ホーム > FAXレポート > 医院レポート > クリニックニュース 2015年1月20日号
医療保険制度改革骨子まとまる
《政府・社会保障制度改革推進本部》
政府は1月13日、社会保障制度改革推進本部にて、医療保険制度改革骨子を決定し、今後の社会保障制度改革のスケジュール等と併せて公表した。この医療保険制度改革骨子は1月26日より開会予定の通常国会に提出される医療保険制度改革関連法案と今後の各年度の予算措置の骨子となるものであり、⑴国民健康保険の安定化、⑵高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、⑶協会けんぽの国庫補助率の安定化と財政特例措置、⑷医療費適正化計画の見直し、⑸個人や保険者による予防・健康づくりの促進、⑹負担の公平化等、⑺患者申出療養(仮称)の創設 ――等の項目について枠組みがまとめられた。
中でも、「高齢者医療における後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入」として、被用者保険者の後期高齢者支援金について、より負担能力に応じた負担とし、制度の持続可能性を確保する観点から、総報酬割部分(現行制度では3分の1)を2015年度に2分の1、2016年度に3分の2に引き上げ、2017年度から全面総報酬割を実施するとした。また、被用者保険の負担が増加する中で、拠出金負担の重い被用者保険者への支援を実施するとし、2015年度は約110億円、全面総報酬割が実施される2017年度には約700億円を見込む。これに加え、既存の高齢者医療運営円滑化等補助金が後期高齢者支援金部分の縮減に対応し、2015年度は約200億円、2017年度は約120億円の見込みとした。「医療費適正化計画の見直し」としては、都道府県が医療機能の分化・連携、地域包括ケアシステムの構築を図るために策定される地域医療構想と整合的な目標(医療費の水準、医療の効率的な提供の推進)を計画の中に設定し、国においてこの設定に必要な指導等を定めることとする。これに合わせ、現行の指標(特定健診・保健指導実施率、平均在院日数等)について必要な見直しを行うとともに、後発医薬品の使用割合等を追加。医療費適正化計画については、毎年度の進捗状況管理、計画期間終了前の暫定評価等を行い、目標が実績と乖離した場合は、都道府県はその要因分析を行うとともに、必要な対策を検討し、講ずるよう努めるものとすると明記した。
「負担の公平化等」については、入院時食事療養費等を見直し、現行1食260円の入院時の食事代を、入院と在宅医療の負担の公平を図るため、食材費相当額に加え、調理費相当額の負担を求めることとし、2016年度から1食360円、2018年度から1食480円に段階的に引き上げられる。また、紹介状なしで大病院を受診する場合については、2016年度から紹介状なしで特定機能病院及び500床以上の病院を受診する場合等には、選定療養として、初診時又は再診時に原則的に定額負担を患者に求める。定額負担の額は今後検討される。
「患者申出療養(仮称)の創設」については、困難な病気と闘う患者の国内未承認薬等を迅速に保険外併用療養として使用したいという思いに応えるべく、患者からの申出を起点とする新な保険外併用療養の仕組みとして患者申出療養(仮称)を創設し、2016年度から実施するとした。
「社会保障の充実」に向け施策に優先順位をつけて対応
《厚生労働省》
厚生労働省は1月14日、2015年度予算案の概要を公表した。厚労省全体で29兆9,146億円(前年度比+8,693億円、3.0%増)を計上し、一般会計の社会保障関係費としては29兆4,505億円を充てた。内訳は年金が約11.1兆円(37.5%)、医療が約11.5兆円(39.0%)、介護が約2.8兆円(9.4%)、福祉等が約4.0兆円(13.5%)、雇用が約0.2兆円(0.6%)である。
消費税率10%への引上げが2017年4月に延期されたことに伴い、2015年度の「社会保障の充実」に充てられる消費税増収分は1.35兆円となるため、施策の優先順位を付けることで対応。優先的に取り組む施策として、①子ども・子育て支援の充実、②医療・介護サービス提供体制改革の着実な実施、③国保への財政支援の拡充を挙げている。
医療・介護サービスの提供体制改革として、地域医療介護総合確保基金(医療分)が602億円、地域医療介護総合確保基金(介護分)が483億円、2015年度介護報酬改定における介護職員の処遇改善等が531億円、在宅医療・介護連携、認知症施策の推進など地域支援事業の充実に118億円 ――が充てられた。地域医療介護総合確保基金(医療分)の対象事業は、▼地域医療構想の達成に向けた医療機関の施設又は設備の整備に関する事業、▼居宅等における医療の提供に関する事業(地域包括ケアシステムの構築を図るため、在宅医療の実施に係る拠点の整備や連携体制を確保するための支援等、在宅における医療を提供する体制整備への助成)、▼医療従事者の確保に関する事業(医師等の偏在の解消、医療機関の勤務環境の改善、チーム医療の推進等の事業に助成することにより、医師、看護師等の地域に必要な質の高い医療従事者の確保・養成を推進する事業) ――。また、地域医療介護総合確保基金(介護分)の対象事業は、▼介護施設等の整備に関する事業、▼介護従事者の確保に関する事業 ――の2点を挙げた。2015年度介護報酬改定における介護職員の処遇改善等については、▼1人あたり月額1万2千円相当の処遇改善を提示し、中重度の要介護者や認知症高齢者等の介護サービスの充実を図るとしている。
2015年介護報酬改定率、マイナス2.27%
《厚生労働省》
塩崎泰久厚生労働大臣と麻生太郎財務大臣の大臣折衝が1月11日実施され、その中で2015年度介護報酬改定等について議論がなされた。2015年度の介護報酬改定率は全体でマイナス2.27%で双方合意した。
2015年度介護報酬改定は、▼介護保険料の上昇の抑制、▼介護サービスの利用者負担の軽減、▼介護職員の給料の引上げ、▼介護事業者の安定的経営の確保 ――の4つの視点を踏まえ、改定率マイナス2.27%、内訳は、介護職員処遇改善加算の拡充(月+1.2万円相当)でプラス1.65%、中重度要介護者や認知症高齢者に対応する事業所や地域密着の小規模な事業所に対する加算にプラス0.56%、収支状況などを反映した適正化等にマイナス4.48%である。また、次回の改定(2018年予定)に向け、サービス毎の収支差その他経営実態について、財務諸表の活用の在り方等を含め、より客観性・透明性の高い手法により網羅的に把握できるよう速やかに所要の改善措置を講じ、2017年度に実施する「介護事業経営実態調査」において確実に反映させるとした。