ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報 2015年7月23日号
◆厚労省縦断調査 「子どもいらない」独身の若者、増える
夫の家事・育児時間が長いほど子どもが生まれる傾向
――厚生労働省
厚生労働省は7月15日、同じ集団を対象に毎年実施している「第2回 21世紀成年者縦断調査~国民の生活に関する継続調査~(2012年成年者)」および「第12回 21世紀成年者縦断調査(2002年成年者)」の概況について公表した。調査は両方とも2013年調査した。それによると、子どもを望まない独身の若者が10年間で増えている。結婚していた者は男女とも「3人以上」の割合が高くなっている、などの傾向がわかった。
21世紀成年者縦断調査は、調査対象となった男女の結婚・出産・就業等の実態・意識などの経年変化を継続的に追い、少子化対策などの基礎資料を得ることが目的。調査対象は、2012年調査では、同年10月末時点で20~29歳の1万2284人の男女、2002年調査では、同年10月末時点で20~34歳の1万820人の男女。
調査は(1)希望子ども数と10年間の出生の状況、(2)希望子ども数の世代間比較、(3)独身者の子ども観、(4)夫の休日の家事・育児時間と11年間の出生の状況、(5)夫の家事・育児時間の世代間比較――などについて10年間での若者の意識の変化を分析・調査した。主な結果は次の通り。
▽25~39歳男性のうち非正規社員でこの5年間に結婚した人の割合は12%で、正規社員(24%)の半分にとどまった。
▽2012年は希望する子どもの数を「0人」と答えた人が独身男性の15・8%、独身女性の11・6%。02年調査では独身男性が8・6%、独身女性が7・2%で、いずれも数ポイント上昇した。
▽2002年調査時に独身で、希望子ども数が多かった者は、実際に子どもを持つ割合が高く、結婚していた者は、希望子ども数を達成している割合が高かった。
▽子ども1人の夫婦で第2子が生まれている割合は、休日における夫の「家事・育児時間なし」で33.3%、2時間以上では8割以上だった。同様に、子ども1人以上いた夫婦で第2子以降が生まれている割合は、「家事・育児時間なし」で11.9%、「6時間以上」で80.0%と、夫の家事・育児時間が長いほど子どもが生まれている割合が高くなる傾向があった。
▽収入面でも、「100万円未満」の男性がこの3年間に結婚した割合は8%と、「400万~500万円未満」(21%)の半分を下回った。」
厚労省世帯統計室の担当者は「独身で子どもを望まない比率が高まったのは、非正規雇用の広がりや結婚を望まない人の割合が増えていることなど、複合的な要因が影響したと考えられる」と話している。
▽女性の場合、就業状況では、結婚した場合の「同一就業継続」は、男76.6%、女46.6%、「離職」は、男1.2%、女28.4%、結婚していない場合の「同一就業継続」は、男73.5%、女73.0%、「離職」は、男2.8%、女4.4%となっている。
◆2016年度も改革効果の見込みを予算編成プロセスで明示を
各省が競い合い努力―効果の有無でインセンティブ措置も
改革効果の見込み(集中改革期間の各年度)を、予算編成プロセスの中で明示を―。
内閣府は7月16日、経済財政諮問会議を開催し、議事は(1)金融政策、物価等に関する集中審議(第3回)、(2)「予算の全体像」について、(3)今後の経済財政諮問会議の取組――などについて議論した。説明資料として黒田議員提出資料、内閣府から現下の景気状況資料、平成28年度の予算の全体像に向けて(有識者議員提出資料)等が提出された。
これらの中で民間有識者の伊藤元重議員(東京大学大学院教授)らは経済・財政再生計画における集中改革期間の初年度にあたる2016年度は成長戦略を拡充・加速して、「骨太方針2015」をふまえデフレ脱却・経済再生と財政健全化の双方に寄与する歳出・歳入改革の本格的な取り組みを開始すべきと提案した。
財政状況に関して、基礎的財政収支(PB)はこれまでの歳出効率化努力に加え、景気回復に伴う2014年度税収の増加(国税は前年度比7.0兆円増の54.0兆円、地方税・地方法人特別譲与税は前年度比1.8兆円増の38.4兆円)で着実に改善していると指摘。2015年度には2010年度比の基礎的財政収支赤字の半減目標を超過達成する見込み。
さらに、2016年度も、経済・物価動向等をふまえて歳出改革を進め、財政赤字の対GDP比の縮減を図るべきと述べている。このため、2016年度予算の留意点として、(ⅰ)「経済・財政再生計画」の実現に向けた歳出改革の実行、(ⅱ)歳出改革(公的サービスの産業化、インセンティブ改革、見える化などの公共サービスのイノベーション)への取り組み促進、(Ⅲ)歳入拡大努力――などを打ち出している。
(ⅱ)では、全分野の経費を対象に、府省ごとに歳出改革を進め、予算要求に反映する取り組みを促すため、専門調査会で設定するKPI、改革工程などの策定と並行し、各府省は、2016年度予算要求における歳出改革への取り組みや改革効果の見込み(集中改革期間の各年度)を、予算編成プロセスの中で明示。単年度のみならず複数年度での取り組み、関係府省間の連携が計画的に進められるようにする。さらに、努力の有無で府省に差を設けるインセンティブ措置を設ける。
(Ⅲ)では、歳出面からの取り組みに加え、課税ベースの拡大等による税収拡大の実現、課税等インフラの整備、税外収入の確保を着実に進めるべきと述べている。
◆看護師は2012年より7%増、準看護師は4.9%減と報告
厚労省「平成24年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」
――厚生労働省
厚生労働省は7月16日、2014年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果を公表した。同報告例は、就業医療関係者(免許を取得している者のうち就業している者)について、各都道府県からの報告を隔年で集計しているもの。
衛生行政報告例の概要
1 報告の目的
衛生行政報告例は、衛生関係諸法規の施行に伴う各都道府県、指定都市及び中核市における衛生行政の実態を把握し、衛生行政運営の基礎資料を得ることを目的とする。
2 報告の対象
都道府県、指定都市及び中核市
3 報告の種類(略)
4 報告の事項
精神保健福祉関係、栄養関係、衛生検査関係、生活衛生関係、食品衛生関係、乳肉衛生関係、医療関係、薬事関係、母体保護関係、特定疾患(難病)関係、狂犬病予防関係
2014年末現在の看護師就業者数は108万6,779人で、前回の2012年末の報告から7万1,035人(7.0%)増えている。一方、准看護師就業者数は34万153人で、2012年末より1万7,624人(4.9%)減っている。年齢階級別にみると、看護師は35~39歳が最も多く、16万9,474人(15.6%)、準看護師は50~54歳が最も多く、5万4,736人(16.1%)となっている。
都道府県別にみた人口10万人あたりの看護師数で、最も多いのは高知県の1,314.4人、次いで鹿児島県が1,215.6人、佐賀県が1,200.0人。同様に、準看護師数では、最も多いのは鹿児島県の608.8人、次いで宮崎県が608.1人、熊本県が580.4人となっている。
また、人口10万人あたりの看護師数が、最も少ないのは埼玉県の568.9人、次いで千葉県が625.1人、神奈川県672.4人。同様に、準看護師数では、最も少ないのは東京都の109.8人、次いで神奈川県の112.5人、滋賀県の140.0人と続く。
「平成24年衛生行政報告例(就業医療関係者)の結果」(厚生労働省/2013年7月24日)~要旨
○平成24年調査における就業医療関係者の実人員
※平成22年調査と比較した実人員
・保健師は増加 47,279 人(+2,251 人、+5.0%)
・助産師は増加 31,835 人(+2,163 人、+7.3%)
・看護師は増加 1,015,744 人(+63,021 人、+6.6%)
・准看護師は減少 357,777 人(-10,371 人、-2.8%)
・歯科衛生士は増加 108,123 人(+4,943 人、+4.8%)
・歯科技工士は減少 34,613 人(-800 人、-2.3%)
○年齢階級別にみた就業医療関係者の状況
構成割合が最も多い階級とその構成割合(カッコ内)
・保健師 :「35~39 歳」(15.6%)
・助産師 :「25~29 歳」(16.3%)
・看護師 :「35~39 歳」(16.0%)
・准看護師 :「50~54 歳」(16.2%)
・歯科衛生士 :「25~29 歳」(19.1%)
・歯科技工士 :「50~54 歳」(15.9%)
◆厚労省、訪問専門の診療所を解禁へ 来年度診療報酬改定で
来年4月をめどに「専門診療所」を認める方向で調整
――厚生労働省
厚生労働省は来年4月をめどに、医師が高齢者らの自宅を定期的に訪れて診察する「訪問診療」の専門診療所を認める方針だ。地域包括ケアシステムの構築を目指す厚生労働省は、在宅への訪問を専門として外来患者を受け入れる設備を十分に持たない診療所を、来年4月から新たに認める方向へ大きく舵を切る「解禁」に向け動き出した。
訪問診療を広げる背景には、入院ベッド(病床)の不足がある。内閣官房が6月にまとめた推計によると、このまま改革をしないで放置すれば「団塊の世代」が75歳以上となる2025年には約17万床が不足する。訪問診療の患者の8割以上は「要介護」と認定された高齢者だ。外来で病院に行くことが難しいという現実的な課題がある。
塩崎厚労相が7月10日、閣議の後に行った記者会見で「解禁」の意向を表明し、「年末に向けて中身を詰めていく」と語った。さらに同厚労相は「最低限守らなければいけないことなどの議論を深めていく」と、含みを持たせた表現で説明したが、実行する時期については、「診療報酬の改定(来年4月)に合わせてというのが基本的な考え方になる」と述べた。厚労省は居宅への訪問診療を推進し、患者を地域で診られる受け皿を拡充したり、費用の抑制につなげたりすることが狙いだ。
今後、診療報酬改定を控えている中医協(中央社会保険医療協議会)で詳細を議論する方針だ。8月以降に中医協で議論し、来年4月をめどに訪問診療だけの専門診療所を認める通知を出す。
厚労省はこれまで、一定の広さの診察室を設けて医療機器を揃えることなどにより、外来に応じる体制を整えておくよう診療所を指導してきた。訪問だけを専門にした運営は認めておらず、政府内でも規制の緩和を求める声があがっていた経緯がある。
厚労省は来年度からルールを変え、高齢化で進む医療ニーズと費用の増大に対応していく考え。今後は、診療報酬改定の内容を固める来年の1月頃までに、具体的な基準や単価をどう設定するかが焦点となる。
厚労省は、2025年対策へ「訪問診療解禁」へ踏み出すためには様々な規制緩和に加えると並行して、いくつかの条件を付けるようだ。例えば施設ごとに担当の地域を決め、住民から依頼があれば訪問することを義務付ける。重症の患者を避けて軽症の患者だけ選んで診察するようなことがないようにする。患者が来たときに診察の日程などを相談できるよう診療所に事務員を置くことも求める方針だ。
ただし専門診療所には医療サービスの公定価格にあたる診療報酬を見直す2016年4月に、訪問診療の評価をどこまで上げて金銭的な動機を与えられるかが、普及に向けたカギを握るとみられる。
入院した患者が自宅での訪問診療に移れば、医療費が減るとの見方もある。政府の試算では訪問診療にかかる自己負担と保険給付を合わせた医療費の総額は1人あたり月に約32万円で、慢性期患者の入院(約53万円)より4割安い。入院するとささいな体調不良でも治療を施すため、医療費が膨らみやすいとの指摘がある。
しかし訪問診療とは、名称がひとり歩きした名ばかりだった経緯がある。健康保険法の規定を杓子定規に解釈して、必ず外来診察ができる「設備」を用意させていたのが実態だ。
本来の定義は患者の自宅や介護施設を長期にわたって計画的に訪れて診察や治療をすることをいう。主に寝たきりの患者や神経難病で体を動かしにくい患者、病院の待合室で長時間待てない認知症の患者らを対象にする。血圧・脈拍の測定や点滴のほか、健康相談やリハビリに対応する。1回10分あまりで、月に2、3回の訪問が多い。急病などで患者に呼ばれて医者が出向く「往診」とは区別する。
今、厚労省の検討する専門診療所は往診にも対応する。何をどうすれば超高齢社会への対策になるのか、この訪問診療解禁で高齢者に必要な医療・介護の体制も大きく見直す必要が出てきた。
厚労省は、財務省とも連携しながら、できるものは岩盤規制を強引に壊してまでも「2025」対応に迫られている。