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医療経営情報(2015年9月10日号)

2015/9/11

◆国家戦略特区内で医師以外が医療法人の理事長就任可能に
厚労省 医療法人の「非営利性」の徹底も通知
――厚生労働省

厚生労働省は8月28日付で国家戦略特別区域の医療法人に関する、「理事長の認可(認可)」および「非営利性の徹底」について、都道府県知事あての通知を発出した。
9月1日から施行された改正特区法では、医療法の特例として、政令で定める基準を満たす場合、国家戦略特区における医療法人の理事長を、医師・歯科医師ではない理事から選出することを認可するとしており、厚労省は、8月21日に開かれた自由民主党の厚生労働部会でもこの旨を説明している。候補者の経歴などを総合的に勘案し、都道府県の医療審議会の意見を聴いた上で、安定的な法人運営を損なう恐れがないと認められる場合に理事長に就任が可能となった。

ここまでの経緯は、5月末に開かれた国家戦略特別区域諮問会議(議長=安倍晋三首相)で、国会に提出する特区法改正案に、国家戦略特区内において、医師以外の人が医療法人の理事長に就任する際に基準をクリアすれば、都道府県知事が認可するなどの規制緩和措置を盛り込むことを決めている。
今回通知の正式名は、「国家戦略特別区域における医療法第46条の3第1項ただし書の認可に関する取り扱いおよび医療法人の非営利性の徹底について」。
これを補足説明すると、現行では、医療法第46条の3第1項により医療法人の理事長は原則、医師又は歯科医師としている。
これは医師又は歯科医師でない者の実質的な支配下にある医療法人において、医学的知識の欠陥に起因し問題が惹起されるような事態を未然に防止しようとするものだ。
また、同項ただし書により、厚生労働大臣(同法第68条2第1項により読替)の認可を受けた場合は、医師又は歯科医師でない理事のうちから選出することができる。 このただし書の規定に関する審査基準は「通知第一の」において示されている。
政府は、経営に精通した人が理事長になることで、経営効率が向上したり、ガバナンス(組織や社会に関与するメンバー:企業の株主、経営者、従業員、取引先などの主体的な作用による意思決定、合意形成のシステム)が強化されたりすると期待している。
「非営利性の徹底」については、国家戦略特区であっても、「営利を目的とする医療機関の開設は認められない(医療法第7条第6項)」、「医療法人の剰余金の配当は認められない(同法第54条)」などの事項を例示し、「医療における非営利性の確保は、医療の一般原則として当然に要請される」として、厳正に対処する必要があることを明示した。

■国家戦略特別区域とは
産業の国際競争力の強化及び国際的な経済活動の拠点の形成に関する目標を達成するため、国家戦略特別区域においてそれを実施し、又はその実施を促進しようとする特定事業等について、国・地方公共団体・民間の三者から組織される国家戦略特別区域会議において協議し、国家戦略特別区域が認定される。
区域は、関東圏(東京・千葉成田市・神奈川、新潟市含む)、関西圏(保険外併用療養に関する特例 関連事業・国家戦略特別区域高度医療提供事業)、養父市 (中山間農業改革特区)、福岡市( グローバル創業・雇用創出特区)、沖縄の6か所(区域)が認定されている。

◆東京都職域連携がん対策支援事業の取組み企業募集
締切日10月30日 職域のがん対策の促進目指す
――東京都福祉保健局

東京都福祉保健局はがん対策に積極的に取り組む意欲のある企業を支援しているが、8月31日、「東京都職域連携がん対策支援事業の取り組み企業」の公募締切日を10月30日までとする、公募内容等を発表した。
東京都職域連携がん対策支援事業とは、東京都が提示するがん対策取組モデルに即したがん対策の取組を実施する企業等を「取組企業」に認定し、“ぜひ東京都と一緒に活動してみませんか”と呼び掛ける恒例事業。取組企業の活動を東京都が支援することで、協力して職域におけるがん対策の取組促進を目指すもの。定期的に検診を受けることにより、がんを早期に発見し、早期に治療すれば、治る確率は高くなると呼びかける。
東京都では、今年度、職場におけるがん対策として、「東京都職域連携がん対策支援事業」と、「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」の2つの事業に取り組んでいく。そのうち、「東京都職域連携がん対策支援事業」は、これからがん対策に積極的に取り組もうとする意欲のある企業等を「取組企業」として認定する。

対象となる企業等は、(1)がん対策の取り組みが未実施である、または、取り組みを実施しているが、取組内容に課題がある、(2)事業の趣旨に賛同し、東京都が提示するがん対策取り組みモデルに即した取り組みを1つ以上実施する、(3)本社または事業所が東京都内に所在する――ことの3つの要件を全て満たすことが必要条件。

取り組み企業には、主な活動として、① 東京都が提示するがん対策取り組みモデルに即したがん対策の実施、②がん対策の取り組みについての情報提供、③東京都が開催する連絡会や表彰式への参加――が求められる。取り組み企業に認定されると、東京都ホームページでの活動紹介、特に優れた取り組みへの表彰などが行われる。取組にあたり、本事業のロゴマークが使用できる。

主な支援内容には、
(1)啓発用資材等各種情報提供
(2)都指定アドバイザーによる助言・提案
(3)各企業担当者による意見交換の場としての連絡会開催、等がある。

申込み方法及び期限
「募集案内」(事業名ネット検索)を参照のうえ、事務局に申請書を提出する。
申込み期限は10月30日(金曜日)。

※「がん患者の治療と仕事の両立への優良な取組を行う企業表彰」の実施=がんに罹患した従業員の治療と仕事を両立するための優れた取組を行っている企業を表彰する事業を、別途実施する予定。

◆2014年度概算医療費は40.0兆円、前年度比1.8%の増加 厚労省
国保医療費の地域格差、調剤医療費(電算処理分)の動向」
――厚生労働省

厚生労働省は9月3日、2014年度の「医療費の動向(概算医療費の年度集計結果)」を公表した。支払基金と国保連の医療費データをまとめたもので国民医療費の約98%(労災・全額自費等の費用を含まない)に相当する。
概算医療費は40.0兆円で、前年度に比べて1.8%増となる0.7兆円増加。年次推移では、医療費の伸び率は2010年度が3.9%、2011年度が3.1%だったものの、2012年度の1.7%、2013年度の2.2%に続き3年連続で2%前後の伸びにとどまった。
制度別医療費は、被用者保険が11.6兆円、国保が11.8兆円、後期高齢者医療(75歳以上の高齢者)が14.5兆円、公費が2.0兆円。前年度比の伸び率は被用者保険が2.6%増、国保が0.4%増、後期高齢者医療が2.3%増、公費が1.7%増。

診療種類別では、入院16.0兆円(構成比40.2%)、入院外13.8兆円(同34.5%)、歯科2.8兆円(同7.0%)、調剤7.2兆円(同18.0%)。前年度比の伸び率は入院1.7%増、入院外1.3%増、歯科2.9%増、調剤2.3%増の状況。
また、受診した延べ患者数に相当する「受診延日数」は全体で前年度比0.3%減の25.7日。診療種別では、入院が同0.8%減の4.7日、入院外が同0.6%減の16.7日、歯科が同0.9%増の4.2日。
さらに、「1日当たり医療費」は全体で前年度比2.1%増の1万5,500円。診療種別では、入院が同2.5%増の3万4,300万円、入院外が同1.9%増の8,200円、歯科が同1.9%増の6,700円、調剤が同0.5%増の8,900円だった。

なお、診療科別医療費は、医科診療所全体で8兆4,873億円(前年度比0.8%増)、内科4兆701億円(同0.6%減)、小児科3,408億円(同1.1%増)、外科4,571億円(同1.5%減)、整形外科9,001億円(同2.9%増)、皮膚科3,157億円(同1.8%増)、産婦人科2,475億円(同0.4%増)、眼科7,199億円(同3.9%増)、耳鼻咽喉科4,150億円(同4.6%増)。

◎ 2013年度国保医療費の地域格差は1.33倍
厚生労働省は9月3日、2013年度の「医療費の地域差分析」と「市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」を公表した。
医療費の地域差では、「市町村国民健康保険」は、全国を1として指数化した地域差指数でみると、最高が佐賀県の1.189、最低は茨城県の0.894で、格差は1.33倍。診療種別では、入院は最高が鹿児島県の1.399、最低が愛知県の0.819で、格差は1.71倍だった。

地域差指数の3要素(1日あたり医療費、1件あたり日数、受診率)別の影響(寄与度)をみると、入院受診率の影響が大きく、さらに、入院の地域差指数について疾病分類別に影響を分析すると、「精神および行動の障害」の影響が大きかった。また、「後期高齢者医療制度」は、地域差指数は最高が福岡県の1.238、最低は新潟県の0.812で、格差は1.52倍。診療種別では、入院は最高が高知県で1.417、最低が新潟県の0.752で、格差は1.88倍。年齢別では75歳以上89歳以下の影響が比較的大きい。

国保保険料の地域差では、「都道府県別保険料指数等」では、各都道府県の応能割指数・応益割指数を考慮して地域差を表す標準化保険料算定額は徳島県が
最高の13万8,692円、東京都が最低の9万202円で、1.5倍の格差が生じている。

◎ 2014年度調剤医療費は前年度比2.3%増、薬学管理料で抑制
厚生労働省は9月3日、2014年度版の「調剤医療費(電算処理分)の動向」を公表した。調剤では電算処理分のレセプトは件数・医療費ともに全体の99%以上を占めている。

電算処理分の調剤医療費は7兆1,515億円で、前年度比で2.3%増加した。調剤医療費の伸び率は、2011年度7.9%、2012年度1.3%、2013年度5.9%と推移しており、2014年度の2.3%は比較的低い伸び率。内訳は、技術料が1兆7,682億円(前年度比1.8%増)、薬剤料が5兆3,711億円(同2.4%増)、特定保険医療材料料が122億円(同3.6%増)で、薬剤料のうち後発医薬品は7,195億円(同19.9%増)だった。

処方せん1枚当たり調剤医療費は8,899円で、前年度比0.5%増加。内訳は、技術料が24.7%(2,200円、前年度比増減なし)、薬剤料が75.1%(6,684円、同0.6%増)という構成比。特に薬学管理料の減少(前年度比3.5%減)が調剤医療費全体の伸び率を抑える影響を与えている。
また、「内服薬の処方せん1枚当たり薬剤料」の伸び率は前年度比で増減なしだったが、伸び率を「処方せん1枚当たり薬剤種類数の伸び率」、「1種類当たり投薬日数の伸び率」、「1種類1日当たり薬剤料の伸び率」に分解すると、それぞれ0.5%減、2.3%増、1.9%減という状況だった。

後発医薬品割合は2014年度末の数量ベース(新指標)で58.4%。年度平均では数量ベース(新指標)が56.4%(同8.4%増)、薬剤料ベースが13.4%(同2.0%増)、後発医薬品調剤率は60.8%(同5.8%増)と利用が進んでいる。さらに、数量ベース(新指標)算出対象の医薬品を薬効大分類別にみると、構成比が最も大きいのは消化器官用薬で72.5%、次いで循環器官用薬で57.2%だった。

◆「後発医薬品シェア80%時代」へ向け緊急集中的に実施
単品単価取引の推進などグローバル展開を見据えた創薬
――厚生労働省

厚生労働省は9月4日、「医薬品産業強化総合戦略」(副題 ~グローバル展開を見据えた創薬~)を公表した。
総合戦略は後発医薬品シェア80%時代にも、「国民への良質な医薬品の安定供給」、「医療費の効率化」、「産業の競争力強化」を三位一体で実現するための医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中的に実施するもの。「革新的医薬品・医療機器創出のための官民対話」などでの関係者の意見をふまえ策定された。
これは「経済財政運営と改革の基本方針2015(「骨太の方針2015」」に、「臨床上の必要性が高く将来にわたり継続的に製造販売されることが求められる基礎的な医薬品の安定供給、成長戦略に資する創薬に係るイノベーションの推進、真に有効な新薬の適正な評価等を通じた医薬品産業の国際競争力強化に向けた必要な措置を検討する。」と盛り込まれている。

したがい総合戦略では、(1)イノベーションの推進、(2)質の高い効率的な医療の実現、(3)グローバルな視点での政策の再構築――の3つの基本理念を打ち出し、重点項目をあげている。
(1)では、「保険償還価格でのイノベーション評価」のため、新薬創出・適応外薬解消等促進加算制度のあり方や、先駆け審査指定制度の対象医薬品などの評価のあり方を検討。市場実勢価格に基づき薬価が決まる日本の薬価制度で、イノベーションを適正に評価するため、単品単価取引の推進による流通改善を図るとしている。
(2)では、「基礎的医薬品などの安定供給の確保」のため、最低薬価では供給維持が困難な基礎的医薬品に関して、薬価上必要な措置などを検討する。さらに、「後発医薬品の使用の加速化」のため、国民負担軽減などの観点から、後発医薬品の薬価や、診療報酬・調剤報酬上の促進策、製造販売のあり方の検討などを実施する。
(3)では、国際薬事規制調和戦略で日本の知見を世界に発信。PMDAにアジア医薬品・医療機器薬事トレーニングセンターを設置し、アジア規制当局のニーズに応じたトレーニング機会を提供。後発医薬品メーカーがシェア目標達成後の市場を考え、将来を見越して集約化・大型化を含め企業のあり方を検討するよう促している。
総合戦略は後発医薬品シェア80%以上の目標達成時期を決める2017年に、戦略の進捗状況を確認し見直しを行う。

医薬品産業強化総合戦略(概要)=厚労省9月4日発表
○我が国は世界で数少ない新薬創出国であり、知識集約型産業である医薬品産業は、「日本再興戦略」や「健康・医療戦略」においても我が国の成長産業の柱の一つとして位置づけられている。
○「後発医薬品80%時代」において、「国民への良質な医薬品の安定供給」・「医療費の効率化」・「産業の競争力強化」を三位一体で実現するため、医薬品産業の競争力強化に向けた緊急的・集中実施的な総合戦略を策定する。

「後発医薬品シェア80%時代」とは⇒▼国民への良質な医薬品の安定供給 ⇒▼医療費の効率化▼産業の競争力強化⇒▼2017年中頃に進捗状況を確認し総合戦略の見直しを行う

【背景】
Ⅰ イノベーションの推進
①臨床研究・治験活性化等
・クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築
・ゲノム医療、iPS細胞等を用いた創薬、核酸医薬品、バイオ医薬品などを重点的に支援
・既存薬と希少疾病等を関連付けるためのエビデンス構築に係る研究を推進するなどドラッグ・リポジショニングを促進
②産学官の連携強化(大学発優れたシーズの実用化)
・産学官コンソーシアムによる疾患登録情報の共同活用
・実用化段階に移行する研究の薬事戦略相談の活用促進
・官民対話の拡充
③イノベーションの評価
・保険償還価格でイノベーションを適正に評価
・流通改善(単品単価取引の推進)

Ⅱ 質の高い効率的な医療の実現
①基礎的医薬品の安定供給の確保
・「基礎的医薬品」の要件を、明確にしたうえで薬価上必要な措置などについて検討

②後発医薬品の使用の加速化(=長期収載品比率の減少)
・診療報酬・調剤報酬上の促進策の在り方について検討
・安定供給の確保と国民負担軽減の観点から薬価を検討
・規格揃え等の見直し
・品質確保対策の充実
・1成分に対し多くの後発品が薬価収載されることへの対応策を検討

③流通の安定化・近代化
・新規収載時の後発品の新バーコード表示を必須化
・新バーコード表示の必須化に向けた工程表の策定
・単品単価取引の推進

Ⅲ グローバルな視点での政策の再構築
①国際支援
・人口増等に伴い市場拡大する新興国等との協力・支援
・国際交渉等を通じて、各国で知的財産が高い水準で保護される制度が設けられることを目指す

②国際薬事規制調和戦略
・国際薬事規制調和戦略(本年6月策定)を推進
・日本のレギュラトリーサイエンスを世界へ発信
・PMDAに「アジア医薬品・医療機器薬事トレーニングセンター」を設置

③医薬品産業の将来像(論点)
・グローバルに展開できる新薬の創出
・M&A等による事業規模拡大
・バイオベンチャーの活用
・長期収載品比率が減少する中で、新薬創出が困難なメーカーは事業転換
・後発医薬品メーカーの集約化・大型化

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