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介護経営情報(2019年12月12日号)

2020/1/24

◆ 特養、看取り対応や医療的ケアを実施する施設の利用率が高い傾向                               約3割は人材紹介会社を利用 1人あたり紹介手数料は59.7万円

――独立行政法人福祉医療機構
福祉医療機構は12月11日、「2019年度『特別養護老人ホームの入所状況に関する調査』の結果について」と題したレポートを公表。看取り対応のための取り組みを実施している施設や、「点滴」「喀痰吸引」「胃ろう・腸ろう」といった医療的ケアが必要な利用者の受け入れに前向きな施設のほうが、そうでない施設よりも利用率の高い傾向がみられたとしている。また、2018年度に人材紹介会社を利用して介護職員を雇用した特別養護老人ホーム(特養)は29.2%、雇用した介護職員1人あたりの人材紹介手数料は59.7万円だった。

この調査は、福祉医療機構の融資先である特別養護老人ホーム3,568施設を対象に、今年10月1日から23日の間で実施された。有効回答数は1,160、有効回答率は32.5%で、回答施設の施設形態は従来型が39.4%、個室ユニット型が49.3%、その他が11.3%。平均定員数は67.3人で、50人以上79人以下が40.5%ともっとも多く、次いで80人以上99人以下が22.8%、29人以下が17.0%だった。

回答施設の15.5%はここ1年間で利用率が低下したとしており、利用率が上昇した施設を上回った。低下の理由としては、「入院者の増加」と「他施設との競合が激化」が各2割となっており、利用者の重度化が進んでいることが窺える。1施設あたりの平均待機者数は100.8人で、2年前の同調査の117.3人に比べると16.5人減少。この1年間は、都市部でも待機者数が減少したとする施設の割合が多くなっている。

利用率向上のための取り組みとしては、自治体など関係機関との情報共有を中心とした連携が効果的との回答が73.9%と大半を占めた。それまで何らかの介護保険サービスを利用していたケースが多いことから、在宅系サービス事業所との連携も重要であることがわかる。

看取り対応や医療的ケアに関しては、2018年度介護報酬改定でより一層評価されるようになった。具体的には、「配置医師緊急時対応加算」(早朝・夜間は650単位/回、深夜は1,300単位/回)のほか、入所者の死亡場所が施設内であった場合に算定できる「看取り介護加算(II)」(144~1,580単位/日。1,580単位は死亡日)が新設されている。福祉医療機構のレポートでは、「今後も特養には、地域包括ケアシステムの中でこれらのニーズに
積極的に対応していくことが期待されている」としたうえで、「地域の医療的ケアを含む利用ニーズを的確に察知・把握し、積極的に対応しようとする姿勢が施設経営上も好ましい結果につながることを示唆している」と分析。医療的ケアを行える職員の増員や、配置医師・協力医療機関の医師体制強化、看取り対応のための研修実施と言った施策が効果的だとしている。

人材紹介会社を利用した人材確保については、2018年度の平均雇用者数は3.3人。人材紹介手数料は60万円以上80万円未満が32.4%、40万円以上60万円未満が21.8%、80万円以上100万円未満が16.3%。全体の平均は59.7万円だが地域差があり、都市部(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、京都府、兵庫県、福岡県)は平均62.4万円、地方部は平均55.7万円だった。

以前は介護人材紹介会社の紹介手数料は介護職員の年収の15%程度が多かったものの、最近は20~30%が主流と、一般的な人材紹介会社の相場である30%程度に近づいている傾向が目立つ。介護職の深刻な人手不足を反映しているといえるが、あまり高額になると経営を圧迫しかねないだけに、今後の手数料相場の変動から目が離せないといえそうだ。

◆ 「介護休暇」、1時間単位での取得が可能に 2021年1月から                     パワハラ防止の義務化も決定 中小企業は2022年4月から適用

――厚生労働省
労働政策審議会 雇用環境・均等分科会
厚生労働省は、12月10日の労働政策審議会雇用環境・均等分科会で、現在半日単位となっている「介護休暇」の取得を1時間単位にする省令改正案を示し、承認された。育児・介護休業法の施行規則を改正し、2021年1月から適用される。なお、この分科会ではパワーハラスメント(パワハラ)防止を企業に義務づける省令改正案も承認。大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から適用されることとなる。

介護休暇は、育児・介護休業法によって定められている制度。年次有給休暇とは別に、要介護状態になった両親や身内などの家族を介護・世話する労働者に対して与えられる。当該家族が1人の場合は1年間に5日、2人以上の場合は1年間(4月1日から翌年3月31日まで)につき10日まで取得可能だ。

しかし、現在の取得最小単位は半日であるため、ケアマネジャーと行うケアプラン見直しなどの面談や、突発的な対応など短時間で済む場合に見合わないとの声が多かった。年間5日間しか取得できないのだから当然だ。1時間単位での取得を可能としたことで、ケアマネジャーのスケジュール調整や、家族介護者の職場との調整がしやすくなることが期待される。実際、省令改正案に対して11月に実施したパブリックコメントで寄せられた意見のほとんどが賛意を示すものだった。ただし、管理が複雑になることから、予定よりも6カ月繰り下げてほしいとの意見もあり、企業の労務管理に混乱をきたす可能性はありそうだ。

パワハラ防止対策の義務化については、就業規則でパワハラを行ってはならないことを明確化するなど、介護サービス事業者でも本格的な取り組みが求められる。持続的に人材を確保するためにも、早めに対応する必要があるだろう。

◆ 厳格化された居宅介護支援事業所の管理者要件、経過措置延長へ                                主任ケアマネジャーが管理者ではない事業所が対象 2028年3月末まで

――厚生労働省
社会保障審議会 介護給付費分科会
 厚生労働省は、12月12日の社会保障審議会介護給付費分科会で、管理者が主任ケアマネジャー(主任介護支援専門員)ではない居宅介護支援事業所に対して、経過措置を延長する方針を示した。2022年3月31日時点で主任ケアマネジャーでない者が管理者である場合、2028年3月31日まで要件の適用を猶予する。なお、2022年4月1日以降に新たに管理者となる者に対しては、経過措置は適用されず、主任ケアマネジャーであることが求められるとした。

 居宅介護支援事業所の管理者要件の厳格化は、2018年度介護報酬改定の議論が行われる中で決まった。管理者を主任ケアマネジャーとしたのは、ケアマネジメントの質を向上する狙いがある。主任ケアマネジャーは、原則として5年以上の実務経験を持つことが求められるからだ(※)。実際、厚労省によれば、管理者が主任ケアマネジャーである居宅介護支援事業所は、そうでない事業所と比べ、居宅サービス計画等に関する事業所内での検討会の定期的な開催や、事業所のケアマネジャーに対する同行訪問による支援(OJT)を行っている割合が高く、「人材育成の取組が引き続き推進されている状況がある」としている。

 しかし、主任介護支援専門員研修は合計70時間の受講が必要。更新研修でも46時間となっており、忙しい日常業務をこなしながら受講するのは困難だ。しかも、5年以上の実務経験を持つ人材となるとかなり限定される。厚労省によれば、「経過措置期間中に修了できる見込みがない又はわからないと回答した事業所が約2割」であり、もっとも多い理由は実務経験5年以上の要件が満たせないというものだったという。この「実務経験5年」と「研修受講時間70時間」の双方を満たすため、6年間という長期間の経過措置延長になったといえよう。研修方法や研修費用など、研修をより受講しやすくなるように環境整備を進めるべきという意見があるほか、介護サービス系の業界団体のみならず日本医師会も経過措置延長に賛成の意を示したことが、今回の厚労省判断の後押しになったとの見方もできるかもしれない。

※主任介護支援専門員研修の受講要件は以下のとおり。
介護支援専門員更新研修終了者であって、以下の①から④までのいずれかに該当する者
① 専任の介護支援専門員として従事した期間が通算して5年(60 ヶ月)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
② ケアマネジメントリーダー養成研修修了者又は日本ケアマネジメント学会が認定する認定ケアマネジャーであって、専任の介護支援専門員として従事した期間が通算して3年(36 ヶ月)以上である者(管理者との兼務期間も算定可能)
③ 主任介護支援専門員に準ずる者として、現に地域包括支援センターに配置されている者
④ その他、介護支援専門員の業務に関し十分な知識と経験を有する者であり、都道府県が適当と認める者
※ その他、質の高い研修を実施する観点から、都道府県において上記要件以外の要件を設定することも可能。

◆ 厚労省の補正予算案、計1,272億円                                     社会福祉施設の災害対策に約100億円を投入

――厚生労働省
 厚生労働省は、12月13日に閣議決定された今年度の補正予算案の概要を公表。追加額は1,272億円で、6割以上となる786億円を「災害からの復旧・復興と安全・安心の確保」に充てる。社会福祉施設関連では、災害復旧に112億円、非常用自家発電装置や給水設備の整備に95億円、災害時情報共有システムの整備に3.5億円を投入。災害対策に約100億円を投じる計算となった。予算案は、来年1月に招集される通常国会に提出・審議される。

 災害時情報共有システムは、被災施設への迅速かつ適切な支援を行うため、災害時の被害情報を集約するのが目的。災害時の高齢者福祉施設や障害者福祉施設、児童福祉施設の被害状況を国・自治体が迅速に把握できるようにする。

 そのほか、介護現場の生産性を向上するため、各自治体の先進的な取り組みを収集し、生産性向上のモデル事例として全国へ普及・展開を図る「介護事業所における生産性向上の推進」には1.5億円、ICT・ロボットを活用した生産性向上支援には11億円を投じる。

 補正予算とは、当初予算成立後に発生した事由によって予算通りの執行が困難となったときに組まれる予算のこと。今回、災害対策に重きを置いたのは、度重なる大型台風や、それに伴う停電などの事態が起こったからだろう。水道施設や医療施設、社会福祉施設の災害復旧に約200億円を投じたほか、「水道施設の停電・土砂災害・浸水災害対策の拡充等」には214億円を投じている。

なお、今回の補正予算でもっとも多額を投じるのは「待機児童解消に向けた保育所等の整備」。内閣府が発表した「子育て安心プラン」にそって、保育の受け皿整備を進める。来年度末までに全国の待機児童解消を目標としており、全項目の中でもっとも多くの予算が割かれている。

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