ホーム > 新着情報 > 介護経営情報(2016年7月8号)
◆40歳以上の健常者から認知症対策のための研究データ収集
インターネット健常者登録システム、7月5日から募集開始
――国立精神・神経医療研究センター
40歳以上の健常者を対象とした認知症予防に関する数万人規模の調査を、国立精神・神経医療研究センターと国立長寿医療研究センター、そして日本医療研究開発機構が開始した。登録はインターネットで可能で、7月5日から受け付けている。
国立精神・神経医療研究センター(NCNP、東京都小平市、理事長:水澤英洋)は6月末、日本で初めて認知症予防のための健常者対象の新オレンジプラン統合レジストリ;『IROOP™』(商標登録―アイループ)の運用を開始したと発表した。NCNPは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の認知症研究開発事業の支援により国立長寿医療研究センターなどとともに認知症の発症予防を目指しIROOP(Integrated Registry Of Orange Plan;アイループ)を開発し、7月5日に登録運用を開始した。
「IROOP™」(アイループ)は国立精神・神経医療研究センターなどの研究グループが開発したインターネット健常者登録システムだ。現在、商標登録出願中の記号「TM」(トレードマーク)が付いている。
<この活動のポイント>
産官学から提供される最新の情報により認知機能低下予防や多くの健康増進に関する国の知識向上を図るのが主目的。登録者には生活習慣などのアンケートに答えるとともに、アメリカおよび日本で有効性検証されている認知機能検査「IROOP™あたまの健康チェック」を電話で半年ごとに無料で受ける仕組み。
半年ごとの認知機能の経過に関連する因子をアンケート情報から調査・解明することを目指し、認知症の発症予防に役に立てる。認知症予防を目的とした臨床研究や認知機能の改善が期待される薬の治験に適した登録者に情報を提供する。
<「IROOP™」(アイループ)の概要>
脳とこころの疾患の克服を目指すナショナルセンターであるNCNPは、新オレンジプランに基づく研究として、認知症が発症する前の症状をとらえ、生活習慣の改善などにより発症を予防する因子の解明と、認知機能の改善が期待される薬の開発のための臨床研究や治験促進を目的とする、認知症予防のための健常者レジストリのシステムを開発した。公的機関の主導する認知症予防を目的とし、40歳以上の健康な日本人を対象とした数万人規模のインターネット登録システム(レジストリ)の運用は、日本初の取り組み。
IROOP™では、登録者が自身の記憶力の状態を定期的にチェックできる認知機能検査を無料で提供すると共に、産官学から提供される最新の情報により認知機能低下予防や多くの国民の知識向上、予防に役立てる。
この健常者登録システムは、認知症の発症を予防するための方策を見つける研究や認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験に関する案内を希望者へ提供するサービスも行う。今後数万人の登録を加速させるために、全国約400の国立病院や認知症疾患医療センター等に登録啓発のための広報ポスターや冊子を設置し、インターネット上でも募集するなど、広く国民に向けた広報活動を実施していく予定だ。
<背景と目的>アルツハイマー病対策が急務
日本では2025年には団塊の世代が75歳を迎え、実に国民の4人に1人が75歳以上という社会が到来しつつある。これに伴い認知症人口も2012年時点での462万人から700万人にまで増加することが予測され、予備軍をふくめると相当数にのぼると推計されている。
認知症人口は社会の高齢化とともに、世界規模で急増しつつある。このため、認知症、特にアルツハイマー病に対する対策が国際的に急がれている。しかし、アルツハイマー病を根本的に治療する薬の開発が進んでいるとはいえない。この一つの原因として、認知症の発症を予防するための方策を見つける研究や、認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験が計画されている場合でも、その有効性を検証するに適した方々に効果的に参加募集の案内をすることが難しいという現状がある。
イギリスの事例では、環境要因や生活習慣病への取り組みがなされ、認知症の有病率は下がったという報告がある。このような取り組みの重要性や有効性を確かめるためにも、多くの人々に予防策を実証する研究に参加いただき易い環境整備が求められている。
IROOP™では、この状況を踏まえ、日本全国の40歳以上の健康な人々にインターネット上での登録を数万人規模で募集する。登録された人々にはインターネット上で生活習慣などのアンケートに答えてもらい、認知機能を簡易にチェックできる検査である「IROOP™あたまの健康チェック」を半年ごとに電話で受けてもらう。
この検査の結果は登録された人自身が翌日からIROOP™サイト上のマイページで確認することができる。この半年ごとの記憶機能の経過に関連する因子をアンケート情報から調査・解明を目指し、認知症の発症予防に役立てようという試みだ
さらに、このIROOP™への登録者の中で適した人々に、生活習慣の改善などにより認知症の発症を予防する臨床研究や、認知機能の改善が期待される薬の効果を確かめる治験も案内するという。
◆熱中症で2847人搬送 1週間当たりで今年最多
65歳以上の高齢者47.4% 6道府県で6人が死亡
――総務省消防庁
厚生労働省は、今年も熱中症予防の普及啓発・注意喚起について―とする内容の周知依頼文書・メール等を全国の自治体及び労働局、関係機関宛てに送った。
厚労省は昨年同様に、こまめな水分・塩分の補給、扇風機やエアコンの利用等の熱中症の予防法についてまとめたリーフレットを作成し活用を呼び掛けている。
送付先は各地の隅々までカバーしている。管内市町村、医療機関、薬局、介護サービス事業者、障害福祉サー ビス事業者、社会福祉事業を実施する者、老人クラブ、シルバー人材センター、民生委員、 保育所、児童相談所、ボランティア、事業場等を通じ、又は保健所・保健センターにおける健診、健康相談等の機会を利用して、広く「熱中症予防」を呼びかけるよう依頼している。 特に、熱中症への注意が必要な高齢者、障害児(者)、小児等に対しては、周囲の人たちが協力して注意深く見守る等、重点的な呼びかけをお願いしている。
熱中症患者が発生した際には、救急医療機関等で適切に受け入れ等の治療がされるよう、管下の医療機関等への注意喚起及び周知徹底も合わせてフォローを依頼した。
また、「効果的な熱中症予防のための医学的情報等の収集・評価体制構築に関する研究」 (平成 26 年度厚生労働科学研究費補助金健康安全・危機管理対策総合研究事業、研究代表 者:昭和大学三宅康史)において、日本救急医学会の協力を得て、「熱中症診療ガイドライン 2015」を作成した。このガイドラインは厚生労働省ホームページ熱中症関連情報として下記表示のページからダウンロードできるので、併せて活用しを要請している。
(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/)
職場での熱中症予防対策については、都道府県労働局長宛て、「平成28年の職場に おける熱中症予防対策の重点的な実施について」(平成28年2月29日付け基安発0229号第1 号基準局安全衛生部長通知)により通知しているので合わせて参考や照会をお願いしている。
◆厚生労働省、認知症患者支援の地域資源活用状況を発表
「新オレンジプラン」で砂川市など全国4カ所調査
――厚生労働省
厚生労働省は6月28日、認知症患者支援のため地域資源活用を促す「新オレンジプラン」の活用状況について発表した。日本の認知症高齢者の数は、平成24年で約462万人、平成37年には約 700万人に増加し、65歳以上の約5人に1人に達すると推計されている。
厚労省は昨年1月に、認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で暮らし続けることができる社会を実現するため、「認知症施策推進総合戦略 (新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~」を策定した。
調査の目的は、認知症の人が自分らしく暮らし続けることができる地域づくりについて、 自治体が地域資源を活用しながら主体的に進めている取組内容等を報告することで、他自治体、関係機関等の参考情報として活用されることを目的としている。
【調査対象】 北海道砂川市・岩手県岩手郡岩手町・兵庫県川西市・熊本県山鹿市
自治体における新オレンジプランの実施状況について-(概要)
●認知症サポーターの養成と活動の支援ほか(熊本県山鹿市)
山鹿市では、認知症サポーターの養成と活動を支援している。認知症サポーター養成講座の受講対象者である民生委員・企業・学校等に応じた講座内容の工夫と、認知症に関する啓発活動を通じた認知症高齢者等にやさしい地域づくりの推進が実施されている。
●認知症初期集中支援チームの設置(北海道砂川市)
砂川市では、認知症初期集中支援チームが設置された。認知症患者の緊急性等の判断に基づいて往診・訪問介護サービスなどを調整。支援対象者宅の訪問対応と医療機関等に引き継いだ後のフォローアップを行っている。
●医療・介護関係者等の間の情報共有の推進(兵庫県川西市)
川西市では、医療・介護関係者等の間の情報共有を推進中。地域医師会等との協力による医療介護情報連携ツール導入・普及が行われており、家族介護者と医療・介護の専門職が円滑に意志疎通を図るためのツール内容の工夫がなされている。
●地域での見守り体制の整備(岩手県岩手町)
岩手郡岩手町では地域での見守り体制が整備され、郵便・水道・ガス・新聞等、地域で訪問業務を行う事業所の参加による高齢者の見守り、地域ネットワークにおける同意に基づく個人情報の共有等による見守りを実施している。
このほか、各自治体における各種の取組では、・認知症の人が目標を持って取り組むことができる活動の推進、・地域の交流サロン、・介護予防拠点における認知症の人とその家族や地域住民の交流促進が盛んにおこなわれている
*新オレンジプランの柱(厚労省の「認知症施策推進総合戦略」の通称名)。「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」ことを基本的考え方とする。
1.普及啓発 2.医療介護 3.若年性認知症 4.介護者支援 5.認知症患者など高齢者に優しい地域づくり 6.研究開発 7.認知症の人や家族の視点の重視
◆健診・人間ドック市場9040億円 任意健診は「骨密度」1位
介護ロボットの市場規模、2020年度には150億円まで成長
――矢野経済研究所(東京都中野区)
市場調査会社の矢野経済研究所(東京都中野区)は7月6日、2015年度の健診・人間ドック市場は9,040億円に上るという予測を公表した。調査は、健診センター、健診・人間ドックを実施している病院・診療所などを対象に、2015年12月~2016年2月に実施した。
特定健診の受診率は今後もアップしていくものの、少子化などの影響により、健診の市場は横ばいから微増傾向にとどまるという。市場を牽引するのは、人間ドックなどの任意健診(オプション)の受診者数の伸びだが、任意健診の受診料については今後予定されている消費税増税分を値上げにより吸収できない可能性もあり、市場規模の大幅な増加は望めないと同社は予測している。
したがって今後、健診・人間ドック市場全体として、受診者数は増加するが、健診単価は伸び悩みそうだという対照的な明暗が気になるところ。
健診には、自治体が実施する住民健診や企業・団体などが従業員向けに実施する定期健診、結核・肺がん検診、母子健康法・学校保健法などにもとづく健康診断、後期高齢者向けの高齢者健診などが含まれる。
そのうち、40歳以上74歳以下の公的医療保険加入者全員が受診する特定健康診査(特定健診)が2008年から実施されている。その他に、利用者が任意で受診する人間ドックなどの任意健診も実施されている
標準検査以外のオプション検査 他との差別化図る動き
厚労省によると、特定健診の受診率は、2013年度で47.6%となっている。2011年度が44.7%、2012年度が46.2%と年々受診率は向上しているものの、第2期特定健康診査等実施計画で2017年度までの全国目標値として設定している70%に対しては未だ低い水準にとどまっている。
メタボリックシンドロームの該当者および予備群の減少につなげ、将来的な医療費の抑制を図るという取り組みだが、改善の余地が大きいといえる。
今後の受診者数増加、健診単価の伸び悩み、という±を考えると2016年度の健診・人間ドック市場は前年度比100.7%の9,100億円に、それ以降もほぼ横這いで推移すると予測している。
受診者のニーズに応える豊富なオプション検査により他との差別化をはかる施設が増えている。健診施設向けのアンケート調査結果によると、標準検査以外の任意健診(オプション検査)として実施している項目は、「骨/骨密度検査」(69.0%)がもっとも多く、次いで「PSA検査」(65.5%)、「乳房触診+乳房画像診断」(63.2%)、「婦人科診察+子宮頸部細胞診」(56.3%)が続く。 婦人科診察(子宮頸部細胞診)(56.3%)、脳神経/頭部MRI・MRA(49.4%)がベスト5だ。
介護ロボットの市場規模、前年度の5.5倍に拡大
矢野経済研究所は6月30日、2015年度の日本国内における介護ロボットの市場規模(メーカー出荷金額ベース)についてレポートした。開発を後押しする国の事業の成果もあり、移乗介助ロボットや見守りロボットなどが牽引しているという。今後も拡大が続いていき、2020年度にはおよそ14倍へ膨らむという予測も披露している。
レポートによると、昨年度の介護ロボットの市場規模は10億7600万円。1億9600万円だった前年度の549.0%だ。「国の事業による新製品の投入と様々な企業の新規参入」を要因にあげている。歩行器など屋外での移動をサポートするロボットの製品化も寄与したという。
「2016年度以降も安定成長する」と見込んでいる。市場規模は2020年度までに149億5000万円に達すると分析。移乗・移動、見守りのロボットに加えて、排泄支援ロボットや入浴支援ロボットなども新製品の投入が続くとみている。施設・事業所への補助金や次の介護報酬改定も、こうした動きを加速させると指摘した。
矢野経済研究所は調査結果について、「介護ロボットは、もはや最新技術を披露するものでも、近未来を予感させるコンセプトモデルでもない。介護現場で負担軽減や効率化に効果を出す実用品として導入されようとしている」と説明。「条件や環境が異なる介護現場で効果の出る使い方を、メーカーとユーザーが協力して作り出し定着させていけるか、そこに普及のポイントがある」とコメントしている
◆引き続き、65歳以上の結核について定期健康診断を継続
特定感染症予防指針の見直しを議論 結核部会
――厚生労働省
厚生労働省は6月29日、厚生科学審議会「結核部会」を開催した。(1)「結核に関する特定感染症予防指針」の見直しについて― ①定期の健康診断及び潜在性結核感染症 ②結核の医療提供体制 ③目標の評価と設定。
(2)報告事項― ①日本ビーシージー製造株式会社に対する行政処分 ②「結核医療の基準」の一部改正について ③感染症法における検体採取、健康診断、就業制限及び入院の取扱いについて ④平成27年 結核登録者情報調査年報集計結果 ⑤薬剤耐性 (AMR)対策アクションプラン(1)「結核に関する特定感染症予防指針の見直し」、(2)報告事項――などを議題とした。
部会では、(1)に関し、(ⅰ)定期の健康診断および潜在性結核感染症(LTBI)、(ⅱ)結核の医療提供体制、(ⅲ)目標の評価と設定―について議論した。
(ⅰ)に関し、厚労省は、「65歳以上の住民に対する結核に関する定期の健康診断の患者発見率、既感染率及び罹患率は、近年低下傾向にある」、「結核の健康診断事業は、地域によって、患者が発見されない・対象人数が少ない事業が見られる」、「2013年登録のLTBIの者に対するDOTS実施率は、地域によって大きな差があった」と3点の課題を示した上で、次のように提案した。
●引き続き、65歳以上の住民に対する結核に関する定期健康診断を継続しつつ、国は患者発見率や罹患率等を注視しながら、必要に応じて健診のあり方を検討すると記載する
●患者が発見されない等の場合は、対象者の設定の適否、受診勧奨の方法等を検証し、事業の継続可否も含めて、地域ごとに十分な検討を行うことが重要であると記載する
●結核の低まん延国化に向けて、LTBIの者に対して確実に治療していくことが、将来の結核患者を減らすために重要であると記載する
また、(ⅱ)に関し、入院患者数の減少により、結核病床を持つ医療機関の結核病棟維持が困難となり、医療機関数や結核病床数が減少している現状などを指摘。また、必要な入院医療の確保が困難になっている自治体もあると課題を示した上で、次のように提案した。
●都道府県は、引き続きユニット化や病床単位の入院医療体制の確保に努め、病床利用率が低い都道府県は特に努めることと記載する
●国は、低まん延国化を達成した後の結核の医療提供体制のあり方について、全国の状況を踏まえて、改めて検討する
「結核に関する特定感染症予防指針」
第一 原因の究明 患者発生サーベイランスと病原体サーベイランス等について
第二 発生の予防及び まん延の防止 健康診断(定期及び接触者)、BCG接種
第三 医療の提供 医療提供体制の再構築、DOTSの普及・推進、その他体制
第四 研究開発の推進 ワクチン、抗菌剤等の研究開発
第五 国際的な連携 世界保健機関等との連携や政府開発援助
第六 人材の養成 研修
第七 普及啓発及び人権の尊重 国・地方公共団体・保健所・医師その他の医療関係者・国民それぞれの役割
第八 施設内(院内)感染の防止等、各施設における感染防止、小児結核、保健所機能強化 第九 具体的な目標等、成果目標、事業目標
*DOTSはDirect Observed Treatment, Short-courseの略で日本語では「直接監視下短期化学療法」と訳されている。DOTSは現在一つの治療方法ではなく次の5つの要素からなる総合的な結核対策戦略を指す。
①結核対策への政府の強力な取り組み
②有症状受信者に対する喀痰塗抹検査による患者発見
③少なくとも全ての確認された喀痰塗抹陽性結核患者に対する、適切な患者管理(直接監視下療法)のもとでの標準化された短期化学療法の導入
④薬剤安定供給システムの確立
⑤整備された患者記録と報告体制に基づいた対策の監督と評価
(一般財団法人国際開発機構の資料引用)