ホーム > FAXレポート > クリニックニュース 2014年6月5日号
診療報酬・介護報酬の抑制とあり方の抜本的見直しを
《財務省・財政制度等審議会》
財務省の諮問機関である財政制度等審議会は、5月30日、報告書「財政健全化に向けた基本的考え方」を麻生太郎財務相に提出した。報告書は、「Ⅰ 総論」「Ⅱ 各歳出分野における取組み」の二部構成。総論では、財政健全化目標達成の必要性を提示し、政府の当面の財政健全化目標である2015年度の国・地方PB(基礎的財政収支)赤字対GDP比の半減目標を達成した上で、2020年度までに確実に国・地方PBを黒字化し、さらに、その後の債務残高対GDP比を安定的に引き下げるという財政健全化目標の達成への道筋を示している。
各歳出分野における取組は、①社会保障、②地方財政、③公共事業、④文教 ――に分けてまとめられ、社会保障については、「いわゆる『団塊の世代』がすべて75歳以上となる『超高齢化』の時代を迎えるため、まずはそれまでに年金や医療・介護等の「給付」と保険料による支え合いの維持・強化等の「負担」の均衡を図る改革を進めていく必要性を示した。
医療・介護については、「給付が財源調達のベースとなる名目成長率を上回って伸び続けることが見込まれており、給付の重点化・効率化が急務」とし、▼公的給付範囲の見直し、▼医療・介護サービスの提供体制改革、▼診療報酬・介護報酬の抑制とあり方の抜本的見直し、▼保険者機能の発揮・強化 ――を提案。これらのうち、実効性ある「支出目標」の導入、診療報酬における薬価の市場実勢の下落による「当然減」の毎年の反映、特別養護老人ホーム等の内部留保も踏まえた介護報酬の適正化の3点がまず重要であり、避けて通ることは許されない改革の道であると指摘。当審議会として「断固実現を求める」と呈した。
公的給付範囲の見直しについては、社会保障制度改革プログラム法に掲げられた項目以外の取組みも必要とし、▼受診時定額負担(外来受診時に、例えば1回100円などの少額の定額負担を求めること)の導入、▼先発医薬品の保険償還額を後発医薬品に基づいて設定(ジェネリック推進)、▼市販類似薬品の保険適用除外(湿布、漢方薬など)、▼柔道整復師の数の急増の抑制、多部位請求に係る保険適用の厳格化 ――等が具体的に挙げられた。医療・介護サービスの提供体制改革としては、確実に医療費の効率化につなげていくため、フランスの医療費支出目標制度(ONDAM)を踏まえつつ、レセプトデータを活用して実効性ある地域ごとの「支出目標」を導入(国・保険者レベルでも設定)すべきとした。また、診療報酬・介護報酬の抑制とあり方の抜本的見直しとして、▼診療報酬は、薬価の市場実勢の下落による「当然減」の毎年の反映(薬価調査・薬価改定の毎年実施)が重要。また、「7対1入院基本料」算定病床の削減を継続する必要がある、▼介護報酬は「自然増」を検証し、介護事業者の収支状況や内部留保等も踏まえ、平成27年度介護報酬改定において適正化を図ることが重要 ――と具体策を示した。
「支出目標」制度の導入とあわせ、現行の診療報酬・介護報酬体系についての抜本的な見直しとして、改定率の決定・点数改定が「支出目標」と整合的に客観的なデータに基づいて行われるとともに、過度な政策誘導を避け、より包括的で簡素・透明かつ安定的な仕組みとなるよう体系的な見直しが提示された。
診療目的で医師採用時、臨床研修修了登録証の原本で確認を
《厚生労働省》
厚生労働省は5月28日、医政局医事課長・歯科保健課長から各都道府県衛生主管部(局)長宛に「臨床研修を修了した者であることの確認等について」の通知を発出した。
平成16年度より、医師法第16条の2第1項及び歯科医師法第16条の2第1項において、臨床に携わる医師には2年以上、歯科医師には1年以上の臨床研修が必修化されている。臨床研修修了した旨は、医師法第16条の4第1項及び歯科医師法第16条の4第1項の規定により、医籍又は歯科医籍に登録することとなっているが、一部には臨床研修を修了した旨の登録をしないまま診療に従事するケースがあることから、今般、厚労省は「臨床研修を修了した」旨の確認等の徹底を求め、具体的には以下の取扱いが明確化された。
医療機関等が診療に従事させる目的で医師又は歯科医師を採用する場合には、各医療機関において、次に掲げる方法等により臨床研修を修了した者であることの確認を徹底。具体策として、▼臨床研修修了登録証の原本の提出を求め、確認、▼臨床研修修了登録証を亡失したため提出できない場合は、速やかに再交付申請を促す、▼採用の時点において、臨床研修修了登録証の交付を受けていない医師又は歯科医師については、臨床研修病院等が交付する臨床研修修了証等の原本を確認した後に診療に従事させる。この場合においても、臨床研修修了登録証の交付後に原本の確認を行う、▼これらの方法によっても臨床研修を修了した者であることが確認不可能な場合は、医師については医政局医事課、歯科医師については同局歯科保健課に連絡し、確認 ――等が挙げられている。
また、通知では、医師法等における規定との関係が「参考1」として明記された。▼臨床研修を修了していない者が診療に従事した場合は、医師法第16条の2第1項又は歯科医師法第16条の2第1項の規定に違反し、行政指導や戒告等の処分の対象になり得ること、この「診療」には健診又は検診も含まれること、▼臨床研修修了の旨を医籍等に登録をしていない者が診療所を開設しようとする際は、開設地の都道府県知事等の許可を受けなければならない、▼臨床研修修了の旨を医籍等に登録をしていない者は、病院又は診療所の管理者になることができない ――。また、「参考2」として臨床研修を義務化した際の経過措置を示し、▼臨床研修を義務化した医師法改正の施行日(平成16年4月1日)時点において、現に医師免許を受けている者及び施行日前に医師免許の申請を行った者であって施行日後に医師免許を受けたものは、臨床研修を修了した旨の医籍への登録を受けた者とみなすこととされた ――等が記されている。
医療・介護の一括法案、参院でも審議入り
《参議院・第186回通常国会》
医療・介護の一括法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)案が6月2日、参院本会議でようやく審議入りした。これは、当初予定されていた5月21日の本会議において、議員への配布資料に誤記があったことから審議入りが大幅に遅れていたもの。同本会議において、田村厚労相は趣旨説明に入る前に陳謝し、また、与野党両議員から厚労省に対する猛省を求める発言が相次いだ。19もの法律が一括でまとめられ審議される同法案、今後の動向が注視される。第186回通常国会は6月22日まで開催の予定である。