ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2016年7月14日号)
◆在宅医療のメリットなど国民へ「基本的な考え方」提案
初の「全国会議」設立 在宅医療の臨床指標など構築
――厚生労働省
厚生労働省は7月6日、今後さらに在宅医療を加速させる活動の中核となる「全国在宅医療会議」の初会合を開催した。この会議は、在宅医療の臨床指標を構築し、国民に「在宅医療のメリット」などを周知する「全国会議」。国民への周知が浅い在宅医療の全体像が「見える」よう明確に可視化を行い、エビデンス(臨床結果などの科学的根拠)に基づく在宅医療のメリットなどを国民に分かりやすく情報提供していく。
この会議は、国立長寿医療センター総長が召集し、日本における看取りまでを行える在宅医療を推進するための方策について、関係者の意見を聴くためのもの。会議での意見を基に、在宅医療推進方策について、必要に応じて制度に反映させるための政策提言を行う。
座長には大島伸一・国立長寿医療研究センター名誉総長、座長代理には新田國夫・日本在宅ケアアライアンス議長が就任した。
この日は、会議の座長・座長代理の就任や構成員紹介などに続き、(1)在宅医療推進のための基本的な考え方、(2)今後の会議の進め方、(3)在宅医療に関する統計調査等のデータの活用――などを議論した。会議は、在宅医療の推進に向け、在宅医療提供者・学術関係者・行政が知見を相互に共有して連携し、実効的な活動をするための考え方を共有することが目的。今後、9月頃に作業部会(WG)を立ち上げて対応する分野を決めるが、在宅医療の臨床指標設定などの重点分野を整理していく。
厚労省は、(1)在宅医療推進のための基本的な考え方について、地域包括ケアシステムの構築が喫緊の課題となっており、成否の鍵を握るのは在宅医療と説明。しかし、これまで国民に対して、生活の質の向上に資する等の具体的な効果を必ずしも示せてはいないとも指摘。さらに、医療者側の在宅医療に対する固定観念や不信感も払拭しきれていないという課題を指摘した。
一方、サービス提供者により様々な考え方・手法があるほか、24時間対応が求められる激務等の現状を説明。このため、研究体制の確保が容易ではなく、治療効果等の研究成果が体系的に蓄積・活用されていないと指摘があると説明した。
これらを踏まえ、厚労省は「在宅医療推進のための基本的な考え方」を共有し、関係者が具体的な対応を議論することを提案し、次のような項目を示した。
(ⅰ)在宅医療の対策を実効性のあるものとして推進するため、必要な協力体制を構築し関係者が一体となり対策を展開する
(ⅱ)会議の進め方では、在宅医療の普及の前提になる国民の理解を醸成するため、国民の視点に立った在宅医療の普及啓発を図る
(ⅲ)エビデンスに基づいた在宅医療を推進するため、関係者の連携によるエビデンスの蓄積を推進する
(2)では、厚労省は在宅医療の推進に向けて、作業部会(WG)を立ち上げて、重点的に対応すべき「重点分野」の策定を検討すると提案。重点分野のイメージとしては、「在宅医療の特性を踏まえた評価手法」、「在宅医療に関する普及啓発のあり方」を例示した。次は2017年3月に第2回全国会議を開催し、重点分野を確認する予定。
1,741の自治体別の在宅医療関連データ集を公開 厚労省
厚労省は7月6日、1,741の基礎自治体別に集計した「在宅医療に関連する統計調査等のデータ集」を公表した。データ集は厚労省が実施した統計調査等から、在宅医療に関連するデータを抽出・集約したもの。厚労省はホームページで公開することで、「在宅医療推進に必要な調査研究などに広く活用してもらいたい」という。また、今後もデータ量の充実に努め、アクセス容易性にも配慮しながら、データを広く提供していきたいとしている。在宅医療に関連する統計調査等のデータ集の掲載ホームページは、次の通り(エクセル対応)。
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html
◆「60代後半層の雇用確保には、健康確保の取組みが必要」
労働研修機構 高年齢者も評価制度による賃金決定に肯定的
――労働政策研究・研修機構
独立行政法人の労働政策研究・研修機構は7月4日、「高年齢者の雇用に関する調査」(対企業調査)を発表した。現状の高齢者労働問題は、大別すると継続雇用、再就職、年金など生活保障への制度対応などの環境整備が問題となっている。一方で、日本は人口減少社会を迎えており、働く意欲と能力のある高年齢者が、希望すればいくつになってもその能力を発揮して働くことができるように見えるが、今後は、65歳以上、更には70歳以上の高年齢者が企業や地域で引き続き一層の活躍ができるようにすることも重要な課題となっている。そのため、活動プラットフォームの整備も喫緊課題といえる。これまでは年金の支給開始年齢の引上げ等もあり、65歳までの雇用確保(継続)に力点が置かれがちであった。
このような背景や問題意識から、同機構は企業に対し、高年齢者の活用も含む企業の雇用管理についてのアンケート調査を行った。調査結果の要旨で目を引くのは、「60代後半層の雇用確保には、健康確保の取組みが必要」という健康重視という意外ともいえる答えが多かったことである。
調査は、東京商工リサーチの企業情報から、農林漁業、鉱業、複合サービス業を除く、全国の従業員数50人以上の民間企業を20,000社、無作為に抽出した。具体的には、平成24年経済センサス-活動調査に合わせて、業種・規模別に層化無作為抽出を行った。有効回答数6,187社(有効回答率30.9%)
主な調査項目は、Ⅰ.定年制の状況と法改正への対応、Ⅱ.高年齢期(50代以上)の正社員に対する企業の取組み状況、Ⅲ.60代前半の継続雇用者の勤務実態、Ⅳ.60代前半の賃金・評価制度、Ⅴ.65歳以降の高年齢者の雇用、Ⅵ.高年齢者の中途採用、Ⅶ.各種支援制度、Ⅷ.企業の属性
調査結果のポイント
<60代前半層(60歳以上64歳以下)の継続雇用の雇用形態は「嘱託・契約社員が6割>――60代前半層(60歳以上64歳以下)の継続雇用者の雇用形態をみると、「嘱託・契約社員」(60.7%)が6割を超えている。「正社員」を挙げた企業は34.2%と、回答企業全体の約3分の1である。
<8割の企業で、定年前後で仕事の内容は変わらないと回答>――60代前半層(60歳以上64歳以下)の継続雇用者の仕事内容については、「定年前(60歳頃)とまったく同じ仕事」(39.5%)、「定年前(60歳頃)と同じ仕事であるが、責任の重さが変わる」(40.5%)に回答が集中しており、8割の企業が定年前後で仕事の内容が変わらないと回答している。
<6割弱の企業が、定年後の高年齢者も、評価制度に基づき賃金を決めることに肯定的>――今後の高年齢者の賃金制度のあり方についてみると、肯定的回答(「そう思う」+「ややそう思う」)の割合が最も高かったのは、「定年後の高年齢者も、評価制度に基づき賃金を決めるのが望ましい」(56.8%)であった。
<65歳以降の高年齢者が就いている仕事は、専門・技術的な仕事や管理的な仕事の割合が高い>――65歳以降の高年齢者が就いている仕事(職種)についてみると、「専門的・技術的な仕事」(40.1%)、「管理的な仕事」(27.3%)の回答割合が高くなっている。
<66歳時点の賃金水準は、65歳直前の賃金水準に比べて13ポイント低下する>――65歳直前の賃金水準を100とした場合の66歳時点の賃金水準をみると、平均的な水準は87.3で、65歳直前の賃金水準と比較して13ポイントほど低下している。
<60代後半層(65歳以上69歳以下)の雇用には、健康確保の取組みが必要>――60代後半層の雇用確保に必要になると思われる取組みについてみると、「高年齢者の健康確保措置」(34.9%)、「継続雇用者の処遇改定」(31.3%)等となっている。
健康寿命をのばす取り組みを行う企業などを募集 厚労省
厚生労働省は8月31日まで、「第5回健康寿命をのばそう!アワード」の募集をしている。同アワードは、健康寿命をのばすための優れた取り組みを行っている企業・団体・自治体を表彰する。
第5回の今回は、「生活習慣病予防」、「母子保健」の2分野で、「企業部門」、「団体部門」、「自治体部門」に分けて募集。対象は2015年9月1日から2016年8月31日までに実施した活動で、「生活習慣予防分野」では「健康増進・生活習慣病予防に貢献する活動」、「母子保健分野」では「切れ目ない妊産婦・乳幼児への保健対策」、「学童期・思春期から成人期に向けた保健対策」など。応募は8月31日(消印有効)まで。各分野の特設ウェブページから該当部門の応募申込書をダウンロードし、事務局にメールか郵送で申し込む。詳細は、各分野の特設ウェブページを参照。
これは、厚労省の「スマート・ライフ・プロジェクト」が掲げる4つのテーマ(適度な運動、適切な食生活、禁煙・受動喫煙の防止、健診の受診)について生活習慣病予防の啓発活動や健康増進のための優れた取組を行っている企業・団体・自治体を表彰するもの。昨年度は、応募総数137件の中から18件の企業・団体・自治体を表彰した。受賞した取組については、紹介冊子を作成し「スマート・ライフ・プロジェクト」の公式ウェブサイトなどの各種メディアで紹介。また、受賞企業・団体・自治体はアワード受賞ロゴマークを使用することができる。
◆がん患者最多 年間86万人 高齢化進み1万人増
男性1位は「胃がん」 女性1位は「乳房がん」
――国立がん研究センター
国立がん研究センターは7月6日、2012年の1年間に新たにがんと診断された患者は推計約86万5千人で、前年より1万4千人増加したとする推計値を発表した。前年より約1万4,000人増加し03年に算出を始めて以来、過去最多となった。同センターは高齢化の進行が原因とみている。
がんの種類によって患者のがん罹患率の割合に地域差があることがはっきりと出て、胃がんは東北地方や日本海側で高い傾向にあることも分かった。
同センターは、都道府県が「地域がん登録」として集計したがん患者や死亡者のデータを基に全国の患者数を推計した。新規の患者数は男性が約50万4千人、女性は約36万1千人。
がんと診断された患者数の推移を03年推計からみると、03年は約63万人だった。06年に約65万人を超え08年は約75万人を超えた。10年には80万人に達した。
これを部位別にみると、男性では(1)胃がん、(2)大腸がん、(3)肺がん、(4)前立腺がん、(5)肝臓がんの順で多く、女性は(1)乳房がん、(2)大腸がん、(3)胃がん、(4)肺がん、(5)子宮がんの順だった。男性では前立腺がんの増加が頭打ちになり、大腸がんが増加しているという。
「地域がん登録」は、都道府県のがん対策を目的に1950年代より一部の県で開始され、研究班が各地域がん登録からデータを収集する活動を開始して以降、年々参加都道府県が増加し、2010年は30県、2011年は40県、そして今回はじめて47全都道府県の登録データが揃った。
がん罹患率に地域差 40歳代後半から罹患率は増加
データから高齢化の影響を除くと、人口10万人当たりの患者数(年齢調整罹患率)は男性447.8人、女性305.0人で男女合計は365.6人。前年より0.2人分減った。
新規患者数が増えて年齢調整罹患率が減ったのは、統計から高齢化要因を除いて算出したためで、同研究センターは「予防対策に独自に取り組む自治体が増え、増加に歯止めがかかった」としている。
全都道府県比較により、がん罹患率には地域差があることもはっきりした。地域住民の年齢構成の差を調整したうえで、都道府県ごとの発症率を全国平均と比較すると、男性では(1)秋田、(2)和歌山、(3)石川の順で高く、女性では(1)東京、(2)福岡、(3)石川の順で高かった。
がん発症率について全国平均を100とした場合、患者が多い目安の110以上の地域は、胃は男女ともに東北、北陸から山陰地方にかけての日本海側で目立つ。
肝がんは男女ともに山梨県や西日本で、肺がんは女性で北海道、近畿、九州北部で多い。大腸がんは男女ともに北東北、近畿、山陰地方で目立った。
また、性別・部位別・年齢階級別に罹患率をみてみると、男性では部位に関わらず40歳代後半から増加し始め、胃がんは70歳代後半まで増加が続き、大腸がんは年齢とともに罹患率が高まり、前立腺がんは70歳代がピークとなる――といった特徴がある。
◆子どもの医療費助成・介護保険の財政調整の新設要請
全国知事会「地方創生の実現に向けた決議案」を協議
――全国知事会
全国知事会は7月5日、「地方創生対策本部会合」の初会合を開催し、地方創生の本格展開の案や「地方創生の実現に向けた決議案」などを協議した。決議案では、地方創生に向けた大きな流れを緩めてはならないとして、取り組みへの大きな流れが議論された。
国はニッポン1億総活躍プランの実現に向け取り組んでいるが、「改めて地方創生なくして1億総活躍社会の実現なしとの決意と覚悟で地方創生に全力で取り組んでほしい」と要請。このため、地方創生の進化に不可欠として6項目の要求をしている。
6項目は「若者も高齢者も住みたい地方へ」、「地域の産業を未来の成長産業へ」、「地方を支えるひとづくりを」、「地域資源を世界へ」、「日本の将来を創る次世代へ思い切った支援を」、「リダンダンシーが確保された多極型の国土づくりを」(文末に詳細を別掲)。
各項目は、老若男女の願いがかなう環境整備、産業力の強化、人を支える地域づくり、地域資源の発掘、次世代のための施策、災害対策などがポイントになっている。
このうち全国知事会は、医療・介護関連では、すべての子どもを対象にした医療費助成制度の創設や、子どもの医療費助成に関する国民健康保険の国庫負担減額調整措置の廃止をはじめとする少子化対策の抜本強化を求めている。さらに、2016年度税制改正で充実が図られた地方拠点強化税制の拡充に加え、介護保険に関する特別な財政調整制度の創設など、東京一極集中を是正して地方への人の流れを生み出す取り組みの促進を要求している。このほか、政府関係機関の地方移転の着実な実現や、緊急に必要となる財源として2016年度補正予算での大胆な措置も要望している。一言でいえば「東京一極集中是正」をお題目だけに終わらせないための地方活性化への道を切り開く決意ともいえる。
政府は現在、「ニッポン1億総活躍プラン」を標榜して、それに向けた戦略的かつ効果的な施策を着実に実行するため、平成27年の「地方創生宣言」に則した各都道府県の基本方針や、平成28年度の施策などをまとめようとしている。
地方創生の本格展開(案)
全国知事会 平成28年7月
我々は、地方創生を本格展開させるため、平成27年7月に採択した「地方創生宣言」にのっとり、特に以下の項目について、戦略的かつ効果的な施策を着実に実行する決意である。
①若者も高齢者も住みたい地方へ
若者から子育て世代、高齢者、障がい者に至るまで、地方へ移住したいあらゆる人の希望がかなう環境をつくる。
②地域の産業を未来の成長産業へ
地域における創業や新事業の展開、地域資源を活かした研究開発の促進等を通して、中小企業をはじめとする地域産業の競争力強化、雇用の維持、拡大を図る。
③地方を支えるひとづくりを
産業人材の育成や、若者、女性、障がい者等の就労支援を進め、これからの地方を担い、牽引し、支える人材の確保と活躍を支援する。
④地域資源を世界へ
東京オリンピック・パラリンピックに向けて、食・伝統・文化・芸術・スポーツなど、貴重な地域資源を磨き、発信し、最大限に活用することで地域の魅力を高める。
⑤日本の将来を創る次世代へ思い切った支援を
結婚、妊娠、出産、子育て等のライフステージに応じた、切れ目のない対策の推進や、多子世帯等に対する支援の強化などにより、少子化対策を加速化させる。
⑥リダンダンシー(多重性)が確保された多極型の国土づくりを
小さな拠点づくり、高齢者の社会参加と健康づくり、交通ネットワークの整備推進等により、魅力的かつ災害に強い地域を形成する。