ホーム > 新着情報 > ウェルフェア・レポート 2014年12月25日号
自民、公明両党で326議席を獲得し圧勝、安倍政権が継続
~衆院選
第47回衆院選は12月14日投開票され、自民、公明両党は公示前の議席を上回る326議席を獲得し、圧勝した。自公で衆院の定数3分の2(317議席)を維持し、安倍政権の継続が決まった。民主党は73議席と公示前から上回ったものの、完全な党勢回復には至らなかった。
■「引き続き経済最優先で取り組む」―― 安倍首相
安倍晋三首相(自民党総裁)は12月15日、党本部で記者会見し、総選挙の結果を受け、「引き続き経済最優先で取り組む」と決意を表明。医療等の分野に関し、「大胆な規制改革を断行し、成長戦略を力強く前に進める」と述べた。
安倍首相の記者会見での冒頭発言(抜粋)
15年苦しんだデフレからの脱却を確かなものとするため、消費税の引き上げを延期する。同時に景気判断条項を削除し、平成29年4月から消費税を10%へと引き上げる判断が解散のきっかけだった。同時にその大前提として、日本経済を、国民生活をどのように豊かにしていくのか、経済政策のかじ取りが今回の選挙において最大の論点・争点になったと言えると思う。そして昨日(14日)、「アベノミクスをさらに前進せよ」という声を国民の皆さまからいただくことができた。3本の矢の経済政策をさらに強く大胆に実施してまいる。明日(16日)早速、政労使会議を開催し、経済界に対して来年の賃上げに向けた要請を行いたいと考えている。今回の選挙戦では、全国津々浦々をめぐり、物価が上がって大変だという生活者の声や、原材料が上がって困っているという中小・小規模事業者の方々からの声があった。こうした声に対して、きめ細かく対応することによって個人消費をテコ入れし、地方経済を底上げしていかねばならない。直ちに行動してまいる。年内に経済対策を取りまとめる。さらに、来年度予算を編成し、年が明ければ通常国会もある。農業、医療、エネルギーといった分野で大胆な規制改革を断行し、成長戦略を力強く前に進めてまいる。引き続き経済最優先で取り組み、景気回復の暖かい風を全国津々浦々に届けていく決意である。
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第3次安倍内閣発足 ~衆参両院で安倍首相を選出
第188特別国会が12月24日召集、安倍晋三衆院議員(自民党総裁)が衆参両院本会議での首相指名選挙で第97代首相に選出された。安倍首相は同日、第3次安倍内閣を発足させた。組閣に当たり、安倍首相は、江渡聡徳防衛相兼安全保障法制担当相を交代、後任に中谷元・元防衛庁長官を充てた。塩崎恭久厚生労働相ら他の閣僚は再任した。24日の衆院本会議では、議長に町村信孝元官房長官(自民)、副議長に川端達夫元総務相(民主)を選出した。
■「社会保障の充実を可能な限り予定どおり実施」―― 安倍首相
安倍首相は同日夜、記者会見し、「アベノミクスの成功を確かなものとすることが最大の課題」と強調。消費税引き上げの延期に関しては、「そうした中でも待機児童をなくし子育て世帯を応援する新制度を来年4月から開始する。そして、医療や介護など社会保障の充実を可能な限り予定どおり実施していく」などの考えを示した。
介護報酬「予算編成過程において全体の水準が決まる」
~厚労省
厚生労働省は12月19日の社会保障審議会介護給付費分科会で、介護報酬引き下げをめぐる報道に対して、改めて否定、「予算編成過程において全体の水準が決まる」と説明した。委員が「ここ(分科会)で検討しているが、“外野”で介護報酬は何%下げるという話がかしましい。先に『ゴール』を決められた中で審議する窮屈さがあると思う」などと指摘し、「全体としての大枠と基本的な考え方、そのスタンスについて(厚労省の)意見を聞きたい」と質問した。厚労省の迫井正深老人保健課長は「分科会で介護報酬をどういうふうに改定していくのかということを検討していただくのは現にそうだし、今後ともそのとおり。報道等でさまざまな指摘を受けているのは、最終的に介護報酬全体の水準、予算の取り扱いとして、これまでとの比較でどれぐらい増減するのかという数字をめぐる報道と思う」と述べ、次のように説明し、理解を求めた。
私どもの認識としては、介護報酬の在り方、増減の関係を含めてだが、評価する、適正化する等を含め議論していただいているが、具体的な報酬の単位というか、レベルについては、予算編成過程で政府が責任を持って獲得した予算をいかに配分するのかという形で、最終的に諮問させていただいて答申をいただくのがプロセスである。(16日の閣議後会見で塩崎恭久)厚労相に記者が質問した時にも明確に答えていると思うが、現時点でどういった数字になるということが決まっている事実は全くない。あくまで予算編成過程において、最終的に介護報酬の全体水準がどうなるかということが決まってくる。その間、私どもとしては、それぞれのサービスの在り方、あるいは報酬上の今後の在り方について分科会に諮って審議いただくというスタンスで臨んでいる。
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来年度の介護報酬改定に関する審議報告(案)を提示
~厚労省
厚生労働省は12月19日に開いた社会保障審議会介護給付費分科会で、来年度の「介護報酬改定に関する審議報告(案)」を提示し、大筋で了承を得た。早ければ、来年1月9日に開催予定の次回分科会で審議報告を取りまとめ、厚労相に答申する方針。
■ 在宅生活への支援や職員の処遇改善を推進、特養などは報酬引き下げ
「審議報告(案)」は、Ⅰ平成27年度介護報酬改定に係る基本的な考え方。Ⅱ平成27年度介護報酬改定の基本的な考え方とその対応。Ⅲ各サービスの報酬・基準に係る見直しの基本的な方向。Ⅳ今後の課題――で構成。
今回の改定に当たっては、基本的な考え方として、2025年の地域包括ケアシステムの構築に向けた、①(医療ニーズを併せ持つ)中重度の要介護者や認知症高齢者への対応の更なる強化、②(地域包括ケアシステムの構築に不可欠な社会資源である)介護人材確保対策の推進――の重要性を強く打ち出す一方、「サービス評価の適正化と効率的なサービス提供体制の構築」の必要性も示している。①に関しては、▼24時間365日の在宅生活を支援する定期巡回・随時対応型訪問介護看護など包括報酬サービスの充実、▼認知症高齢者の積極的な受入れを促進するための「認知症専門ケア加算」の創設、▼活動と参加に焦点を当てたリハビリテーションの推進、▼施設等における看取り対応の充実――などを盛り込んでいる。また、②に関しては、介護職員処遇改善加算やサービス提供体制強化加算の拡大を挙げている。一方、サービスの適正化に関し、特別養護老人ホームや小規模型通所介護の基本報酬等を見直す方針も示している。
■「マイナス改定では継続が困難に」「加算は最小限に絞り込むべき」
委員からは「多くの事業者は利用者の在宅生活を支え、サービスの質の向上を含め経営努力を行っている。努力の結果が仮にマイナス改定につながればモチベーションが保てなくなるだけでなく、人材確保をさらに困難にさせ、サービス提供そのものの継続が困難になりかねない。地域包括ケアシステムの構築を進めていく中、介護サービスが果たしている役割をきちんと評価していただきたい」との要望が出た。一方、「(予算の)厳しい抑制が求められている中、加算項目を並べれば、その分だけ全体のベース、基本報酬が減っていくのは当たり前。加算については必要最小限のものに絞り込むべき」との指摘もあった。
■ 2025年へ向け「在宅も施設も活用する日本型のケアシステム確立を」
診療報酬との同時改定となる2018年度改定など今後の課題については、診療報酬と介護報酬の整合性を取る必要性を挙げたうえで、「同時改定は、2025年に向けた改革の中で大きな節目の改定になる。在宅か施設かではなく、中小病院や診療所などの既存資源も活用する、在宅も施設も活用する日本型の高齢者ケアシステムを確立していくことを目標にしてほしい」との意見があった。
介護報酬削減「業界の総意として、断固反対」
~介護保険3施設団体
全国老人福祉施設協議会・全国老人保健施設協会・日本慢性期医療協会の介護保険3施設団体は12月19日、合同記者会見を開き、「平成27年度介護報酬改定における介護報酬の削減には、業界の総意として、断固反対する」と訴えた。会見では、「特別養護老人ホームでは現状でも3割近くが赤字」とし、「仮に財務省案通り6%の介護報酬引き下げがされた場合、6割近くまで赤字に転落する」と指摘。「それらの施設では経営が逼迫し、質量両面に渡る介護サービスの切り下げ、人件費の削減等は避けられない」と説明した。介護従事者の処遇改善では、「介護報酬の引き下げがされれば、経営難から今後処遇改善は停滞し、将来を描くことのできない不安から、従事者の離職等を誘発する恐れがある」と強調。こうしたことを踏まえ、「人口急減・超高齢社会となる我が国にあって、介護サービスの充実・強化は、国民が将来に不安を感じることなく暮らすための規範的命題であるにも関わらず、利用者・介護従事者にしわ寄せが行くような介護報酬改定は、断じて行うべきではない」などと求めた。
介護報酬改定に向け、145万余の署名 ~全老健と日本GH協
全国老人保健施設協会と日本認知症グループホーム協会は12月16日、介護報酬改定に向けた署名が145万余に上ったことを発表した。全老健の署名は「介護従事者の生活と人生を守り、利用者へのサービスの質を確保するための署名」で140万8,623筆、日本GH協の署名は「介護従事者の処遇を改善し、認知症グループホームの介護の質を高めるための署名」で5万5,155筆。
役員報酬と関係者への特別の利益供与禁止等の論点を提示
~福祉部会で厚労省
厚生労働省は12月19日、社会保障審議会福祉部会を開いた。この日の議事は「適正かつ公正な支出管理」で、役員報酬と関係者への特別の利益供与の禁止等についての論点を提示した。役員報酬では、▼公益財団法人と同様に、役員報酬等は、定款の定め又は評議員会の決議により決定することとしてはどうか、▼公益財団法人等と同様に、不当に高額なものとならないような理事、監事及び評議員に対する報酬等の支給基準を定め、公表することを法律上義務付けてはどうか――などを提案。また、関係者への特別の利益供与では、▼公益社団・財団法人制度と同様に、特別の利益供与を禁止する規定を法律上明記すべきではないか、▼社会福祉法人会計において、財務諸表の注記事項として関連当事者との取引内容の開示の対象となる取引の範囲については、公益法人会計基準と同様に取引額が100万円超える取引としてはどうか――などと示した。
社会保障「歳出に占める割合が高く」重点化・効率化.
~政府が「平成27年度予算編成の基本方針(案)」
政府は12月22日、経済財政諮問会議を開き、「平成27年度予算編成の基本方針(案)」を示した。社会保障については、「一般会計に占める割合が高い分野」と指摘し、重点化・効率化を強調。介護では、介護職員の処遇改善等の推進と経営状況等を踏まえた介護報酬の適正化などを挙げている。
■消費税率10%への引上げ「平成29年4月に確実に実施」
同基本方針(案)は、▼Ⅰ経済再生と財政健全化の好循環(1現下の財政状況、2経済財政運営の基本的考え方)、▼Ⅱ平成27年度予算の基本的考え方(1歳出の重点化・効率化と財政の信認確保、2主な歳出分野における取組)――で構成。
Ⅰの「2経済財政運営の基本的考え方」では、消費税について、「社会保障を次世代に引き渡していく責任を果たすとともに、国際社会における信認を確保するため、10%への引上げは平成29年4月に確実に実施する」と明記。
国と地方を合わせた基礎的財政収支(PB)については、「2020年度までに黒字化するという目標を堅持する」としたうえで、「平成27年度予算等を踏まえて、経済再生と財政健全化の両立を実現すべく、2020年度の黒字化目標の達成に向けた具体的な計画を平成27年の夏までに策定する」と示している。
■社会保障給付「介護報酬の適正化など極力全体の水準を抑制」
Ⅱの「1歳出の重点化・効率化と財政の信認確保」では、「国の一般会計において、非社会保障経費については、全体としては平成26年度に比べてできる限り抑制」するとともに、「社会保障経費についても、いわゆる『自然増』も含め聖域なく見直し、効率化・適正化を図り、平成26年度からの増加を最小限に抑える。その際、消費税率10%引上げ時に想定されていた施策について消費税率8%を前提に優先順位付けを行う」としている。
「2主な歳出分野における取組」の社会保障については、以下のように記載している。
中期的に受益と負担の均衡を目指しながら、持続可能な社会保障制度の確立に向けて着実に取組を進める。医療・介護を中心に社会保障給付について、都道府県ごとの医療提供体制と地域の医療費の差にも着目した医療費の適正化の推進、介護職員の処遇改善等の推進と経営状況等を踏まえた介護報酬の適正化、協会けんぽに対する国庫補助の安定化と超過準備金が生じた場合の特例措置、生活困窮者に対する自立支援の強化と生活保護の適正化に取り組むなど、徹底した効率化・適正化を行うことで極力全体の水準を抑制する。また、消費税率8%への引上げによる財源を活用し、子育て支援など社会保障の充実を図りつつ、高齢世代中心の給付という構造を見直し、全世代型の社会保障への転換を進める。
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(経済財政諮問会議で提示された資料を基に作成)