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介護経営情報(2019年3月1日号)

2019/5/20

◆ 2025年には大都市圏で特に介護人材不足が深刻化 3職種すべての賃金が全国平均を上回っているのは7都府県のみ

――株式会社日本政策投資銀行
日本政策投資銀行は2月8日、株式会社日本経済研究所と共同で「ヘルスケア業界ミニブック―訪問看護・介護人材及びテクノロジーの進化―」を発行。介護業界全体の課題となっている人材不足について、2025年までに大都市圏で特に深刻化するとの見方を示した。また、介護職の平均賃金について都道府県別に分析。介護支援専門員(ケアマネジャー)、ホームヘルパー、福祉施設介護員の3職種すべてが全国平均を上回っているのが7都府県であることも明らかにしている。

第一次ベビーブーマーである団塊の世代が全員75歳以上となる2025年に向け、要介護認定される人数が右肩上がりに増えることが想定されるため、必然的に介護人材の必要数も増していくこととなる。厚生労働省が昨年5月に発表した「第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」によれば、2016年時点の介護人材が約190万人だったのに対し、2020年度末には約216万人、2025年末には約245万人が必要と推計。つまり、2016年からの9年間で55万人の介護人材を新たに確保しなければならない。

日本政策投資銀行と日本経済研究所は、この介護人材の需要を都道府県別に分析。現状の推移をもとにした供給見込みを割り出し、必要差分を導き出した。この必要差分の全国合計に対する比率が2020年度時点でもっとも高いのは千葉県。次いで東京都、大阪府、兵庫県。2025年度時点では、もっとも高いのが東京都。大阪府、千葉県、神奈川県、兵庫県、埼玉県となっている。いずれも大都市圏であり、とりわけ首都圏と関西圏で人材不足が深刻化するという結果となっている。

人材不足を解消するカギのひとつが、賃金だ。今年10月にも、新たな処遇改善加算が導入されるが、賃金の高さが就労意欲をかきたてる要素のひとつであることは間違いない。しかし、介護職の賃金は他産業と比べて低い傾向にあることは以前から指摘されている。そのうえ、今回の調査結果では、全国平均を上回る都道府県が、栃木県、埼玉県、千葉県、東京都、愛知県、大阪府、兵庫県の7都府県しかないことが明らかとなった。裏を返せば、残りの40道府県は全国平均を下回っているわけで、介護職の待遇が他産業と比べて決して良くないことを表している。

また、全国平均を上回っている7都府県は、栃木を除いていずれも大都市圏。人材不足が深刻化しているからこそ、各施設が待遇をアップさせて人材確保に躍起となっていることが浮き彫りとなった形だ。しかし、それが成果に結びついているかどうかは不透明。たとえば東京都23区の介護職有効求人倍率は、昨年時点でなんと9.46倍となっており、需給バランスが崩れていることは明白。賃金アップだけで解決するとは思えないレベルであり、事業主体の経営統合を図るといった大胆な施策が必要なフェーズへと進みつつあるといえよう。

◆ 新たな処遇改善加算の名称は「介護職員等特定処遇改善加算」に 「月8万円アップ」の例外規定も設けられる可能性

――厚生労働省
社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会は2月13日、根本匠厚生労働相に処遇改善加算の改定案を答申。10月から新たに設けられる処遇改善加算の名称は「介護職員等特定処遇改善加算」となる。新たな処遇改善加算の目玉は、ベテラン介護職員に月8万円の賃金アップを行うことだが、例外規定を設ける方針も盛り込まれている。制度の解釈によっては、月8万円アップの恩恵を受けられない介護職員が増える可能性も出てきた。

「月8万円アップ」というインパクトのある施策は、2017年12月に閣議決定された「新しい経済政策パッケージ」で初めて提示された。勤続10年以上の介護福祉士に対し、公費約1,000億円を投じて処遇改善を行うとしており、制度設計が進められてきた。

しかし、直近の介護給付費分科会では、すべてのベテラン介護職員に「月8万円アップ」を認めない方向で議論が進んでいた。昨年12月に取りまとめられた「審議報告」では、「『月8万円を増額』『全産業平均(役職者を除く)の年収440万円以上に引き上げ』のいずれかを確保する」とトーンダウン。さらに、今回答申された改定案では、「ただし、介護職員等特定処遇改善加算の算定見込額が少額であることその他の理由により、当該賃金改善が困難である場合はこの限りでない」と付記された。この例外規定は、開設まもない事業所などを対象としているが、当てはまる場合はいずれの賃上げの対象にもならないこととなる。今後、厚労省からの通知で詳細な説明がなされる見込みで、どのような解釈となるのか注目したいところだ。

なお、現在の処遇改善加算はI~Vの5区分があり、マイナス加算となるIVとVについては一定の経過措置を経て廃止となることが決定済み。「介護職員等特定処遇改善加算」と名付けられた新たな処遇改善加算は、従来の上位区分であるI~IIIを取得している事業所のみが対象となる。上位区分の要件を満たすには、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」の双方を満たさなければならない。もっとも加算額が大きい加算Iの場合、「キャリアパス要件」だけでも「(1)職位・職責・職位・職責・職務内容等に応じた任⽤要件と賃⾦体系を整備すること」「(2)資質向上のための計画を策定して研修の実施⼜は研修の機会を確保すること」「(3)経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組みを設けること」のすべてをクリアする必要がある。

◆ 財介護報酬の「消費税臨時改定」が確定     税率アップ分の補填が目的 基本報酬引き上げは小幅

―財務省 財政制度等審議会財政制度分科会
本匠厚生労働相は2月13日、社会保障審議会介護給付費分科会に介護報酬改定案を諮問。分科会はこの日の会合で了承し、新たな介護報酬が決定した。10月1日から施行される。各サービスの基本報酬の引き上げ幅は数単位程度と小さく、たとえば訪問介護は最大2単位。1時間以上の所要時間がかかる身体介護以外はすべて1単位の引き上げとなった。

今回の介護報酬改定は、消費税の税率が8%から10%に引き上げられることに伴うもの。介護保険サービスは非課税取引のため、介護事業者は仕入税額控除を受けられない。消費税率が上がることで負担が増すこととなるため、相当額を補填する措置としてこれまでも臨時改定が行われている。2014年に5%から8%へと増税されたときには、0.63%の引き上げとなった。

基本単位数の上乗せ方法も、前回の消費税増税時と同様。人件費その他の非課税品目を除いた課税経費(介護用品費、委託費等)の割合を、2017年度の介護事業経営実態調査の結果から把握。「課税経費割合×(110/108-1)」の計算式で上乗せ率を算出する(※)。全体の改定率は昨年12月の根本厚労相と麻生太郎財務相との大臣折衝で決定しており、0.39%の引き上げ(国費約50億円相当)となっている。ちなみに障害福祉サービスは0.44%引き上げ、診療報酬は本体が0.41%引き上げ、材料価格は0.03%引き上げ、薬価は0.51%引き下げ。

※課税経費割合は「人件費比率マイナスその他の非課税品目率」。(110/108-1)は税率引上げ分。

なお、基本報酬が引き上げられることで、従来のサービスが利用できなくなるため、在宅サービスの区分支給限度基準額も変更される。要支援1は290円増の50,320円、要支援2は580円増の10万5,310円、要介護1は730円増の16万7,650円、要介護2は890円増の19万7,050円、要介護3は1,170円増の27万480円、要介護4は1,320円増の30万9,380円、要介護5は1,520円増の36万2,170円となる。

◆ 福祉用具のレンタル価格、6,000カ所の事業所を調査     介護ロボットの効果実証や機能訓練の状況も調べる

―厚生労働省
社会保障審議会介護給付費分科会
厚生労働省は2月13日、社会保障審議会介護給付費分科会で、昨年4月に実施された介護報酬改定の効果検証を行う調査の内容を明らかにした。昨年10月に上限価格が設定された福祉用具のレンタル価格については、全国6,000カ所の事業所を対象に、実際の価格設定やサービス提供の実態を調査する。調査は9月頃に実施される予定だ。

福祉用具のレンタルをめぐっては、一般的な水準よりも極端に高額な価格でレンタルされるケースが頻発。状況を重く見た厚労省は、適正価格を提示するための対応策として厚労省はレンタル価格を把握。「全国平均レンタル価格+1標準偏差」で上限価格を定め、それ以上の価格でのレンタルは保険適用外とした。そして昨年10月1日に、用具ごとの全国平均レンタル価格とレンタル価格の上限を公表。さらに福祉用具専門相談員に、レンタルしようとする福祉用具の特徴や価格に加え、その用具の全国平均貸与価格を利用者に説明することを義務付けるなど、要件を厳格化した。レンタル価格の上限を超えた金額でレンタルした場合、福祉用具貸与事業者は「福祉用具貸与費」の算定ができないペナルティも課せられる。

また、福祉用具は新たな商品が次々に出てくるため、毎年1回のペースで上限価格の見直しを行うこととしている。これは、「施行後の実態を踏まえつつ実施」することとしていたため、今回の調査に盛り込まれた次第だ。

ほかに今回の調査では、「介護保険制度におけるサービスの質の評価」「介護サービスにおける機能訓練の状況」「介護ロボットの効果実証」「訪問看護と看護小規模多機能型居宅介護のサービスの提供の在り方」「定期巡回・随時対応型訪問介護看護におけるオペレーター兼務など要件緩和の影響」「医療提供を目的とした介護保険施設でのサービス提供の実態」もテーマに挙げられている。機能訓練については、機能訓練指導員にはり師・きゅう師が追加されたことによる効果も検証することとなっている。

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