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医療経営情報(2016年3月3日号)

2016/3/7

◆“患者のための薬局ビジョン”の道筋示す 厚労省
健康サポート薬局の基準や届出書類を周知―告示

――厚生労働省
4月1日は“患者のための薬局ビジョン”が具体的に形となる日だ――地域包括ケアシステムの一翼を担い、薬に関して、いつでも気軽に相談できる、かかりつけ薬剤師がいる「健康サポート薬局」が動き出すことになった。とりわけ健康サポート薬局が満たすべき事項は盛りだくさんで地域住民の期待の大きさが文言に表れている。
一方で、かかりつけ薬剤師・薬局の今後の姿を素描してイメージを明らかにするとともに、中長期的視野に立って視覚を変えてみると、かかりつけ薬局への再編の道筋を示しているのだ。厚労省では、本ビジョンを踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の推進を図り、患者・住民から真に評価される医薬分業の速やかな実現を目指しているとしている。

塩崎恭久厚生労働大臣は2月12日付で、健康サポート薬局のあり方に関する「基準告示」(2016年厚生労働省告示第29号)を公布した。また、厚労省は同日付で、同薬局の「法律施行規則の一部を改正する省令の施行等」に関する通知を発出した。

基準告示では、健康情報拠点薬局のあり方に関する検討会報告書の「健康サポート薬局のあり方について」(2015年9月)の内容を踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する「健康サポート薬局」の基準などを定めている。通知では、健康サポート薬局が満たすべき事項と健康サポート薬局の表示の届出の際の添付書類を周知している。
かかりつけ薬局としての基本的機能については、業務運営体制に関して、薬局に従事する薬剤師の氏名、勤務日・勤務時間を示した勤務表の薬局内で提示するなど、患者がかかりつけ薬剤師の勤務状況を把握できる体制の整備が必要とされ、勤務表の提示状況が確認できる書類を添付することを求めている。

他方、服薬情報の一元的・継続的把握の取り組みと薬剤服用歴への記載に関しては、「患者が現在受診している医療機関を全て把握するよう取り組む」、「当該患者に使用された医薬品及び服用している医薬品・要指導医薬品等を一元的かつ継続的に把握するよう取り組む」の「これら取り組みに関して薬剤服用歴の記録に記載する」ことの省令手順書への記載が必要で、届出には確認可能な書面を添付して提出するとしている。

24時間対応に関しては、患者に対して薬局の薬剤師に24時間直接相談できる連絡先電話番号など緊急時の注意事項などについて、事前に患者・家族らに対して説明の上、文書により交付することが必要で、届出書添付書類として交付した文書を確認できる書類を添付することを求めている。

◆健康サポート薬局には研修修了薬剤師の常駐求める 厚労省
「健康サポート薬局に係る研修実施要綱」に関する通知発出

――厚生労働省
厚生労働省は2月12日付で、「健康サポート薬局に係る研修実施要綱」に関する通知を発出した。健康サポート薬局には、健康の維持増進の相談などに関する研修を修了した「研修修了薬剤師」の常駐を求めている。

通知では、研修の必要事項を取りまとめた「健康サポート薬局に係る研修実施要綱」を作成したことを周知。具体的には、研修は(1)技能習得型研修、(2)知識習得型研修――の2種類から構成されている。
(1)は、研修項目に「健康サポート薬局の基本理念」、「薬局利用者の状態把握と対応」、「地域包括ケアシステムでの多職種連携と薬剤師の対応」の3項目が示され、講義とグループ討議の演習を行う。
(2)は、研修項目に「地域住民の健康維持・増進」、「要指導医薬品等概説」、「健康食品、食品」、「禁煙支援」、「認知症対策」など11項目が示され、講義(eラーニングを含む)により行うとしている。
研修修了証は、受講者が(ⅰ)すべての技能習得型研修・知識習得型研修を修了した者、(ⅱ)薬局において、薬剤師として5年以上の実務経験がある者―のいずれも満たす場合に交付される。また、研修修了証は発行から6年間有効で、有効期限の2年前から有効期限までに研修を再履修・修了した場合、有効期限を6年間延長できるとしている。
▼健康情報拠点薬局のあり方に関する検討会報告書の中、最も肝心な「かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの機能」は下記のとおり。

かかりつけ薬剤師・薬局が持つべき3つの機能
前提:
○地域包括ケアシステムの一翼を担い、薬に関して、いつでも気軽に相談できる、かかりつけ薬剤師がいることが重要。
○かかりつけ薬剤師が役割を発揮する、かかりつけ薬局が、組織体として、業務管理(勤務体制、薬剤師の育成、関係機関との連携体制)、構造設備等(相談スペースの確保等)を確保。

①<服薬情報の一元的・継続的把握>
主治医との連携、患者からのインタビューやお薬手帳の内容の把握等を通じて、患者がかかっている全ての医療機関や服用薬を一元的・継続的に把握し、薬学的管理・指導を実施。
患者に複数のお薬手帳が発行されている場合は、お薬手帳の一冊化・集約化を実施。
②<24時間対応・在宅対応>
開局時間外でも、薬の副作用や飲み間違い、服用のタイミング等に関し随時電話相談を実施。
夜間・休日も、在宅患者の症状悪化時などの場合には、調剤を実施。
地域包括ケアの一環として、残薬管理等のため、在宅対応にも積極的に関与。
(参考)
・現状でも半分以上の薬局で24時間対応が可能。(5.7万のうち約3万の薬局で基準調剤加算を取得)
・薬局単独での実施が困難な場合には、調剤体制について近隣の薬局や地区薬剤師会等と連携。
・へき地等では、患者の状況確認や相談受付で、薬局以外の地域包括支援センター等との連携も模索。
③<医療機関等との連携>
医師の処方内容をチェックし、必要に応じ処方医に対して疑義照会や処方提案を実施。
調剤後も患者の状態を把握し、処方医へのフィードバックや残薬管理・服薬指導を行う。
医薬品等の相談や健康相談に対応し、医療機関に受診勧奨する他、地域の関係機関と連携。
◆障害者の地域医療について関係団体が意見提示 精神保健検討会
医療保護入院等のあり方など今年夏ごろの取りまとめを予定

――精神保健検討会
厚生労働省は2月25日、「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」を開催し、関係団体からのヒアリングを実施、次の4団体が見解を示した。
(1)日本精神科病院協会、(2)精神保健福祉事業団体連絡会・日本精神保健福祉事業連合・全国精神障害者社会福祉事業者ネットワーク・全国精神障害者地域生活支援協議会、(3)全国精神保健福祉会連合会、(4)全国「精神病」者集団。

改正精神保健福祉法では、施行後3年(2017年4月)をめどに、医療保護入院の手続きのあり方などに検討を加え、所要の措置を講ずるとされている。この検討会は精神科医療のあり方をさらに検討する場として、下部組織の各分科会(医療保護入院等のあり方、新たな地域精神保健医療体制のあり方)における議論の整理を経て、2016年夏ごろの取りまとめが予定されている。

今回示された見解は、「想定される主な検討事項」をふまえている。それらの検討事項のうち、「精神病床のさらなる機能分化」に対しては、前出の(1)から、「重度遷延・最重要度障害者治療を含む長期在院者に対する対策」を、(2)から、「現行の精神科特例を完全廃止し、すべての精神病床の人員配置を一般病床と同水準に引き上げること」を求める意見が示された。
また、「入院中の処遇、退院などに関する精神障害者の意思決定などへの支援のあり方」に関しては、(3)が、「精神科病院側から、定期的に入院患者全員に口頭や文書で意見を聞いてほしい」などの希望が示された。
「精神障害者を地域で支える医療のあり方」については、(1)が、「症状の重い患者などに対し、入院治療に劣らない密度の治療を外来通院で可能とするシステム(デイホスピタル)」を、(2)が、「専門職と協働するピアサポーター(同じような立場の人によるサポート)などの活用」を求めた。

この日、ヒアリングを受けた4団体の中から日本精神科病院協会の櫻木章司理事の見解(要旨)を紹介しよう。

「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会」意見表明(公益社団法人日本精神科病院協会 理事 櫻木 章司)
わが国における少子高齢化にともなう人口構成の変化やストレス社会の反映としての疾病構造の変化によって、精神疾患を有する患者数の推移には、以下のような変化が見られる。
統合失調症に関しては、①患者数については概ね変化はないが、患者数全体に占める割合は漸減している。②気分障害については、患者数、全体に対する割合ともに漸増している。③認知症、特にアルツハイマー型認知症の患者数の増加が目立つ、といった点である。
こうした疾病構造の変化に加え、薬物療法や心理社会的療法の進展によって、精神科入院治療においては、 早期退院群と長期在院群との二極分化ともいえる現象が明らかとなっている。また長期在院群においては、患者の“重度遷延化”(長引く状態)や高齢化が問題化しており、それらに対する対応が求められている。

*櫻木氏は前述のような現状分析を踏まえた上で、次のような対策を披露した。

▼重度遷延・最重度障害者治療を含む長期在院者に対する対策
現在における標準的な精神科医療を提供しているにもかかわらず、「長期にわたり入院の必要性があり、退院に行き着けない患者群」が存在するのが現実である。
これらの患者群に対しては、平成25年度より厚生労働科学研究として研究班が組織され、「重度かつ慢性」暫定基準案が作成された。これによると、「精神症状が一定以上の重症度を示し、それに加えて①行動障害、②生活障害のいずれか(もしくは両方)が存在する場合に、治療上の配慮が必要と判定する」とされている。
従来から、これらの群の多くを占める統合失調症患者の入院治療が長期に至る要因については、様々な検討がなされてきた。
今回、暫定基準案が提示されたが、従来われわれが提起していた、①激しい精神症状を遺し、頻回に隔離や拘束等の行動制限を要しており、入院治療の必要がある患者群(陽性症状群)や②欠陥症状が高度で、疎通が十分につかず徘徊等の行動があり、自ら危険回避ができない等、常時の医学的関与が必要な患者群(高度な欠陥症状群)に、重なる部分が多い。これらについて重症度の判定を行うことは、統合失調症の重症化の防止を図り、ひいてはその治療戦略を練るうえで欠くことができない。殊に統合失調症における急性期後の寛解過程(症状が消える)は、その後の慢性化への岐路としての臨床的意味をもつと考えられ、この回復過程での治療戦略の練り直しが、入院長期化についての問題解決の糸口になるのではないか――。

◆がんなど疾病治療と就業上の両立支援ガイドライン
厚労省 がん中心に企業の取り組み支援まとめる

――厚生労働省
厚生労働省は2月23日、「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表した。このガイドラインは、がん、脳卒中などの疾病を抱える労働者に対して、事業場(企業)が適切な就業上の環境的な措置や治療に対する配慮を行い、治療と職業生活が両立できるようにするため、事業場における取り組みなどをまとめたもの。環境整備や両立支援の進め方に加え、特に「がん」について留意すべき事項を取りまとめている。
厚労省は今後、このガイドラインの普及や企業に対する各種支援によって、疾病を抱える人々が治療と職業生活が両立できる環境整備に取り組んでいく方針。ガイドラインでは、仕事を持ちながら、がんで通院している人は32.5万人と推計されていることや、疾病を理由として1カ月以上連続して休業している従業員がいる企業の割合は、メンタルヘルスが38%、がんが21%、脳血管疾患が12%あるとの調査結果を提示している。今後は職場の労働力の高齢化が進むことが見込まれることから、治療と職業生活の両立の対応が必要となる。

ガイドラインには、特に「がんに関する留意事項」がまとめられており、予期せぬ副作用などが考えられるため、労働者は(1)手術後の経過や合併症に個人差がある、(2)抗がん剤治療は副作用で周期的に体調が変化することがあり、特に倦怠感や免疫力低下が問題となる、(3)放射線治療は毎日照射を受け、治療による倦怠感などに個人差が大きい―ことなどに留意して情報提供することが望ましいと説明している。さらに、事業者はメンタルヘルスの不調に陥る場合もあることや、精神的動揺や不安から早まって退職を選択する場合があることに留意が必要と述べている。

【ガイドラインのポイント】(厚労省作成)
<治療と職業生活の両立支援を行うための環境整備>
○労働者や管理職に対する研修などによる意識啓発
○労働者が安心して相談・申出を行える相談窓口を明確化
○時間単位の休暇制度、時差出勤制度などを検討・導入
○主治医に対して業務内容などを提供するための様式や、主治医から就業上の措置などに関する意見を求めるための様式を整備

<治療と職業生活の両立支援の進め方>
○労働者が事業者に支援を求める申出(主治医による配慮事項などに関する意見書を提出)
○事業者が必要な措置や配慮について産業医などから意見を聴取
○事業者が就業上の措置などを決定・実施(「両立支援プラン」の作成が望ましい)

<がんに関する留意事項>
○治療の長期化や予期せぬ副作用による影響に応じた対応の必要性
○がんの診断を受けた労働者のメンタルヘルス面へ配慮

両立支援の進め方の流れは、まず、①労働者が主治医に作成してもらった書面(就業の可否・時短等の望ましい就業上の措置)を事業者へ提出して申し出る。
次に、②事業者は主治医からの情報を産業医らに提供し、就業上の措置・職場での配慮に関する意見を聴取。その上で、③事業者が労働者の意見も聴取した上で就業の可否、就業上の措置(作業転換等)、治療に対する配慮(通院時間の確保等)の内容を決めて実施する。その際には、上記の具体的な支援内容をまとめた「両立支援プラン」の作成が望ましい。

厚労省の主な企業支援策
①全国で治療と職業生活の両立支援に関するセミナーを開催
全国各地で、企業関係者や産業保健スタッフ、医療関係者を対象として、ガイドラインの解説や、具体的な取組方法について、セミナー、研修会を開催。
②各都道府県の産業保健総合支援センターで相談に対応
治療と職業生活の両立に関する関係者からの相談に全国の産業保健総合支援センターが対応する。
③企業に対する個別訪問支援の実施
専門家が企業を訪問し、治療と職業生活の両立支援に関する制度導入や教育などについて、具体的な支援を行う。
④労災病院に併設する治療就労両立支援センター等との連携による支援の実施
労災病院に併設する治療就労両立支援センター等と連携し、労災病院等の患者の就労継続や職場復帰の支援に関する事業場との連絡調整等の支援を行う。

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