ホーム > FAXレポート > 社福レポート > ウェルフェア・レポート 2014年2月25日号
「質の高い医療提供体制や地域包括ケアの構築を進める」
~衆院厚労委での審議入りに先立ち、田村厚労相が所信表明
田村憲久厚生労働相は2月19日、衆議院厚生労働委員会での審議入りに先立って所信表明を行い、質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムの構築などを進めていくことを強調した。
田村厚労相は、医療・介護について「できる限り住み慣れた地域で継続的に生活できるよう、効率的で質の高い医療提供体制や地域包括ケアシステムを構築していくことが必要だ」と強調。同12日に国会に提出した「医療・介護総合確保推進法案」に、▼新たな基金を活用した医療・介護サービスの提供体制の総合的・計画的な整備、▼病床機能報告制度の創設や地域医療構想の策定等による医療機能の分化・連携の推進、▼介護保険制度における在宅医療・介護連携等の推進、▼介護予防給付の一部の地域支援事業への移行、▼費用負担の公平化――などを盛り込んだことを説明した。障害者支援では、「障害者総合支援法」等の円滑な施行に取り組み、障害者を地域で支える体制を構築することなどを強調。社会福祉法人の在り方を検討していくことも挙げた。
「医療・介護総合確保推進法案」を閣議決定し国会に提出
~政府
政府は2月12日、医療と介護を一体的に改革する「医療・介護総合確保推進法案」を閣議決定し国会に提出した。同法案は大別すると、①新たな基金の創設と医療・介護の連携強化(地域介護施設整備促進法等関係)、②地域における効率的かつ効果的な医療提供体制の確保(医療法関係)、③地域包括ケアシステムの構築と費用負担の公平化(介護保険法関係)──で構成している。 (次ページへ続く)
①では、病床の機能分化・連携や在宅医療・介護を推進するため、消費税増収分を活用した新たな基金(904億円)を都道府県に設置。③では、▼要支援者に対する介護予防給付のうち訪問介護と通所介護を市町村の地域支援事業に移行、▼特別養護老人ホームへの入居を要介護3以上に重点化、▼一定以上の所得(年金収入のみの単身者で年収280万円以上)のある利用者の自己負担を2割へ引き上げ、▼「補足給付」の見直し(預貯金が単身で1,000万円超、夫婦で2,000万円超は対象外)などを追加──を盛り込んでいる。
このほか、◆医療法人社団と医療法人財団の合併、持分なし医療法人への移行の促進、◆介護人材確保対策の検討(介護福祉士の資格取得方法見直しの施行時期を2015年度から16年度に延期)──等も示している。介護保険法関係は15年4月以降などに順次施行の予定。
「2014年度を第一歩とし、社会保障制度改革に取り組む」
~推進本部の初会合で安倍首相が決意
首相官邸によると、安倍晋三首相は2月14日に開いた「社会保障制度改革推進本部」の初会合で、2014年度を改革の第一歩として改革に取り組んでいくとの決意を語った。
安倍首相は「まずは本年4月、消費税率引き上げによる税収を全額社会保障に充て、在宅での医療・介護サービスや難病対策などを充実していく」と表明。そのうえで、「受益と負担の均衡の取れた制度としていくには、不断の改革が必要。14年度を改革の第一歩とすべく、この本部を『司令塔』として、しっかり取り組んでいく」と述べた。
地域包括ケア「目指すべき姿を国民に分かりやすく説明」
~社会保障と税を集中審議した衆院予算委で安倍首相
安倍晋三首相は、社会保障と税などを集中審議した2月17日の衆議院予算委員会で、地域包括ケアシステムに関する公明党の桝屋敬悟委員の質問に対し、「目指すべき改革の姿を国民に分かりやすく説明したい」などと答えた。
安倍首相は、地域包括ケアシステムの構築に関し「概ね中学校区に、安心して住み続けられる住まいをまず確保していく。そして医療や介護サービスはもちろん、健康づくりや介護予防、配食サービス、見守りなど、個人のニーズに合ったさまざまなサービスを受けることができる仕組みを整備する」と説明。「さまざまなサービスを一体的に提供できる地域の体制が地域包括ケアシステムと考えている」として、目指している改革の姿を国民に説明する必要性にも言及した。
介護の人材確保「世の中の意識を変えていくことも課題」
~衆院予算委で安倍首相
安倍晋三首相は2月17日の衆議院予算委員会で、介護職の人材確保に関する公明党の桝屋敬悟委員の質問に、待遇改善やキャリアアップ支援を図るほか、世の中の意識を変えていくことも課題とした。
安倍首相は、介護を必要とする人が増えている一方、介護職の確保が追い付いていない状況を認め、「2009年度の補正予算においても待遇改善の予算を付けたが、これからも待遇改善を行っていく。資格を取るための支援も行う。さらにキャリアアップの支援もしていく」と説明した。意識改革の必要性も挙げ、「学生の時から現場をしっかり見てもらい、大切な仕事と理解してもらうことも大切。仕事がきつく、報酬も低い、キャリアアップもなかなか難しいという意識ができている。世の中全体の見方も変えていくことが大切だ」と強調。待遇改善やキャリアアップ、職場環境の改善のほか、介護機材の改良・進歩の重要性も挙げ、介護職の確保に力を入れる考えを示した。
要支援者のサービス「必要なら今までどおり受けられる」
~衆院予算委で田村厚労相
田村憲久厚生労働相は2月17日の衆議院予算委員会で、要支援者に対する訪問・通所介護を市町村事業に移行することに関する民主党の中根康浩委員の質問に、「地域包括支援センターでケアマネジメントし、必要があれば、今までどおりのサービスを受けられる。継続して受けられている方々は、そのまま移行して受けられる」と答えた。
田村厚労相は「財源は介護保険から出るから心配がいらない」としたうえで、「要支援の方々にはいろんなニーズがある。他にいろんなサービスを受けたい方もおられ、新しい事業でニーズに応じたいろんなサービスを提供できるから、必要に応じて提供させていただく」と説明。利用者の自己負担割合に関しては、「同じ事業者から既存のサービスを受ける場合、今と同じような負担にしていただくよう自治体にガイドラインを示す」とし、「その他の事業は新しく出てくる事業で、どういう単価になるかは自治体に考えていただく部分だが、負担が極端に高いものに関してはサービスを受けられる方々が受けないので、そうは単価の上がる事業ではないと認識している」などと述べた。
田村厚労相はまた、21日の衆院厚生労働委員会で、この問題に関連する中根委員の「報酬単価が安くなると処遇が悪くなる」との質問に対し、「介護人材が足りない中、適切な単価を各自治体で決めていただくと思うし、それによって介護従事者の処遇が落ちることはないであろうと考える」などと答えた。
介護療養病床「必要な機能に関し、何らかの制度で残す」
~衆院厚労委で田村厚労相
田村憲久厚生労働相は2月21日の衆議院厚生労働委員会で、2017年度末をメドに廃止を計画している介護療養病床について、「必要な機能は何らかの制度の中で残していく」と述べた。日本維新の会の清水鴻一郎委員が「実質的に今の介護療養病床を必要とする患者さんや要介護者がいる。必要性は絶対にあると思う」と質問。田村厚労相は「介護療養病床という名前か、今のままなのかは別だが、どういうものが必要か認識したうえで、必要なものに関しては何らかの制度の中で残していく、もしくはその機能を。そういう意味ではその必要性があるのだろうと思うから、実態調査をさせていただく中、どのような判断をしていくかということになる」などと述べた。
非営利HD型法人「社会福祉法人の参加も認めるべき」
~規制改革会議健康・医療WG
政府の規制改革会議健康・医療ワーキンググループ(WG)は2月18日の会議で、「医療機関のガバナンス及び業務」に関する論点(案)を示した。①医療法人経営の透明化・適正化、②地域における医療機関のネットワーク化――などで構成。②では、非営利ホールディングカンパニー(HD)型法人の制度を挙げ、「組織運営の透明性・効率性に留意しつつ検討すべきではないか」と指摘するとともに、「非営利HD型法人に参加する医療法人は持分なし医療法人に限定したうえで、社会福祉法人の参加も認めるべきではないか」としている。
特養への参入規制の緩和に委員から異論が相次ぐ
~厚労省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」
厚生労働省は2月20日、「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」の第6回会合を開いた。イコールフッティングでは「経営主体が社会福祉法人等に限定されている特別養護老人ホームなどについて、多様な経営主体が算入し利用者の利便性を高めることができるよう参入規制を緩和すべき」との規制改革会議の論点等を議論。委員からは「参入規制をなくし、現行制度の下で株式会社等もというのは、いかがなものか」「社会福祉事業の対象から、どういう提供者が適しているかというと非営利組織がふさわしい」等の異論が相次いだ。もう一つの議題、福祉人材の確保では「介護職のステータスを上げる。地域でのキャリアアップをしていかないと確保できない」等の意見が出た。