区は「選択的介護」と呼称)のモデル事業を2018年度から実施している。厚生労働省は混合介護の解禁に消極的だったが、9月に「保険外サービスの充実も重要」と明記した通知を発出。全面的な解禁に向けて一歩踏み出した形となっている。
今回、豊島区が再検討案を提示したのは、こうした状況の変化を敏感に察知したことと、実際にモデル事業を行った感触が良好だったからだろう。9月に提示された案よりも具体性を伴ったものに進化している点に、それが表れている。特徴的なのは、デイサービスを軸とした展開に絞り込んでいることだ。とりわけ、コンセプトとして「デイサービスを中核(拠点)として要介護高齢者をトータルにサポートできるサービスを提供することで、訪問介護等の給付適正化やヘルパー不足にも対応することを目指す」を掲げている点に注目したい。混合介護としてはもちろん、介護サービスそのもののあり方を提示しているともいえる。
具体的には、以下の3点をテーマとしている。
(1) デイサービスの機能を活用した高齢者の在宅生活支援
(2) デイサービスの場を活用した高齢者の健康・療養支援
(3) AI等を活用した生活リズムの維持・回復支援とお手軽リハ提供
このうち、間違いなく規制緩和が必要となるのは(1)と(2)だ。(1)は、デイサービスの外出支援と組み合わせて日常でひつような用事への対応支援を提供するほか、デイサービス利用者がデイサービスを利用しない日の外出を支援する。後者に関しては、運送サービスと位置づけられるため、現行の道路運送法では運転手に二種免許が求められる。豊島区は、デイサービスで車両および運転手の空き時間を有効活用する意味も込めているが、規制緩和を実現しなければ絵に描いた餅だ。
(2)は、デイサービスのプログラムの一環として「お薬相談」を実施するというもの。薬剤師にとっては、食事・嚥下の状況や健康状況を確認できると同時に介護職員との情報共有ができ、有効なアドバイスができるというメリットがある。また、デイサービスの場で薬の受け渡しができれば、利用者にとっての利便性も高く、地域包括ケアシステムの強化にもつながる案といえる。しかし、薬剤師法では薬局・居宅以外で薬剤師業務を行うことはできないため、これも(1)と同様にハードルは高い。
(1)は国土交通省、(2)は厚生労働省との調整が必要なことはもちろんだが、各領域に関連する業界団体の反応も気になるところだ。一方で、混合介護を全面解禁するためにクリアしなければならない問題であることは疑いようがなく、一石を投じるという意味で大きな意義があるといえよう。介護サービスのあり方を変える可能性のある提案でもあるだけに、規制改革推進会議の反応も含めて今後の動きから目が離せない。
◆ 介護分野の外国人受け入れ、5年間で最大6万人 「介護技能評価試験」「介護日本語評価試験」のクリアが条件
―外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議
政府は12月25日に開催した「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」で、外国人受け入れに向けて新設する在留資格の運用基本方針を決定。介護分野は5年間で最大6万人まで受け入れることになった。受け入れにあたっては、「介護技能評価試験」および「介護日本語評価試験」(いずれも仮称)を新設し、それらの合格者を対象とする。
外国人材が従事できる業務としては、入浴・食事・排泄などの介助のほか、レクリエーションの実施や機能訓練の補助としており、訪問介護などの訪問系サービスは対象外としている。事業所は「直接雇用」が義務付けられており、受け入れ可能な人数は事業所単位で日本人常勤介護職員の総数が上限。
新設される「介護技能評価試験」は、介護現場で欠かせない知識・技術を有しているか確認することを目的としており、外国人の母国など日本国外で、現地語によって実施される。具体的にどの程度の知識・技術を求める試験になるかは未定だが、技能実習生向けに行われている「介護技能実習評価試験」を雛形とする形になるものと想定される。また、「介護技能評価試験」に合格するのと同等以上の水準と認められた場合も受け入れの対象となるが、その基準をどこに置くかは現段階で示されていない。
「介護日本語評価試験」の詳細もまだ明らかになっていない。ただし、公表されている運用方針には、「『日本語能力試験(N4以上)』に加え」と明記されており、少なくともN4以上に認定される目安である「基本的な語彙や感じを使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解できる」「日常的な場面でややゆっくりと話される会話であれば内容がほぼ理解できる」をクリアしていることが前提となるため、一定の日本語レベル以上が求められると判断できよう。そのうえで、介護分野の用語や現場で頻繁に交わされる会話を理解できるかどうか確認するのが「介護日本語評価試験」の役割だと考えてよさそうだ。
◆ 介護記録をウェブ化している施設は3割、個人メアド保有率は2割 ロボット導入施設の方が職員の満足度高い リクルートキャリア調査
―株式会社リクルートキャリア
人材サービス大手のリクルートキャリアは、12月25日に「介護サービス業で働く人の満足度調査」の結果を発表。IT導入施設でも介護記録のウェブ化は3割、職員の個人メールアドレス保有率は2割にとどまっているとした。また、介護ロボット導入施設で働く介護従事者の満足度は、未導入施設より6.7ポイント高い結果が出たとしている。
この調査は、リクルートキャリアによる日本の介護サービス業の就業人口を増やすためのプロジェクト「HELPMAN JAPAN」で実施されたもの。2018年8月に、全国18~59歳の男女を対象として行われ、そのうち介護職従事者と回答した1,000件について取りまとめたものとなる。
まず、仕事への満足度については、約半数の49.5%が「満足している」と回答。ただし、「とても満足している」は4.2%、「満足している」は11.6%と決して高い数値ではなく、33.7%は「ある程度満足している」と回答しており、「不満ではない」という消極的な思いが透けて見える結果となっている。とはいえ、これらのうち約8割の79.7%は勤続意向ありと回答しており、離職の意志を持っているわけではない。モチベーションがさほど高くもなく、大きな不満もなく、という中途半端な状態の職員が多いとも推測でき、人材マネジメントの観点からいえばフォローする必要もありそうだ。
その点、ロボット導入施設で働いている職員の満足度が高いというデータは注目に値する。調査によれば、移乗介助機器を導入している施設の満足度が高く、身体的負担の軽減に魅力を覚える人が多いことがわかる。また、個人メールアドレス保有率はユニークな視点であり、IT化を進めていても基本的なITツールですら導入が進んでおらず、実際の勤務に反映されていない現状が露呈したといえよう。そのような状況では介護記録のウェブ化が進むわけもないことは明らかで、効率化を図るのも困難だ。IT化にはある程度の設備投資がかかるため、簡単に決断できるものではないだろうが、人手不足を解消し安定経営を実現させるためにも、情報インフラを見直してIT化を進める必要があるのではないか。