ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年7月1日号)
◆国保7割、介護保険9割不適切、5年遡及し保険料還付を
総務省 行政苦情救済推進会議の意見踏まえあっせん
――総務省
総務省は6月24日、国民健康保険、後期高齢者医療、介護保険の3つの保健制度にかかる保険料の還付促進・還付加算金の取り扱い改善に関し、いずれの市町村・都道府県後期高齢者医療広域連合(「広域連合」)でも5年程度遡及して適正に保険料を還付し、還付加算金は地方税法で消滅時効を5年として適正に加算することを周知する必要があると指摘した。その上で、総務省の諮問機関である行政苦情救済推進会議(座長:秋山收 元内閣法制局長官)の意見を踏まえて、厚生労働省にあっせん(斡旋)を行ったと発表した。
総務省のあっせんとは、行政が紛争解決のため、意見や代替案を示して自主的改善を促す制度。
行政相談の要旨は、① 母の後期高齢者医療の保険料について、所得税や地方税と同様に過去5年間分について遡及して還付してほしい(島根県からの相談)。 ② 保険料の還付加算金の時効は 5年であるが、2年と解している市がある。厚生労働省は、市町村に還付加算金の時効期間を周知する必要があるのでないか(中部管区からの相談)――の2つ。
3つの保険制度の平成26年度までに賦課決定された保険料について減額賦課事由が生じている場合、市町村又は広域連合は、5年間程度は遡及して減額賦課し、過徴収となっている保険料を還付する必要がある。
しかし、平成27年8月1日時点で総務省が抽出した市町村及び全国の47の広域連合の保険料の還付について調査したところ、3つの保険制度の保険料のいずれについても、5年程度は遡及して減額賦課すべきところを2年と解して減額賦課しているところがあった(国民健康保険:14/20市町村、後期高齢者医療: 3/47広域連合、介護保険:20/22市町村)。
3つの保険制度のいずれにおいても、保険料の還付加算金の消滅時効を5年として加算しなければならない。しかし、総務省が抽出調査した市町村の中には、2年と解して加算しているところがあった(国民健康保 険:9/20市町村、後期高齢者医療:2/22市町村、介護保険:13/22市町村)。
このあっせんに基づく改善措置が講じられた場合、3つの保険制度の保険料に関し、ⅰ)平成 26 年度 までに賦課決定された保険料のうち減額賦課事由が生じている保険料の還付、ⅱ)還付加算金の加算が適正に行われることになる。
この結果からみて、総務省は「全国的にも、本来減額賦課されるべき保険料の減額賦課が行われず、過徴収となっている保険料(過誤納金)が納付義務者に還付されていないところがあると考えられる」とコメントしている。
なお遡及期間を 2年と解して減額賦課している理由について、市町村及び広域連合では、被保険者の資格管理や保険料の賦課・徴収等の事務を電算で処理するための既存のシステムで対応できないこと、2 年を超えて遡及して減額賦課する必要はないと認識していたこと等を挙げている。
◆肥満者の半数以上は治療必要 1割は保健指導が必要
健康保険組合連合会 特定健診者の健康リスクを調査
――健康保険組合連合会(健保連)
健康保険組合連合会(健保連)の調査分によると、2014年度に特定健康診査を受診した326万4,499人(433組合)が抱える健康リスクをみると、肥満の人(36.9%)は、肥満でない人(63.1%)に比べ、特定保健指導の受診勧奨レベルに達している割合が高く、生活習慣病の治療を受けている割合も高いことが明らかになった。
健保連はデータヘルス計画を積極的に策定しており、今回の調査では2014年度に特定健康診査を受診した326万4,499人を対象に、検査値と健康状態にどのような傾向があるかを分析した。結果を「健診検査値からみた加入者(40-74歳)の健康状態に関する調査分析」として公表した。
解析の結果、肥満の人は特定保健指導の受診勧奨レベルに達している割合が高く、生活習慣病の治療薬を服用している割合も高かった。肥満の人は血圧・脂質・血糖・肝機能のうち複数の健康リスクを抱えている割合も高かった。
全体像を見ると、全体の63.1%に当たる206万699人が「非肥満」、36.9%に当たる120万3,800人が「肥満」と判断された。肥満の判定基準は「内臓脂肪面積が100㎠以上、またはBMIが25以上」、内臓脂肪面積の検査値がないときは「腹囲 男性85cm以上 女性 90cm以上、またはBMIが25以上」とした。
非肥満者では、血圧・脂質・血糖・肝機能の4つの健診項目が「基準範囲内」となっている割合がもっとも多く32.3%、「保健指導基準値以上」が15.7%、「受診勧奨基準値以上」が6.7%、「服薬投与」が8.4%だった。
これに対し肥満者では、「基準範囲内」が6.7%、「保健指導基準値以上」が10.8%、「受診勧奨基準値以上」7.8%、「服薬投与」が11.6%だった。肥満者の半数以上は治療が必要で、10人に1人が保健指導を必要とする計算になる。
肥満者と非肥満者で、▽血圧、▽脂質、▽血糖、▽肝機能―の4項目に関するリスク保有状況をみると、肥満者のほうに高リスク保有者が多いことが示された。
●肥満者は複数の検査で異常値が出やすい
「非肥満」の判定を受けた人のうち、検査で「保健指導判定値」が出た人は71万9,000人。リスク項目別割合をみると、もっとも高い割合を示したのは、(1)「脂質」37.7%で、次いで(2)「血糖」11.9%、(3)「血圧」8.8%となった。
一方、「肥満」の判定を受けた人のうち、検査で「保健指導判定値」が出た人は78万3,800人。リスク項目別割合をみると、もっとも高い割合を示したのは、(1)「脂質」33.9%で、次いで(2)「血糖」15.3%、(3)「血圧・脂質」10.9%となった。
「非肥満」で「要保健指導」と判定された人のうち「脂質」「血圧」およびその両方の異常が指摘された人は52.2%だったが、「肥満」と判定された人では60.1%に増える。「肥満」の人では4項目の複数の検査値の異常が重なる人も多かった。
もっとも異常が多かった「脂質」については、健診判定区分別に該当者の割合をみると、(1)「基準範囲内」37.7%、(2)「保健指導判定値」30.3%、(3)「受診勧奨判定値」32.1%となった。被保険者・被扶養者別にみると、被保険者のほうが「保健指導判定値」および「受診勧奨判定値」の割合が高く、また50歳以降では被扶養者のほうが「保健指導判定値」および「受診勧奨判定値」の割合が高くなる傾向がみられる。
「血圧」については、(1)「基準範囲内」66.7%、(2)「保健指導判定値」16.5%、(3)「受診勧奨判定値」16.9%。「血糖」については、(1)「基準範囲内」68.9%、(2)「保健指導判定値」26.1%、(3)「受診勧奨判定値」5.1%となっている。
●年齢・業種・扶養家族などの条件で保健指導は変わる
業態別にみると、「肥満者」が多い業種は、▽建設業(50.0%)、▽運輸業(46.5%)、▽その他のサービス業(45.7%)、▽金属工業(44.0%)、▽卸売業(43.0%)。逆に少ないのは▽労働者派遣業(22.4%)、▽繊維製品製造業(27.6%)、▽医療・福祉(28.1%)。
また、被保険者・被扶養者別、年齢階級別に、脂質に関するリスクの程度をみたところ、55~64歳の被扶養者で受診勧奨基準値以上の人が多く、逆に40~49歳の被扶養者では基準値範囲内の人が多いことが分かった。
被保険者がどのような業種で働いているのか、被扶養者がいるか、年齢はどの程度なのかによってリスクの状況が変わり、保健指導の必要と内容の傾向が変わっていく。保健指導を行うときは、対象者の年齢、職種や被扶養者の有無に配慮する必要がある。
◆高額介護予防サービス費相当事業の留意点を公表 厚労省
総合事業へ移行 8月1日から高額介護サービス費の基準変更
――厚生労働省
厚生労働省は6月24日、介護保険最新情報vol.556を公表した。8月1日から高額介護サービス費の基準が変わることと合わせた国からの周知の一つ。「介護予防・日常生活支援総合事業における高額介護予防サービス費相当事業等の留意事項」、「介護予防・日常生活支援総合事業における公費負担を対象とした高額介護予防サービス費相当事業による支給の振替」に関する同日付の事務連絡を掲載した。
高額介護サービス費支給制度とは、公的介護保険を利用し、自己負担1割(注・一定以上の収入のある65歳以上は2割)の合計の額が、同じ月に一定の上限を超えたとき、申請をすると「高額介護サービス費」として払い戻される制度。これは、国の制度に基づき各市町村が実施するもので、個人の所得や世帯の所得に対して上限が異なる。ただし、この高額介護サービスの対象には、老人ホームなどの居住費や食費、差額ベッド代、生活費などを含むことはできない。また、在宅で介護サービスを受けている場合の福祉用具の購入費や住宅改修費などについても高額介護サービス費の支給対象とはならななど注意事項がある。一般的な所得の人の負担の上限は37,200円。
2015年の介護保険法改正によって総合事業へ移行が行われており、指定業者が提供するサービスは、利用料を償還する対象となる。「総合事業」では利用者負担の影響を考慮し、「高額介護サービス費相当事業」が実施される見込み
厚労省は、「介護予防・日常生活支援総合事業における高額介護予防サービス費相当事業等の留意事項」に関する事務連絡で、対応について留意が必要な事例を示し、都道府県に管内市町村へ周知するよう呼びかけている。
また、介護保険優先の公費負担医療等の対象となる介護保険サービスは、介護(予防)サービス費用のうち、保険給付を控除した額を公費負担医療や被保険者等本人が負担している。しかし、公費や被保険者等負担分が高額介護(予防)サービス費の支給の自己負担上限額を超える場合は、高額介護(予防)サービス費の支給があったとみなす。
現在、高額介護(予防)サービス費から公費負担医療等への財源の振替は、国民健康保険団体連合会で高額介護(予防)サービス費・公費負担医療等の負担するべき支給額を計算し、介護保険者・公費負担者へ請求している。
厚労省は、「介護予防・日常生活支援総合事業における公費負担を対象とした高額介護予防サービス費相当事業による支給の振替」に関する事務連絡で、介護保険法改正で創設した介護予防・日常生活支援総合事業の高額介護予防サービス費相当事業に関しても、国保連合会で同様の振替を行う必要があることを説明。都道府県に、取り扱いの周知を呼びかけている。
◆遺族との相談体制充実など医療事故調査制度改正
厚労省 支援団体連絡協議会を全国に設置
――厚生労働省
厚生労働省6月24日付で、支援団体が情報共有などを行う「支援団体等連絡協議会」を都道府県に1カ所、中央に1カ所設置することや、遺族などからの相談対応の充実を盛り込んだ医療事故調査制度の改正を行った、同日付で省令、医政局長、同局総務課長の通知を発出した。本改正では各病院等に対し、死亡および死産事例が発生した場合、当該病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制の構築も求めている。医療事故調査制度は2015年10月から開始した。
医療事故調査制度の見直しは6月9日に開かれた社会保障審議会医療部会で改正の方針を打ち出していた。支援団体や医療事故調査・支援センターが情報や意見を交換する場として、「支援団体等連絡協議会(仮称)」を制度的に位置付けるほか、同センターは、遺族等からの相談内容を医療機関に伝達する枠組みを設けるなどの「改善措置」(5項目)を講じることとし、6月24日の「医療法施行規則の一部を改正する省令」の公布・施行へと時間を置かず連結した。
今回の改正内容の要旨は、病院等の管理者が行う医療事故報告と医療事故調査等支援団体による協議会の設置の2本柱を定めたもの。また厚労省は同日付で、2つの関連通知を発出し、内容や留意事項を周知している。
改正では医療事故報告について、病院等の管理者は死亡・死産事例の発生が病院等の管理者に遺漏なく速やかに報告される体制を確保すると定めた。また、遺族らから医療事故が発生したのではないかと申出があり、医療事故に該当しないと判断した場合、遺族らに対して理由をわかりやすく説明することとしている。
「協議会設置」について、医療事故調査等支援団体は支援を行うにあたり必要な対策を推進するため、共同で協議会(支援団体等連絡協議会)を組織することができると定めた。
具体的には、協議会で病院等の管理者が医療事故に該当するか否かの判断や、医療事故調査等を行う場合に参考とすることができる標準的な取り扱いについて意見交換を行う。また、協議会は地方組織として各都道府県の区域を基本に1カ所、中央組織として全国に1カ所設置することが望ましいとしている。
この地方協議会には都道府県に所在する医療事故調査等支援団体が参画し、全国に設置される中央協議会には全国的に組織された支援団体や医療事故調査・支援センターが参画すると定めている。
このほか、通知では、医療事故調査・支援センターが支援団体や病院等に対して、医療事故調査などに関する優良事例の共有や研修を協議会と連携して実施するとした。また、センターに対して遺族等から相談があった場合、求めに応じて相談の内容などを病院等の管理者に伝達する。さらに、再発防止策の検討を充実させるため、病院等の管理者の同意を得て、必要に応じて、医療事故調査報告書の内容に関する確認・照会等を行うとした。