ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2019年2月1日号)
◆厚労省と経産省が共同で新たな有識者会議を設置 2040年の医療介護サービスで必要な技術・サービスを検討
――経済産業省
未来イノベーションワーキンググループ
1月25日、新たな有識者会議「未来イノベーションワーキンググループ」が始動した。厚生労働省と経済産業省が共同で事務局を担うもので、約20年後となる2040年の医療介護サービスで求められる技術やサービスを検討していく。この日、第1回会合が厚労省内で開かれ、冒頭では根本匠厚生労働相および磯崎仁彦経済産業副大臣が挨拶。「前例のない高齢化、人口減少を前に医療・介護現場の確信を通じた生産性向上が急務」と危機感をあらわにした。
このワーキンググループは、「バックキャスト」の思考を取り入れているのがひとつの特徴だ。「バックキャスト」は「バックキャスティング」とも呼ばれ、未来を予測するうえで目標の状態を想定し、そこから現在に立ち戻ってなすべきことを導き出す手法。地球温暖化など環境問題解決に効果的として注目を集めている。つまり、目標から逆算して必要な仕掛けや環境整備を進めていくアプローチだ。この日の会合では、ますこの考え方を共有したうえで、議論を進めるうえでの視点を決めていった。
「バックキャスト」を有意義に進めるためには、意見の収集・分析も当然重要。そこで、独自の合意形成アルゴリズム開発を行っているテクノロジーカンパニーとして、経産省が世界で勝てるスタートアップ企業を支援する「J-Startup」にも選ばれているVISITS Technologies株式会社に委託。同社が開発した「CI(コンセンサスインテリジェンス)技術」を活用して事前に有識者の意見をオンラインで抽出。相互評価を実施して会議運営の効率化を図っている。なお、「CI技術」は教師データのない定性的な価値を定量化できる革新的な技術として、特許も取得済みという。
有識者には、メディアアーティストの落合陽一氏や東京大学工学系研究科教授の佐久間一郎氏、トーマツベンチャーサポート株式会社の木村将之氏、A.T.カーニー株式会社パートナーの後藤良平氏など各界気鋭の顔ぶれがそろった。2月に第2回会合を実施し、3月初旬の3回目会合では中間とりまとめを行うスケジュールとなっている。どのような将来像を描き出していくのか、議論の行方を見守っていきたい。
◆厚労省、ポリファーマシー防止のガイドライン案を提示 介護福祉士やケアマネジャーの役割も明記
――厚生労働省
高齢者医薬品適正使用検討会
厚生労働省は、1月25日の高齢者医薬品適正使用検討会で、「高齢者の医薬品適正使用の指針」と題したポリファーマシー防止のためのガイドライン案を提示。医療機関や薬局のみならず、介護福祉施設との連携も重視した内容となっている。看護師や管理栄養士のほか、社会福祉士、介護福祉士、介護支援専門員(ケアマネジャー)の役割も明記している。
ガイドライン案で示された社会福祉士、介護福祉士、ケアマネジャーの役割は以下のとおり。
社会福祉士:入院(所)前の服薬や生活状況の確認と院内(所内)多職種への情報提供、退院(所)に向けた退院先の医療機関・介護事業所等へ薬剤に関する情報提供
介護福祉士:服薬状況や生活状況の変化の確認
ケアマネジャー:各職種からの服薬状況や生活状況の情報集約と主治の医師、歯科医師、薬剤師への伝達、薬剤処方の変更内容を地域内多職種と共有
見てのとおり、ケアマネジャーが果たすべき役割は多岐にわたっている。ガイドライン案では、「疾病を抱えても、自宅等の住み慣れた生活の場で療養し、自分らしい生活を続けられるためには、地域における医療・介護の関係職種が連携して、包括的かつ継続的な医療・介護を提供することが必要となる」として各職種とも他職種との連携が必要としているが、その中でも中心的な位置に立って、情報のハブとして機能することが求められると言っていいだろう。
なお、ポリファーマシーは「薬の多さ」と解釈されがちだが、ガイドライン案では「単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス低下等の問題につながる状態」と定義している。アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることだ。つまり、患者とのコミュニケーションを怠らず、その患者に処方されている薬の全体像を常に把握して、的確な服薬指導を行うことが必要となる。
◆介護事業経営概況調査を5月に実施 各サービスの利益率を調べて報酬改定の基礎資料に
―厚生労働省
社会保障審議会 介護給付費分科会介護事業経営調査委員会
厚生労働省は、1月24日の社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会で、2019年度介護事業経営概況調査を5月に実施する方針を明らかにした。すべての介護保険サービスを対象に、2017年度および2018年度の決算額を調査する。次期介護報酬改定の基礎資料として活用するのが目的で、結果は12月に公表し、その後介護給付費分科会へ報告される。
各介護保険サービスの利益率が明らかになる重要な調査だが、有効回答率が低いのが大きな課題となっている。2013年度調査の有効回答率は41.7%と4割強にとどまっており、調査結果が現実を反映しているとは言い難い。3年後の2016年度調査では47.2%と5.5ポイント上昇したものの、依然として半数以下となっている。昨年12月に決定した骨太方針の工程表である「新経済・財政再生計画改革工程表 2018」でも、「調査・集計方法等の改善や有効回答率の向上」に取り組むよう明記されており、少なくとも5割以上の有効回答率にしなければならないところだ。
そこで厚労省は、いくつかの施策を展開予定。まずは、介護保険総合データベースを活用し、全国の施設・事業所の活動状況を把握。これによって「休廃止した施設・事業所への調査票の配布を減らすことが可能となる」としている。そして、紙の調査票だけでなく調査専用ホームページを開設してオンラインでの回答ができるようにするほか、調査票発送時にアンケートを同封。「回答にあたって困難に感じている点等を把握することや督促時に調査票未回答理由を把握すること」で、次回の調査に向けて調査手法の改善も引き続き図っていく。
調査項目は、2017年度に実施された調査と同じ。開設年月など施設概要や建築延べ床面積などの建物の状況、職員数、職員給与、通勤手当や賞与、事業主負担の法定福利費、そして収支状況や事業支出の詳細なども回答する必要がある。