ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年3月4日号)
◆かかりつけ薬局への再編にテーマ別モデル事業立案
厚労省、薬務課長会議で2016年度の重点施策を説明
――厚生労働省
厚生労働省は3月1日、2015年度「全国薬務関係主管課長会議」を開催した。2016年度の事業に向け、かかりつけ薬剤師・薬局の推進など都道府県や政令指定都市の薬務施策担当者に向けて次年度の重点施策などを説明した。
厚労省は2016年度、かかりつけ薬剤師・薬局の推進のため、1.患者のための薬局ビジョン(2015年10月23日公表)、2.健康サポート薬局―などの施策を行うと説明した。
患者のための薬局ビジョンについて、厚労省はかかりつけ薬剤師・薬局の機能として(1)服薬情報の一元的管理、(2)24時間対応・在宅対応、(3)医療機関との連携――を示したと説明。薬局再編の全体像として、2025年までにすべての薬局を「かかりつけ薬局」に再編することを目指すと述べた。このため、ビジョン実現に資する薬剤師・薬局に関して、2016年度予算でテーマ別モデル事業を実施。都道府県の申請内容を評価した上で、事業を委託するとしている。
患者のための薬局ビジョンの概要は、地域包括ケア時代を見据え、すべての薬局をかかりつけ薬局に再編する道筋を示したことである。ポイントは「患者のための薬局ビジョン〜「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」へ〜」と再編と集約を進め、より地域住民の便益を意識した上で、かかりつけ薬剤師、薬局の“あるべき姿”を明確に打ち出したものである。
かかりつけ薬局には、①電子お薬手帳や医療ICTなどを通じ、すべての医療機関やOTCなども含めて服用薬の一元的管理・継続的把握、②開局時間外での電話相談など、24時間対応・在宅対応、③医療機関等との連携――の3つの機能を求める。
薬局ビジョンを貫くキーワードは、「立地から機能へ」、「対物業務から対人業務へ」、「バラバラから一つへ」の3つ。具体的には、門前薬局のような立地に依存し、便利さだけで選択されていた姿から脱却し、薬剤師としての専門性や24時間対応・在宅対応などを求めた。こうした薬局の姿に合わせ、薬剤師の職能も、これまでの薬中心の対物業務から、患者中心の“対人業務”へとシフトすることを盛り込んでいる。
2.については、厚労省はセルフメディケーション(軽微な不調・軽度な症状を自ら手当すること)の推進のため、かかりつけ薬局機能を持った上で、(a)地域住民の主体的な健康の維持・増進の積極的支援、(b)相談を幅広く受け付けての適切な専門職種や関係機関への紹介、(c)地域の薬局への情報発信・取り組み支援――を積極的に実施するものと説明。健康サポート薬局の基準として、医療機関と予め連携体制を構築することや、研修を修了した薬剤師の常駐、土日の一定時間開局、要指導医薬品を選択できるような供給機能・助言体制などを求める。
厚労省は2016年2月12日に省令・告示・関係通知の発出を行っており、2016年4月1日施行すると説明している。薬剤師の研修を勘案し、届出は10月1日から開始するほか、2016年度税制改正大綱を踏まえ、健康サポート薬局に用いる不動産の不動産取得税の優遇措置を創設すると説明した。
通知等とは、塩崎恭久厚生労働大臣は2月12日付で、健康サポート薬局のあり方に関する「基準告示」(2016年厚生労働省告示第29号)を公布したこと。また、厚労省は同日付で、同薬局の「法律施行規則の一部を改正する省令の施行等」に関する通知を発出した。
基準告示では、健康情報拠点薬局のあり方に関する検討会報告書の「健康サポート薬局のあり方について」(2015年9月)の内容を踏まえ、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的な機能に加え、国民による主体的な健康の保持増進を積極的に支援する「健康サポート薬局」の基準などを定めている。通知では、健康サポート薬局が満たすべき事項と健康サポート薬局の表示の届出の際の添付書類を周知している。
◆7 対 1 入院基本料、半年間で 14 病院 5,202 床 増加
77 病院で一般病棟入院基本料の算定引き上げ
――(株)日本アルトマーク
医療データベース事業を展開する(株)日本アルトマーク(東京都港区)は、定期調査の一環として2015 年 10 月 1 日時点での全国病院の「施設基準届出状況」を調査した。その結果と比較分析した概要が2月29日に公表された。同社は年2回、全国の厚生局および病院に対して病院の施設基準届出状況を調査している。
調査結果の概要は、7 対 1 入院基本料は半年間で14 病院 5,202 床増加、77 病院で一般病棟入院基本料の算定引き上げが行われたなどの特徴が明らかになった。
◇入院基本料引き上げが引き下げより2倍程度多い
調査は2015 年 10 月 1 日時点で全国の 1,541 病院(367,271 床)から届出があった。2014 年度診療報酬改定で算定要件が厳格化された一般病棟 7 対 1 入院基本料は減少傾向が続いていたが、前回調査時の 2015 年 5 月 1 日時点と比べると14 病院(5,202 床)増加した。昨年、特定機能病院でなくなった 2 病院(1,767 床)が含まれていることを差し引いても 12 病院(3,435 床)増加しているという結果であった。
特定機能病院などを除く一般病棟入院基本料の算定病院で、半年間に 7 対 1 へ算定を引き上げた病院は全国で 25 病院あり、その約半数が国公立の医療機関であった。また、前回調査時(2015年 5 月 1 日)に 7 対 1 から 10 対 1 に移行した 37 病院のうち、5 病院が再度 7 対 1 へ算定を上げていることがわかった。今回、一般病棟入院基本料を引き上げた病院は全国で 77 病院あった。
10 対 1 から 7 対 1 へ変更した病院が 25 病院、13 対 1 から 10 対 1 へ 31 病院、15 対 1 から 13 対1 へ 17 病院、15 対 1 から 10 対 1 へ 4 病院が届出の変更を行っている。一方、入院基本料を引き下げた病院は 36 病院あった。7 対 1 から 10 対 1 へ変更したところが 12 病院、10 対 1 から 13対 1 へ 10 病院、10 対 1 から 15 対 1 へ 4 病院、13 対 1 から 15 対 1 へ 10 病院が変更を届出た。
今回の調査では、入院基本料を引き下げた病院(36 病院)より引き上げた病院(77 病院)の方が 2 倍程度多いという結果がでた。
◇地域包括ケア病棟 1,302 病院届出 半年間で 121 病院増加
2014 年度診療報酬改定時に新設された地域包括ケア病棟入院料及び地域包括ケア入院医療管理料(以下「地域包括ケア」)の 2015 年 10 月 1 日時点の届出状況は、全国で 1,302 病院※1、36,890床であった。そのうち地域包括ケア 1 を届出たのは 1,219 病院(34,875 床)、地域包括ケア 2は 84 病院(2,015 床)であった。
一般病棟の全病床を地域包括ケア病床として運用しているのは 49 病院(1,839 床)であり、地域包括ケア病棟を届出ている 1,302 病院(36,890 床)の 3.8%であった。前回調査時(2015年 5月 1日) の 3.4%から殆ど変化がない。地域包括ケア病棟を併設している一般病棟の内訳は、10 対 1 の 721 病院(33%)が最も多く、7 対 1 は 369 病院(24%)、13 対 1 は 73 病院(18%)、15 対 1 は 34 病院(4%)となっている。
都道府県別の届出状況を見ると、島根県は 70%と一般病棟に占める割合が最も高く、次いで、高知県 51%、熊本県 47%、鳥取県と岡山県がともに 46%であり、西日本で届出割合が高い傾向は前回調査時(2015 年 5 月 1 日)と同じだった。
※1 地域包括ケア 1 及び 2 の両方を届出ている病院が 1 施設あるため、地域包括ケア 1 及び 2 の届出病院数の合計とは異なる(病床数は届出数のとおり合計されている)
◇回復期リハビリテーション病棟・病床 引き続き増加 1,405 病院が届出
回復期リハビリテーション病棟・病床の 2015 年 10 月 1 日時点の届出状況は、全国で 1,405病院、病床数は 75,748 床であった。そのうち回復期リハビリテーション病棟・病床 1 を届出たのは 540 病院(34,555 床)、回復期リハビリテーション病棟・病床 2 は全国で 733 病院(35,541床)、回復期リハビリテーション病棟・病床 3 は全国で 132 病院(5,652 床)であった。
前回調査の 2015 年 5 月時点と比較すると、回復期リハビリテーション病棟・病床 1 は 32 病院(2,202 床)増となり、直近の調査 3 回から引き続き増加傾向にある。
病院の都道府県別届出状況で多いのは、大阪府 108 病院(5,656 床)、東京都 95 病院(6,111床)、福岡県 86 病院(4,509 床)となり、大都市をもつ都府県で多い傾向が見られる。
◆全国の医療機関・保険薬局、家庭でも服用情報を閲覧可能
パナソニック ポータルサイト『chk4.me(TM)』をスタート
――パナソニック ヘルスケア(株)
パナソニック ヘルスケア(株)(東京都港区)は2月29日、電子版お薬手帳の情報(服用情報)を、全国の医師、薬剤師、または家族などと共有でき、閲覧できるポータルサイト『chk4.me(TM)(チェックフォーミー(TM))』を4月1日に立ち上げると発表した。
このサイトにより、電子版お薬手帳アプリ(例えば、ヘルスケア手帳(R-登録商標)の利用者は全国の医師、薬剤師、またはご家庭など、見せたい人にだけ、自分の意思で服用情報の共有ができる。服用情報を閲覧する人は、利用者のスマートフォン端末を預かることなく、だれでもアクセス可能なポータルサイト上で簡単に確認ができるようになる。
お薬手帳は、患者が服用中の医薬品に関する理解を深めるとともに、医療関係者が副作用等を把握できる(昨年9月厚労省発表)ため、電子版の手帳も、2016年4月から診療報酬算定上でも紙の手帳と同様の評価を受けるなど、普及が促進されている。また、医療機関や薬局での閲覧の際に、端末を手渡さずに確認できる方法や、どの機関でも閲覧できる仕組みも可能で今年2月、診療報酬改定で公表された。
パナソニックヘルスケアでは今後、電子版お薬手帳をもっと身近に、安心して利用してもらうため、患者と医療関係者に、服用情報の共有や閲覧を簡単に安心して行える環境を実現するとしている。
●chk4.me(チェックフォーミー) URL:https://chk4.me
【主な特長】
1.全国の医療機関・保険薬局、ご家庭からでも、服用情報の閲覧が可能
ポータルサイトchk4.me(チェックフォーミー)にアクセスするだけで、利用者が記録した服用履歴が閲覧できるようになる。閲覧者側には特別な端末やソフトウェアは不要で、ウェブブラウザでサイトhttps://chk4.me にアクセスするだけで済む。
2.閲覧者、利用者に必要な動作を低減した簡単な閲覧方式を採用
閲覧者、利用者ともワンアクションずつの動作で閲覧者の手元に利用者の服用履歴が表示される。
3.各電子版お薬手帳サービスプロバイダとの共用を実現
ポータルサイトとして今後、URL、サイトの普及促進を進めていき、さらに、電子版お薬手帳「ヘルスケア手帳(R)」だけに留まらず、他の電子版お薬手帳アプリの情報閲覧も可能とした。
本サイトで連携する各電子版お薬手帳サービス事業者には、簡単に組み込むだけのスマートフォンアプリのコンポーネントを提供し、大幅な改修をすることなく短期間での連携接続を可能としている。
本サイトでは、各サービス事業者の利用時には、各サービス事業者サーバへリダイレクトすることで、閲覧者の端末と各事業者のサーバをダイレクトに接続する仕組みを導入し、各サービスの個人情報等利用者のデータは各事業者で維持、管理し続けることを可能とした。これにより、各社で管理する個人情報の管理責任が明確になる環境を構築できると共に、複数のサービス事業者によるサイト共用と責任分界点の明確化との両立を実現した。
「ヘルスケア手帳(R)」サービスとは―。
2014年7月に業界で初めて、処方箋撮影から調剤完了通知までを一つのアプリで実現したサービスとして開始以来、2015年10月にグッドデザイン賞を受賞した。2015年12月には電子お薬手帳として初めて iPhoneの「ヘルスケア」アプリとの連係を開始した。現在、利用者は2.5万人を超え、全国の薬局で流通している
これまで、ヘルスケア手帳を利用している薬局では、利用者がスマートフォンを手渡さずに、薬剤師が、記録されている過去全ての服用情報を閲覧することができた。
今後は、このサイトchk4.me(チェックフォーミー)を通じて、利用していない薬局だけでなく全国の医療機関、各家庭からでも、その利用者の管理する服用情報を、利用者の承諾によって閲覧参照が可能となる。
◆重要性増す介護相談員,「橋渡し役」に求められる役割
現在、全国の約500市町村で約4,000人が活動中
――厚生労働省
厚生労働省は現在、約500市町村で、約4,000人が活動している「介護相談員の派遣等事業」について周知活動を行っている。2月23日に開かれた社会保障審議会介護保険部会でも介護相談員事業の施設側の理解とその果たす役割についてもっと周知広報していこうという議題が出た。
介護相談員派遣事業とは介護保険制度において、介護サービス利用者の権利擁護及び介護サービスの質の向上と適正な実施に資するため設けられていて、平成15年4月より、介護保険施設に対し、介護相談員の派遣等に協力するよう努力義務規定を設けている。なおこの事業のスタートは平成12年5月1日の「介護相談員派遣等事業実施要綱」(老発第473号通知)までさかのぼり介護保険誕生と一致する。
本来、介護サービスに関する利用者からの相談や苦情は、介護サービス事業者、その自治体、国民健康保険団体連合会で受け付けることになっている。しかし、これらの相談や苦情は、問題が生じた場合の事後的な対応が中心となっているところに、介護相談員の役割には施設側の現場でも誤解が生じる誘因がある。早い話「専門家が多すぎる」と声も多いからだ。多くの自治体では相談員の役割は何かと聞かれたら「介護相談員は橋渡し役」と線引きするのが現時点では正解としている。
したがって介護サービスに関する利用者からの日常的な疑問や悩み事の相談に応じるために介護相談員をサービス提供の場に派遣し、利用者の立場にたって、介護サービス事業者の職員と意見交換を行う。または苦情に至る事態を未然に防止するために双方で改善の途を探るとともに介護サービスの質の向上を相談しあう。
介護相談員とはケアマネージャーなどの専門職とは一線を画す。利用者の立場にたって介護を必要とする高齢者の相談に応じることのできる熱意とふさわしい人格を持った人で、介護相談員養成研修を修了している人が登録され、活動している。
これまでの経緯を見ると、介護保険施設等の運営基準の改正(平成15年~)があった年に介護相談員を積極的に受け入れる介護保険施設等を増やしていくため、平成15年4月より、指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)等の運営基準を見直し、次のような規定を設けたのである。
(指定介護老人福祉施設の場合)
指定介護老人福祉施設は、その運営に当たっては、提供した指定介護福祉施設サービスに関する入所者からの苦情に関して、市町村等が派遣する者が相談及び援助を行う事業その他の市町村が実施する事業に協力するよう努めなければならない、と明記された。
ただし平成15年4月から介護保険施設に対しては、介護相談員の派遣等に協力するよう努力義務規定を設けたが、強制ではない。身分はボランティア的非常勤の例が多いようだが、手当は出るから純粋のボランティアではない。
▼神奈川県相模原市の例(図参照)
神奈川県相模原市は、平成13年10月から事業を実施している。現在、介護相談員養成研修を修了した介護相談員が市内の特別養護老人ホームを定期的に訪問し、利用者の話を聴き、相談を受ける活動を行っている。介護相談員 26人
<訪問先>
・特別養護老人ホーム 30施設。平成20年度に「相模原市介護相談員の会」を設立し、介護相談員の活動に関する意見や情報の交換等を行い、介護相談員の資質の向上を図るとともに、介護相談員活動の推進に資するため取り組んでいる。
相模原市の活動状況(平成27年4月1日現在)
現在、厚労省が介護相談員の派遣等事業について周知・広報を行っているというのは、当初目指した「市民オンブズマン」的役割(介護保険制度を点検・検証)が、なかなか果たせない現状への反省・検証だろうとみるむきもある。専門家は「今後、問題発掘型のオンブズマンは行政の効率化に必ず必要になってくるので、きちんとした位置づけがなされ、より大きな機能を果たすよう住民や施設から要求されるようになると思われる」と好意的な見方をしている。
●実施状況(平成27年12月現在)
(1)実施市町村 489
(2)相談員数4,054人
(3)受け入れ事業所数 6,623か所
(4)受け入れ施設数 3568か所
*都道府県別実施率では、実施率の高い順に大阪府、東京都、神奈川県、京都府、千葉県、愛知県、富山県、静岡県がベスト8。