ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2015年9月18日号)
◆今後の慢性期医療の在り方をどのように考えるか
療養病床検討会 医療提供形態の在り方で論点示す
――厚生労働省
厚生労働省は9月9日、「療養病床の在り方等に関する検討会」を開催し、「医療療養病床と介護療養病床の比較」などを議題とし、1.慢性期医療の在り方について 2.慢性期医療の提供体制等の在り方について等を軸に置き、今後検討会を進めていく。
現在の超高齢社会では、複数の疾患を持ち、医療と介護のニーズを併せ持つ高齢者が増加していくが、慢性期医療には急性期医療とは異なる役割があること等を踏まえ、今後の慢性期医療の在り方についてどのように考えるか―。
療養病床は現在、長期療養を必要とする人に対しての、医療法による「医療療養病床」と、介護保険による要介護者への医学的管理・介護などを行う「介護療養病床(介護療養型医療施設)」が並存している。
実態調査の結果、医療療養病床と介護療養病床で入院患者の状況に大きな違いが見られず、役割分担などが課題とされ、2006年に介護療養病床の2011年度末での廃止が決定。しかし、老健施設(介護老人保健施設)などへの転換などが進まず、廃止は2017年度末まで延長されており、今後の療養病床の方向性が注目されている。
厚労省は論点のたたき台として、療養病床での医療のあり方などに関して、例示として療養病床で主に対応することが求められる患者像や、患者像をふまえた医療のあり方をあげている。その際、「病気と共存しながらQOL(Quality of life)の維持・向上が図られるよう、在宅復帰や在宅生活継続を支援すること」、「継続的な医学管理を行い、人生の最終段階においても尊厳をもって穏やかな看取りを支えること」病気を治すだけでなく、本人や家族の意向も踏まえ、患者の生活全体を視野に入れた「治し、支える」医療の在り方、をどう考えるかを議論したいとしている。
さらに、(1)人員体制、(2)施設・設備、(3)制度上の位置付け(医療法、介護保険法、報酬制度等)、(4)基盤整備計画上の位置付け(医療計画、介護保険事業計画)や施設等の整備に対する財政支援――のあり方を検討する。
また、厚労省は「医療療養病床と介護療養病床の現状」に関して、医療療養病床は看護師などの人員配置が、医療法で4対1(診療報酬基準で20対1)以上とされているが、経過措置により2018年3月31日まで6対1(同30対1)以上と認められていると説明。
病床数は診療報酬基準20対1が12.8万床、同25対1が8万床あり、財源は医療保険。これに対し、介護療養病床は医療法で人員配置は6対1(診療報酬基準で30対1)とされ6.3万床あり、介護保険を財源としていると説明している。
● 医療区分3の患者は医療療養20対1で38.1%
さらに厚労省は医療療養病床(看護師の配置が多い20対1、比較して配置が多くはない25対1)と介護療養病床の比較に関するデータを示した。
入院患者の平均年齢は、医療療養病床(20対1)が81.1歳、医療療養病床(25対1)が81.0歳、介護療養型医療施設(病院)が84.8歳だった。
医療区分(患者の疾患・状態に着目した指標)別では、医療必要性が高く医師・看護師による常時監視・管理などを実施している「医療区分3」の患者が全体に占める割合は医療療養病床(20対1)が38.1%、医療療養病床(25対1)が20.0%、介護療養型医療施設(病院)5.9%。他方、医療の必要性が高くはない「医療区分1」の患者は、医療療養病床(20対1)が11.1%、医療療養病床(25対1)が43.6%、介護療養型医療施設(病院)が80.5%だった。医療療養病床20対1と介護療養型医療施設で、医療の必要性で利用者に違いが見られる結果となっている。
また、ADL区分(食事・排泄等の患者の自立度に着目した指標)別では、日常生活動作の支援レベルが高い「ADL区分3(23点以上)」の患者割合は、医療療養病床(20対1)が66.4%、医療療養病床(25対1)が51.8%、介護療養型医療施設(病院)が55.1%という状況だった。
患者の退院・対処後の行き先に関しては、医療療養病床(20対1)は「死亡」が41.3%で最も多く、2位が「自宅・家族宅等」23.0%、3位が「一般病床」14.4%。また、医療療養病床(25対1)は、1位「自宅・家族宅等」36.0%、2位「死亡」26.6%、3位「一般病床」13.1%の順で、介護療養型医療施設(病院)は、1位「死亡」35.1%、2位「自宅・家族宅等」19.0%、3位「一般病床」18.5%だった。
▼参考資料(厚労省)
医療療養病床(20対1・25対1)と介護療養病床の現状
療養病床については、医療法施行規則に基づき、看護師及び看護補助者の人員置は、本則上4:1(診療報酬基準でいう20対1に相当)以上とされているが、同施行規則(附則)に基づき、経過措置として、平成30年3月31日までの間は、6:1 (診療報酬基準でいう30対1に相当)以上とされている。
※ 医療法施行規則に基づく人員配置の標準は、他の病棟や外来を合わせ、病院全体で満たす必要がある。
◆高齢世帯主が単独世帯にとどまる確率93.6% 国立社人研
人口―2014年の自然増減数26万9,465人減、8年連続悪化
――厚生労働省
厚生労働省の研究機関である国立社会保障・人口問題研究所は9月4日、2014年に実施された「世帯動態調査」の結果概要を公表した。これは、世帯数の将来推計の基礎資料を得るための調査で、1985年の第1回調査から、ほぼ5年ごとに実施されている(前回調査は2009年)。調査対象は、2014年の国民生活基礎調査で設定された調査区から、無作為に選ばれた300調査区に居住するすべての世帯主。調査対象の1万6,388世帯に対し、有効回収票(18歳未満の世帯主をのぞく)は1万1,011票で、有効回収率は67.2%。
今回の調査結果からは、「世帯の形成・解体とその動向が見て取れる」といわれる。その内訳は(1)親子の同居傾向(親族の居住関係)、(2)世帯の継続と変化、(3)親世帯からの離家―が内容の柱。
(1)では、少なくとも1人の親が生存している割合は、20歳以上全体で61.8%(前回は62.7%)、65歳以上では9.9%(同8.2%)であることが示された。そのうち、「親と同居」している割合は、20歳以上で36.0%(同39.7%)と減少傾向だが、65歳以上のみの統計では26.7%(同25.5%)と、わずかながら上昇し、高齢者がさらに高齢の親と同居する傾向が表われている。
(2)では、65歳以上の高齢者の世帯主に限定した「家族類型(単独、夫婦のみ、夫婦と子など)の変化」に関する統計が示された。高齢世帯主の場合、単独世帯にとどまる確率は93.6%と高率で、これは前回の92.5%より上昇している。
●厚労省「人口動態統計(確定数)の概況」を公表
厚生労働省は9月3日、2014年の「人口動態統計(確定数)の概況」を公表した。2014年の自然増減数は26万9,465人減、8年連続の悪化とわかった。概況は出生、死亡、婚姻、離婚、死産の実態を把握し、少子化対策など厚生労働行政の施策立案の基礎資料を得るためのもの。
出生数は100万3,539人で、前年より2万6,277人減少。出生率(人口1,000対)は8.0で前年より0.2ポイント低下した。また、1人の女性が一生の間に生む子供の数に相当する「合計特殊出生率」は1.42で前年比0.01ポイント低下している。
母の年齢別では、出生数は20~39歳の各年齢階級で前年より減少しているものの、15~19歳と40歳以上で増加し、未成年の出産と年齢の高い出産が増加している状況だ。
一方、死亡数は127万3,004人で、前年より4,568人増加。死亡率(人口1,000対)は10.1で前年と同率だった。死因別では、「悪性新生物(がんや肉腫など悪性腫瘍)」が36万8,103人(死亡総数の28.9%)で第1位。2位は「心疾患」19万6,926人(同15.5%)、第3位は「肺炎」11万9,650人(同9.4%)の順。
出生数と死亡数の差である「自然増減数」は26万9,465人減で、前年の23万8,620人減より、3万845人減少が進んだ。自然増減率(人口1,000対)はマイナス2.1で前年より0.2ポイント低下し、数・率とも8年連続で悪化している。
◆厚生労働省 「先進医療の概要」を公表
平成27年9月1日現在で107種類
――厚生労働省
厚生労働省は9月3日、「先進医療技術会議」を開催し、2016年度の診療報酬改定に向けた、先進医療の保険導入などおよび施設基準の見直しに関する「検討方法案」および「イメージ」を示した。
先進医療は、厚生労働大臣が定めた「評価療養」の1つで、保険診療との併用が認められる。検討方法案では、次のように今後のスケジュールが示された。
(1)2015年12月までに「事前評価」(評価対象となる各技術を、構成員・技術委員計3人が書面で審査する)。
(2)2015年12月~2016年1月に「先進医療会議における評価」(保険導入の適切性などについての評価を取りまとめる)。
(3)2016年1月に「中央社会保険医療協議会・総会に報告」(先進医療会議における最終的な評価を報告する)。
(4)2016年1月~3月に「施設基準の見直しに関する検討」(中医協総会で先進医療での継続が妥当とされた技術について検討し、最終決定をする)。
なお、2016年度の診療報酬改定より、すでに先進医療が実施されている技術の提案書は、関連学会から当該分科会に提出できるとされており、先進医療会議では、中医協・医療技術評価分科会との議論をふまえてさらに検討する。
先進医療には、先進医療技術とともに用いる医薬品・医療機器・再生医療等製品が、医薬品医療機器等法上の承認を得ている場合などの「先進医療A」と、同法上の承認がない医薬品などを用いても、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能とする「先進医療B」がある。
今回は、現在、先進医療Aとして実施されている「粒子線治療」に関し、今後の対応案が示された。粒子線治療に関しては、8月6日の前回会合で、日本放射線腫瘍学会による研究データが報告されており、同学会に対し、「適応の判定に対する客観性の担保の現状を示すこと」や「先進医療Bとして申請を準備している臓器などへの迅速な対応」などを求めている。
◎厚生労働省は9月10日、「先進医療の概要」を公表した。概要を一部要約して以下に紹介する。
先進医療とは・・・平成27年9月1日現在で107種類
「先進医療に係る費用」については全額自己負担
先進医療を受けた時の費用は、次のように取り扱われ、患者は一般の保険診療の場合と比べて、「先進医療に係る費用」を多く負担することになります。
「先進医療に係る費用」は、患者が全額自己負担することになります。「先進医療に係る費用」は、医療の種類や病院によって異なります。
「先進医療に係る費用」以外の、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱われます。
つまり、一般保険診療と共通する部分は保険給付されるため、各健康保険制度における一部負担金を支払うこととなります。
先進医療を受けるときは
先進医療を受ける場合であっても、病院にかかる時の手続きは一般の保険診療の場合と同じで、被保険者証(老人医療対象者は健康手帳も)を窓口に提出します。
先進医療は、一般的な保険診療を受けるなかで、患者が希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われることになります。
▼説明を受けて納得の上で同意書署名
先進医療を受ける時は、治療内容や必要な費用などについて、医療機関より説明を受けます。説明内容について十分に納得したうえで、同意書に署名し、治療を受けることとなります。
▼領収書はたいせつに保管
先進医療を受けると、先進医療に係る費用、通常の治療と共通する部分についての一部負担金、食事についての標準負担額などを支払いますが、それぞれの金額を記載した領収書が発行されます。 この領収書は、税金の医療費控除を受ける場合に必要となりますので、大切に保管してください。
厚生労働大臣の定める「評価療養」及び「選定療養」とは
健康保険法の一部を改正する法律(平成18年法律第83号)において、平成18年10月1日より、従前の特定療養費制度が見直しされ、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な「評価療養」と、特別の病室の提供など被保険者の選定に係る「選定療養」とに再編成されました。
この「評価療養」及び「選定療養」を受けたときには、療養全体にかかる費用のうち基礎的部分については保険給付をし、特別料金部分については全額自己負担とすることによって患者の選択の幅を広げようとするものです。
「評価療養」及び「選定療養」の種類は、次の通りです。
また、各事項の取扱いに当たってはそれぞれにルールが定められています。
▼評価療養
先進医療
医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
薬事法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
薬価基準収載医薬品の適応外使用 (用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)
保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用 (使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)
▼選定療養
特別の療養環境(差額ベッド)
歯科の金合金等
金属床総義歯
予約診療
時間外診療
大病院の初診
小児う蝕の指導管理
大病院の再診
180日以上の入院
制限回数を超える医療行為
また、「評価療養」及び「選定療養」については、次のような取扱いが定められています。
▼医療機関における掲示
この制度を取扱う医療機関は、院内の患者の見やすい場所に、評価療養又は選定療養の内容と費用等について掲示をし、患者が選択しやすいようにすることとなっています。
▼患者の同意
医療機関は、事前に治療内容や負担金額等を患者に説明をし、同意を得ることになっている。患者側でも、評価療養又は選定療養についての説明をよく聞くなどして、内容について納得したうえで同意することが必要です。
▼領収書の発行
評価療養又は選定療養を受けた際の各費用については、領収書を発行することとなっています。
◆iPS細胞からの試験用細胞製造事業を追加
戦略特区 改正特区法9月1日付で施行
政府は9月3日、国家戦略特別区域会議の合同会議を開き、東京圏、関西圏、兵庫県養父市、沖縄県―がそれぞれ、区域計画案を示した。その結果、9月1日に施行された改正特区法にもとづき、計14事業が追加されることとなった。
そのうちの1つとして、「血液由来特定研究用具製造事業」が、関西圏で追加された。これは、再生医療技術を活用し、血液を使用してiPS細胞(人工多能性幹細胞)から試験用細胞などを製造する事業。「安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律」(血液法)の特例にもとづき、2016年1月より実施される。
政府は9月9日、「国家戦略特別区域(特区)諮問会議」を開催し、iPS細胞からの試験用細胞製造事業など認定した。国家戦略特区は、内閣が掲げる成長戦略で、指定された区域の規制を緩和して産業の国際競争力を強化し、国際的な経済活動の拠点をつくることなどが目的。
今回は、3日に続く形で(1)国家戦略特区の拡充と、区域計画の認定、(2)今後の進め方、(3)基本方針の一部変更案―などが議題に上った。
(1)では、15事項の規制改革メニューの追加された改正特区法が9月1日付で施行されたことと、指定区域が8月28日付で拡大(仙台市・仙北市・愛知県の3区域と、東京都全域)されたことが報告された。
また、「区域計画の認定」では、「試験用細胞等の血液使用の解禁に係る安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の特例」として、医薬品研究開発の国際競争力強化のため、特例を活用して、iPS細胞から試験用細胞などの製造を可能にする。
さらに、「保険外併用療養に関する特例」として、米国、英国、フランス、ドイツ、カナダ、オーストラリアで承認を受けていて、日本では未承認や適応外の医薬品などを用いる技術すべてを対象とした先進医療を迅速に提供できる施設に、愛知県の名古屋大学医学部附属病院、独立行政法人国立病院機構名古屋医療センターが認定された。
(2)では、「テレビ電話を活用した薬剤師による服薬指導の対面原則の特例」や「特区薬事相談制度による革新的医療機器の開発迅速化」など、改訂成長戦略に盛り込んだ規制改革事項に、速やかに法的措置などを講じていくべきだと述べている。
(3)では、起業・創業の促進のため、エンジェル税制(設立間もない一定の企業へ投資した個人に対する税制優遇制度)の要件緩和が提案された。現行の一般制度は、(ⅰ)設立後3年未満のベンチャー企業、(ⅱ)営業キャッシュフローが継続して赤字など―となっているところ、特例では、医療・バイオ分野などの中小企業に関して、(ⅰ)設立後5年未満のベンチャー企業、(ⅱ)売上高営業利益率2%以下――とするとしている。