ホーム > FAXレポート > 医院レポート > クリニックニュース 2014年6月20日号
医療・介護の一括法、成立
《第186回通常国会》
第186回通常国会に提出されていた「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」(以下:一括法)の法案が、6月17日の参議院厚生労働委員会で原案通り可決された。また同案については、22項目からなる附帯決議案が提案され、賛成多数で付することが決まった。翌18日の参議院本会議において、同法案は賛成135・反対106で可決され、成立した。
一括法案は医療法を含む全19の法律を改正・整備するものであり、そのうち、施行期日が公布日になるものは、▼診療放射線技師法(業務実施体制の見直し)、▼社会福祉士及び介護福祉士法等の一部を改正する法律(介護福祉士の資格取得方法の見直しの期日の変更)、▼地域における公的介護施設等の計画的な整備等の促進に関する法律(厚生労働大臣による総合確保方針の策定、基金による財政支援)、▼医療法(総合確保方針に即した医療計画の作成)、▼介護保険法(総合確保方針に即した介護保険事業計画等の作成)――である。また、2014年10月1日施行期日のものは、▼医療法(病床機能報告制度の創設、在宅医療の推進、病院・有床診療所等の役割、勤務環境改善、地域医療支援センターの機能の位置づけ、社団たる医療法人と財団たる医療法人の合併)、▼外国医師等が行う臨床修練に係る医師法第十七条等の特例等に関する法律〔臨床教授等の創設〕、▼良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律(持分なし医療法人への移行) ――がある。
その他、医療法改正(地域医療構想の策定とその実現のために必要な措置等)や介護保険法改正(地域支援事業の充実、予防給付の見直し、特養の機能重点化等)などについては2015年4月1日からの施行となる。
非営利HDカンパニー型法人、鍵となる施策に位置づけ
《首相官邸・産業競争力会議》
政府は6月16日、産業競争力会議を開催し、「日本再興戦略」の改訂版の素案が事務局から示された。改訂素案には日本再興戦略は昨年策定された際、残された課題として、▼女性の更なる活躍の場の拡大や海外の人材の受入れ拡大、▼農業の生産性拡大、▼医療・介護などの健康関連分野をどう成長市場に変容させていくか ――の3つを挙げており、この1年間でこの課題解決に向けて議論し、大きな前進をみることができたと明記。「健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供」として、①医療介護等を一体的に提供するための新たな法人制度の創設などにより、医療介護サービスの効率化・高度化を図り、地域包括ケアを実現することで、医療介護の持続性と質の向上を両立すること、②健康増進・予防へのインセンティブを高めることにより公的負担の低減と公的保険外の多様なヘルスケア産業の創出を両立すること、③保険外併用療養費制度の大幅拡大により多様な患者ニーズへの対応と最先端技術・サービスの提供を両立すること ――の3つを重点とし、社会保障の持続可能性の確保、質の高いヘルスケアサービスの提供、健康産業の活性化の同時実現を目指すとしている。そのための鍵となる施策として、▼非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)(以下:非営利HD法人制度)の創設、▼保険外併用療養費制度の大幅拡大 ――等が示された。
非営利HD法人制度の創設については、医療法人制度においてその社員に法人がなることができることを明確化した上で、複数の医療法人や社会福祉法人等を社員総会等を通じて統括し、一体的な経営を可能とすると明記。その制度設計に当たっては、▼当該非営利HD法人制度への多様な非営利法人の参画(自治体、独立行政法人、国立大学法人等を含む)、意思決定方式に係る高い自由度の確保、グループ全体での円滑な資金調達や余裕資金の効率的活用、当該グループと地域包括ケアを担う医療介護事業等を行う営利法人との緊密な連携等を可能とするため、医療法人等の現行規制の緩和を含む措置について検討を進め、2014年内に結論を得るとともに、2015年中に制度上の措置を目指す、▼大学附属病院が担っている教育、研究、臨床機能を維持向上するための措置を講じることを前提に、非営利HD法人制度を活用した他の病院との一体的経営実現のために大学附属病院を大学から別法人化できるよう、大学附属病院の教育・研究・臨床機能を確保するための措置の具体的内容、別法人化に向けた必要な制度設計について、非営利HD法人制度の検討内容等を踏まえつつ検討を進め、2014年度内に結論を得るとともに、制度上の措置を2015年中に講じることを目指す、▼自治体や独立行政法人等が設置する公的病院が非営利HD法人制度に参画することができるよう、必要な制度措置等について検討する ――と具体案を挙げた。
改訂素案は、総論と「3つのアクションプラン」の二部構成。3つのアクションプランとして、日本産業再興プラン・戦略市場創造プラン・国際展開戦略を挙げ、具体策を提案している。中でも、戦略市場創造プランに「国民の『健康寿命』の延伸をテーマにした項目が盛り込まれ、昨年着手した施策(一般用医薬品のインターネット販売等)の進捗状況や新たに講ずべき具体的施策として、▼効率的で質の高いサービス提供体制の確立(非営利HD法人制度の創設、医療法人制度に関する規制の見直し、大都市圏の高齢化に伴う医療・介護需要への対応、看護師・薬剤師等医師以外の者の役割拡大等)、▼公的保険外のサービス産業の活性化(個人・保険者・経営者等に対する健康・予防インセンティブの付与等)、▼保険給付対象範囲の整理・検討(保険外併用療養費の大幅拡大、新たな保険外併用の仕組み〔患者申出療養〈仮称〉〕の創設等)、▼医療介護分野におけるICT化に係る基盤整備 ――が盛り込まれている。
患者申出療養(仮称)の創設等、規制改革会議が答申
《内閣府・規制改革会議》
内閣府は6月13日、規制改革会議を開催し、「規制改革に関する第2次答申」をまとめ、安倍首相に提出した。答申書は、「規制改革は、我が国の経済を再生するに当たっての阻害要因を除去し、民需主導の経済成長を実現していくために不可欠の取組であり、内閣の最重要課題の一つ」と明示したうえで、医療・介護分野では、▼新たな保険外併用の仕組み(患者申出療養〔仮称〕)の創設(2015年度措置〔次期通常国会に関連法案の提出を目指す〕)、▼介護等事業における経営管理の強化とイコールフッティング確立、▼革新的な医薬品・医療機器の価格に関する制度の改善、▼最適な地域医療の実現に向けた医療提供体制の構築、▼医療機関の経営基盤の強化 、▼看護師の「特定行為」の整備――等の具体的な規制改革項目が提示された。