ホーム > FAXレポート > 医院レポート > クリニックニュース 2013年11月20日号
医療経済実態調査結果、公表
《厚生労働省》
厚生労働省は11月6日の中央社会保険医療協議会(以下、中医協)に、第19回医療経済実態調査の結果を報告した。これは病院、一般診療所、歯科診療所、保険薬局における医業経営等の実態を明らかにし、社会保険診療報酬に関する基礎資料を整備するべく実施されている調査で、第19回は、2012年度までに終了する直近2事業年度分(前回の改定前の2011年度と改定後の2012年度)の損益が比較された。
一般診療所の結果は以下の通り。全体の損益差額構成比率(医業及び介護収益から医業・介護費用を引き、医業及び介護収益で割ったもの)は、2012年度は13.7%(2011年度は13.1%)であり、うち、個人立では2012年度29.4%(同28.3%)、医療法人立は2012年度6.0%(同5.7%)。有床診療所では個人・法人を含む全体で、2012年度8.7%(同9.0%)とやや悪化し、無床診療所は2012年度14.8%(同13.9%)であった。一般診療所全体の平均収支は、1,786万7,000円(同1,670万5,000円)の黒字であった。
また、病院の損益率は全体で2012年度はマイナス0.4%(2011年度はマイナス0.9%)で、歯科診療所は全体で2012年度20.3%(同20.2%)であった。また、保険薬局は全体で2012年度5.5%(同6.5%)と1ポイント悪化している。
●無床一般診療所の診療科別損益差額構成比率比較 ※( )内は前年度 全体
基本方針骨子案、社会保障・税一体改革の実現に一本化
《厚生労働省・平成26年度診療報酬改定情報》
厚生労働省は11月8日の社会保審議会医療保険部会に、次期診療報酬改定の基本方針についての骨子案を提示した。社会保障審議会は平成18年度診療報酬改定から「改定の視点」として4項目を示した基本方針をまとめており、20年度改定では改定の視点に「緊急課題」を加え、22年度改定・24年度改定では緊急課題を「重点課題」に変えて2項目を掲げてきた。
今回、提示された26年度改定の基本方針の骨子案は、基本認識の提案として、▼社会保障・税一体改革において、消費税率を引上げ、その財源を活用して、医療の機能強化と、同時に重点化・効率化に取り組み、2025(平成37年)に向けて、医療提供体制の再構築、地域包括ケアシステムの構築を図ることとされている、▼医療機関の機能分化・強化と連携に当たっては、患者が必要な医療を受けられない事態が生じないよう、急性期後の受け皿となる病床を整備し、在宅医療等を充実する必要がある、▼診療報酬と補助金を適切に組み合わせつつ、医療法改正による対応に先駆けて、診療報酬改定に取り組む必要がある、▼平成26年度診療報酬改定において、入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に取り組む ――の4つが挙げられた。
また、「重点課題」は、『医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等』の1項目に絞りこんでいる。社会保障・税一体改革において、消費税率を引き上げ、その財源を活用して、医療の機能強化と同時に重点化・効率化に取り組むこととされている中、入院医療・外来医療を含めた医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等に重点的に取り組む ――と説明し、社会保障・税一体改革を、診療報酬の側面から推進していくとの意向が打ち出されている。具体的な内容は以下の通り。
【入院医療】:急性期病床の機能の明確化、急性期後の受け皿となる病床の整備、有床診の機能に応じた評価 等
【外来医療】:診療所・中小病院の主治医機能の評価、大病院の専門外来の評価 等
【在宅医療】:在宅療養支援診療所・病院の機能強化、在宅療養支援診療所・病院以外の医療機関による在宅医療の推進、訪問看護ステーションの大規模化の推進、在宅歯科医療の推進、在宅薬剤管理指導の推進 等
【連携ネットワーク】:入院、在宅、歯科、薬局、看護、介護等のネットワークにおける円滑な移行や切れ目のない連携 等
「改定の視点」については、以下の4項目が挙げられた。
① 充実が求められる分野を適切に評価していく視点
② 患者等から見て分かりやすく納得でき、安心・安全で生活の質にも配慮した医療を実現する視点
③ 医療従事者の負担を軽減する視点
④ 効率化余地があると思われる領域を適正化する視点
このほか、次期改定で行われる「消費税率8%への引き上げに伴う対応」については、▼診療報酬とは別建ての高額投資対応は実施せず、診療報酬改定により対応、▼基本診療料・調剤基本料への上乗せによる対応を中心としつつ、個別項目への上乗せを組み合わせる形で対応することを基本 ――と明示した。
●改定率について
今回の骨子案のような厚労省の考え方で次期診療報酬改定がまとめられた場合、改定率はある程度のプラス改定、最低でも±ゼロという方向性が予測されるが、すでに財務省では厳しい姿勢を示している。また、11月15日に開催された経済財政諮問会議において、社会保障が議論に取り上げられ、民間委員からの意見として、「デフレ状況下で賃金も物価も下落する中、また、医療技術の進歩により効果化が進展する中、診療報酬の技術料たる本体部分は、上昇を続けてきた。相対的に高い伸びを示してきたことに鑑み、本体部分を抑制すべき」等の意見が寄せられた他、麻生財務大臣による資料では、「医療経済実態調査によれば、医療機関は全体として増収・増益であり、他の産業の動向と比較しても良好な結果」と指摘された。最終的には政治判断となる改定率は年内にも決定される。