ホーム > FAXレポート > クリニックニュース 2014年1月6日号
医療法人の非営利HD型法人制度の創設を柱に、中間整理
《政府、産業競争力会議 医療・介護等分科会》
政府の産業競争力会議の医療・介護等分科会は2013年12月25日、中間整理をまとめた。柱は、医療・介護などを一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設で、その他、医療法人制度に関する規制改革にも言及している。
2013年6月14日に閣議決定された日本再興戦略において、健康長寿産業は戦略的分野の一つに位置づけられた。政府は、健康寿命延伸産業や医薬品・医療機器産業などの発展に向け、数多くの施策を掲げ、医療・介護分野を「制度の設計次第で巨大な新市場として成長の原動力になり得る分野」とした上で、「どう成長市場に変え、質の高いサービスを提供するか、制度の持続可能性をいかに確保するかなど、中長期的な成長を実現するための課題が残されている。」とした。その残された課題への対応を検討するとともに、再興戦略中の関連施策をフォローアップするために、産業競争力会議の医療・介護等分科会が設置されたという経緯がある。今回の中間整理では、“医療・介護分野は、高齢化の進展に伴い今後確実に「市場規模」が拡大するという意味では「成長産業」であるが、他方、医療、介護を含む社会保険が現在巨額の後代負担を生みながら運営を行っていることは、制度の持続可能性等の観点から大きな問題であり、社会保障制度改革国民会議等で指摘されている諸々の制度改革を速やかに実施していく必要がある”ということを前提に、国民ニーズにかなう質の高い医療介護サービスを持続可能な形で提供しつつ、経済成長にも資するという理想的な姿の実現のための取り組みをまとめた。
中でも、効率的で質の高いサービス提供体制の確立の具体策として、「医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールティングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」を挙げ、複数の医療法人および社会福祉法人等を束ねて一体的に経営することを法制上可能とすることを提案。複数の法人が一体となることで、病床機能分化や医療・介護等の連携が容易になり、急性期医療から在宅介護・生活支援サービスに至る高齢者が必要とする一連のサービスを切れ目なく、体系的に行うことが可能と説明している。創設のメリットとして、▼経営者側が、病床や診療科の設定、高額医療機器の導入、人事、医療事務、仕入れ等を統合して行える他、資金調達の一括化による調達コスト抑制など経営の効率化を図ることができる、▼グループ内法人間で人材の異動が可能となれば、医療介護従事者のキャリアアップの可能性が高まり、この分野の雇用吸収力が強化する――等を示した。また、本制度創設に併せて規制改革を進める必要性にも言及し、▼構成員となれる者の規制範囲緩和、▼議決権その他の新法人の意思決定・ガバナンスに関する事項の自由化、▼資金調達の円滑化、余裕資金の効率的活用を可能とするべくグループ内法人間での金銭貸与や債務保証の認可、▼新法人から医療介護事業を行う営利法人への出資認可 ――等の措置についての検討を提案した。こうした項目については、2014年中に結論を得て、制度的措置を速やかに講じるよう要請している。
中間整理には、医療法人制度に関する規制の見直しも3点盛り込まれた。①医療法人の合併規制の見直し、②医療法人の附帯業務の拡充、③社会医療法人の認定要件の見直し ――が提案され、これらも実現に向けて2014年中に検討し、その結果に基づき制度的措置を速やかに講じると明記されている。
中間整理に盛り込まれた内容は、2014年1月下旬にまとめられる産業競争力会議の検討方針に反映され、成長戦略(改訂版)につなげられる。
医療法改正等に向け、厚労省に意見
《内閣府、規制改革会議 健康・医療WG》
内閣府は2013年12月20日、規制改革会議を開催し、その中で健康・医療ワーキンググループから厚生労働省に対する「医療提供体制に関する意見」が報告された。これは同WGにおける、これまでの医療法や医療提供体制の制度改正についての議論を取りまとめたものである。▼高齢化が進展し医療需要が高まる中、地域の限られた医療資源を有効に活用すること、▼単身又は夫婦高齢者世帯の割合の増加等から、在宅医療・介護提供体制の早急な構築 ――が必要とされていることを背景に、現在、医療法や医療提供体制に係る制度改正が厚労省を中心に検討されていることから、以下の項目について提言がなされた。
最適な地域医療の実現に向けた医療提供体制の構築や生活の場での医療・介護環境の充実を目的に、①医療計画の在り方の見直し、②医療資源の適正配置、③二次医療圏の範囲等の見直し、④病床規制の見直し、⑤7対1看護基準の見直し、⑥地域医療支援センターの見直し、⑦プライマリケア体制の確立、⑧我が国の医療提供体制の目指すべき方向性の提示、⑨在宅医療専門の診療所、⑩特別養護老人ホームにおける医療環境の改善、⑪医薬品・衛生材料の提供 ――等の項目を挙げている。
具体的には、①医療計画の在り方の見直しについては、▼都道府県策定の医療計画と介護保険事業支援計画、医療費適正化計画等の見直し時期の一致と総合的な取組、▼医療計画の策定にあたり保険者の意見も取り入れる仕組みの構築、▼医療計画に医療ICT化の計画について盛り込む ――ことが必要としている。また、②の医療資源の適正配置については、▼医療計画の実効性を高めるため、都道府県において、地域ごとの必要医師・看護師数、必要医療機器数、診療科ごとの必要医師数を順次推計し、医療資源の過不足を的確に把握し、公表すべき、▼医師の偏在是正のため、医師不足の地域や診療科への就業インセンティブを充実させるべき ――等を提案。その他、⑨在宅医療専門の診療所については、在宅医療を専門に行おうとする診療所の開設要件を明確化するとともに、外来機能要件の緩和を検討すべきと指摘した。
介護保険制度改革案まとまる
《厚生労働省 社会保障審議会介護保険部会》
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会は、2013年12月20日、「介護保険制度の見直しに関する意見」を取りまとめた。今回の制度の見直しは、地域包括ケアシステムの構築と介護保険制度の持続可能性の確保の2点を基本的な考え方とし、主な見直し項目は以下の通り。▼地域包括ケアシステムの構築に向けた地域支援事業の見直し(在宅医療・介護連携の推進、認知症施策の推進、地域ケア会議の推進、生活支援サービスの充実・強化、地域包括支援センターの機能強化)、▼地域支援事業の見直しに併せた予防給付の見直し、▼小規模通所介護の地域密着型サービスへの移行、▼住宅改修事業者の登録制度の導入、▼居宅介護支援事業所の指定権限の市町村への移譲、▼特別養護老人ホームの中重度者への重点化、▼サービス付き高齢者向け住宅への住所地特例の適用、▼介護サービス情報公表制度の見直し、▼費用負担の見直し(低所得者の1号保険料の軽減強化、一定以上所得者の利用者負担の見直し、補足給付の見直し)、▼2025年を見据えた介護保険事業計画の策定 ――等。
介護保険制度の見直しは、社会保障・税一体改革において、重要項目に位置づけられており、今後は、厚労省で介護保険法等改正案を策定し、「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(プログラム法)」に明記されているように、2014年通常国会に法案を提出する方針である。