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医療経営情報 2015年6月4日号

2015/6/6

◆認知症ケア、社会的負担14兆円 厚労省が初の推計調査
無償の家族介護などの費用換算は約6兆2千億円
――厚生労働省

厚生労働省研究班(代表・佐渡充洋慶応大助教)は5月29日、認知症の人の医療や介護で社会全体が負担している費用(推計)は、2014年時点で約14兆5千億円に上るとの初めての研究結果を発表した。研究成果は、厚生労働科学研究の報告書にまとめ、同日に厚労省に提出された。

現在、多くの先進国では、認知症患者の増加に伴う認知症に関連する社会的費用を試算し、認知症の問題を政策課題として位置づけ、その解決を進めている。日本では、認知症の患者数増加が大きな問題になる中で、社会的費用については十分に推計が行われていなかった。
社会的費用の増大は、財源に限りがある一方で、それが不足すると、患者本人や家族の状態が悪化したり、生活の質が脅かされることもある。限られた財源をいかに活用すれば認知症患者や家族の生活の質を向上させることができるか、認知症施策立案の基礎データとして、社会的費用の推計は重要である。
推計の結果、2014 年の日本における認知症の社会的費用は、年間約14.5 兆円に上ることが明らかとなった。

このうち介護保険サービスとは別に家族が自ら行う無償の介護や、仕事を辞めたことによる収入減などの費用(インフォーマルケアコスト)を換算すると、約6兆2千億円に相当する。厚労省によると、認知症のケアに掛かる費用の幅広い推計は初めて。国は介護保険財政の膨張を抑えるため、施設から在宅介護への移行を進めているが、家族負担(介護する側)の在り方を含めた対策作りも喫緊課題となりそうだ

認知症の患者は高齢化に伴い増え続け、3年前の時点では全国でおよそ462万人、10年後の2025年には、多い場合でおよそ730万人に達すると推計されている。厚労省の研究班は、医療機関から発行される診療報酬明細書や介護サービスを受けた人のデータを基に、昨年1年間に認知症の人にかかった医療や介護などの費用を推計した。
その結果、入院と外来を合わせた医療費はおよそ1兆9,000億円、介護サービスの費用はおよそ6兆4,000億円となることが分かった。

研究班ではさらに、家族の介護を担っている1400人余りを対象に介護に費やしている時間を調べ、外部のサービスを利用した場合にかかる費用や、その間、介護者が得られたはずの賃金を推計した。
その結果、家庭で行われている介護を費用に換算すると6兆1,500億円余りで、去年1年間に認知症の人にかかった医療や介護などの費用(社会的費用)をすべて合わせると、およそ14兆5,000億円と推計されることが分かった。
こうした費用は2025年にはおよそ19兆4,000億円、2060年には24兆2,600億円余りに増加すると推計されている。

研究班による認知症の社会的費用(年間約14.5 兆円)の内訳。
認知症の社会的費用の内訳を、①医療費、②介護費、③インフォーマルケアコスト(家族等が無償で実施するケアにかかる費用) とし、それぞれの費用を推計した結果は以下の通り。
① 医療費 1.9 兆円
* 入院医療費:約9,703 億円、外来医療費:約9,412 億円
* 1 人あたりの入院医療費:34 万4,300 円/月、外来医療費:39,600 円/月
② 介護費 6.4 兆円
* 在宅介護費:約3 兆5,281 億円、施設介護費:約2 兆9,160 億円
* 介護サービス利用者1 人あたりの在宅介護費:219 万円/年、施設介護費353 万円/年
③ インフォーマルケアコスト 6.2 兆円
* 要介護者1 人あたりのインフォーマルケア時間:24.97 時間/週
* 要介護者1 人あたりのインフォーマルケアコスト:382 万円/年

研究結果をまとめた厚生労働省研究班主任の佐渡充洋助教は調査の意義や今後の展開などについて次のようにコメントした。
「認知症の患者数増加が大きな問題になる中で、これまで、その社会的費用については十分に推計が行われていませんでした。今回それが明らかになり、認知症施策立案のための基礎データが提示されたことについては大きな意義があると考えます」。
「今後の課題は、社会的費用の多寡の議論に留まることなく、この限られた財源をいかに活用すれば患者や家族の生活の質を向上させることができるかを検討することにあると考えます。そのためには、社会的費用の大きさを調べるだけでなく、その社会的費用が効果に結びついているかを検証する費用対効果研究が推進される必要があります」。
「特に認知症患者が増え続けるなか、限りある財源の中で、患者とその家族を支えていくか社会全体で考えていく必要がある」と結んでいる。

◆2013年度の平均在院日数は前年度比0.3日減 厚労省
「病院機能別・制度別 医療費等の状況」を発表
――厚生労働省

厚生労働省は5月29日、2013年度(平成25年)の「病院機能別・制度別 医療費等の状況」を発表した。この統計は、病院の医療費について詳細に分析したもので、診療報酬改定などの際に基礎資料とする狙いがあり重要な資料となる。

病院機能別の1日あたり医科医療費は次の通り。
「一般病床を有する病院」全体では、医科入院が4万1,581円、医科入院外が1万3,476円。そのうち、特定機能病院は、入院6万7,470円、入院外2万125円/地域医療支援病院は、入院5万7,531円、入院外1万7,258円/DPC対象病院は、入院5万4,165円、入院外1万6,054円。
同様に、「一般病床を有しない病院」全体では、入院が1万6,294円、入院外が8,283円。そのうち、精神病床のみの病院は、入院1万4,662円、入院外9,233円/療養病床のみの病院は、入院2万376円、入院外6,976円。

件数は次の通り。
「一般病床を有する病院」全体では、入院が2,309万件、入院外が2億4,575万件。そのうち、特定機能病院は、入院194万件、入院外2,211万件/地域医療支援病院は、入院550万件、入院外4,782万件/DPC対象病院は、入院1,408万件、入院外1億4,608万件。
同様に、「一般病床を有しない病院」全体では、入院が495万件、入院外が1,935万件。そのうち、精神病床のみの病院は、入院300万件、入院外1,016万件/療養病床のみの病院は、入院144万件、入院外766万件。

これらのデータから厚労省は、一般病床を有する病院全体について、次の推計値を示している。「新規入院件数」は1,309万件(前年度比10万件増)、「平均在院日数」は24.2日(同0.3日減)、「1入院あたり医療費」は101万円(同1万円増)。

以下に関連データとして病院報告(抜粋)を紹介する。

Ⅱ 病院報告(2013年度 厚労省)
1 患者数
(1)1日平均在院・新入院・退院患者数
2013年度(平成25 年)中における全国の病院の1日平均在院患者数は1,275,347 人で、前年に比べ0.9%減少している。このうち、「精神科病院」は226,885 人で、前年に比べ1.1%減少し、「一般病院」は1,048,455 人で、前年に比べ0.9%減少している。
一般病院の1日平均在院患者数を病床の種類別にみると、「精神病床」は73,182 人、「一般病床」は677,672 人、「療養病床」は295,242 人で、「療養病床」のうち「介護療養病床」は62,078 人となっている。また、1日平均新入院患者数は41,686 人、1日平均退院患者数は41,744 人となっている。療養病床を有する診療所の「療養病床」の1日平均在院患者数は8,143 人で、「療養病床」のうち「介護療養病床」は3,099 人となっている。

(2)病院の1日平均外来患者数
病院の1日平均外来患者数は1,389,983 人で、前年に比べ0.6%減少している。このうち、「精神科病院」は56,927 人で、前年に比べ0.5%減少し、「一般病院」は1,333,055 人で、前年に比べ0.6%減少している。人口10 万対1日平均外来患者数は1,091.9 人で、前年(1,096.2 人)に比べ4.3 人減少している。都道府県別にみると、高知県(1,727.3 人)が最も多く、次いで香川県(1,519.0 人)となっており、静岡県(833.6 人)、神奈川県(879.0 人)などが少なくなっている。

(3)病院の都道府県別にみた1日平均在院患者数
病院の1日平均在院患者数について病床の種類別構成割合をみると、「精神病床」23.5%、「療養病床」23.1%、「一般病床」53.1%などとなっている。これを都道府県別にみると、「精神病床」の割合が高いのは宮崎県(34.4%)、「療養病床」は高知県(40.3%)、「一般病床」は滋賀県(60.9%)となっている。

<参考>
●『医療施設調査・病院報告』(厚生労働省大臣官房統計情報部 年刊)
医療施設調査と病院報告のデータをまとめた統計資料。医療施設調査は、医療施設の分布、病床数、設備、診療科目数、手術及び検査の種別とその実施状況等のデータを医療施設の種別に掲載している。3年に1度静態調査が行われ、その間は異動(新設・廃止)のあった医療施設のみを対象とした動態調査が行われる。
病院報告は毎年調査が行われ、在院患者数、新入院患者数、退院患者数、外来患者数など、患者の利用状況に関するデータや、1病院あたり従事者数といった、医師、看護師、理学療法士、歯科技工士などの従事者数に関するデータを掲載する。

◆保健医療2035年に向けて119人から意見
厚労省 第7回「保健医療2035」策定懇談会
――経済財政諮問会議

医療介護総合確保推進法(地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律)の一環として、「看護師等の人材確保促進法」(確保法)改正が今年10月からスタートする。
改正確保法は、「看護師などの資格を持ちながら結婚や出産などで退職した人」の情報を都道府県のナースセンターに登録し、復職支援を推進することを打ち出している。
改正看護師等確保法のポイント
まず都道府県ナースセンターの新たな業務に「看護師などに対して、就業の促進に関する情報提供や、相談などの援助を行うこと」が追加される。看護師などには、「病院などを離職した場合に住所や氏名などを都道府県ナースセンターに届け出なければならない」という努力義務が課される。さらにセンターには、公共職業安定所などに「業務に必要な情報の提供」を求める権限が付与される。
これによってセンターは、看護師などが退職した後も所在を把握できるようになり、「復職しよう」と考える前の段階から、電子メールや電話などで効果的・総合的な支援を実施できるようになると期待されている。
看護師がセンターに届け出るのは、▽氏名▽生年月日▽住所▽電話番号や電子メールアドレスなどの連絡先▽保健師籍、助産師籍、看護師籍、准看護師籍の登録番号と登録年月日▽就業に関する状況(職歴など)―の情報。届け出内容に変更が生じた場には、それも届け出る必要がある。
また、病院の開設者などには看護師が離職する際、この届け出を行う努力義務が課されていることを説明し、看護師に届け出を促したり、届け出を代行したりすることが求められます(努力義務)。
厚労省の調べによると、2012年時点の看護職員数(保健師、助産師、看護師、准看護師)は153万7813人で、10年前に比べて約30万人、15年前に比べて約47万人増加している。

日本看護協会の要望事項とこれまでの経緯
公益社団法人日本看護協会(会長:坂本すが、会員69 万人)は今年4月、厚生労働省の生田正之職業安定局長に1. ハローワークとナースセンターの連携の一層の推進 2. 看護職のセカンドキャリア就業について導入事例の収集の二つを柱とする平成28 年度予算に関する要望書を提出した。

坂本会長は平成25・26年度に実施した「ナースセンター・ハローワーク連携モデル事業」が一定の成果を挙げていることを評価した上で、さらに電子ファイルでの求職者情報共有のほか、連携するハローワークの拡大など、連携の強化を求めた。また、就業意欲のある中高年齢層の看護職の就業をさらに促進するため、定年到達者などのセカンドキャリア就業の導入事例の収集・提供を訴えた。

これらの要望に対して、生田局長は「(日本看護協会と)政策の方向性は一致している」とし、ハローワークとナースセンターの連携強化は重要との認識を示した。セカンドキャリア就業に関する導入事例の収集・提供については、「働きたい人に働き続けていただくことは重要だと認識している。導入事例の収集・提供は必要だと思うので、日本看護協会には一緒に取り組んでいただきたい」と話した。

日看協の要望書―要望事項
1.ハローワークとナースセンターの連携の一層の推進
[要望]
ハローワークとナースセンターとの間での電子媒体等による求職者情報の共有を図るとともに、連携するハローワークを拡大し、ハローワークとナースセンターの連携を一層推進されたい。

ナースセンターは、看護職向けの専門的な就労支援を行っているが、ハローワークは雇用保険受給手続きのため求職者が必ず足を運び、多くの支所を持ち利用しやすいという強みがある。ナースセンター、ハローワークそれぞれの強みを活かした連携の推進により、求職者への支援の拡充・サービス向上、さらには再就業の促進が期待される。
平成25年度から開始された「ナースセンター・ハローワーク連携モデル事業」については、26年度追加の4県を含む全国7県において展開され、一定の成果を挙げるとともに連携強化に向けた課題も明らかになっている。両者の効率的な連携には求職者情報の電子媒体等による共有が大きく寄与すると考えられる。また、ナースセンター倶仂、ら見ると、ハローワークが身近な地域に多くの支所を持つことは大きな強みであり、規模にかかわらずより多くのハローワークでナースセンター相談員による巡回相談等が実施され、連携強化が進むことが期待される。
今後電子媒体等による求職者情報の共有を図り、連携するハローワークの拡大等の措置により、なお一層の連携促進を図っていただきたく要望する。

2.看護職のセカンドキャリア就業について導入事例の収集
[要望]
就業意欲のある中高年齢層の看護職の就業をさらに促進するため、セカンドキャリア就業の導入事例を収集し情報提供されたい。
60 歳以上の看護職就業者数は、20呪(平成 14)年から 2田2(平成 24)年までの 10年問に、39,480 人から 108,535 人へと約 2.7 倍に増加した。全就業者に占める割合も、 3.4%から3.5%に上昇し、 2012年時点では、看護職就業者の 13.5 人にひとりの割合となっている。
本会が実施した病院対象調査によれば、定年到達者の勤務延長制度または再雇用制度の適用者がある病院は78.1%、担当業務の幅も過去の調査と比較して拡大しているが、高年齢者人材を活かす雇用管理面のノウハウの一層の普及が求められるところである。少子化が進行する中、就業意欲のある中高年齢層の就業継続の支援は、看護マンパワー確保に向けて有効と吉えられ、意識的・戦略的に取り組む必要がある。当事者並びに事業主及び事業主団体等関係者への啓発、50代からのキャリア継続・開発への動機づけ等様々な方策が必要と吉えられる。
ついては、定年到達者等の同一事業所内での継続雇用、別事業所への転職者の新規採用の両面から導入事例を収集し、参考情報として提示されたい。

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