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医療経営情報(2019年12月5日号)

◆ 麻生財務相、次期改定が予算編成の「大きな論点」と発言                             「診療報酬引き上げは国民の負担増」としマイナス改定を迫る

――経済財政諮問会議
麻生太郎財務相は、社会保障制度改革をテーマとした12月5日の経済財政諮問会議で、来年度の次期診療報酬改定が「予算編成の大きな論点」との認識を示した。さらに、「診療報酬の引き上げは国民にとって負担増になる」とし、「慎重に対応する必要がある」と発言。診療報酬本体のマイナス改定を促すべきだとの考えをにじませた。

この麻生財務相の発言は、加藤勝信厚生労働相の説明を受けてのもの。加藤厚労相は、医療経済実態調査の結果をもとに「約半数の病院は損益率が低下」「3分の1以上の病院は赤字」とし、医療機関の経営状況が厳しいことを訴えた。しかし、麻生財務相は「全体は赤字だが、国公立を除けば黒字。医療法人全体だともう少し黒字が増える」と反発。民間議員からも同様の意見が出ている。

麻生財務相の意見は、11月末に財務省の財政制度等審議会(財政審)がとりまとめた「令和2年度予算の編成等に関する建議」に基づいたものだ。来年度の診療報酬改定について、「2年間で2%半ば以上のマイナス改定とする必要がある」と提言しているほか、診療報酬本体について「賃金や物価の水準と比べて高い水準」と指摘。その根拠として、過去10年間で国民医療費が年平均で2.4%増加していること、そして高齢化の要因による増加は年平均1.1%程度であるとしている。そのうえで、診療報酬を1%減らせば約4,600億円の医療費抑制につながり、国民の負担が軽減できるとした。

財政審の提言は、ひとえに「財政健全化」を念頭においたものであり、コストダウン意識が先に立ったものだ。昨年の建議でも同様の内容を盛り込み、日本医師会からの猛反発を受けた。今回も、同会の横倉義武会長は建議が発表されたあとの記者会見で「他産業に比べて医療分野の賃金の伸びが低いことも踏まえ、前回を大幅に上回り、さらに働き方改革が実現できるような改定率を確保するなど、地域の医療現場を支えるために十分な手当を講じるべきである。これは、『医療政策研究会』や『国民医療を守る議員の会』でも決議を頂いている」と反論。その意向を受け止めてか、この日の経済財政諮問会議でも加藤厚労相は同様の主張を展開した。

財務省と厚労省が診療報酬改定前に対立するのは毎回のこと。むしろ、対立構図を明らかにすることで、保険料や窓口負担割合を引き上げやすくしているようにも見える。今回はマイナス改定に踏み切るとの論調が強いが、同時に75歳以上を2割負担へ引き上げるとの意向も出されていることから、世論や医療団体の反応を図っている側面もあるのではないか。そういう意味では、厚労省の中央社会保険医療協議会だけでなく、日本医師会やその他の医療団体の動きにも注視する必要があるだろう。

2次救急患者の受け入れ件数が多い医療機関を「新加算」で評価
「救急医療管理加算」は重症度のスコアを記載する項目を設ける

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会
厚生労働省は、12月4日の中央社会保険医療協議会総会で、2次救急患者の受け入れ件数が多い医療機関を、新たな加算で評価する方針を示した。また、重症度が必ずしも高くない症例が一定程度あることが問題となっていた「救急医療管理加算」については、重症度のスコアを記載する項目を設ける案を提示している。

救急業務は、症状と緊急性によって3段階に分かれている。軽症の場合は1次、重症・重篤な症状の場合は3次、必ずしも重篤とはいえないが緊急入院が必要な場合などが2次救急の対象となっている。とはいえ、2次救急が3次救急よりも業務負担が軽いわけではない。いずれも24時間体制をとっており、現場の医師は長時間勤務を強いられる傾向にある。搬送患者数が多ければなおさらだ。

実際、「平成29年度病床機能報告」によれば、年間救急搬送受入件数が2,000件以上の二次救急医療機関は、受入件数の少ないそれと比べ、週60時間以上の長時間勤務を行っている医師の割合が大きい。その理由は、脳卒中や急性心筋梗塞といった心疾患の緊急治療対応が多いからだ。その分、対応できる体制を整えなければならないのはいうまでもないため、そこを評価しようというわけだ。

「救急医療管理加算」は、救急医療の中でも重篤な患者を受け入れた際に、通常よりも要する治療や検査が多くなることを配慮して設けられた加算。現在、意識障害や呼吸不全の患者を対象とした「救急医療管理加算1」(900点)と、加算1に「準ずる重篤な患者」を対象とする「救急医療管理加算2」(300点)があるが、その要件定義は曖昧だ。「救急医療管理加算2」は明確な状態を要件化しておらず、そのためか算定数は増加傾向にある。「救急医療管理加算1」も、算定患者を分析したところ、指標上の重症度が必ずしも高くない症例も一定程度あったことが判明している。

そこで、より適切な評価をするため、必要な項目に重症度のスコアを記載しようというわけだ。たとえば意識障害ではJCS(Japan Coma Scale)やGCS(Glasgow Coma Scale)、呼吸不全や心不全ではNYHA心機能分類やP/F比、ショック状態には平均血圧の測定記録を反映することになると考えられる。とはいえ、これらの指標の基準値を来年度の次期診療報酬改定までに導き出すのは現実的ではない。この日の議論でもそうした意見が出されており、次期改定でどのように変わるかは不透明な状況だ。むしろ、本当に重篤な患者を受け入れたときに加算を算定するように、厚労省が医療機関を牽制する目的があったのではないか。いずれにしても、次々期改定時までに基準値を設けることになりそうなため、医療機関側は対策をとっておいたほうがよさそうだ。

◆ がんゲノム医療拠点病院を「中核拠点病院」と同じ評価に                      「個別栄養食事管理加算」をがん以外にも拡大へ

――厚生労働省
中央社会保険医療協議会
 厚生労働省は、12月4日の中央社会保険医療協議会総会で、「がんゲノム医療拠点病院」を「がんゲノム医療中核拠点病院」と同等に評価することを提案。また、「個別栄養食事管理加算」の対象疾患をがん以外にも拡大すると提示。いずれも概ね了承されている。

 がんゲノム医療は、がんの組織を用いて多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異を明らかにすることで一人ひとりの体質や病状に合わせた治療を行うもの。副作用の軽減や症状の緩和が期待できるため、注力分野のひとつとなっている。2018年2月には全国11カ所の医療機関を「がんゲノム医療中核拠点病院」と指定し、それと連携する「がんゲノム医療連携病院」を全国156カ所に指定した。その直後に行われた2018年度診療報酬改定で、「がんゲノム医療を提供する保険医療機関に対する加算」を新設。「がんゲノム医療中核拠点病院」は、入院初日に250点を算定できるようになった。

 今年9月、さらにがんゲノム医療の提供体制を整備するため、新たに「がんゲノム医療拠点病院」を全国34カ所に指定。これらは「がんゲノム医療を提供する保険医療機関に対する加算」の対象ではない。しかし、その要件はがんゲノム医療に係る情報共有の機会の提供や、研修に係る要件を除いて「がんゲノム医療中核拠点病院」とほぼ同じであるため、同様の評価をするべきだとの声があがっており、今回の厚労省案はそれに応えた形だ。

 なお、この日の総会では、「がん診療連携拠点病院」のうち、指定要件の充足状況が不十分と判断された「地域がん診療連携拠点病院(特例型)」が「地域がん診療病院」と同様の評価にする方針も示された。「がん診療連携拠点病院」は500点の加算を算定できるが、「地域がん診療病院」は300点。実質的な降格措置を受けた病院に対し、実情に見合った評価を与えようというわけだ。

 「個別栄養食事管理加算」に関する見直しも、実情を踏まえたものだ。「個別栄養食事管理加算」は、一般病床での緩和ケアを評価する「緩和ケア診療加算」の上乗せ加算。「緩和ケア診療加算」は、2018年度改定でがん以外に後天性免疫不全症候群と末期心不全も対象疾患となったが、「個別栄養食事管理加算」はがんのみだったため、足並みをそろえた形となる。

◆ 複数医療機関の勤務医の時間外労働、通算時間は「自己申告」                           「追加的健康確保措置」は勤務時間の長い医療機関が実施

――厚生労働省 医師の働き方改革の推進に関する検討会
 厚生労働省は、12月2日の「医師の働き方改革の推進に関する検討会」で、医師の時間外労働は複数の医療機関で勤務する場合も通算し、年間960時間以下(救急医療機関や研修医の場合は年間1,860時間以下)を遵守する方針を示した。しかし、その通算時間は勤務医の自己申告に頼ることになりそうだ。また、勤務医の健康を守るため「追加的健康確保措置」を義務付ける予定となっているが、複数の医療機関に勤務する医師の場合は、もっとも勤務時間が長い医療機関が実施するべきとした。

 2024年度から、医師の時間外労働も上限が設けられる。しかし、医師の多くは副業・兼業をしているのが実情。しかも、出身の大学のみならず他のルートから依頼されるケースも多く、第三者が実態を正確するのは極めて難しいといえよう。それこそ、勤務中に必ず身につけるツールをIoT化して一元管理するしかないが、少なくとも今の時点では現実的ではない。

 そうなると、「追加的健康確保措置」をどこの医療機関が実施するかという問題にもなる。前述したとおり、厚労省は「もっとも勤務時間が長い」ところが行なうべきだとしており、普通に考えれば、メインで勤務する医療機関ということになる。しかし、副業先が2次救急の病院である場合、話はややこしいことになるだろう。場合によっては、複数の勤務先で勤務時間が同じくらいというケースもありうる。

 さらに問題なのは、こうした規定を設けることで、大学病院など基幹病院が地域の医療機関への医師派遣に消極的になる懸念があることだ。同検討会の構成員である日本医師会の今村聡副会長も「一部の大学病院で派遣をストップする動きがある」と指摘している。逆に、勤務時間の過少申告を迫る動きが出てくることも予想されよう。いずれにしても、厚労省案はまさに「絵に描いた餅」であり、実際に適用されたとしても骨抜きの運用となる可能性が極めて高いのではないか。

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