ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2016年4月14日号)
◆「大病院受診時定額負担」制度の説明分かりやすく
政府広報オンライン 診療報酬改定の特集記事
――内閣府
内閣府は、政府広報オンラインの情報ラインナップに「大病院受診時定額負担」に関する特集ページを開設し、国民に新制度を周知している。政府広報オンラインとは、政府の「政策課題」「施策・制度」「取り組み」の中から国民生活に身近な話題や政府の重要課題をピックアップし、記事や動画などで国民に分かりやすく伝えることを目的としたウェブサイトだ。特集記事は、「暮らしのお役立ち情報」というジャンルの中心に位置づけられ詳述されている。
今年度の診療報酬改定で決まった「大病院受診時定額負担」について国民の関心が高いと判断され、さっそく特集に組み入れられた形だ。
平成28年4月からは、緊急でやむを得ない場合を除き、大病院(特定機能病院・一般病床500床以上の地域医療支援病院)で、紹介状なしで初診を受ける場合は5,000円(歯科の場合は3,000円)以上、他の病院・診療所への紹介を受けたにもかかわらず再度同じ大病院を受診する場合は2,500円(歯科の場合は1,500円)以上の料金を、診察料とは別に必ず支払うことになる。
特集では、問いかけの形式から入り、それについて回答をする形で記事が書かれている。印刷物の広報誌で表現する「目次」に見合うものとして、(1)「大病院受診時の特別の料金」とは?(2)なぜ、大病院受診時に特別の料金が徴収されるの?(3)医療機関を利用するときは?――の3項目に分けて説明されている。
(1)では、「診療所などの紹介状なしで大病院の初診を受けるときなどに、診察料のほかにかかります」と案内。次に、診療所などからの紹介状なしで大病院(特定機能病院や一般病床500床以上の地域医療支援病院)の初診時に、診察料のほかに病院が決めた特別料金5,000円以上がかかり、再診は特別料金2,500円以上がかかることを紹介。
(2)では、「医療機関の機能分化を進め、質が高く効率的な医療を実現するためです」と案内。次に医療機関の機能分化に関し、イラストを用いて専門的な医療が必要な場合、診療所・中小病院から大病院への「紹介」を行い、軽症や症状が安定した場合は大病院から診療所・中小病院への「逆紹介」が円滑に行われることを期待していると説明。しかし、これまでは初診時に紹介状を持たない患者が、大病院の外来患者の半数以上を占めていたと指摘して、大病院での長い待ち時間や短い診察時間などの患者の不満を招いていることを解説している。そこで、医療機関ごとの機能を明確にし、「料金徴収により大病院などの機能強化を図っていく」と定額負担の意義を説明している。
(3)では、「診療所や病院の機能や役割を理解し、まずはかかりつけ医に相談して症状に合った医療機関を受診しましょう」と案内。次に、突然(緊急)の重病・重傷などの場合、かかりつけ医にこだわらなくてよいと呼び掛けている。
「政府広報」とは、内閣府大臣官房政府広報室が行う広報・広聴活動をいい、各府省が個別に行う広報と「政府広報」は区別される。「政府広報」は制度周知の役目を負うためイラストや図表を交えた分かりやすい説明に加え、コンテンツの2次利用(営利目的を除く)も認めており、説明する際などに便利で役立つページを目指している。
中高生用の教育ツールや大学生、社会人向けのサークル活動、セミナーなどの自習素材に応用できるなど利用範囲が広い。2次利用は「記事」、「クレジットの記載がないイラスト」、「写真」、「図表」の利用を認めている。
◆化血研・ワクチン製造の事業譲渡に関しコメント 塩崎厚労相
“今までとは違う新しいワクチン産業・企業のあり方を模索”
――厚生労働省
未承認の方法でワクチンなどを製造していた問題で業務停止処分を受けた製薬会社、化学及血清療法研究所(一般財団法人・化血研、熊本市)がアステラス製薬に製造部分の事業を譲渡する交渉を行っているとの報道が一部マスコミからあった。これを重視した塩崎恭久厚生労働大臣は4月8日の記者会見で質問に答えた。
化血研は一部ワクチンや血液製剤を未承認で製造し長期的な隠ぺい工作を行っていたことが発覚し、今年1月に過去最長の110日間の業務停止命令を受けていた。
フジテレビなどの報道によれば、同社はコンプライアンス体制の抜本的見直しのためアステラス製薬に事業譲渡の交渉を行っていることを明らかにし、アステラス製薬側も交渉の事実を認めているという。化血研の業務停止は5月6日までで、それまでに最終決定される見通しなどと報じた。
塩崎厚労相は、記者からの「製薬会社へ事業譲渡するという報道があったが、把握している事実関係はあるか」との質問に対して「事業譲渡も1つの選択肢であり、いろいろと相談しているのかもしれない。厚生労働省の基本方針は、化血研の事業継続を前提とせず抜本的な見直しを行うとの姿勢を明確に伝えている。その意味では(厚労省側が)指導していることになるかもしれない」と答えた。
次に「組織や改変のあり方をどのように考えるか」との質問に、塩崎厚労相は「今回のように組織的な欺罔(ぎもう)・隠蔽工作で問題が明らかになった場合、即刻許可取り消しとなるが、化血研でないと作れないワクチンなどがあり、110日間の営業停止になった」。現在進行形の形で「ワクチン産業のあり方を今、ワクチン行政を含めタスクフォースで見直してもらっており、今までとは違う新しいワクチン産業・企業のあり方を模索してほしい。化血研はいろいろな可能性の中で何がベストかをよく考えてもらいたい」と述べた。
厚生労働省 化血研の刑事告発検討
昨年12月11日、化血研が国の承認していない方法で血液製剤を製造していた問題で、塩崎厚労相は記者会見で「薬務行政を裏切る言語道断の態度」と批判し、医薬品医療機器法(旧薬事法)違反の疑いで刑事告発を検討する考えを明らかにした。塩崎厚労相は、化血研について「自浄作用を働かせるガバナンス(企業統治)の力もなく、法令順守の意識も低い」としたうえで、「国民の命に責任を持つものとして、刑事告発は色々検討した上で判断する」と述べた。
化血研の第三者委員会は、約40年前から不正製造を続け、虚偽の記録を作成するなどして組織的に隠蔽を図ってきたと報告書に明記。歴代幹部が不正を認識しながら放置してきたとして「重大な違法行為」と認定した。
◆消費者庁、ライオンのトクホに健康増進法の初勧告
健食の誇大広告に法令違反、取り締まり強化
――消費者庁
特定保健用食品(トクホ)の血圧低下作用を表示した新聞広告が誇大広告に該当するとして、消費者庁はこのほどライオン(株)に対し、健康増進法(健増法)に基づき勧告を出した。同法による特保(トクホ)の勧告は初のケース。1991年に制度がスタートして以来、これまで“行きすぎた広告”は指導されることはあっても黄信号止まりで、法令違反を問われることはなかった。対象商品は特保『トマト酢生活トマト酢飲料』。
消費者庁によると、同社は2015年9月15日~11月27日まで、大手日刊新聞紙上に血圧低下作用を表示した同商品の広告を掲載していた。今回、「トクホでも機能性表示食品でも虚偽誇大広告はダメ」と消費者庁の姿勢が明確に打ち出された、日本の健康食品制度において画期的な判断事例となったとされている。
新聞広告では、「臨床試験で実証済み!これだけ違う、驚きの『血圧低下作用』」、「実感できたから続けられる!10年くらい前から血圧が気になり、できるだけ薬に頼らず、食生活で改善できればと考えていました」(体験談)、「“薬に頼らずに、食生活で血圧の対策をしたい”そんな方々をサポートしようとライオンが開発した『トマト酢生活』」など、血圧低下作用が消費者庁から許可を受けているかのように示し、摂取するだけで高血圧を改善する効果を得られるかのように表示していた。
消費者庁は、同商品の許可表示は「本品は食酢の主要成分である酢酸を含んでおり、血圧が高めの方に適した食品です。」で、高血圧を改善する効果が得られるとは認められないとし、健康増進法違反を消費者に周知徹底することと、再発防止策などを勧告した。
同社は「勧告を真摯に受け止め、広告出稿時の管理体制をより一層強化し、再発防止に努める」としている。
消費者庁は2011年7月に特定保健用食品の表示に関するガイドラインを発表している。消費者庁が健康増進法の解釈を示すのは初めてだった。ガイドラインは、テレビCMなどでグラフや体験談を使う際、虚偽・誇大表示の恐れがある表示について具体例を示すなど、かなり踏み込んだ内容となっている。消費者庁では今回のガイドラインについて「健康食品に適用するものではない」(食品表示課)としているが、健増法の解釈を示すものであり、今後のテレビCMや新聞の考査に影響を及ぼすことになる可能性があるとしてマスコミ報道、食品業界に緊張が走った経緯がある。
「特定保健用食品の表示に関するQ&A」と題されたガイドラインは、トクホの定義に始まり、表示規制に対する考え方や対象となる表示物を説明する内容。虚偽・誇大表示の恐れがある表示については、許可の範囲を逸脱した強調表示や、恣意的な試験データ等の操作により誤認を与えかねない表示を例示している。
特に、試験結果やグラフを使用する場合やアンケートやモニター調査の結果として個人の体験談を使う場合の留意点にまで踏み込んで説明しており、試験結果やグラフを使う場合は、「極端なグラフのトリミング(スケール調整等)や作為的なデータ抽出を行ったもの」や「十分に試験全体の説明が行えないような短時間のテレビコマーシャル等の広告における試験結果やグラフの使用」などを虚偽・誇大表示の恐れがあるとしている。
◆2017年次期基本計画策定に向け報告書を公表 緩和ケア検討会
新指標に基づく「実施すべき取り組み」に5項目
――厚生労働省
厚生労働省は、がん対策推進基本計画に基づく次期基本計画策定に向け「緩和ケア推進検討会報告書」を公表した。がん対策は現在、2017年6月の次期基本計画の閣議決定を控え、重点課題の「健診」、「医療提供体制」、「緩和ケア」を検討会で議論している。
報告書は、「実施すべき取り組み」として、(1)新指標に基づく拠点病院における緩和ケアの提供、(2)緩和ケア研修会、(3)普及啓発・教育、(4)がん疼痛評価の指標、(5)地域における緩和ケア提供体制――の5項目を提示。また、「今後検討すべき課題」も示している。
(1)では、「緩和ケア提供体制の整備」について、ピアレビュー(拠点病院間の相互評価)を行って緩和ケアの質の評価指標を作成し、国立がん研究センターなどの関連団体と連携して、PDCA構築を推進するよう要望している。
(2)では、緩和ケアの知識・技術の普及を行う「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研究会」に関して、受講率向上に向けて医師・歯科医師が受講しやすい環境づくりが必要と述べている。
(3)では、学校教育で緩和ケアを含むがんに対する理解を深める取り組みを推進するため、学校医やがん専門医などの外部講師活用のための体制整備を要望した。
(4)では、医療用麻薬の使用量の施設間格差を減少し、継続的ながん疼痛緩和が行われるよう全国の拠点病院で共通の疼痛評価指標を活用することを目指す。
(5)では、拠点病院の緩和ケアチームなどの専門的緩和ケアと、地域の医療従事者が提供する基本的緩和ケアの連携が重要と強調。そのため、地域連携を促進するコーディネータの育成や、在宅がん患者のための緊急緩和ケア病床の確保を求めている。
今後検討すべき課題では、「拠点病院における緩和ケア提供体制のあり方」、「拠点病院以外の医療機関における緩和ケア提供体制のあり方」、「すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための方策」の3つをあげた。
がん診療連携拠点病院等とは
厚労省は全国どこでも質の高いがん医療を提供することができるよう、全国にがん診療連携拠点病院を399箇所、地域がん診療病院を28箇所、指定している(平成28年4月1日現在)。専門的ながん医療の提供、地域のがん診療の連携協力体制の構築、がん患者に対する相談支援及び情報提供等を行っている。
新たながん診療提供体制(平成26年度から)
がん診療連携拠点病院における診療体制の向上や、基本的がん診療の更なる均てん化等を図るため、平成26年度から次のような見直しを行っている。
・がん診療連携拠点病院の指定要件の強化
・「特定領域がん診療連携拠点病院」(特定のがんに高い診療実績を持ち、都道府県内で拠点的役割を果たす病院)の新設
・「地域がん診療病院」(拠点病院のない2次医療圏で、基本的がん診療を行う病院)の新設