ホーム > 新着情報 > 月刊歯科医院経営ワンポイントアドバイス 2014年5月号
「2代目院長の課題とスムーズな事業承継のための秘策」
■先代院長の想いも受け継ぐ
既に周知の通り、4月の診療報酬改定により歯科の診療報酬は0.99%(消費税対応分0.87%)のプラス改定と決着したものの、依然として厳しい経営環境であるということは言うまでもありません。このような時代に、先代院長の高齢化等により後継者への事業承継の時期を迎えている歯科医院が多く存在していますが、なかなか安心して後継者へとバトンタッチできないという問題が生じています。
では、先代院長が安心して事業承継を行う際に、どのような検討事項があるかを整理してみます。まず第一に、誰を後継者として指名するかを決めなければなりません。候補者が複数いる時などは、それぞれの立場を考える必要があるため、選択は容易ではないでしょう。第二に、事業承継としてどのようなスキームで行うのか選択しなければなりません。第三に、相続対策、相続税対策をどうするか検討する必要があります。その他にも、院内のスタッフはもちろんのこと、銀行や取引先などに事業承継について理解・納得をしてもらうにはどうすれば良いかなど、考えなければならないことは様々です。さらに、先代院長として最も大きな不安は、“承継する後継者は医院を維持発展させるだけの能力が十分にあるだろうか?”という点です。つまり、歯科医師としてのスキルはもちろんのこと、後継者としての自覚や将来のビジョン、経営者としてのスキル、医院への想いなどが明確に見えてこないところに不安を抱き、安心して医院を譲れない院長がたくさんいるのです。
この不安を払拭するためには、2代目院長の後継者としての自覚、ビジョン、スキル等が十分であることを示さなければなりません。
■2代目院長の経営戦略
後継者として、まずやらなくてはならないことは、これから引き継ぐ医院の経営計画を策定し、それをもって自分がいかに医院の経営について考えているか、先代の想いを受け継ぎながら、時代の変化に対応した事業をしていく能力があることを認めてもらうことです。
経営計画書には医院理念や経営目標を達成するための、中長期的で大局的な方向性を明示する必要がありますが、それだけでは十分ではありません。それをどう達成するのか、具体的施策のレベルまで落とし込んでおかないと、絵に描いた餅のように説得力に欠ける計画書となってしまいます。大きな目標を掲げることは大事ですが、その道筋が具体的な行動や数値目標など細部にわたったレベルにまで落とし込まれている計画書であれば、リアリティがより高まります。
計画を策定する際の具体的な分析・検討項目と計画書の構成を示すと、以下のようになります。
< 分析・検討項目>
①医院理念 ②ビジョンの明確化 ③マクロ環境分析④財務分析 ⑤事業の本質 ⑥コア・コンピタンス ⑦事業ドメイン ⑧3C分析 ⑨SWOTクロス分析 ⑩ポジショニング ⑪戦略立案 ⑫やるべきことの細分化 ⑬数値目標とシミュレーション ⑭想定組織と人事政策 ⑮事業承継スケジュール(先代の承認後)
<戦略的経営計画書の構成>
①医院理念 ②コア・コンピタンスと事業ドメイン ③SWOT分析表 ④戦略マップ ⑤ターゲットとポジショニング図表 ⑥バランスト・スコアカード ⑦5ヶ年目標変動損益計算書 ⑧5ヶ年目標貸借対照表 ⑨想定組織図と計画 ⑩組織戦略と事業承継のタイムテーブル ――等。
以上が、戦略的経営計画書の中に「最低限盛り込まなければならない項目」及び「盛り込むことで計画書により深みが出る項目」になります。項目の詳細については説明を省きますが、より慎重な計画書を作るとなれば、数日、数週間、場合によっては半年以上かかることもあります。しかし、これを作ることは経営者として本来避けて通れない道なので、褌を締め直して本腰を入れて取り組んでいただきたいと思います。
■医業と言えども経営である
いかがでしょうか。このような完成度の高い経営計画書に基づいて説明をすれば、先代もこれまで培ってきた医院を「託そう」という気になるのではないでしょうか。また、よく考えられた経営計画書は、今後の医院経営において大きな羅針盤となります。実際に医院を経営していくうえで、行き当たりばったりではなく、正しい目標とそれに向けた具体的な行動を明確にして、計画通り実践できているか確認し、適宜改善していく。これを続けることが医院のさらなる繁栄へ繋がるのではないでしょうか。
ミッドランド税理士法人 豊田オフィス
宮前 翔