ホーム > 新着情報 > ウェルフェア・レポート 2014年6月25日号
「医療・介護総合確保推進法」が全野党反対の中、成立
~国会
「医療・介護総合確保推進法案」は6月18日の参議院本会議で、全野党が反対する中、与党等の賛成多数で可決、同法が成立した。
■「医療・介護を地域に応じて提供できるよう体系化」――高階議員(自民)
採決前の討論では、高階恵美子議員(自民)が与党を代表し賛成討論。まず同法案に対し、「特に疾病や障害に対する医療・介護を地域の実情に応じて提供できるよう一体的に見直し体系化している」と評価した。介護予防給付の地域支援事業への移行については、「地域性、高齢者の個性や暮らし方、近隣との結び付きもさまざまであることから、必要な専門的なサービスは従来通りに維持したうえで、多様な主体によるサービスも提供可能としている。高齢者にとって身近な地域での支え合いをより充実させ、一人ひとりにふさわしい支援を地域内に育てようとする、いわば規制緩和策ともいえるもの」などと述べた。
■「社会保障は公助・共助・自助の順で充実を」――津田議員(民主)
津田弥太郎議員(民主・新緑風会)は「社会保障においては、国は財政面を理由に逃げることは許されず、公助・共助・自助の順で充実が求められる。自助が第一、公助が二の次の安倍政権の姿勢は “要支援切り”の問題として具現化されることになった」などと批判。「給付から外されようとしている要支援者への支援は、要介護状態に陥ることを防ぐ重要な役割を果たす。専門職によるサービスを受ける権利が保険料を真面目に支払ってきた国民に対し認められるべき」と述べた。小池晃議員(共産)は「政府は年金収入280万円の世帯では平均的な消費支出をしても、年間60万円余るので、介護利用料の2割負担は可能ということを唯一の論拠にしていた。しかし、参院の質疑で、その説明は完全に崩壊し、60万円余るという説明は撤回され、大臣は反省していると述べた」と指摘。「このような法案をこのまま採決にかけるなど国会の自殺行為で、法案は断固として撤回すべき」などと反発した。
衆議院議員提出の「介護等従事者の処遇改善法」が成立
~国会
衆議院議員提出の「介護・障害福祉従事者の人材確保のための介護・障害福祉従事者の処遇改善に関する法律案」が6月20日の参議院本会議で、全会一致で可決、同法が成立した。政府に対し、「人材の確保を図るため、2015年4月1日までに、介護・障害福祉従事者の賃金水準その他の事情を勘案し、介護・障害福祉従事者の賃金をはじめとする処遇の改善に資するための施策の在り方について、その財源の確保も含め検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」などと求めている。
「介護等の経営管理強化とイコールフッティング確立を」
~規制改革会議が「第2次答申」を安倍首相に提出
政府の規制改革会議は「規制改革に関する第2次答申」を取りまとめ、6月13日、安倍晋三首相に提出した。各分野における規制改革では、健康・医療分野の中で「介護・保育事業等における経営管理の強化とイコールフッティング確立」を挙げ、以下の10項目を示している。
① 財務諸表の情報開示(電子開示システムは2014年度検討・結論、結論を得次第、予算措置のうえシステム構築を開始)
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② 補助金等の情報開示(開示の義務付けは14年度措置。国民への分かりやすい開示は電子開示システムの構築に合わせて措置。地方公共団体への要請は15年度措置)
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③ 役員報酬等の開示(14年度に結論を得て、所要の制度的な措置を講じる)
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④ 内部留保の明確化(内部留保の活用は14年度に結論を得て所要の制度的な措置を講じる。目的別の積立の指導は14年度措置)
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⑤ 調達の公正性・妥当性の確保(15年度決算から措置)
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⑥ 経営管理体制の強化(責任の範囲等の明確化と外部機関による会計監査の義務付けは14年度に結論を得て所要の制度的な措置を講じる。第三者評価のガイドラインは14年度措置。介護事業者の第三者評価の受審率の数値目標は15年度措置。保育所の第三者評価の受審率の数値目標は子ども・子育て支援新制度の施行までに措置)
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⑦ 所轄庁による指導・監督の強化(工程表の策定は14年度検討・結論、15年度措置。助言や勧告のための措置は14年度に結論を得て所要の制度的な措置を講じる)
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⑧ 多様な経営主体によるサービスの提供(公的性格の強化は地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案の施行日=15年4月1日=に合わせて措置。地方公共団体への通知は14年度措置)
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⑨ 福祉施設における指定管理者制度等の運用の改善(14年度上期措置)
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⑩ 社会貢献活動の義務化(社会貢献活動の義務付けと社会貢献活動を行わない法人への対応は14年度に結論を得て所要の制度的な措置を講じる。一定の事業規模を超える法人に対する要請は14年度措置)
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「骨太方針2014」と「新成長戦略」を閣議決定 ~政府
首相官邸によると、政府は6月24日の臨時閣議で、「経済財政運営と改革の基本方針2014(いわゆる「骨太方針」)」と、「『日本再興戦略』改訂2014(=新成長戦略)」を決定した。「骨太方針」では、社会保障改革について「医療・介護を中心に聖域なく見直し、効率化・適正化していく必要がある」と強調。「新成長戦略」では「医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」等を示している。
■社会保障改革「医療・介護を中心に聖域なく見直す」――「骨太方針2014」
「骨太方針2014」は、▼第1章「アベノミクスのこれまでの成果と今後の日本経済の課題」、▼第2章「経済再生の進展と中長期の発展に向けた重点課題」、▼第3章「経済再生と財政健全化の好循環」、▼第4章「2015年度予算編成に向けた基本的考え方」――で構成されている。
このうち、第3章の「主な歳出分野における重点化・効率化の考え方」では、社会保障改革について「国、地方公共団体、保険者等がそれぞれの役割を的確に果たすこと等により、医療・介護を中心に社会保障給付について、いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直し、徹底的に効率化・適正化していく必要がある」と指摘している。
具体的な項目では、①医療・介護提供体制の適正化、②保険者機能の強化と予防・健康管理の取組、③介護報酬・診療報酬等――など6つを挙げ、①では介護について「第6期以降の介護保険事業計画の策定等に当たり、医療における取組と歩調を合わせつつ、市町村及び都道府県において2025年までのサービス見込量、給付費、保険料を推計し、中長期的な視野に立った工程管理ができるよう、PDCAマネジメントを行う」としている。
③では「2015年度介護報酬改定においては、社会福祉法人の内部留保の状況を踏まえた適正化を行いつつ、介護保険サービス事業者の経営状況等を勘案して見直すとともに、安定財源を確保しつつ、介護職員の処遇改善、地域包括ケアシステムの構築の推進等に取り組む。障害福祉サービス等報酬改定についても同様に取り組む」ことを挙げている。
■非営利ホールディングカンパニー型法人(仮称)創設へ――「新成長戦略」
「新成長戦略」は、「総論」と「3つのアクションプラン」で構成。
「3つのアクションプラン」の一つ「戦略市場創造プラン」では、国民の「健康寿命」の延伸を掲げ、具体的施策として、①効率的で質の高いサービス提供体制の確立、②公的保険外のサービス産業の活性化、③保険給付対象範囲の整理・検討、④医療介護のICT化──などを盛り込んでいる。
①では、「医療・介護等を一体的に提供する非営利ホールディングカンパニー型法人制度(仮称)の創設」を挙げ、「医療法人等の現行規制の緩和を含む措置について検討を進め、年内に結論を得るとともに、制度上の措置を来年中に講ずることを目指す」などとしている。
また、「医療法人制度に関する規制の見直し」について、▼医療法人の分割、▼医療法人の附帯業務の拡充、▼社会医療法人の認定要件の見直し――を挙げ、「年内に検討し、その結果に基づいて、制度的措置を速やかに講ずる」ことを求めている。
新たな制度の創設に向けた論点等を示す報告書案を了承
~社会福祉法人在り方検討会
厚生労働省は6月16日の「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」で、新たな制度の創設に向けた方向性や論点を示した「社会福祉法人制度の見直しについて」と題した報告書(案)を示し、大筋で了承された。法改正を要する内容も含んでいることから、厚労省は今後、社会保障審議会福祉部会で検討し、来年の通常国会に社会福祉法改正案の提出を目指す。
報告書(案)は、▼第1部「社会福祉法人制度の概要」、▼第2部「社会福祉法人制度を取り巻く状況の変化」、▼第3部「社会福祉法人の課題」、▼第4部「社会福祉法人の今日的な役割」、▼第5部「社会福祉法人制度見直しにおける論点」──で構成。柱となる第5部では、①地域における公益的な活動の推進、②法人組織の体制強化、③法人の規模拡大・協働化、④法人運営の透明性の確保、⑤法人の監督の見直し──の5つの論点を挙げている。
このうち、①では、「社会福祉事業を主たる事業とする非営利法人の役割として、地域における公益的な活動は全ての社会福祉法人において実施される必要がある」と明記。そのため、「法律上、実施義務を明記することを検討すべき」としている。
また、②では、評議員会に対し、「法人運営の重要事項についての議決機関としての役割を明確にする」必要性を挙げたうえで、「全ての社会福祉法人に設置するよう見直すことを検討すべき」と指摘。一方、小規模な法人等に対しては「経過措置も検討すべき」としているほか、「複数の社会福祉法人が共同で設置する仕組みも検討すべき」と指摘している。
さらに、③では、「合併・事業譲渡手続の透明化」等を挙げ、「社会福祉法人の合併・事業譲渡が公正に行われるよう、その場合の要件や手続の見直しを検討すべき」と指摘。また、「法人外への資金拠出の規制緩和」も挙げ、「社会福祉事業や地方公共団体が認定した事業については拠出できるよう、非営利性を失わない範囲で、規制緩和を検討すべき」と提案している。
このほか、④では、「財務諸表等の公表の義務化」や「剰余金の使途・目的の明確化」などを挙げ、⑤では、「外部監査の義務化」を示し、「一定の規模以上の社会福祉法人については、公認会計士等の専門家による外部監査を義務付けることを検討すべき」と強調している。
同検討会では、「検討会で整理した課題を乗り越えることによって、社会福祉法人への信頼が高まり、これから増大していく福祉ニーズに一層貢献できる経営主体になっていくことができる」と制度見直しの今後の推進を求めている。
認知症対応や高齢者向け住まいに関する論点を提示
~社保審介護給付費分科会
厚生労働省は6月11日の社会保障審議会介護給付費分科会で、来年度の介護報酬改定に向け、認知症への対応と高齢者向け住まいについての論点を示した。
認知症対応では、「累次の改定で、認知症に関連した加算が多く創設されてきた」としたうえで、「認知症要介護高齢者は今後も増加する見込みであり、その対応をさらに進めるために、これらの加算についてどう考えるか」等の論点が挙げられた。これに対し、「再検討は往々にして減算につながるかもしれない。財源論もあると思う」と“牽制”しつつ、「国の施策として認知症への対応をどう考えるか。介護保険の中で認知症対策をどう考えるか。エビデンスがあるもの、効果があるものは、今以上にむしろ認める方向も一つの考え方ではないか」との指摘があった。
また、高齢者向け住まいでは、今年度の診療報酬改定で集合住宅等への訪問診療の報酬が大幅に見直されたことを受け、集合住宅における減算の在り方に関する論点等を提示。その発端となった“不適切事例”への取り締まりを行う一方、集合住宅については「現状以上に強化する必要はない」との意見が出た。
「介護の質の向上が量の拡大へ。そういう方向性が必要」
~厚労省「人材確保対策検討会」で指摘
厚生労働省の「福祉人材確保対策検討会」の第2回会合が6月20日に開かれた。5つの事業者等からヒアリングを行った後、前回の議論も踏まえ、介護人材確保について意見交換した。委員からは「介護の質を高めることが、介護(労働)に対する社会の評価やイメージの向上につながり、(人材確保等の)量の拡大にも結び付く。そういう方向性を打ち出す必要があるのではないか」と、今秋の取りまとめに向けた検討会の在り方に関する指摘もあった。
事業者ヒアリングでは、社会福祉法人全国社会福祉協議会中央福祉人材センターの福母淳治所長が同センターの活動等を報告した後、2014年度の重点事項と課題を説明。▼次世代の福祉・介護への進路選択を推進する機能の強化、▼「働きやすい職場づくり」を支援する機能の強化、▼潜在有資格者等の再就業を支援する機能の強化――などを挙げた。
また、株式会社ケアワーク弥生のスタッフとして働きながら大学院で社会福祉を専攻している森近恵梨子氏は、大学生時代から取り組んできた介護への若い世代の正しい理解を深めるための活動を紹介した後、人材確保について「若手介護スタッフや介護を学ぶ学生の自己肯定感を高める」必要性を指摘。量の確保ではなく質の確保の視点から、若い世代が働きたいと感じる現場となるようなマネジメントの重要性等を強調し、委員から賛同や共感の声が広がった。
さらに、マッキンゼー・アンド・カンパニーのカンツラ・ルードヴィヒ氏はドイツを中心とした諸外国の介護人材確保の動向などを説明した。