ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2019年2月28日号)
◆「消費税改定」による個別項目の配点が決定 初診料は288点、外来診療料74点、急性期1は1,650点に
――厚生労働省保険局 中央社会保険医療協議会総会
厚生労働省は、2月6日の中央社会保険医療協議会総会で、消費税率引き上げに伴う診療報酬改定について、個別項目の配点を提示。初診料は現行から6点引き上げられて288点に、外来診療料は1点引き上げられて74点に、急性期一般入院料1は59点引き上げられて1,650点となる。
そのほかの主な項目としては、再診料が1点引き上げられて73点。昨年の改定で新設されたオンライン診療料も1点引き上げで71点となった。療養病棟入院料1のAは3点引き上げの1,813点、救命救急入院料1のイ(3日以内の期間)は354点引き上げとなる10,223点となっている。
消費税は今年10月、現行の8%から10%に引き上げられる予定。診療報酬は非課税のため、医療機関や調剤薬局が仕入税額控除を受けられないが、実際の仕入れでは消費税を負担している。そこで、消費税負担相当額を補填するため、これまでも消費税が引き上げられるたびに臨時改定を実施してきた。
今回の臨時改定は、診療報酬全体ではプラス0.41%、薬価はマイナス0.51%、材料価格はプラス0.03%。これをもとに同省の「医療機関等における消費税負担に関する分科会」で各項目の引き上げ率が検討されてきた。「消費税改定」をめぐっては、補填不足も指摘されてきたため、直近の通年実績のNDB(レセプト情報・特定健診等情報データベース)データのほか、入院料も病院種別や入院料別シェアを考慮している。
なお、この日の総会では、1月30日に実施された公聴会で発表された意見も紹介。「そもそも診療報酬は非課税なのに消費税相当分が補てんされていることが、国民、患者、保
険者に知られていない」「患者サイドは非課税だと思っていても気付かないうちに診療報酬という形で負担している」といった内容が多く、なぜ臨時改定が行われるのか一般に理解されていない現状も明らかになっている。厚労省側は広報に力を入れる方針だが、消費者の目線からすると、単なる「値上げ」と受け取られかねないため、各医療機関からも啓発を促すことが求められるのではないか。
◆利用実績ゼロの医療機関もあるCT、MRIなどの配置状況を可視化へ
効率的な医療提供体制構築のため共同利用を推進するのが目的
――厚生労働省 地域医療構想に関するワーキンググループ
厚生労働省は、1月30日に開催された「地域医療構想に関するワーキンググループ」の会合で、CTやMRIなど高額医療機器の地域ごとの配置状況を可視化する方針を示した。効率的な医療提供体制を構築するため、共同利用を推進するのが目的だ。
医療機関の数に地域格差があることは周知の事実。医療機器に至っては、地域格差どころか同じ地域内でも備えられているところと、そうでないところがある。とりわけ、CTやMRIのような高額医療機器は、すべての医療機関で設置できているわけではない。その一方で、「医療施設調査」によれば、マルチスライスCTや1.5T以上のMRIを備えながら利用実績がない医療機関も存在。明らかに無駄な設備であり、医療資源を有効に活用するという観点に立てば、外来医療機関間の機能分化・連携を進めつつ医療機器の共同利用を推し進めるべきだろう。
そのためには、まず正確な現状を把握する必要がある。地域ごとの配置状況を可視化しようとしているのはそのためで、厚労省は「医療機器ごと・地域ごとにニーズを踏まえた調整人口あたり台数」を明らかにし、医療機器を持つ医療機関を地図情報としてマッピングする案を示している。具体的な医療機器としては、CT、MRIのほかマンモグラフィやリニアック、ガンマナイフなどが対象となる。
また厚労省は、医療機器を二次医療圏内で効率的に共用している事例として、熊本の「天草医療圏」を提示。「天草医療圏」では、「あまくさメディカルネット」としてICT医療連携を行っているほか、医療機器の共同利用や画像ネット、診療データの共有連携を実施している。主要病院間はサーバ接続、診療所はクライアント接続と規模によって柔軟に連携方法も変え、同医療圏内に80ある診療所のうち8割近い61診療所が加入しているという。
さらに、今後の対応方法として、厚労省は機器購入を計画する段階から医療圏内での連携を推進する方針。共同利用計画を作成して、地域医療構想調整会議などの場で定期的に協議する方向に持っていきたい意向だ。その際の参考資料として「調整人口あたり台数」やマッピングなどのデータを有効活用させる。医療法によれば、共同利用計画の協議の結果は公表が義務付けられているため、横展開もしやすい。この取り組みが本格的に行われていけば、高額医療機器の導入に頭を悩ませるよりも、地域内での連携を進めることを優先させるのが、今後の医療機関の経営に欠かせなくなってくるのではないか。
◆直近3年間で医療機関から報告された医療事故は1,260件 相談件数は7,200件 医療事故調査制度の周知が課題
――一般社団法人日本医療安全調査機構
一般社団法人日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)は2月5日、「医療事故調査制度の現況報告(1月)」を公表。2015年10月から今年1月末までの累計で1,260件の医療事故が報告されていることがわかった。一方、患者の家族などからの相談件数は累計7,200件(1月だけでも175件)にのぼっている。ただし、そのうち4割近い2,593件は医療事故であるかどうか「判断」を求める内容であり、医療事故調査制度の周知がなされていない現状が浮き彫りとなった。
医療事故調査制度は、2015年10月にスタート。医療に起因する患者の「死亡・死産」のうち、予期されなかった事例が調査の対象となる。事故発生後、医療機関が遺族に説明したのち、第三者機関である日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター)に届け出る仕組みだ。
しかし、これまで寄せられた相談のうち「判断」を求める2,593件の中には、制度開始前の事例や、そもそも対象とならない生存事例も含まれているという。最終的に医療事故調査・支援センターが調査対象としたのは計81件であり、相談件数の約3%程度にとどまっていることからも、事故と呼べない事例の相談が多く寄せられていることが窺える。医療機関側の対応に向けた不満の矛先が向けられているとも受け取れる結果で、その遠因には“医者”に対する根強い不信感があると考えるべきだろう。同時に、関係のない“相談”が多数寄せられている現状は、制度の運用そのものを妨げている可能性もあるため、制度内容の周知徹底が求められているといえる。
他方、「予期しない」死亡事故が未だに続いていることも見逃せない。直近6カ月では昨年8月が41件、9月が27件、10月が40件、11月が31件、12月が34件、そして今年1月が26件。3年3カ月で医療事故報告が1,260件であることを考えれば、半年で199件という数字は明確にペースダウンしてはいるものの、一般的な感覚では依然として多いと言わざるを得ない。ここまで多発している原因がどこにあるのか、医療従事者の働き方改革の問題も含めて分析・検証する必要があるのではないか。
◆10連休中の診療は休日加算の算定可能 厚労省通知 14日を超えた処方も備考欄に理由を記載すればOK
――厚生労働省保険局
厚生労働省保険局は、1月30日に「10連休」の診療報酬の取り扱いについて通知を発出。従来と変わりなく休日加算などの算定ができることや、1回14日分までとなっている内服薬・外用薬でも備考欄に理由を記載すれば処方可能であることを明記している。
今年は、5月1日に皇太子殿下が天皇に即位される。それに伴って5月1日が休日となるが、今年は4月27日が土曜日であることや、祝日法によって祝日に挟まれた日が休日となることから4月30日と5月2日が休日となるため「10連休」の実現が確定している。土曜日は診療を実施している医療機関が一般的だが、日曜・祝日は休診するところが多い。そこで厚労省は、1月15日に必要な医療提供体制を確保するため、10連休中の医療機関の診療状況および医薬品、医療機器などの卸売販売業関係者の状況を把握するよう各都道府県知事に要請していた。今回の診療報酬に関する通知は、本来ならば休診日だった医療機関に対する配慮といえよう。
具体的に該当するのは「(A000)初診料 注7・注8」「(A001)再診料 注5・注6」「(A002)外来診療料 注8・注9」。
初診料の注7は時間外加算が85点(6歳未満の乳幼児200点)、休日加算が250点(同365点)、深夜加算が480点(同695点)、夜間救急加算が230点(同345点)。注8は小児科を標榜する医療機関が対象で、時間外加算200点、休日加算365点、深夜加算695点。
再診料の注5は時間外加算が65点(同130点)、休日加算が190点(同260点)、深夜加算が420点(同590点)、夜間救急加算が180点(同250点)。小児科を標榜する医療機関が対象の注6は時間外加算135点、休日加算260点、深夜加算590点。
外来診療料の注8は時間外加算が65点(同130点)、休日加算が190点(同260点)、深夜加算が420点(同590点)、夜間救急加算が180点(同250点)。小児科を標榜する医療機関が対象の注9は時間外加算135点、休日加算260点、深夜加算590点。
処方箋については、通常交付日から3日以内に調剤を受けなければならないが、長期の旅行といった事情がある場合は理由を備考欄に記せばいいことになっている。今回の10連休では、すでに旅行の予約が殺到していることもメディアで報じられていることもあり、改めて周知を促す形となっている。