ホーム > FAXレポート > 社福レポート > 月刊福祉経営情報 2013年8月 介護職員の1年間の離職率、前年度より増えて17.0%に
公益財団法人介護労働安定センターは8月16日、「平成24年度介護労働実態調査」の結果を発表した。調査は「事業所における介護労働実態調査」と「介護労働者の就業実態と就業意識調査」で構成。前者では調査対象1万7,247事業所のうち7,511事業所が回答し、後者では5万1,741人のうち1万8,673人が回答した。 ■事業所における介護労働実態調査訪問介護員、介護職員の1年間(平成23年10月~24年9月)の離職率は17.0%で、前年度と比べて0.9ポイント上昇した。介護現場では依然として高い離職率が続いている中、早期離職防止や定着促進のための方策(複数回答)を尋ねたところ、「労働時間(時間帯・総労働時間)の希望を聞いている」が62.5%、「職場内の仕事上のコミュニケーションの円滑化を図っている」が62.3%、「賃金・労働時間等の労働条件(休暇を取りやすくすることを含む)を改善している」が57.5%とそれぞれが5割以上を占めた。 従業員の過不足状況については、「大いに不足」「不足」「やや不足」を合わせて57.4%に上り、前年度から4.3ポイント増加。「適当」は前年度より4.1ポイント減り、42.0%にとどまった。 また、介護サービスを運営する上での問題点(複数回答)では、「良質な人材の確保が難しい」が53.0%と最も高く、次いで「今の介護報酬では人材確保・定着のために十分な賃金を支払えない」が46.4%に上った。さらに、介護職員処遇改善加算を算定した事業所の経営面での対応状況(同)では、「一時金の支給」55.6%、「諸手当の導入・引き上げ」44.1%、「基本給の引き上げ」26.5%が上位を占めた。このほか、事業所管理者(施設長)を除く労働者の所定内賃金平均は21万1,900円/月だった。 ■介護労働者の就業実態と就業意識調査現在の仕事を選んだ理由(複数回答)では、「働きがいのある仕事だと思ったから」が最多の54.9%で、「今後もニーズが高まる仕事だから」が38.4%、「資格・技能が活かせるから」が37.2%と続いたほか、「人や社会の役に立ちたいから」も34.6%に上った。 また、「満足」と「やや満足」を合わせた現在の仕事の満足度については、「仕事の内容・やりがい」(54.1%)、「職場の人間関係・コミュニケーション」(47.0%)――等を挙げる声が多かった。 仕事の継続意思では、「働き続けられるかぎり」が55.7%と過半数に上った。一方、労働条件等の不満(複数回答)では、「仕事のわりに賃金が低い」(43.3%)、「人手が足りない」(42.4%)、「有給休暇が取りにくい」(35.6%)などが多数を占めた。 介護保険改革などの「プログラム法案」の骨子を閣議決定~政府 政府は8月21日、社会保障制度改革国民会議の審議の結果等を踏まえ、医療や介護などの改革の”工程表”となる「プログラム法案」の骨子を閣議決定した。政府は今後、同骨子に基づいて社会保障制度改革の全体像や進め方などを明らかにするプログラム法案を策定し、秋の臨時国会の冒頭に提出する方針。 介護保険制度については、「地域包括ケアシステムの構築を通じて必要な介護サービスを確保する観点」を強調。▼地域支援事業の見直しと併せた地域の実情に応じた要支援者への支援の見直し、▼特別養護老人ホームに係る施設介護サービス費の支給対象の見直し――などを挙げ、「第6期介護保険事業計画が平成27年(2015年)度から始まることを踏まえ、必要な措置を平成27年度を目途に講ずる。このために必要な法律案を平成26年通常国会に提出することを目指す」としている。 財源の確保については、「関連する法律の施行により増加する消費税及び地方消費税の収入並びに社会保障給付の重点化・効率化により必要な財源を確保しつつ行う」としている。 介護・保育の規制・制度改革に関する提案事項を公表~国家戦略特区ワーキンググループ 政府の国家戦略特区ワーキンググループはこのほど、介護・保育、医療、雇用・人材など10項目について有識者らから集中ヒアリングした規制・制度改革に関する提案事項を示した。 介護・保育では、▼介護保険報酬を基準とした質の高いサービスに関する価格の上乗せ(混合介護の解禁)、▼介護制度・社会福祉法人制度の見直し、▼訪問看護ステーションの人員配置基準の緩和、▼保育所に関する株式会社の参入促進、▼認可保育所にも多様な保育サービスを容認(混合保育の解禁)――などが提案されている。 介護保険「要支援」サービスの市町村移行に前向きの見解~田村厚労相 介護保険の要支援サービスを制度から切り離し市町村事業に移す社会保障制度改革国民会議の改革案について、田村憲久厚生労働大臣は8月11日のNHK討論番組で、「介護保険の財源を使う」と述べ、市町村に新たな負担が生じないように配慮する考えを明らかにし、前向きに取り組んでいくことを表明した。 要支援サービスの市町村事業化に対しては、▼段階的に進めていくと述べられているが、受け皿が市町村にできるか考えにくい(服部万里子・日本ケアマネジメント学会副理事長)、▼豊かな市町村とそうでない市町村でサービスの質が変わってくる。ナショナルミニマムというスタンダードを決め、余裕のある市町村はやるが、できない市町村はナショナルミニマムで抑えるとした方が、サービス格差が減る」(橘木俊詔・同志社大学経済学部教授)――などの意見が出た。 田村厚労相は「財源は介護保険の財源を使う」と説明したうえで、「要支援のサービス提供は、介護保険の画一したメニューでしか提供できない。各自治体で知恵を出し工夫していただければ、費用が抑えられる。かゆい所に手が届くサービスを重点的に効率的に提供いただくという意味で進めていくべき」と前向きの見解を表明した。また、特別養護老人ホームに関し「要介護度の低い方々も入っている問題があるので、高い方々に基本的に入っていただく形を進めていく必要があると思う」と中重度者に重点化を図っていく考えも示した。 社会福祉事業施設と介護関連施設の建築資金等の利率改定~福祉医療機構 独立行政法人福祉医療機構は8月9日、福祉貸付と医療貸付の貸付利率を改定した。福祉貸付では、社会福祉事業施設と介護関連施設の建築資金や土地取得資金などの償還期間20年超30年以内の貸付利率について固定金利、10年経過毎金利見直し(当初10年)をそれぞれ0.10%引き下げ、固定金利では社会福祉事業施設を1.50%、介護関連施設を1.60%にした。 医療貸付では、病院や介護老人保健施設の新築・増改築資金について、償還期間20年超30年以内の貸付利率を固定金利と10年経過毎金利見直し(当初10年)でそれぞれ0.10%引き下げた。 年内を目途に消費税8%引上げ時の対応を決定~社会保障審議会介護給付費分科会 厚生労働省は8月21日の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護保険サービスに関する消費税の取扱いに関する参考資料を示した。消費税率8%引上げ時の対応では、介護報酬にかかる対応案として、「介護報酬上乗せ対応」と「介護報酬上乗せ対応プラス高額投資への別建て対応」を挙げ、両案のメリットとデメリットを説明。具体的な対応案に関しては、介護報酬と別建ての高額投資対応について「消費税率8%への引上げ時には実施しない」、介護報酬上乗せの具体的な対応方法に関しては「消費税対応分の手当方法の考え方を検討する必要があるが、基本単位数及び消費税負担が相当程度見込まれる加算単位数への上乗せ」を挙げている。一方、10%引上げ時の対応では、「8%引上げ時の具体的な対応結果を踏まえ、医療保険にかかる対応の議論も見ながら、引き続き検討を行う」としている。今後の検討スケジュール(案)も示し、今年秋ごろに基本方針をとりまとめ、年内を目途に8%引上げ時の対応を決める予定。 その他、介護サービスの安全管理について、現場では「要介護度や医療必要度が高い利用者の増加や慢性的な人員不足による職員の負担増大などにより、介護事故の発生を抑えることが大変困難」な現状にあることや全国老人保健施設協会が認定する介護老人保健施設リスクマネジャーの資格試験受験者が減少傾向にあることも報告された。 在宅と認知症対応を重視し、「プライマリ・ケア宣言」~全日本病院協会 公益社団法人全日本病院協会(全日病)は8月7日付で、「プライマリ・ケア宣言2013」を公表した。全日病では、同宣言について「新たな行動目標」と位置づけている。同宣言では、①在宅医療・介護対応宣言と②認知症対応宣言を示しており、①では「すべての会員施設が地域におけるそれぞれの役割を確認し、診療所をはじめ医療・介護・福祉施設との連携を進め、さらなる在宅医療・介護の充実に協働することを宣言する」としている。また、②では認知症を国民的な課題と指摘し、「個別的に、かつ包括的に対応ができるよう、さまざまな具体的方策を提言・実行することを宣言する」としている。 MMPG提供
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