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介護経営情報(2016年6月3日号)

2016/6/6

◆厚労省「高齢者の保健事業のあり方検討WG」を新設
社会保障審議会 「フレイル」(虚弱)」対策を重視

――厚生労働省
厚生労働省は5月26日、社会保障審議会の医療保険部会を開催。(1)最近の医療費の動向、(2)高齢者医療の現状など、(3)「子どもの医療制度の在り方等に関する検討会」議論の取りまとめ―の3点を議論した。また2016年度から「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」の下に、「高齢者の保健事業のあり方検討WG」(ワーキンググループ)を新設すると発表した。
中心となるテーマは高齢者のフレイル(虚弱)対策をはじめとした保健事業の推進、後期高齢者の医療機関窓口負担や高額療養費などのあり方を、今年末(2016年末)にかけて議論していく。その目的で「高齢者の保健事業のあり方検討WG」(ワーキンググループ)を新設すると発表した。このような方針が、この日の社保審・医療保険部会で、厚生労働省保険局高齢者医療課の藤原朋子課長から発表された。

(1)(2)に関したポイントは①若年層では「メタボ」対策、②高齢者では逆に「フレイル」(虚弱)対策が重要といった「公平性」の視点に立ち、論理的に「高齢者の負担のあり方」を検討する、というもの。
厚労省の説明によると「高齢化の進行で医療費が膨張し、我が国の経済・財政を圧迫している」と指摘し「高齢者の1人当たり医療費は、若人よりも高いことが知られています。例えば2013年度で見ると、40-44歳の1人当たり医療費は入院で4万1000円、入院外で8万6000円、60-64歳では入院13万4000円、入院外20万5000円ですが、80-84歳では入院41万5000円、入院外44万円となっています。40-44歳と80-84歳を比べると、入院ではおよそ10倍、入院外ではおよそ5倍の開きがあります」と両者を比較した。
その上で「1人当たり医療費を見ると、入院・入院外とも増加傾向にあるが、特に入院では0-4歳、75-84歳、入院外では80歳以上で増加幅が大きい」とした。
こうした事態を重く見て、厚労省や自治体では、被保険者の特性にあわせた予防・健康づくり対策を進めている。例えば若年期や壮年期には、特定健診や特定保健指導といった生活習慣病予防に向けたメタボ対策が重点的に行われている。さらに、厚労省はこの春から糖尿病の重症化予防(重症化して透析に移行する患者を減らす)に力を入れている。一方で高齢期になると、メタボとは逆に「フレイル」(虚弱)対策に力を入れていく必要があると方針を定めた。

厚労省は「個人や保険者による予防・健康づくりの推進」に関して、高齢者の特性として「フレイル(加齢とともに、筋力や認知機能などが低下し、生活機能障害・要介護状態・死亡などの危険が高くなった状態)」があると説明した。フレイル対策として、2015年度に実施した厚生科学研究「後期高齢者の特性に応じた保健事業の在り方について研究」を踏まえ、2016・2017年度にモデル事業を実施。効果検証を踏まえて事業実施のガイドラインを作成し、2018年度に事業を本格始動する。
 
また、後期高齢者医療広域連合の取り組みを支援する仕組みを構築する必要性について言及。高齢者の特性を踏まえた効果的な保健事業のガイドラインを策定し、2016年度から「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」の下に、「高齢者の保健事業のあり方検討WG」を新たに設置する。
 
さらに、「被用者保険者への支援」に関し、被用者保険の負担が増加する中、出金負担の重い被用者保険者への支援を実施すると説明。具体的には、(ⅰ)拠出金負担の軽減(制度化)、(ⅱ)前期高齢者納付金負担の軽減―を行う。
(i)では、2017年度から、拠出金負担(後期高齢者支援金・前期高齢者納付金)が重い上位3%の保険者に実施している負担軽減を、上位10%に拡大。拡大分に該当する保険者の負担軽減費用は、保険者の支え合いと国費で折半する。(ⅱ)では、2015年度から、高齢者医療運営円滑化等補助金を段階的に拡充し、前期高齢者納付金の負担軽減を図る。

◆屋内禁煙法制化を強調、受動喫煙で年間1万5,000人死亡
国立がんセンター 初の推計発表 1万人が女性

――厚生労働省
5月31日の世界禁煙デーにあわせて厚生労働省は31日、東京・千代田区内でシンポジウムを開催した。
国立がん研究センターがん登録解析室長の片野田耕太氏が講演して「他人、家族にかかわらず喫煙者のたばこの煙を吸い込む『受動喫煙』によって肺がんや脳卒中などで死亡する人は、国内で年間およそ1万5000人に上る」という推計を初めて公表、国立がん研究センターのグループがまとめたデータに注目が集まった。
死亡者のうち約1万人が女性で、男性の2倍に達していた。また、男女ともに受動喫煙による死亡の原因疾患としては脳卒中が5割を占めていたというショックな内容。

報告によると、研究グループではまず、国内外の論文を参考に肺がんや心筋梗塞、それに脳卒中で死亡した人で「受動喫煙」があったかどうかを2つのグループに分けて比較した。
その結果、受動喫煙があった人のほうがこうした病気で死亡する危険性が1.28倍高まっていることから、これを国内の統計に当てはめ推計すると、受動喫煙が原因で死亡する人は年間およそ1万5000人に上るという結果が導きかれた。
このうち、肺がんでは女性でおよそ1850人、男性でおよそ620人、心筋こうそくでは女性でおよそ2880人、男性でおよそ1570人、脳卒中では女性でおよそ5680人、男性でおよそ2320人が死亡していると推計される。研究をまとめた片野田室長は「法律で公共の場所を禁煙にするなど社会全体で受動喫煙防止について考えていかなければならない」と「屋内禁煙の法制化」を強調している。

受動喫煙と病気の因果関係がわかっている4つの病気で、非喫煙者と比べたリスクや、職場や家庭での受動喫煙割合の調査などから年間死亡数を推計した。病気別には、肺がん2484人、心筋梗塞(こうそく)などの虚血性心疾患4459人、脳卒中8014人、乳幼児突然死症候群73人。
男女別(乳幼児を除く)では、男性が4523人、女性が1万434人。女性が2倍以上となる理由について、片野田耕太室長は「家庭内での受動喫煙率が、女性が圧倒的に高いため」と説明する。
世界保健機関(WHO)によると、2014年時点で英国、カナダ、ブラジル、ロシアなど49カ国が法律で公共の場所を屋内全面禁煙にしている。
*世界禁煙デー 毎年5月31日を世界保健機関に定め今年で29回目を迎える。厚労省では、平成4年に世界禁煙デーに始まる1週間を「禁煙週間」(5月31日~6月6日)と定めて、普及啓発を行っている。

◆居宅介護支援、事業所割合が80%以上である場合の減算
厚労省、特定事業所集中減算の取り扱いで事務連絡 

――厚生労働省
厚生労働省は5月30日、「居宅介護支援における特定事業所集中減算(通所介護・地域密着型通所介護)の取り扱い」に関する事務連絡を行った。「特定事業所集中減算」とは、正当な理由なく、事業所でそれまでの6カ月間に作成されたケアプランに位置付けられた居宅サービスのうち、訪問介護・通所介護サービス等に関して、特定の事業所割合が80%以上である場合に減算するもの。
前回2015年度改定では、対象サービスを訪問介護、通所介護、福祉用具貸与のサービスから拡大して、2016年4月1日から地域密着型通所介護も対象に加わっている。
 
この事務連絡は、会計検査院が3月25日、「介護保険制度の実施状況に関する会計検査の結果についての報告書」を公表したことが発端。報告書は参議院からの要請を受け厚労省に対して、特定事業所集中減算の見直しなどの検討を求める内容。

検査結果では、2012年度後期と2013年度前期のいずれの期間でも集中割合が80%超90%以下だった216事業所のうち、居宅サービス計画の作成の際、所属するケアマネジャーが減算の適用を受けないようにするため、計画内容を変更するなど意図的に集中割合を低下させたことが35.1%の76事業所で「ある」と回答したと報告。
このため、会計検査院は「ケアマネジャーが利用者の人格を尊重し、常に利用者の立場に立って業務を行わなければならないとしている運営基準などの趣旨に反する」と指摘。厚労省に対して、「特定事業所集中減算」の見直しも含めた検討を要請していた。

今回の厚労省の事務連絡では、2016年年4月1日以前から継続して通所介護を利用している人も多く、通所介護と地域密着型通所介護とを分けて計算することで居宅介護支援業務に支障が生じる懸念への回答を行ったもの。
それによると2016年4月1日から2018年3月31日までの間に作成される居宅サービス計画に関して、減算の判定は通所介護と地域密着型通所介護のそれぞれについて計算するのではなく、いずれか、または、双方を位置付けた居宅サービス計画数を算出し、通所介護と地域密着型通所介護を合わせて紹介件数の最も多い法人を位置づけた居宅サービス計画数の占める割合を計算して差し支えないと説明している。

◆職場での熱中症死亡者、年間400~500人死亡
厚労省「2015年 熱中症による死傷災害の発生状況」

――厚生労働省
厚生労働省は5月25日、2015年の「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」を公表した。調査結果では、2015年の職場での熱中症の死傷者(死亡や休業4日以上の人)は前年比41人増の464人で、このうち死亡者は前年比17人増の29人だった。なお、業種別の死亡者は建設業が11人で最も多く、次いで警備業が7人で、2業種で全体の約6割を占めている。
年次推移を見ると、過去10年間の熱中症による死傷者は、猛暑だった2010年が656人で最多。以降、毎年400から500人台で高止まりの状態となっている。 
 
また、月別の死傷者数(過去5年間の集計)は全体の9割が7月と8月に集中。時間帯別では、14~16時台に死傷災害が多く発生している。死亡者の作業日数(作業開始日から熱中症発生日までの期間)を見ると、全体の5割が「高温多湿作業場所」で作業を開始した日から7日以内に死亡災害が起きている。さらに、全死亡者29人の状況を見ると、(1)WBGT値(環境省が予測値・実況値を公表している暑さ指数)の測定を行っていない:28人、(2)計画的な熱への順化期間(作業時間を徐々に長くするなど熱に慣れて環境に適応する期間)が設定されていない:26人、(3)自覚症状の有無にかかわらない定期的な水分・塩分の摂取を行っていない:17人、(4)健康診断を行っていない:13人―など、基本的対策が取られていなかった。
 
厚労省は今年(2016年)の夏は、西日本で気温が平年並みか平年より高くなることが見込まれ、熱中症による労働災害が多発する懸念があると指摘。適切な対策を行うよう労働局・労働基準監督署を通じて指導するとともに、対策のポイントをリーフレットにまとめ注意を呼びかけている。

暑さ指数とは?(環境省・熱中症予防情報サイト参照)
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的として1954年にアメリカで提案された指標です。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい ①湿度、 ②日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、 ③気温の3つを取り入れた指標です。

暑さ指数の使い方
暑さ指数(WBGT)は労働環境や運動環境の指針として有効であると認められ、ISO等で国際的に規格化されています。 (公財)日本体育協会では「熱中症予防運動指針」、日本生気象学会では「日常生活に関する指針」を下記のとおり公表しています。労働環境では世界的にはISO7243、国内ではJIS Z 8504 「WBGT(湿球黒球温度)指数に基づく作業者の熱ストレスの評価-暑熱環境」として規格化されています。

○予防運動指針
温度基準(31度以上―危険、28度~31度―厳重警戒、25度~28度―警戒、注意―25度未満)

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