ホーム > 新着情報 > 介護経営情報 2015年5月29日号
◆超党派議連 健康増進法案まとめる
生活習慣病予防で医療費抑制にむけて
――厚生労働省
持続可能な社会保障制度のあり方を検討する自民党や民主党の超党派の議員連盟は5月24日、医療費の抑制に向け、地方自治体が、来年運用が始まるマイナンバー制度などを活用して、国民一人一人の健康状態などを管理し、生活習慣病の予防指導を行うなどとした法案をまとめた。
厚生労働省によると脳卒中や糖尿病などの生活習慣病の医療費は全体の約3割を占めていて長期間にわたる治療が必要なため、生活習慣病の予防が医療費の抑制に向けた課題となっている。このため厚労省は基礎的財政収支を2020年度までに黒字化するとした政府の目標達成に向け、社会保障費の抑制の方針をまとめている。
主な重点策として医薬品の特許が切れたあとに販売される価格の安い後発医薬品(ジェネリック)の使用割合を、2017年度までに60%以上に引き上げる目標を1年前倒し、来年度までに達成したうえで、5年後の2020年度までに80%以上に引き上げ、1兆円以上の医療費を削減するとしている。
また生活習慣病の糖尿病が重症化し人工透析を受ける患者が増えていることを踏まえ、糖尿病の重症化予防に重点的に取り組むほか、C型肝炎の新薬を利用して対策を強化し、計約3000億円の医療費抑制につなげたいとしている。塩崎厚労相は26日に開かれた政府の経済財政諮問会議(議長:安倍首相)で、こうした方針を表明している。
今回、自民党や民主党などによる超党派の議員連盟は、予防の取り組み方に都道府県によって温度差がみられるとして、国や自治体の基本的な責務を定めた法案をまとめたもの。
まとめた法案は、政府に総理大臣をトップとする対策本部を設け、おおむね5年ごとに基本計画を策定するとしている。そして、地方自治体は基本計画に基づいて、来年1月に運用が始まる「マイナンバー制度」などを活用して、住民一人一人の健康情報を管理し、生活習慣病の予防指導を行うほか、国民健康保険に、適度な運動を続けるなどして、健康増進に努めている加入者に、特典を設ける仕組みの導入を促すなどとしている。
議員連盟は、5月末に総会を開いて、この法案を正式に決め、今の国会での法案提出を目指す。
「マイナンバー」銀行預金口座にも適用へ
マイナンバー制度とは、国民一人ひとりに番号をつけ年金の支給や税金の納付などに利用する制度で、来年1月から導入される予定。国民一人ひとりに番号をつけて行政サービスの効率化をはかるのが目的だが、改正法案では、2018年から銀行の預金口座にも適用する。
マイナンバー制度をめぐっては、国民のおよそ7割が内容を知らないなど認知度が低いことから、政府は周知徹底を図りたいとしている。
麻生財務相はマイナンバーが銀行口座に適用されることで、税金を公平に徴収できるようになることへの期待を示す一方、登録が義務ではないため、普及の度合いを見た上で2021年以降に義務化について検討する考えを示した。
◆大規模災害時のドクターヘリ運航で提言 全国知事会
「防災基本計画」にヘリの位置づけを明確に
――日本救急医学会
全国知事会は5月20日、大規模災害時におけるドクターヘリの運航について、山谷えり子内閣府特命担当大臣(防災)に提言を行った。
提言では、災害時のドクターヘリの活動については、「日本DMAT(災害派遣医療チーム)活動要領」に規定されていて、その運用は各都道府県の判断に委ねられているが、大規模災害が発生した際、支援側と受援側の全国的な調整スキームが不明確と指摘。また、被災都道府県の災害対策本部における指揮命令系統や消防防災ヘリコプターなどとの運航調整について、一連の災害対応の中で十分な統一性が確保されていないのが実情としている。
そのうえで、発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの大規模災害において、広域のオペレーションに実効性を持たせるためには、「日本DMAT活動要領」のみによるだけではなく、国の防災に関する総合的な計画である「防災基本計画」において、「受援」の観点からドクターヘリの位置付けを明確にすることで、全国的な統一性を確保する必要があると述べている。
最後に、大規模災害に対してはオールジャパン体制による広域応援・受援が不可欠とし、ドクターヘリの運航等(全国的な調整機能、災害対策本部における指揮命令系統など)に関して、「防災基本計画」において国として明確に規定するとともに、安定的な運航に向けて確実な財源を確保するよう要望している。
大規模災害時におけるドクターヘリの運航について(提言) *要約
災害時におけるドクターヘリの活動については、「日本DMAT活動要領」に規定されており、その運用は各都道府県の判断に委ねられている。しかし、大規模災害が発生した際、全国から被災地に参集するドクターヘリに関しては、支援側と受援側の全国的な調整スキームが不明確であり、また、被災都道府県の災害対策本部における指揮命令系統や消防防災ヘリコプター等との運航調整について、一連の災害対応の中で十分な統一性が確保されていないのが実情である。
こうした中、発生が懸念される首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の大規模災害において、広域にわたるオペレーションに実効性を持たせるためには、「日本DMAT活動要領」のみによるだけではなく、防災に関する総合的な計画である「防災基本計画」において、“受援”の観点からドクターヘリの位置付けを明確にすることにより、全国的な統一性を確保する必要がある。
大規模災害に対しては、オールジャパン体制による広域応援・受援が不可欠である。ついては、ドクターヘリの運航等(全国的な調整機能、災害対策本部における指揮命令系統、運航調整方法等)に関し、「防災基本計画」において、国として明確に規定するとともに、ドクターヘリの災害時における役割に鑑み、安定的な運航に向けて、確実な財源を確保するよう提言する。
平成27年5月
全国知事会危機管理・防災特別委員会 委員長 泉 田 裕 彦
全国知事会社会保障常任委員会 委員長 福 田 富 一
注:DMATとは. Disaster Medical Assistance Team の頭文字で「ディーマット」と呼ばれる。大規模災害の急性期(概ね48時間以内) に活動できる機動性を持った、. 専門的な訓練を受けた災害派遣医療チームである。
◆「水分補給食品」を使った高齢者の脱水・熱中症対策
ケアマネージャーの「水分補給食品の利用実態調査」
――内閣府
ケアマネジメント・オンラインは会員ケアマネジャーに対し、担当する利用者の水分補給食品の利用実態についてアンケート調査を行った。気温の高まりに伴って懸念されるのが、高齢者の脱水や熱中症。消防庁の調べによると、5月11日~17日の7日間で、全国の熱中症による救急搬送は480件にのぼり、そのうち45.8%は高齢者が占めた。
高齢者は、体液量の減少や水分摂取の抑制などにより、容易に脱水を起こす。経口補水液や水分補給ゼリーなど、水分補給を目的とした食品(「水分補給食品」)は数多く市販されているが、実際にどれほど利用されているのか―この視点で調査を行い480名のケアマネジャーから有効回答が得られた。
●脱水対策が十分でない利用者がいる
現在担当している利用者のうち、水分補給食品を継続的に購入している利用者は何割程度いるか聞いたところ、「1割未満」と答えたケアマネジャーが348名(72.5%)で最も多い結果となった。
一方、水分補給食品を継続して使用したほうがよいと思う利用者がどれくらいいるかたずねたところ、「1割未満」と答えたケアマネジャーは226名(47.1%)にとどまった。
このことから、水分補給食品を活用した脱水対策の必要性がありながら、実際には十分な対策が行われていない利用者がいることが推測される。
●「1個150円以下」なら利用者や家族に勧めやすい
ケアマネジャーが利用者や家族に勧めたいと思える水分補給食品の特長についてたずねたところ、最も多かったのは「1個150円以下」で、410名のケアマネジャー(85.4%)が回答した。次に「スーパーやドラッグストアなど近所で購入が可能なこと」(330名、68.8%)、「常温で保存できること」(308名、64.2%)が続いた。
●同居家族の有無や要介護度は、購入に大きく影響しない
水分補給食品を実際に購入している世帯は、「不明等」を除くと、「家族との同居世帯(要介護4~5)」と回答したケアマネジャーが121名(25.2%)で最も多く、次いで「独居高齢者世帯(要支援1~要介護1)」(110名、22.9%)という結果だった。
反対に、最も少なかった回答は「家族との同居世帯(要支援1~要介護1)」(46名、9.6%)だったが、回答全体をみると、同居や要介護度の違いは、購入にそれほど影響しないことがわかった。
●「ドラッグストア」での購入最多、今後は「コンビニ」でも購入できるように
水分補給食品の購入先については、「ドラッグストア」が圧倒的に多く、333名のケアマネジャー(69.4%)が回答した。以降には、「スーパーマーケット」(154名、32.1%)、「調剤薬局」(77名、16.0%)が続いた。
また、水分補給食品を購入できるとよいと思う場所・方法をたずねたところ、「コンビニ」(363名、75.6%)が最も多い結果となった。そのほかには、「病院の売店」(168名、35.0%)、「宅配弁当や宅配牛乳などと合わせた注文」(167名、34.8%)などの回答も寄せられた。
◆6月から日本医師会が医療機器開発支援を開始
健康アプリなど含め「簡易フォーム」の準備から
――日本医師会
日本医師会は5月20日、「医師主導による医療機器の開発・事業化支援について」の具体的な構想を公開した。日本医師会の羽鳥裕常任理事が同日の定例記者会見で発表したもの。発表によると「医療機器について現場の医師からシーズ(種)を集め、製品化を後押しする支援業務を開始する」というもので、初期の登録はインターネット経由で、1時間程度で可能な簡易フォームを準備する考えで、設立間もない(独法)日本医療研究開発機構(AMED)などへの橋渡し役を務める狙い。
これは日医会員以外でも利用可能となる。新たな仕組みでは、医師からのアイデアをインターネット経由で登録してもらった上で、(株)日本医療機器開発機構(JOMDO)と協力して、同様の特許取得の有無や、特許侵害等の事務的審査などを精査しながら「日常臨床に携わる多くの医師に対する支援として、全ての医療機器(単体プログラム含む)を支援の対象とする」とした。単体プログラムは平成25年4月の薬事法の一部改正で「医療機器の範囲」に加わった。例えばスマートフォンを医療に利用するためのアプリなども開発の対象となる。
記者会見で羽鳥常任理事は、まず、日本の医療機器市場について、規模はアメリカに次いで世界第2位であるが、市場規模に対して海外からの輸入が半分近くを占めており、また、日本からの医療機器の輸出金額は、輸入金額の半分にも満たず、長く輸入超過(輸出―5300億円程度、輸入―約1兆3000億円=貿易赤字)の状態が続いている現状を説明。
そうしたことを踏まえ、この4月に文科省・厚労省・経産省の3省により「日本医療研究開発機構」(AMED)が設立されたことから、日医として、このAMEDを活用し、新しい医薬品や先進治療等の開発を促進していく考えを表明した。
このうち、医療機器について日医が行う支援の内容は、1.医師のアイデアを募集・登録し、その案件の目利きを行う業務、2.登録された案件をAMEDに橋渡しする業務、3.医師に対する相談業務、4.専門的知識を有する事業者に橋渡しする業務―の4つであるとし、全ての医療機器(単体プログラムも含む)を支援の対象とするとした。
支援の流れについては、「ステップ1」として、市場調査の部分を含めて、医師のアイデアやシーズの目利きを行い、この目利き部分で、開発や事業化の可能性が高いと判断された場合、個別面談により進め方を決定(ここまでは、日医の会員・非会員を問わず無償で実施)、次の「ステップ2」では、医師の希望を踏まえ、具体的にはAMEDへの橋渡しや相談業務、コンサルティング会社の紹介などが行われることになるとした(ステップ2では、日医非会員は、登録料「1万円」を徴収)。
また、支援業務は6月上旬より開始し、当面の間、日医総研が担当すると説明した。
更に、医療機器の開発・事業化が実現可能となる案件の見極めや、開発から事業化に至る相談業務は、専門知識が必要であることから、本支援業務では、「(株)日本医療機器開発機構」と協力して実務を行っていくとし、これにより、試作品の開発から知的戦略の立案、海外での事業化に至るまで、広く支援が行えるとの期待感を示した。
最後に、同常任理事は、「本支援は開発アイデアを持ちつつも日常診療に忙殺されている先生方への支援を行うものであるが、多くの若手医師に対する治療技術のさらなる向上への啓発という意義も大きい」と述べるとともに、この業務を円滑に、継続的に実施していくためには、費用の面も考えていかなければならないことから、日本医学会をはじめとする医療関連団体や厚労省、AMED、医療機器のメーカーや団体との連携を積極的に図っていきたいとした。