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ウェルフェア・レポート 2014年5月26日号

2014/5/30

厚労相の趣旨説明と異なる文書配布、審議入りが“延期”
~“一括法案”めぐり、参院本会議

「医療・介護総合確保推進法案」は、参議院でも5月21日の本会議で審議入りする予定だったが、最初の質問者が登壇する直前に休憩となったまま再開されず散会する事態となった。参院での審議入りは6月2日以降の見通し。国会関係者によると、審議の前提となる田村憲久厚生労働相による法案の趣旨説明と、議員に配布されていた趣旨説明(資料)に違いのあることが判明。田村厚労相の趣旨説明の内容は正しかったものの、配布文書には昨年成立した社会保障制度改革プログラム法の趣旨説明の内容が3行にわたって紛れ込んでいた。

■厚労省に「業務適正化推進チーム」――田村厚労相が指示
菅義偉官房長官は5月23日の記者会見で、閣僚懇談会で田村厚労相から「厚生労働省提出法律案(医療・介護総合確保推進法案)の趣旨説明の配布資料の誤りについて」との発言があったことを紹介。田村厚労相は22日、職員に対し直接訓示を行うとともに、再発防止に必要な対策を推進するため、佐藤茂樹厚労副大臣をトップに「業務適正化推進チーム」を早急に立ち上げるように指示したことを説明した。

国会審議めぐる与野党対立浮き彫りに、“一括法案”可決
~衆院本会議

「医療・介護総合確保推進法案」は、全野党が反対したものの、与党の賛成で5月15日に衆議院を通過し、参議院に送付された。同法案は、今国会での重要法案の一つに位置づけられているが、衆院本会議での採決にあたっての討論では、法案審議の進め方など国会審議をめぐる与野党の対立も浮き彫りになった。

■与党「丁寧な委員会運営」、野党「物理的に審議時間不足」
法案に関しては、北村茂男議員(自民)が「医療と介護の提供体制を地域で総合的に確保し、医療と介護を一体的に改革するために必要不可欠な改正である」と強調。中島克仁議員(みんな)は「医療・介護、医療事故調の創設、特定行為にかかわる看護師研修制度の創設など性質の異なる制度改正を一つにまとめた極めて乱暴な法案だ。本則で19本にも及ぶ法改正をしようとするものであり、それぞれ議論すべき論点は多岐にわたっている」などと反論した。
審議に関しては、北村議員が「野党からは委員会での審議が十分でないとの指摘があったが、野党の意見に十分に応え、参考人質疑を2回、地方公聴会も2カ所で行うとともに、安倍総理にも出席いただき質疑を行うなど大変ていねいな委員会運営が行われた。審議時間についても、これまでの他の重要議案と遜色のない審議時間を確保した」などと指摘。一方、井坂信彦議員(結い)は「19本の法案審議と採決まで一本化、安倍総理自らが『過去に例のない』という法案提出を強行した。物理的に審議時間が足りない。各制度の概要を簡単な図表にまとめた“ポンチ絵”だけでも40枚にわたり、すべての政党が一言も質疑できていないものも多く残している」などと疑問視した。

■与党「個人に向けたサービスを」、野党「根拠ある介護予防を」
具体的な内容で与野党の対立が目立った予防給付の見直し案に関しては、北村議員が「予防給付を地域支援事業に移行させることについて必要なサービスが受けられなくなるのではないか、認知症の方が困るのではないかという心配もあった」としたうえで、「今回の見直しでは従来と同様、専門的なサービスを必要とする人には専門的なサービスを提供しつつ、それに加えてNPO・ボランティアなど地域の多様な主体による多様なサービス提供も実現するというものであり、介護保険利用者一人ひとりにふさわしいサービスを効果的かつ効率的に提供する社会を目指すものである」と主張した。
一方、中根康浩議員(民主)は「要支援高齢者の中には軽い認知症の方が約半数いて、ボランティアでは十分な対応はできない。また、要支援サービスのカットで要支援の高齢者が要介護へ重度化したり、施設入居を余儀なくされたりする恐れが高まる。そうなれば、逆に財政的にも高くつく。今まで以上に家族の介護負担が重くなり、介護離職も増える」などと批判した。井坂議員は「介護予防の地域支援事業化、ボランティアやNPOなど多様な担い手のサービス提供によって介護予防の費用の伸びが抑えられると政府は説明する。しかし、予防給付の伸びを抑えるのは、政策として正しいのか。プロが行う介護予防の効果をしっかり測定し、予防給付を行えば、将来の介護給付が結果的に抑えられるというように、数字的根拠のある介護予防に本気で取り組むべき」と指摘した。

予防給付の見直し案に参考人から反対の意見が相次ぐ
~衆院厚労委の参考人質疑

「医療・介護総合確保推進法案」の衆議院厚生労働委員会での採決前日に当たる5月13日には、6人の参考人を招いて参考人質疑を実施。予防給付の見直し案に対し、反対の意見が相次いだ。参考人は、▼神奈川県立保健福祉大学名誉教授の山崎泰彦氏、▼立教大学コミュニティ福祉学部講師・NPO法人渋谷介護サポートセンター事務局長・公益社団法人長寿社会文化協会理事長の服部万里子氏、▼公益社団法人認知症の人と家族の会理事・介護保険社会保障専門委員会委員長・医療法人同人会デイみさと管理者の田部井康夫氏、▼京都ヘルパー連絡会代表世話人の浦野喜代美氏――ら6人。

■介護保険が目指していた方向性に合致――山崎氏
山崎氏は「国基準の画一的な給付という制約を受けることなく、地域特性に応じた市町村独自の事業展開が可能になる地域支援事業の枠組みを活用した予防給付の見直しは、介護保険が本来目指していた方向性に合致するものと思っている」などと説明した。

■要支援者こそ専門家の丁寧なケアが必要――浦野氏
服部氏は、東京都の保険者に行った「2015年度介護保険制度改正に関する調査報告」を提示。▼新しい地域支援事業へ移行された場合、市町村の57.5%が「影響がある」と答え、「影響がない」と答えた市町村はゼロ、▼予想される影響について、「苦情対応の責任主体が曖昧となる」が42.5%、「健康状態の悪化を招く」が32.5%、「不満や苦情の対応に追われる」が25%、▼予防通所介護の代替案に対し、82.5%が未定と回答――等の結果を挙げた。
そのうえで、「地域支援事業に移行する体制がない中、または、移行したとしても専門職のサービスが入っていない中、要支援者の悪化・苦情・不満、または不足サービスへの対応に追われるというのが実態だ。現場の実情を聞いていただきたい」と求めた。
田部井氏は予防給付の見直し案を「撤回してほしい」と述べたうえで、「消費税という新たな負担が増えたうえに、さらに制度利用上の負担が増えたり、給付が削減されたりすることは道理に合わない。要支援の人を市区町村の支援事業に委ねる施策は、その最たるものではないか」などと指摘。
浦野氏は「予防給付を地域総合事業に移すことは問題があり過ぎる。取りやめていただきたい。少なくとも現場の声を聞いて、これから議論をしっかりしていただきたい」と問題視し、「軽度者といわれるが、要支援者といわれる人々こそ、要介護状態が社会的に潜在しており、専門家の丁寧なケアが必要であることを強調したい」などと訴えた。

介護等従事者の処遇改善に向けた法律案を全会一致で可決
~衆院本会議

衆議院厚生労働委員会提出の「介護・障害福祉従事者の人材確保のための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する法律案」が5月20日の衆院本会議で、全会一致で可決、参議院に送付された。今国会で成立する見通し。
衆院の後藤茂之厚労委員長は同法案について、「介護または障害福祉に関するサービスを担う優れた人材の確保を図るため、2015年4月1日までに、介護・障害福祉従事者の賃金水準その他の事情を勘案し、賃金をはじめとする処遇の改善に資する施策の在り方について、その財源の確保も含め検討を加え、必要があると認める時は、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」等の内容を説明した。
この法案に関しては、民主・みんな・結い・共産・生活・社民の野党6党が4月1日、「介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案」を衆院本会議に共同で提出。その後、与党を含む各会派で協議した結果、共同提案を撤回。今回の法案を委員会提出とすることで合意した。

社会福祉法人「より透明性の高いものにしていきたい」
~衆院総務委で古都大臣官房審議官

厚生労働省の古都賢一大臣官房審議官は5月20日の衆議院総務委員会で、「社会福祉法人の売買横行 理事長私物化、数億円で取引も」などと伝えた新聞報道に関する佐藤正夫委員(みんな)の質問に対し、「理事長の独断による意思決定あるいは選任過程における金銭の授受などがある場合は不適切」との認識を示し、社会福祉法人の透明性をより高めていくことを強調した。
古都審議官は「昨日(19日)の報道は承知している」としたうえで、「一般論として、社会福祉法や厚労省の通知において、社会福祉法人の業務とか理事長の選任といったものは理事会などにおいて公正に決定される必要がある。理事長の独断による意思決定あるいは選任過程における金銭の授受などがある場合は大変不適切であると認識している」と説明した。
また、社会福祉法人の在り方に関し、「きちんと透明性を確保していく必要があると考え、規制改革会議での議論、それを踏まえ、社会福祉法人の在り方についても有識者で検討を行っている。ガバナンスの強化、財務諸表の開示など透明性の確保、あるいは地域貢献がしっかり進む必要な制度の見直しを検討しているところで、より透明性の高いものにしていきたいと考えている」などと強調した。

取りまとめに向けた議論に着手   
~社会福祉法人の在り方検討会

厚生労働省の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」は5月19日、取りまとめに向けた議論に入った。これまでの意見を基に、厚労省が「社会福祉法人の今日的な役割」に関し、▼非営利法人としての役割、社会福祉の専門家としての役割、▼地域における公共的な役割、▼措置事業を実施する役割――について説明。続いて、見直すべきものとして、①地域における公共的な活動の推進、②法人の組織、③法人の規模拡大・協働化、④人材確保、⑤透明性の確保、⑥法人の監督――についての基本的な考え方と今後検討すべき論点を挙げた。
古都賢一大臣官房審議官は、今後の進め方等に関し、社会福祉法人に関する規制改革会議や産業競争力会議等の議論も挙げ、「いずれも社会福祉法人が非営利として健全性を持って力を発揮してもらいたいとの観点での指摘と思うし、我々もまさに2000年以降、目指してきた姿と思っているので、大きな方向で違いはない」などと説明。そのうえで、「今年6月(の成長戦略の改訂)に向け、いろんな取りまとめの議論が行われるだろう。次の時代にしっかりとやっていくため、法律を変えなければならないもの、運用の見直しというもの、現場が意欲を持って取り組める環境を整備する事項、このような大きな整理をし、次の通常国会を目指しながらやっていくことになるのではないか。来年に向け、各段階での具体的な取り扱いを決めていく。今がそういう時点と思っている」などと述べた。

来年度の介護報酬改定に向けた議論を開始
~社保審介護給付費分科会

厚生労働省の社会保障審議会介護給付費分科会は5月23日、来年度の介護報酬改定に向けた論議を開始した。この日は、①定期巡回・随時対応サービス、②小規模多機能型居宅介護、③複合型サービス、④訪問看護――をテーマに、厚労省がそれぞれの現状や課題等を説明。そのうえで主な論点として、①では訪問看護事業所との連携・看護職員の配置要件、オペレーターの配置基準や資格・兼務要件などをどう考えるか。②では25人の登録定員の弾力化・人員配置の見直しなど「訪問」の機能を強化する方策をどう考えるか。④では今年度の診療報酬改定で新設された「機能強化型訪問看護ステーション」について、次期介護報酬改定における対応をどう考えるか――などが示された。
委員からは、定期巡回・随時対応サービスのオペレーターについては、サービス内容をきちんと見たうえで要件を考えていく必要性があること、また、小規模多機能型居宅介護については、定員増や母体である大規模な施設との連携を強めることを指摘する意見があった。

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