ホーム > FAXレポート > クリニックニュース 2013年12月20日号
次期診療報酬改定率、消費税対応分含めて0.1%引上げ
《政府》
政府は12月20日、平成26年度診療報酬の改定率について、来年4月の消費税増税額も含めて0.1%引き上げることを決定した。名目上はプラス改定とするものの、実質的にはマイナス改定であり、これは平成20年以来6年ぶりのことである。
消費税率引上げ相当分は1.36%。増税に伴って生じる医療機関の仕入れのコスト増加などに配慮して医療機関への補てん分を除くと、実質は1.26%のマイナスになる見通しである。薬価・材料価格は市場実勢価格を反映させて1.36%引き下げる。
次期改定をめぐる政府内の閣僚折衝において、財務省は医療経済実態調査等から医療機関の経営が改善傾向にある点を指摘し、マイナス改定を主張。一方、自民党はプラス改定を求めており、調整は平行線を辿っていた。最終局面で自民党等の強い要望に配慮した形となり、微増に至っている。
「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の創設」へ
《自由民主党・公明党 平成26年度税制改正大綱》
与党は、12月12日、平成26年度税制改正大綱を公表した。医療に関する目立った改正内容としては、「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の新設」がある。これは、持分のある医療法人から持ち分のない医療法人への移行を促進するための措置であり、持分あり医療法人の持分を相続又は遺贈により取得した個人に対して、その医療法人が相続税の申告期限において認定医療法人(仮称・良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律に規定される移行計画(仮称)をものとして厚生労働大臣の認定を受けたもの)である場合には、担保の提供を条件に、相続税の納税猶予・免除等が認めるというもの。また、持分ありの医療法人の出資者が持分を放棄したことにより、他の出資者の持分価額が増加し、その増加額に贈与税が課される場合において、その医療法人が認定医療法人である場合は、担保提供を条件に、他の出資者が納付すべき贈与税についても、納税猶予・免除等が創設される。
大綱の検討事項欄には、上記の制度の付言として、地域医療を担う医療法人の医業継続に係る税制のあり方については、これらの制度の効果を見極めつつ、医療法人制度上の課題を検討したうえで、医業継続の実効性確保や課税の公平性等の観点から検討すると明記された。
●社会保障審議会医療部会にて、医療法人の「移行計画認定制度」議論開始
これまで医療法改正に向け議論を重ねてきた社会保障審議会医療部会において、医療法改正案の「持分なし医療法人への移行の促進」の一環として、医療法人の移行計画認定制度の創設が俎上に乗せられた。12月11日に開催された同部会で厚労省当局は、医療法人の任意の選択を前提としつつ、持分なし医療法人への移行を促進するため、医療法人の経営者の死亡により相続が発生することがあっても、相続税支払いのための出資持分払戻などにより医業継続が困難になるようなことなく、地域医療の担い手として、医業を継続して安定的に提供できるよう以下の促進策を提示。▼持分なし医療法人への移行について計画的な取組を行う医療法人を、国(厚生労働省)が認定する仕組みを導入し、法律に位置づける「移行計画認定制度」の創設、▼計画認定を受けた医療法人に対して、厚労省による指導、助言等の支援をする、▼計画認定を受けた医療法人に対して、補助制度、融資制度、税制措置について検討する、▼持分なし医療法人への移行の意義や「出資持分のない医療法人への円滑な移行マニュアル」の活用、周知を図る ――といった具体的内容が提案された。
消費税引き上げに伴う介護報酬改定の方針、提示
《厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会》
12月10日に開催された社会保障審議会介護給付費分科会において、平成26年4月より消費税の引上げに伴う介護報酬改定についての方針が提示され、翌日、老健局老人保健課から各都道府県介護保険担当主管部(局)等に向け、「第97回社会保障審議会介護給付費分科会の審議結果について」と題した介護保険最新情報vol.346が出された。
消費税率8%引上げ時には、介護報酬とは別建ての高額投資対応は行わず、また、介護報酬における対応としては、基本単位数への上乗せを基本としつつ、消費税負担が相当程度見込まれる加算があれば、それらにも上乗せを行うとした。具体的な算出に当たっては、「平成25年度介護事業経営概況調査」の結果等により施設・事業所の課税割合を適切に把握した上で、消費税率引上げに伴う影響分について必要な手当てを行うと明記。
基本単位数への上乗せ率は、各サービスの人件費、その他の非課税品目を除いた課税割合を算出し、これに税率引上げ分を乗ずる等により基本単位上乗せ率を算出する。また、加算については、基本単位数に対する割合で設定されている加算、福祉用具貸与に係る加算の上乗せ対応は行わない。その他の加算のうち、課税費用の割合が大きいものについては、基本単位数への上乗せ率と同様に課税費用に係る上乗せ対応を行う。また、課税費用の割合が小さいものなど、個別に上乗せ分を算出して対応することが困難なものについては、基本単位数への上乗せに際し、これらの加算に係る消費税負担分も含めて上乗せ対応を行う。
また、区分支給限度基準額については、「消費税引上げに伴う介護報酬への上乗せ対応を行うことにより、従前と同量のサービスを利用しているにもかかわらず、区分支給限度基準額を超える利用者が新たに生じること等から、引上げることとする。なお、特定福祉用具販売と住宅改修に係る支給限度基準額については、当該サービス費は介護保険制度創設時から公定価格ではないこと等から、引き上げないこととする」との結論が明記された。
医療法改正に関する意見案、取りまとめへ
《厚生労働省 社会保障審議会医療部会》
厚生労働省は12月11日、社会保障審議会医療部会において、医療法改正に関する意見案の素案を提示した。これは本年6月より同部会で検討してきた医療提供体制改革の具体的内容をとりまとめたものであり、以下の内容が挙げられた。▼病床機能報告制度の創設、▼地域医療ビジョンの策定、▼地域医療ビジョン実現のために必要な病床の区分・都道府県の役割強化等、▼在宅医療の充実、医療と介護の連携の推進等、▼国、地方公共団体、病院、有床診療所及び国民の役割、▼地域の実情に応じた医師・看護師等の確保対策、▼医療機関の勤務環境改善、▼チーム医療の推進(特定行為に係る看護師の研修制度の創設、診療放射線技師の業務範囲及び業務実施体制の見直し、臨床検査技師の業務範囲の見直し、歯科衛生士の業務実施体制の見直し)、▼医療法人に関する制度の見直し(持分なし医療法人への移行の促進、医療法人間の合併及び権利の移転に関する制度等の見直し)、▼医療事故に係る調査の仕組み、▼臨床研究の推進 ――等。
今後、同部会では文言等の修正を経て取りまとめ、厚労省より次期通常国会に医療法改正案の提出等を求めることにしている。