ホーム > FAXレポート > 医院レポート > クリニックニュース 2015年3月5日号
「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の
一部を改正する法律案」を通常国会に提出 《政府》
政府は2015年3月3日の閣議で「持続可能な医療保険制度を構築するための国民健康保険法等の一部を改正する法律案」を決定。同日、第189回通常国会に同法案を提出し現在は衆議院で審議中である。同法律案は大きく分けると、①国民健康保険の安定化、②後期高齢者支援金の全面総報酬割の導入、③負担の公平化等、④その他――で構成されている。
①の具体策は、国保への財政支援の拡充により財政基盤を強化するほか、2018年4月から都道府県が国保の財政運営責任の中心的役割を担うことである。都道府県が決定した国保事業費納付金を市町村が都道府県に納付、給付に必要な費用を都道府県が市町村に交付することになる。これに加え、都道府県は国保の運営方針を定めることで効率化・広域化等を推進し制度の安定化を図る。ただし、これまでの資格管理、保険給付、保険料率の決定、賦課・徴収、保健事業など地域におけるきめ細かい事業は引き続き市町村が担うことになる。
②は被用者保険者の負担能力に着目したものである。現在の後期高齢者医療制度は患者負担、保険料、公費以外に後期高齢者支援金で成り立っている。後期高齢者支援金とは、各医療保険(健保や国保など)からの支援金で、現在は「3分の1を総報酬割」で「3分の2を加入者割」で負担している。それを段階的に総報酬割の比率を高め、2017年度以降はすべて総報酬割になる。保険者の視点でみると、加入者一人当たりで計算する加入者割に比べ、総報酬割は加入者の支払い能力に応じて計算されるため、加入者の報酬水準が高い保険者は支援金が増額され、加入者の報酬水準が低い保険者は支援金が減額されることになる。
③の中には▼入院時食事療養費の見直し、▼選定療養の義務化、▼健康保険の保険料の標準報酬月額の引き上げ等――が含まれている。入院時食事療養費については、在宅療養との公平等の観点から食材費相当額に加えて調理費相当額の負担を求める。ただし、現行の低所得者や難病、小児慢性特定疾患の患者は現行のまま据え置きとし、一般所得者が段階的に引き上げられる。また、選定療養の義務化については、医療機関の外来機能分化を進める観点から、2016年4月以降に紹介状なしで特定機能病院等を受診する場合は、原則として定額負担を徴収する。加えて、健康保険の保険料の標準報酬月額の引き上げについては、保険料負担の公平化の観点から、2016年度から協会けんぽなどの被用者保険の標準報酬月額の等級を全47等級から全50特級に上限を3等級追加し、上限が121万円から139万円に引き上がる。併せて、国保の保険料の賦課限度額も段階的に引き上げる予定である。
④の中には、医療費適正化計画を見直し都道府県が策定する地域医療構想と整合的な目標を計画の中に設定するほか、予防・健康づくりを促進するため、保険者が行う保険事業に加入者の自助努力への支援として、ヘルスケアポイント付与や保険料への支援等の実施が示された。この予防・健康づくり等に取り組む保険者に対してはインセンティブを強化する。また、2016年4月から新たな保険外併用療養の仕組みである患者申出療養が創設される。
「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」を厚生労働大臣へ答申
《厚生労働省・労働政策審議会》
厚生労働大臣が2015年2月17日に労働政策審議会に諮問した「労働基準法等の一部を改正する法律案要綱」について、同審議会の労働条件分科会及び安全衛生分科会で審議が行われた結果、2015年3月2日に同審議会から厚生労働大臣に対して答申がなされた。政府はこれから同法律案要綱を踏まえて法案を作成し、今通常国会に提出して成立を目指す。
厚生労働省が示す同法律案要綱のポイントは、①中小企業における月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用猶予廃止、②健康確保のために時間外労働に対する指導の強化、③年次有給休暇の取得促進、④フレックスタイム制の見直し、⑤企画業務型裁量労働制の見直し、⑥特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設、⑦企業単位での労使の自主的な取組みの促進――の7点である。これらの施行期日は、①については2019年4月1日、他は2016年4月1日を予定している。
中でも①については、2008年12月12日の改正労働基準法の附則第3条に「政府は、この法律の施行後3年を経過した場合において、この法律による改正後の労働基準法第37条第1項ただし書(月60時間超の時間外労働への割増賃金率の適用)及び第138条(中小企業における第37条第1項ただし書の適用猶予)の規定の施行の状況、時間外労働の動向等を勘案し、これらの規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする」とされていたが、現時点までは改正されていなかった。この猶予される中小企業には、サービス業の部分に一定の条件のもと医療機関等も該当したが、同法律案要綱どおりの改正となれば、医療機関等においても月60時間を超える時間外労働への割増賃金率が適用される可能性がある。
「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」を大臣へ答申
《法務省・法制審議会総会》
法務大臣が2009年10月28日に法制審議会に諮問した民法(債権関係)の改正ついて、法制審議会民法(債権関係)部会で5年余りの歳月をかけて、「民法(債権関係)の改正に関する要綱案」をまとめ、2015年2月24日に開催された法務省の法制審議会総会で、原案どおり採択、法務大臣に答申がなされた。政府はこれから同要綱案を踏まえて法案を作成し、今通常国会に提出して成立を目指す。民法(債権関係)は、これまで部分的な見直しは行われているが、全般的な見直しが行われたことはなく、法案が成立すれば明治29年の制定当時以来の大改正となる。
同要綱案には「職業別の短期消滅時効」の廃止が含まれている。現行法では、「医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権」については、「3年間行使しないときは消滅する」とされているが、改正後は原則として「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」に時効によって債権が消滅することになる。