ホーム > FAXレポート > 医院レポート > 医療経営情報(2017年2月2日号)
◆「65歳以上現役社会」実現へ向け、がん・認知症等の予防に注力
創薬・バイオ分野などの研究開発に重点的な予算を配分したい意向
――経済財政諮問会議
1月25日、首相官邸で経済財政諮問会議が開かれ、2025年以降を見据えた長期ビジョンについて、65歳以降も経済活動に参加する「生涯現役社会」を目指す意向が改めて示された。その実現のため、がんや認知症、糖尿病の予防に力を入れるべきとして、創薬やバイオなどの分野の研究開発に予算を重点的に配分することや、大学への寄付金税制の拡充も見直す方針が明らかとなった。
「生涯現役社会」は、安倍晋三首相が掲げる成長戦略のひとつ。1月5日には日本老年学会が、高齢者の定義を「75歳以上」へと引き上げ、74歳までの社会参加支援を促す提言を行うなど、65歳以降が経済活動に参加することを当然とする世論が形成されつつある。
一方で、生活習慣病の代表格である糖尿病患者は、予備軍まで含めると2,200万人以上にのぼると言われ、同じく生活習慣病のひとつである高血圧や脂質異常症といった疾患を持つ人は、それぞれ約4000万人以上と推定されている。日本人の死因トップであるがんや、現役として活躍することが困難になる認知症も含めたこれらの疾患を予防・治療することで、より活躍が期待できることは疑いようがない。だからこそ、画期的な新薬の開発を期待して創薬・バイオなどの研究開発に力を注ごうというわけだ。
さらに一歩踏み込んで考えると、この3つの疾患に関する健診・検診により力を入れるようになることが容易に想像できよう。しかも、今月19日に行われた厚生労働省の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」では、かかりつけ医の診療データを特定健診の結果とすることが検討された。医療費の抑制を進めるためにも、地域の医療機関が実施する検診の重要性も増していくことは間違いない。
◆医療インバウンドの加速へ、28の「日本国際病院」を指定
年間10人以上の渡航受診者受け入れ実績がある病院が対象
――一般社団法人Medical Excellence JAPAN
1月31日、政府と協調して日本の医療の国際展開を推進している一般社団法人Medical Excellence JAPAN(メディカル・エクセレンス・ジャパン、以下MEJ)は、外国人の「渡航受診者」受け入れに適した医療機関として、全国28の病院を選んだと発表した。インバウンド消費を医療界でも増やす取り組みとして注目される。最先端医療と日本での観光を組み合わせた「医療ツーリズム」の動きも加速しそうだ。
MEJは、昨年7月から対象となる病院を公募。その条件として、年間10人以上の渡航受診者受け入れ実績があることを原則としている。対象となる病院は「ジャパン インターナショナル ホスピタルズ(Japan International Hospitals)」とし、首相官邸の健康・医療戦略推進本部「医療国際展開タスクフォース」へも報告された。今後、各国の大使館や在外公館などを通じて、各病院の情報を提供していく。
また、「ジャパン インターナショナル ホスピタルズ」の情報を海外に広く発信するため、ウェブサイトも公開(http://www.japanhospitalsearch.org/)。各病院のコンテンツを設け、どのような診療科が設置されているか一目でわかるようにしている。また、交通情報や各病院のURLを記載しているほか、提携する旅行代理店のウェブサイトともリンク。その病院で受診したいと考えたときに、すぐ渡航手段が確保できる仕組みとなっている。
昨年、年間訪日外国人数は初めて2,000万人を突破。政府は、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、訪日外国人数を4,000万人にしたい意向を示している。医療機関で受診することを目的に日本を訪れる外国人も増えており、受け入れ体制の強化が必要となってきている。
今回、「ジャパン インターナショナル ホスピタルズ」に指定された28の病院は、東京大学医学部附属病院や国立がん研究センター中央病院など大規模病院がほとんどで、指定病院がない府県はまだまだ多い。近畿地方では大阪大学医学部附属病院のみで、訪日客が多い京都府に指定病院がないのは大きな問題だ。中国・四国地方には1院もなく、東北地方も仙台厚生病院と総合南東北病院のみと手薄になっている。MEJは今後も公募を続けるとしているため、そうした現状をいかに克服していくのか、次回以降の発表にも注目が集まる。
<ジャパンインターナショナルホスピタルズ 指定病院(2017年1月31日現在)>
北斗病院
仙台厚生病院
総合南東北病院
足利赤十字病院
筑波大学附属病院
国立がん研究センター東病院
千葉大学医学部附属病院
亀田総合病院
東京大学医学部附属病院
国立がん研究センター中央病院
国立国際医療研究センター病院
がん研究会有明病院
慶應義塾大学病院
聖路加国際病院
虎ノ門病院
東京高輪病院
順天堂大学医学部附属順天堂医院
国際医療福祉大学三田病院
国立成育医療研究センター病院
榊原記念病院
NTT東日本関東病院
相澤病院
総合病院 聖隷浜松病院
藤田保健衛生大学病院
大阪大学医学部附属病院
福岡県済生会 福岡総合病院
福岡記念病院
米盛病院
◆電子カルテや他のシステムに散在するデータを統合・活用でき、
表記ゆれ対応の検索機能も備えたデータウェアハウスが9月に登場
――株式会社ジャストシステム
1月23日、日本語入力システム「ATOK」開発などで知られるソフトウェア開発大手の株式会社ジャストシステムは、医療向けデータウェアハウス「JUST DWH」を今年9月7日より発売すると発表した。ICT化が進む医療現場において、蓄積したデータをいかに有効活用するかが今後の課題になってくると予想されるだけに、スムーズな診療を後押しする院内データの二次利用基盤として注目される存在となりそうだ。
データウェアハウスとは、単に記録するだけでなく、時系列に保管したり、同種のデータごとに整理し直したりできるデータベースのこと。「JUST DWH」は、全国5000以上の医療機関への導入実績がある「ATOK」や「医学辞書 for ATOK」で培った日本語処理技術を応用して開発された。
「JUST DWH」の最大の特徴は、病名や薬品名などの「表記ゆれ」に対応している点だ。類義語や同義語にも対応しており、たとえば「心拡大」で検索すれば「心室肥大」「Cardiac Enlargement」のデータを、「ヘモグロビンA1c」で検索すれば「HbA1c」のデータも一度に抽出できる。これは、「医学辞書 for ATOK」に収録されている52万語以上の医療関連用語や病名、薬品名などのデータを活用しているからだという。